- Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591173992
感想・レビュー・書評
-
個人的にはブレイディみかこさんにしか書けない作品だなと感じた。
イギリスの階級社会のリアルなども作品に反映されている。
スラスラ読める感じで、今この場所から世界は変わり始めているというメッセージが前向きに感じられ、読後感も良かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ぼくはイエローで・・には書けなかったティーン。
母親の依存症(薬、男)、貧困、まわりの大人から見えない存在とされ生活するミアと弟チャーリー。逃げ場はなく重い現実を話せずにいると、カネコフミコの自伝と出会い、同じような境遇に思いを馳せるが、どちらも過酷な日々が続く。ここじゃない別の世界へと憧れる先になにが待っているか。
この話以外でもまだ知らないたくさんの現実があるんだろうな、ということを突きつけられた。
282冊目読了。
-
フィクションだからこそできたハッピーエンド?
希望を託したハッピーエンドなのかなーと思う。
読んで終わりじゃなくて、ここから考えていけたらいいな。考えていこう。
今の自分は雨風しのげる家でご飯もお腹いっぱい食べられて、仕事もある。
でもこの先は不安でいっぱい。
不安がるだけじゃ何にもならないのでせめて少しは強くなりたい。それなら、本を読むだけじゃなくて、考えることもせねば。
参考文献読んでみようかな。
-
文字数もそこまでなく、読みやすかったです。
「ここじゃない世界に行きたいと思っていたのに、世界はまだここで続いている。でも、それは前とは違っている。たぶん世界はここから、私たちがいるこの場所から変わって、こことは違う世界になるのかもしれないね」という文が印象的でした。
ここじゃないどこかに行きたいとか、今いる状況から逃げたいと思っても、自分の足元から世界はずっと続いていて、物理的にどこかに身を置いても自分がいる世界からは完全に離れられないんですよね。
だからこそ、「ここじゃない世界に行きたいと思っていたのに、世界はまだここで続いている。」という文にハッとさせられました。
だけど、私たちはいつでも違う世界に行けるんです。
ここが難しい所だし、矛盾しているように聞こえるかもしれないけれど、いつだって違う世界に行ける扉が開いているんです。環境を大々的に変えることは難しいけれど、自分の足元からのここからの世界は広がる。
このことを自分の言葉で上手く伝えられるようになりたいなと思いました。
視野の数だけ世界はある。
このことを知るだけで人はお金をかけなくても色んなところにいけるんだよと思いました。
むしろ、この方法を見つけられない人が世の中多すぎるんだろうなと勝手に思いました。 -
イギリスの貧困家庭で生まれ育った中学生の女の子、ミアのお話。
彼女の日常、そして作中で彼女が読んでいるカネコフミコの自伝はどちらも、貧困、依存症、虐待、ネグレクト、いじめ等、ヘビーで理不尽な事象に満ちていて、読んでいてとても心が痛みました。
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』には出てこなかった、ノンフィクションの形では書けなかった女の子。
彼女の今後の人生に、たくさんの幸福が訪れますように。
最終章、「ここだけが世界とは限らない」は、貧困に限らず、辛い現実を生きている全ての人に勇気と希望を与えてくれるメッセージだと思います。
新しい世界への扉は、いつだって目の前で開いている。
私自身はミアやフミコと生まれ育った環境はまったく違うけれど、仕事や人間関係、ギューっと視野が狭くなってしんどくなってしまう現実に、立ち向かっていく勇気をもらいました。 -
「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」のブレイディみかこさんの小説。「ぼくはイエロー・・・」と同じく、イギリスの格差社会がテーマなのだけど、今回はフィクションで女の子が主人公。
不遇な境遇の女の子が懸命に毎日を生きている姿を日本のカネコフミコさんという100年前に実在した女性の人生と対比させながら描いている。
個人的には不幸オンパレードのお話は好きではないのだけれど、これは不思議と読んでいて嫌な気分にならなかった。カネコフミコさんと主人公の人生がどうなるのか先が気になる展開で思わず、一気読みしてしまった。出来レースみたいではなく、光明見える感じの結末が良かった。ブレイディみかこさんの作品はどれも良いな。 -
これはねえ。とてもいいです。いいと思って読んだけど、ちゃんといい。
ノンフィクション大賞を取ったブレイディみかこさんの名著「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」に登場させられなかった、ノンフィクションとしては描けない少女達を物語という形で描いたという。もう読まざるを得ない帯が巻いてあって手に取ったんですけど。
「これに乗らないと損をするような気分になってミアはエレベーターに飛び乗った。ミアの前で何かが開いていることなんて珍しかったからだ。いつも世界はミアの前で閉じていた。」という序盤の一節で手にとって正解だったことは分かったし、最後までこの一節が効いてたと思う。
イギリスの低所得層、とても恵まれているとは言えない家庭環境でボランティアのサポートを受けながら生きる少女が、ひょんなことから金子文子(大正時代のアナキスト。大逆罪で獄死している)の手記と出会い、その内容と実生活がリンクしながら進んでいく。
現実はとても辛いけど、最後には美しい景色が見える。
大丈夫・・大丈夫・・・そうだ・・そうなんだよ・・YES!、、、YES!!YES!!!
開いてるの!開いてたんだよ扉はさ!!行けよ!行っていいんだよ!
という読後感。
大人がしっかりしないと、子供に負わせるべきでないあまりにも多くのことを子供に負わせてしまう。子供はそれを本気でやろうとする。その確たる決意を、純粋な心を、どうやって止められるのか。
それはあなたが負うべき事じゃないと、大人に任せてと、
誰にも守られず裏切られ続けてきた子供にどうやって伝えられる?
世界は腐ってるし大人はクソだけど、
あなたを助けさせてほしいと、果たして自分は言えるだろうか。
ううむ。 -
依存症の問題を抱える母と小さな弟と3人で暮らすミア。ミア自身もまだ子供なのに、弟を守ること•弟と離れ離れにさせられないことを第一に優先して、食事の世話や送り迎えをして、大人に対しては硬く殻を閉ざすミアが痛ましい。たまたま出会った、実在した日本人である金子文子の著書の内容と並行してミアの日常が語られるのが面白かった。日本にも世界にもミアたちのように貧困のスパイラルを抜け出せない子供はたくさんいるんだろうな。1人でも、目を向けてくれる大人がいることが子供たちの救いになると思う。日本にも"カウリーズカフェ"のような場所があるといいな。
これは「ぼくイエ」シリーズの番外編という感じ。やはり文章が読みやすくてあっという間に読めました。