2666

  • 白水社
4.12
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感想 : 46
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  • Amazon.co.jp ・本 (880ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560092613

感想・レビュー・書評

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  • この小説を前にして、人間は2種類に分けられる。
    2666を読んだ人間と読んでいない人間だ。

  • とにかく長い。特に犯罪の部が長く感じた。全ての事件の詳細だけで100ページ分位費やしているんじゃないかと思った。尺を稼ぐためにいろんな話を寄せ集めた印象もあるが、それでいて全体の整合性が維持されているのはさすが。好きな話はアマルフィターノの落書きの部分。短編ばかりでなく大長編も読めみたいな説教もあるが、この作品に対する作者の並々ならぬ情熱によるものだろう。

  • まだ読み中。何せover 800頁やからね頑張るわね

  • 掲載元/Ginza 2013年1月号
    G's BOOK 豊崎由美のワンダーブック3
    にて紹介。

  • ロベルト・ポラーニョはチリ出身の作家でメキシコ、エルサルバドル、フランス、スペインなどを放浪。豊富な越境体験を活かした小説を発表。ボルヘスなどラテンアメリカ文学の影響も濃い。「2666」は遺作にして最長ボリュームの長編小説。いわゆるメガノベルであり、分厚い。読み始めるまで億劫だが、いざ読んでみれば、現代世界文学最前線的な内容を堪能することができる。

    「2666」は五部に分かれている。全体を通して、サンタテレサという架空の街で発生した未解決の大量殺人事件について語られる。

    第一部批評家たちの部の主人公は、四人のヨーロッパの文芸批評家である。フランス、イギリス、スペイン、イタリアの大学で働く四人の文芸批評家は、謎多きドイツの小説家アルチンボルディの研究者である。彼らはヨーロッパ各地で開催されるアルチンボルディ関連の研究会で知り合い、親交を深め、恋愛関係にもなっていく。アルチンボルディの行方を追ううち、四人はメキシコ国境の町サンタテレサに向かうことになる。この第一部だけでも十分面白い。国境を渡りまくるし、書物に関するボルヘス的小説にもなっている。

    第二部アマルフィターノの部は、サンタテレサで四人を案内し、アルチンボルディの翻訳者でもある哲学教授アマルフィターノが主人公である。チリ出身のアマルフィターノが、何故一人娘のロサを連れて、砂漠の街サンタテレサに移り住んだかの経緯が綴られる。彼のノマド的人生とともに、文学作品に関する言及、狂気、サンタテレサの街に漂う不穏な空気が描写される。

    第三部フェイトの部は、ニューヨークの新聞社で働くアフリカ系アメリカ人の記者フェイトが主人公である。フェイトはボクシングの観戦記事を書くため、サンタテレサに派遣されたのだが、未解決のまま被害者だけ増えていく連続殺人事件の話に興味を持つ。

    第四部犯罪の部では、1993年から1997年までの間に数十人の女性がサンタテレサで殺害されたその経緯が詳細に記述される。犯人と思わしき青年が逮捕され、拘留される。しかし、その後も女性の猟奇的殺人事件は続く。模倣犯なのか、単なる類似した殺人事件なのか、真犯人は捕まっていないのか、真偽定かでないまま、被害者は200人とも300人とも言われる規模に及ぶ。

    第五部アルチンボルティの部では、謎の小説家アルチンボルティの自伝的小説になっている。ハンス・ライターという名のドイツ人青年がアルチンボルティと名乗るようになった経緯と彼の生い立ちが教養小説のごとく綴られる。ハンス・ライターは1920年にプロイセンで生まれ、第二次世界大戦にドイツ軍として従軍する。ポーランド、フランス、ルーマニアとヨーロッパ諸国を転戦したハンス・ライターは、ウクライナの村で療養中、ユダヤ系ロシア人アンスキーの手記を発見する。

