両手にトカレフ

  • ポプラ社
4.03
  • (233)
  • (313)
  • (161)
  • (21)
  • (2)
本棚登録 : 3239
感想 : 301
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591173992

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 著者が伝えたいことがひしひしと伝わってきた。

    この主人公は救われたけど、救われない子供も多くいて、その子供が親になって…というループを繰り返していく。

    ニュースでみた学食の様子が小説で読むとリアルに感じる。
    金子文子はこの本で初めて知ったが、ミアの状況とリンクさせていて、ストーリーに迫力をもたらしている。

  • すごく感動する場面とか、泣く場面とかは無かったんだけど、口をぽかんと開けて呆然としている私が心の中に残っていた。なんでだろう?まだ言語化できない。
    読んだらメルカリで売ろうと思ってたけど、なんでか手放せない。
    最後レイチェルたちと一緒に楽しく過ごしましたとさ、ちゃんちゃん みたいな終わり方じゃなくて、これから住むってところで終わって、未知なままにしているからこそリアルだなって思う。評価ってなにをどう評価するのかも判断しかねるような本だった。

  • 【概要】
    シングルマザーで、ドラッグや酒に溺れるネグレクトの母親の元に育ったミア。母親代わりに弟チャーリーの面倒を見ながら、何とか学校生活を送っているが、食べるのもやっとな生活の中で一冊の本に出会う。
    そこには昔の日本人が書いた自身の生い立ちが描かれており、その日本人カネコフミコと自分を重ねながら、嫌な現実から目を背けるように本を読み進めていく。
    昔のフミコと自分自身を重ねながら、自分の力ではどうしようもない環境に立ち向かいながら、生きていく中で母親がソーシャルワーカーに保護されて姉弟が引き離されるのではと疑念を抱く。
    ある日、母親が堕ちてしまい、いよいよ保護されそうになるとミアは弟を連れ出し、自分達だけで行けていこうとする。


    生まれた場所や家柄どうしようもない循環から抜け出せず、諦めている子供の心境に胸が痛んだ。
    それでも生きていくための強さや賢さ、ずるさを身に付けなければいけないという環境が小説ではないリアルさが伝わってきた。
    物語として、起承転結があるとか伏線回収があるなどのストーリーではないが、最後までリアルなドキュメンタリーを見たような心地。

    【世界は続いているが、前とは違っている。多分世界はここから私たちがいるこの場所から変わってこことは違う世界になるのかもしれない】
     

  • 全く途中で飽きることなく読めたしおもしろかったんだけどわたしにはあんまり刺さらなかったな〜、、
    ハッピーエンド大好きだけどこれに関してはあまりにも環境がひどすぎてハッピーエンドがちょっと強引に見えちゃった

  • とても良かった。
    ヤングケアラーは、ご年配の方々を介護している若者のことだと思っていたけど、両親が機能せず、ケアが必要な幼児・児童のケアをしている場合も使うんだな、と納得。
    愛していい対象=家族を奪われたら自分が終わるという感じ、今なら分かる。

  • 身勝手な大人のせいで若い子たちが不幸になってはいけない。子どもたちはいつだって自由と自分らしさを求める権利がある。ただ年齢と知恵が足りないだけでこうも自分の意思を実現できないものか。
    よかれと思って行う民間団体や慈善活動が対象者たちを傷つけることがあるということがわかった。助け合いには必要な構造だけど、たしかに対等じゃないからな。

  • リリックというのね。知らんかった。その土地の雰囲気が匂い立つのが列車の描写。思い出した。

  • ・この本を読む直前に配信で「行き止まりの世界に生まれて」を観てたせいもあるかもだけど、ちょっとくらってしまった。どちらも素晴らしい作品。国も世代も諸々違うけれども、これは俺だ、と思える作品。
    ・主人公の彼女が接近する事になる音楽がラップというのも正しい気がした。ブレイディみかこさんはロックにかぶれてイギリスへ行った…みたいな話を聞いた(事がある様な気がする)けど、やっぱり「今」を切り取るなら残念ながらロックは選ばれない気がする。

