日本殺人巡礼

著者 :
  • 亜紀書房
3.36
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本棚登録 : 112
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750515199

作品紹介・あらすじ

近代の軋轢が産み落とした「闇」に肉薄する!
"日常"と"奈落"の境界は何処にあるのか?

戦前戦後から高度成長期を経てバブル、平成不況という
歴史のうねりのなか、ある種の歪みとして時代の折々に生じた
日本中を震撼させる恐ろしい凶悪殺人事件の数々ーー。
「殺人者の生家」「故郷の村」「殺害現場」へ直接足を運び、
犯人たちが背負ってきた時代の宿命と、人間の哀しき業を追う。

感想・レビュー・書評

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  • ドキュメントなので仕方ないが、ぶつ切り感が強く、自己矛盾が否めない。

  • 他の本では踏み込まない実際の現場詳細が書いてあり、場所特定出来る

  • ミステリー好きの職場上司から借りた一冊。

    誤解を恐れず例えるなら、
    アニメの考察好き・解釈好きのようだなと感じた。
    死刑囚・加害者のルーツを辿る中で、その者の幼少期や親の代に留まらず、先祖、果ては遠い過去の民族移住の経緯や生まれ育った村の歴史などをもとに様々な思いを巡らせる本作は一種のフィクションとして楽しんだ。

    ***

    筆者は冒頭で、この日本殺人巡礼を決行した理由として「人を殺めた者と人を殺めない者(筆者)の境界線はどこにあるのか」「そもそも境界線など存在せず、殺めなかったのは、単なる偶然に過ぎなかったのか。その答えを導き出したかった」と述べている。そして、あくまでも想像と可能性の話という大前提のもと、加害者のルーツに何らかの“匂い”--理由と呼ぶには淡すぎる“理由や答えの片鱗”のようなもの--を感じ取っているようだ。
    私は罪を犯した者と、(今のところ)犯していない者との間に、大きな隔たりがある場合と、そんなには隔たりがない場合があると思う。そして後者が犯罪者になってしまった所以には筆者の綴るルーツや時代があった可能性が十分にあると思う。
    しかしいずれにしても「こういう理由があって、こういう原因で、このような結果になってしまいました」とはならないケースもあるのではなかろうか。説明がつかないから、こんなことになってしまったという事だって往々にしてあるんじゃないだろうか。
    だからこそ、本書は一種のフィクションとして、アニメの考察・解釈をするように、あくまでも想像の範囲を出ないものと捉えるのが良いと感じた。

  • 無理矢理な解釈でつまらなかった

  • 殺人を巡礼ですか?
    物騒なタイトルでしたが 読んでみました。

    最近の事件だけではなく
    50年以上前の事件も含めて
    著者の心に ひっかっかった事件を
    追っていました。

    冤罪っぽいものも中にはあって
    もし これが 冤罪だったら 
    国や マスコミは どうやって
    その人や その家族に対して 謝罪をするのだろうと思っちゃいましたね。

    そして 後半には
    戦争が絡んでいたり 差別だったり
    確かに 殺人を犯してしまったという点では
    悪い事をしてしまったけど
    そこに至るまでを 辿っていくと
    もし 過去に 酷い差別などがなかったり
    劣等感を 大きくするような事が なければ
    殺人までに ならなかったのかもと 思える内容もありました。

    しかし 今の自分なら 差別はいけないと思っていても子供の頃とかは 仲間外れとかにされたくないから差別をしていたら 一緒に差別しただろうし
    いじめもしちゃっていたかもしれない。
    負の連鎖からは 良い事は 何も生み出さない。

    この本を 読むと あるきっかけで 普通の人が 突然 殺人を 犯してしまう。
    潜在に何か あったかもしれないけど
    もしかしたら 人は 心のどこかに 凶暴な人間を持っているのかもしれない。
    それを ちゃんと 抑えていられるか どうか・・・・
    でも、きっと 心の中には 優しい人間もいるはずだからその 優しい人間が 常に 大きくいれば
    みんな 優しく 良い 世の中になるのにね。。。。

  • 歴史と殺人の背景を絡めて考察。
    時々思い込みに近いところもあるが
    斬新な視点もあり。

  • 過去の殺人事件の取材を通して、共通項を分析する労作であった。特に、「北海道に渡ったネパール人」や「林眞須美も海辺の集落」は興味深く読ませてもらったが、なにぶん件数が多いこともあり、浅いのが残念

