ほたるいしマジカルランド

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591169032

感想・レビュー・書評

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  • 安定の1冊。

    「ゆう」と呼ぶ会話を聞いて、
    「ジャニー喜多川スタイルを採用している可能性もある」
    とか、占いに対して
    「まあそりゃあそうでしょうねというようなメッセージが表示される」
    というくだりは笑えました。

    そして
    「もし何々だったら、なんてことばかり考えている人間には永遠に無理なのだ。望みを実現することなど。『なにがなんでも』という気持ちが、いつだって欠けている。」

    「すべての生きる者は働く。働かねばならない。ただ、『働く』とは金銭を稼ぐことに限定しない。照代のように主として家事をおこなう者も『働く』者に該当する。」

    比較的柔軟に、「もし〜たら」を利用して自分の納得できる生き方働き方をしてきたつもりだけれど、ここへ来て壁にぶつかってもやもやしている今の私。

    寺地さんの本が好きなのは、自分が考えていること、言いたいことを、言葉にして見せてくれることなのかもしれない、と思いました。


  • おにぎりのサインには泣く。


  • 巷で流行りの異世界への転生が我が身に起きるのなら、イケメン騎士に見初められたり勇者になって戦うより、わたしは寺地はるなさんの物語の登場人物になりたい。

    殊に、本作を読んでそう思う。

    わたしもほたるいしマジカルランドの従業員になりたいし、いやむしろ、ここに通う常連客のモブキャラでいいから転生したい。
    自分の生きる世界とは決して遠くない、でも少しだけ現実より優しくなれそうなこの世界で、生きてみたいと強く思うのです。

    紗英ちゃんと焼き鳥食べに行きたいし村瀬がメリーゴウランド眺めてる姿を盗み見してみたいし、八重子さんと同じ定食屋の別の席でお昼ごはん食べたいし山田さんには奥さんと一緒にサイリウムぶんぶん振りたい。左門の肩をそっと叩きたいし三沢におまえなぁとうざい感じで声をかけたい。
    この世界で息をして、生きてみたい。

    なんのためにはならないけれど、豊かなもの。
    帯の言葉はまさにそれで、この世界には確かに豊かなものがある。
    豊かなものはなにも特別でキラキラと輝くものではなくあたりまえのようにそこにあるもの。
    それを恩着せがましくなくさりげなく気づかせてくれる寺地はるなさんこそ、豊かな作家なのだと思います。
    彼女に命を与えられる人たちが羨ましい。


  • テーマパークで働く人たちのそれぞれにスポットライトを当てて、それぞれが少しずつ変わっていく様子が爽やかなお仕事小説。

    ただ話の縦軸のはずの佑さんや社長、またアイドル並みに可愛いフードコートの子(名前失念)の心境に迫る話が少なくて、少し消化不良。
    落とし物が何かキーワードだと思ったのに、特に関係なく。
    左門さんも謎多き人かと思いきやただの悩める息子兼悩める社会人で、キャラが魅力的なだけに、もう少し引っ張って欲しかった。

    でもそういうところが、ある意味お仕事小説としてはリアルなのかもしれないとも思う。

  • 「遊園地」で働く人たちをえがいた作品。
    遊園地ときくと、笑顔があふれる夢の世界、楽しい場所というイメージ。
    その場所を提供してくれる、働いてくれる人がいる。

    なぜかここでは私は彼らを「スタッフ」とは呼びたくない。
    「スタッフ」と呼んでいる人たちも、遊びに来るお客さんとおなじ人間。
    それぞれに事情があったり抱えたものがありつつも、生活のため体裁のためだったり、なんとなく働いている。

    一週間でひとりずつにスポットがあたる。
    個人的には清掃の「篠塚八重子」の話が苦しかった。
    自分ではどうしようも回らなくなる不器用な人もいる…。

    社長 国村市子の言うように「会社は誰かが欠けてもうまく回るように運営する」のはもっともだ。
    でももっと深い意味がある。
    ひとりひとりを見て良いところを持ちよって、苦手をサポートしあっていけばいい、そういう温かい場所なのだ。