  • p.264
    すぐにスマホが着信音を発し、返信が届いた。
    それはこのあいだウィルが送ってきたメッセージとは違って短い簡潔な答えだったが、いかにもウィルらしい言葉だったので笑った。
    「すべてにYES」

  • ぼくイエを読んだからミアがどういうところにいるのか、何を考えているのかを考えると苦しくなった。ウィルが言っていたような「聞いた側も無傷ではいられない」というような感じ。
    大人を頼れない、信用できないと世界も心も閉ざされてしまうというの、よくわかる。子どもの頃に頼れる相手がいるかどうかってかなり重要だと思うし、他の道を示してくれる大人がいたら…と少しだけ自分の子どもの頃と重なった。

    恥ずかしながら金子文子のことは知らなかった。女性のアナキストは伊藤野枝なら知っていたけど、共通して若くして亡くなっているんだね。
    ミアの物語と並行して文子の物語も進んでいったけど、あそこから刑務所に収容されるまでは少女時代以上に波瀾万丈だったのだろうな。

    ミアを取り巻く人たちもそれぞれの事情やミアへの思いがあったのだろうけど、ゾーイの心配もイーヴィの気持ちも(人によっては賛美あるだろうけど)ちょっとわかる。
    仲の良かった友達がいきなり荒れたら(しかも自分の母親が噛んでることを知らないだろうし)距離置きたくなるよね。今の素敵な友達といるのが楽しいし自分もやや貧困家庭とは言え、そこから出ていけるであろう未来が待っているんだから、ちょっと貶むように、もしくは哀れむように見えてしまう傲慢さが芽生えてしまってもあの年頃なら仕方ないのかな。(仕方ないか?)

    終わりの方がかなり駆け込みだったように感じて、続きは!?という感じで終わってしまった。
    なんでミアがいきなり具合悪そうになったのかという原因が後半明かされたけど、あの後ミアはそれをソーシャル・ワーカー達に言えたんだろうか。
    トラウマになってるしすぐには言えないかもしれないけど、またあの男を視界に入れてしまったらまたぶり返してしまうんじゃないだろうか。
    ただ、その時は今度は助けてくれる人がいると信じられるようになっているだろうから、ゾーイかレイチェルに伝えてほしいな。

    恋愛で救われることもあるというのは承知の上で、こういう本に恋愛要素いらねェ〜と思ってたので、ミアとウィルがそこまでならなくてよかった…ウィルは惹かれてるんだろうけど。
    彼のいいところは育ちの良さから来る無知を自覚した時、自分を恥じて理解しようと歩み寄るところだ。貧困の中にいる人からすれば「どうせ理解されない」「腫れ物扱いされたくない」「放っておいてほしい」ということだろうし、その気持ちはとてもわかるのだが、拒絶したままだとずっと世界が閉ざされているんだよね。だから理解したい、わからないから教えて欲しい、と考えられるウィルとはきっと友達になれるんじゃないかな…同情や哀れみを越えたら少しずつでも近づけるんじゃないかと思う。

    ブレイディみかこさん、また小説書いてほしいな。

全301件中 61 - 70件を表示

著者プロフィール

ブレイディ みかこ:ライター、コラムニスト。1965年福岡市生まれ。音楽好きが高じて渡英、96年からブライトン在住。著書に『花の命はノー・フューチャー DELUXE EDITION』『ジンセイハ、オンガクデアル──LIFE IS MUSIC』『オンガクハ、セイジデアル──MUSIC IS POLITICS』(ちくま文庫)、『いまモリッシーを聴くということ』(Pヴァイン)、『子どもたちの階級闘争』(みすず書房)、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮文庫)、『他者の靴を履く』(文藝春秋)、『ヨーロッパ・コーリング・リターンズ』(岩波現代文庫)、『両手にトカレフ』(ポプラ社)、『リスペクト――R・E・S・P・E・C・T』(筑摩書房)など多数。

「2023年 『ワイルドサイドをほっつき歩け』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ブレイディみかこの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×