- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560070390
感想・レビュー・書評
-
解説にもある通り、心情の機微の表現がずば抜けている。典型的な人物はいない。誰もが理屈では説明しきれない善と悪が内面には共存しており、時事刻々、読者の予想を超えて、心は変化していくのだ。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
すごく綿密な人物設定があることを感じさせられる。この人はこんな時どういう行動・反応・表情をするのか、といったことが細部にわたり描かれていて、そういう人間心理を読み取っていくのが楽しい。印象に残ったのは、神父さんがチボー氏の驕慢を指摘する場面や、アントワーヌが弟の扱いについて両極端の考えに振られる様子、少年園で精神的に貧弱になりかけたものの、家に戻りまた元のギラギラ感を取り戻しつつあるジャック、など。やっぱりチボー家の人間たちに注目してしまうけど、脇役たちの描写にも手抜きはなく、それぞれがしっかりと役割を持っている。特にダメ旦那に苦しめられながら、子供たちには暖かい家庭を与えているフォンタナン夫人は偉いなあ、と感じた。ダニエルはなんだか即物的な人間になっていきそうな予感でちと心配。
-
若い時に読めば、ジャックと一緒に悩んだり苦しんだりしたのかな…と思いつつ、今の自分は、フォンタナン夫人や、その夫、ジャックの兄のアントワーヌの気持ちが痛いほど分かる。特にアントワーヌ。弟が心配で可愛いということと、世話をすることの煩わしさや、自分の勉強をしたい気持ちで、刻一刻と揺れる…よく分かります…
-
少年の矯正施設がすべてこのようなことではないだろうけれど、これはやばいなと思うような前半。矯正ではなくこれはいわゆる「感化」というのだろう。後半はそこから一転、思春期の少年らしさをとりもどしていく経過なのだけれど、なにかちぐはぐで思うにまかせないという、これまた思春期の特性をみごとに表現しているなと思う。
-
ジャック・チボーの年齢設定は15歳。ひどく大人びた15歳である。
-
文学
-
あの家出から1年が経った。ジャックは少年園に幽閉され屈辱の日々を無気力に過ごす。幸いにもジャックの心が壊れ切る前に、兄のアントワーヌにより救出される。一見変貌したかに見えるジャックだが、彼のように頑固に無垢な心を持つ人間はそう簡単には変わらない。孤独と屈辱との対峙により表出した影はむしろ彼の天性を引き立てるコントラストになるだろう。15歳のジャックの性愛の目覚め、同様の魂を持つジェンニーとの恋の予感などの青年期の通過儀式エピソードを絡めてとても読み応えある章だった。ジャックの再生が伺われる。
-
新潟などを舞台とした作品です。
-
19/12/16
-
11/12