  • かなり興味深く読みました。
    凶悪な殺人事件を犯した人間の故郷を巡り、なぜ殺人を犯さなければいけなかったのか、その時代と社会を振り返りながら綴られます。
    個人的に特に印象的だったのが、第4章「北海道に渡ったネパール人」です。正直自分の身の回りにも起こりうる事件でゾッとしました。
    単なる机上の考察ではなく、実際に現地に出向いて様々な人に取材しながら土地を肌で感じて、文章にしている点が凄いと思いました。

  •  著者は元『FRIDAY』の専属カメラマンで、現在は写真家・ノンフィクション作家。
     前に、この人の『娼婦たちから見た日本』という著書を読んだことがある。これはとてもよい本だった。

     本書は、亜紀書房のウェブマガジン「あき地」に連載された「殺人風土記 」に、加筆・改稿を加えたもの。元のウェブ連載はいまも読むことができる。

     過去の有名殺人事件の現場や犯人の故郷などを著者が旅して、当時を知る人、犯人の幼馴染みなどの話を聞いていく内容だ。
     つまり、犯罪ルポというよりも、“ルポ色も加味された事件紀行”という趣。

     部分的には面白いのだが、“犯人が生まれ育ったこの地域の風土が、犯罪の背景にある”みたいな決めつけが多くて、その点に違和感を感じた。

     たとえば第2章「北関東犯罪黙示録」では、埼玉愛犬家連続殺人事件や本庄保険金殺人事件などを、北関東で起きた事件として一括りにしている。写真週刊誌のカメラマン時代、現場に通った事件のうち、「記憶に残る事件の多くが、どういうわけか北関東に集中していた」のだそうである。

     そして、各章では犯人が生まれ育った地域の歴史が前近代まで遡って辿られ、その部分は歴史随筆のよう。
     犯罪と犯人が生まれ育った風土は、もちろん、まったく無関係ではないだろう。が、著者は両者を恣意的に結びつけすぎだと思う。中沢新一のオカルト本『アースダイバー』のような胡散臭さを感じてしまう。

     そのへんは感心しなかったが、本書にはよい点もある。
     たとえば、古いものでは80年前の事件(「津山三十二人殺し」)もあるなど、昔の事件が多いのに、犯人を知る人を探し当てて取材する著者の根気と勘のよさには感服した。

     また、著者は『娼婦たちから見た日本』においても、娼婦たちを「上から目線」で見ることなく寄り添う描き方をしていたが、そうした姿勢は本書にも通底している。

    〝私は殺人者を上から断罪するつもりで旅をはじめたわけではなく、もとよりその資格もない。
     なんで彼らが人を殺めたのか、その理由が知りたかった。(「はじめに」)〟

     それと、第4章「北海道に渡ったネパール人」だけは、他の章とは異質な本格的犯罪ルポになっている。
     日本人と結婚したネパール人男性が妻と幼子を殺した2008年の事件を扱ったもので、衝撃的な内容だ。この犯人のネパール人については、他の章に出てくる永山則夫や小原保などとは違って、一片の同情の余地もない。

     著者はネパール人女性と結婚していた時期があり、ネパールにも長く暮らした人物。被害女性の親友とも個人的に親しいことから、この事件を深く取材したのだという。
     そのような著者にしか書き得ない厚みのあるルポで、本書の中でこの4章のみは独立した価値を持っている。

  • 隠れキリシタン末裔の西口彰。和歌山の漁師の網元で賭博運営一家の総領娘の林真須美は多分冤罪で警察は夫に司法取引持ちかけた。サンカか平家落武者末裔による村落皆殺し事件。貧困と差別が産み出す事件の数々。面白い。

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著者プロフィール

1972年神奈川県横浜市生まれ。ノンフィクションライター。写真週刊誌カメラマンを経てフリーランスに。『マオキッズ 毛沢東のこどもたちを巡る旅』で第19回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。著書に『黄金町マリア――横浜黄金町 路上の娼婦たち』(亜紀書房)『花電車芸人』『娼婦たちは見た』(KADOKAWA新書)『日本殺人巡礼』 『青線 売春の記憶を刻む旅』(集英社文庫)(亜紀書房)などがある。

「2022年 『裏横浜 グレーな世界とその痕跡』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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