    ここから小説はアンスキーの手記の中に移行する。モスクワでアンスキーは、ロシア人SF作家イワノフと知り合う。イワノフは共産党政権下で名声を手にした後、政府に作品を否定されて射殺された(入れ子構造で物語が語られる複雑な構成である)。戦後、ハンス・ライターは、アルチンボルティという小説家になる。

    物語の最後、アルチンボルティの妹ロッテが登場する。ロッテは結婚して、ニューヨークで暮らし始めた後、兄と音信不通となる。ロッテは、とある理由で一人息子に会うため、メキシコのサンタテレサに向かう。旅の途中、アルチンボルティという作家の小説を読んでいる時、この本の作者は兄だと確信する。ロッテがアルチンボルティをサンタテレサに呼び寄せたところで、長い小説は終わる。

    さて、この小説は未完である。連続殺人事件の顛末は謎のまま残されているが、全体が円環しているし、これでよいと思う。

    完成前に作者は亡くなってしまった。生活費にするため、五冊の短編小説に分けて出版するようポラーニョは遺族に頼んだが、遺族は出版社と話して、一冊の分厚い長編小説として発表することを選んだ。結果、『2666』は10以上の言語に翻訳され、英語版は2008年度全米批評家協会賞を受賞し、ポラーニョの代表作とみなされるようになった。日本語版も分厚い。しかし、現代世界文学の流れに触発されたいなら、読むべき小説である。

  • ふー読み終わった。マラソンを完走したような富士山に登ったような、「やりきることに意味がある」状態になっていた。
    非常に評価が高い本作、2段組で800ページ、厚みが5センチ、原書は1,000ページを超えるという大著であり、読む人を選ぶ。しかもリーダブルではない、難しい。読むのが愉しいとかぐいぐい読めるとかでもない。楽しんで読んだとはとても言えない。ただ、このスケール感と巨大さは稀有。ドストエフスキー的な総合文学といおうか、歴史に残る文学ではないか。読み終った者だけが味わえる充実感がある。
    「2666」は何についての話なのか?複数のプロットが並走し、多量の人物が登場する。アルチンボルディ研究者達の恋物語(読みやすい)、デュシャンのレディメイドを実践する男(難解)、殺人事件に興味を持つジャーナリスト、連続殺人事件(カタログのようにレイプ殺人とその他の殺人がずらりと並べられるグロテスクなドラマ)、アルチンボルディの人生(細密な戦争描写)・・・
    これらのばらばらのプロットがひとつの核に向かって大きく収斂していくのかといえば、そうでもない。アルチンボルディのメキシコ行きなど一部の輪は閉じられるものの、多くの枝葉は外に伸び行くままだ。また、後書きで比較されている白鯨のごとく、内包されたエピソードが独自に発達していく。ひたすら「読む」「読み込む」ことを読者に求める。
    たまねぎの皮をむくように、「核」に目を凝らしても、そこには空白がある。しかしここで繰り広げられている膨大な「読み物」の間を彷徨いながら壮大な世界を旅するべし。
    いやしかし、私はその境地には到底到達できなかった。再読しなくてはいけないのだろうが、富士山にもう一同登るモティベーションがまだ起きないように、容易ではない。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784560092613

  • 緩やかでいながら緻密な構成と反復されるモチーフとイメージ。詩的な表現。一章ごとに異なる文学様式。この世の醜悪さ(<欲望>や<うわべ>)を「はらわた」をつかみ出すように描きつつぐいぐいと読ませる筆致。途轍もないものを読んだ。世界の秘密の表象ってマチスモなのかな。そういう意味ではボラーニョはプイグに近いんじゃないだろうか。第4章の描き方や、全体として登場する魅力的な女性たちの強さ、主要な男性登場人物(批評家の中ではモリーニ)の描き方からもそう感じられる。それにしてもこの読後感をとうてい言葉で表すことは難しい。それでも、手元にはもうこれと『地図と領土』があればいいかもという気がしないではない。