    石が大好きな社長。
    石は見る角度がちがったり光の当たり方が変わると、輝きや色がちがってみえる。どんな見方をするか、で変わるのだ。

    悪い人は出てこない。でも良い人ばかりではない、クセのある人もいる、特徴のない人も。
    それでも読みおわった後、心が温かくなる。
    これぞ、寺地はるなワールド。


    自分のことにしか目をむけない現代、
    多様性とかを言いわけにして他人に無関心な人々、
    揚げ足をとったらすかさず攻撃しまくるSNS、

    こういう社会に心が疲れてしまった人に読んでもらいたい。
    心の遊園地へ。
    『ほたるいしマジカルランドまであと529歩』

  • p163「ずーっと幸せでしたよ。わたしはね。お父さんと結婚してからずーっと。
    自分を幸せにできるのは自分だけやもん。」

    なぜ結婚する時、夫となる人が妻となる人に「必ず幸せにします。」というのだろう。
    妻は今は幸せではないかのように言うのだろう。なぜ妻が幸せか幸せじゃないか、他人に決められなきゃならないのだろう。
    と、もやもやしていたのが、この本読んで吹っ切れた!!
    そうだよね。自分を幸せにできるのは自分次第。人なんか関係ない。
    人に自分の存在意義を求めない。

    とか、カッコイイこと言ってるけど、すぐ寂しくなるタイプです…苦笑
    人の考えに振り回されないように自分の考えや知識をつけていきたい。

  • 優しい人たちの優しいい話、嫌な人悪い人は出てこない、本を選ぶようになったのは実生活に疲れているからかもしれません。
    このお話は優しいけれど、心の中は妬みや焦りがある普通の人達が沢山出てきます。この人達は心の中を爆発させて出しません。
    自分に正直に、ありのままに生きるって素敵!とは思いますが、正直に出された相手はたまったもんじゃありません。
    いらんな気持ちをかかえる苦しさに共感しました。

  • すごくすごーく好き。
    読んで良かった。
    表紙が素敵で手に取っただけだったけど
    またひとつお気に入りが増えました。
    私的にはあおいちゃんが好きだなぁ。

    『あたりまえ』は変わるんや。変わっていく。
    なんとなく自然にかわっていったわけではなくて
    『あたりまえ』を変えようと行動してくれた誰かがおったはず。

    彼氏にも、それは知らん。そんなん自分で考えてよ。って笑えるまっすぐさが素敵だ。
    そらまぶしいよ、佐門君。

    少し毒のある感じも、じんわりあったかい感じも
    全部ぜーんぶ好きだった!
    生活することにちょっとだけ溜息つきそうな時にまた読み返したい。

  • 限りなくリアルで、そして優しい小説だと思った。
    これを読んだ人全てが登場人物の誰かと同じような思いをした事があるのでは。自分の現状に満足できてなかったり過去の後悔を引きずってたりしている事を周りの人のせいにして自己嫌悪に陥って、そこから抜け出せなくて。
    でも、それでも人と関わる事を避けて通るのではなく、ほんの少し歩み寄る事によってほんの少しずつ現状を変える事ができるんだという事をふわっと教えてくれている。
    寺地さんは何故いつもこんなにも人のマイナスの感情に寄り添えるんだろう?私もそんな人間になりたい。

  • 自分に自信がなくて、過小評価している人たちがたくさん出てくる。でも、周りの人は、その人の頑張りをちゃんと見てる。「いいな」と思っている。
    自分の物語のように、励まされるお話ばかりだった。
    家族、友だち、恋人、自分のことをちゃんと見てくれている人たちのために、もっと自分を褒めてあげたい。

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著者プロフィール

1977年佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。他の著書に『わたしの良い子』、『大人は泣かないと思っていた』、『正しい愛と理想の息子』、『夜が暗いとはかぎらない』、『架空の犬と嘘をつく猫』などがある。

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