  • チリ出身ロベルト・ボラーニョの遺作。850ページ上下組というかなりのボリュームで、五部からなる長編作品。
    それぞれの章は別の小説ともいえるし、細い糸でつながってもいる。その”糸”は謎の作家アルチンボルディと、メキシコで起こった女性連続殺人。

    ★★★
    第一部は「批評家たちの部」
    まずは読者にドイツ作家のベンノ・フォン・アルチンボルディが紹介される。
    彼は何度かノーベル賞候補にもなっているが、完全に世間から行方をくらましている。第一部の評論家たちは、フランス、イタリア、イギリス、スペインのドイツ文学研究者。3人の男と1人の女の評論家たちはアルチンボルディがメキシコのサンタテレサにいるという情報を得て探しに行く。第一部では彼らの絡み合った恋愛模様と、文学論を中心に進み、そして向かったサンタテレサでの女性連続殺人事件に触れる。

    第二部は「アマルフィターノの部」。第一部の批評家たちが立ち寄ったサンタテレサの大学のチリ出身の文学教授。ヒッピーの妻は自由奔放に暮らしアマルフィターノは一人娘ロサと暮らしている。庭の物干しには一冊の本を吊るし、たまに訪れる幻聴を思考する。

    第三部は「フェイトの部」。アフリカ系アメリカ人の記者フェイトは、サンタテレサで行われるボクシングの試合の取材に行き、女性連続殺人を知る。

    そして一番長い第四部は「犯罪の部」
    第一部から少しずつ語られてきた「女性連続殺人」の様相と、捜査に係る警察や病院関係者の状況。メキシコのサンタテレサで次々見つかる女性たちの死体。殺され方も様々、犯人が分かるものあれば、未解決事件として埋もれるものもあり。それを追う警察関係者の話。

    第四部までは、抑え、控えた事実の記録的な手法。作者の文学的情熱を感じるのは(それも静かな熱狂)最後の第五部「アルチンボルディの部」。
    ここで語られるのはドイツの寒村で生まれたハンス・ライターの半生。彼の家族、戦争、病気の妻との生活、彼がアルチンボルディと名乗り作家になるまで、そして隠遁。
    物語の最後で隠遁のアルチンボルディのはサンタヘレナへ向かう。
    時系列的にはこの後、第一部の批評家たちがサンタヘレナへ向かうわけですね。
    ★★★

    作者は当初、この本を一つの章ごとに一冊の本にしての出版を考えていたとのこと。しかしそうすると第四章はひたすらひたすら女が犯され殺され捨てられていく羅列になるわけで、しかも一番長い章なのでこればっかりで上下巻になったりしたかもしれない、ちょっとそれはキツイので、どんなに長くでも一冊で出してもらってよかったですよ。

  • とても一言では感想など書けません。とにかく読んでもらうしか……。一つ言えるのは、読んで決して後悔することはないということだけです。

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著者プロフィール

1953年、チリのサンティアゴに生まれる。1968年、一家でメキシコに移住。1973年、チリに一時帰国し、ピノチェトによる軍事クーデターに遭遇したとされる。翌74年、メキシコへ戻る。その後、エルサルバドル、フランス、スペインなどを放浪。77年以降、およそ四半世紀にわたってスペインに居を定める。1984年に小説家としてデビュー。1997年に刊行された第一短篇集『通話』でサンティアゴ市文学賞を受賞。1996年、『アメリカ大陸のナチ文学』を刊行。1997年に刊行された第一短篇集『通話』でサンティアゴ市文学賞を受賞。その後、長篇『野生の探偵たち』、短篇集『売女の人殺し』(いずれも白水社刊)など、精力的に作品を発表するが、2003年、50歳の若さで死去。2004年、遺作『2666』が刊行され、バルセロナ市賞、サランボー賞などを受賞。ボラーニョ文学の集大成として高い評価を受け、10 以上の言語に翻訳された。本書は2000年に刊行された後期の中篇小説である。

「2017年 『チリ夜想曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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