文明崩壊 下: 滅亡と存続の命運を分けるもの (草思社文庫)

制作 : Jared Diamond  楡井 浩一 
  • 草思社
4.08
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本棚登録 : 931
レビュー : 59
  • Amazon.co.jp ・本 (547ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794219404

作品紹介・あらすじ

人類の歴史には、転げ落ちるように崩壊した社会がある一方、危機に適確に対処し、乗り越えた社会もある。問題解決に成功した社会例として、徳川幕府の育林政策で森林再生を果たした江戸時代の日本、過酷な人口制限で社会のバランスを保つティコピア島等を検証する。さらに現代の危機として、中国やオーストラリアの惨状を分析し、崩壊を免れる道をさぐる。資源、環境、人口、経済格差など複雑化する崩壊の因子を探り、現代人の目指すべき方向を呈示する。

感想・レビュー・書評

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  • 文明がどのように姿を消したのか、また生き残るために社会がすべき意志決定について興味をもち手に取る。


    あまり興味のなかった環境問題の本を読んで、重大な意志決定を行う(長期的な繁栄と存続のため)には多面的に捉えることが重要であることなどをはじめ、物事の見方に大きく影響を受けました。


    上巻の内容の総括もふまえると、

    世界で人口の増加が進む中で食糧消費が増大し、
    それをまかなうために有限な資源(森林、海洋生物、農地)から
    再生可能量を超える過剰な生産を行うことで資源が枯渇していく恐れがある。
    これからの未来を人類がどう歩むべきかについてを現在発生しているいくつかの問題を例に挙げて論じている。


    上巻を踏まえても、国家や人類が長期的に存続していくためには、抱える問題をしっかりを捉え、短期的な利益だけを追求することなく、長期的に安定した利益を得られるような意志決定をしていくことが必要であることがわかる。

    国家は政治、経済を豊かに保つために様々な問題や情勢を踏まえて短期的、長期的に政策決定をしていくのだが、国内が抱える問題の規模などから短期的利益をもたらす選択を高い優先順位にすることが多いだろう。

    また現在の社会はグローバルに結び付き、資源などを相互依存しているため
    一国の利害を考えるだけで意志決定を行うことは非常に難しい。

    依存しあっているからこそ、ひとつの国で起こった問題の影響は波及していくことは過去の金融危機などからも明らかであろう。
    これは環境問題でも同じである。
    一つの有限な資源が枯渇したり制限がかかることは、多くの国に影響を与えることにつながる。

    長期的な繁栄を考える上で、環境問題は様々な利害関係が複雑にからみあっており、有限な資源をめぐっては、場合によっては双方ないしは全員に利益をもたらす選択をする、またはそのような選択を準備することは難しいだろう。

    これらを成し遂げることは容易ではないが、対応するために2種類の選択があると筆者は述べる。

    ・政府の徹底したトップダウン型の対策措置の実施
    ・地域や人民によるボトムアップ型の対策措置の実施

    トップダウンには厳格な統制機構と、それを行う社会の風潮(適切な言葉がわからないです)、そして最低限の経済の発達があるように思う。
    個人的には共通の利害関係の認識をもった国民が自主的に問題を発見し、それを防止・解決するために活動をしていくボトムアップの方が望ましいと思われるが、
    それには国民に共通の認識が必要であるしどちらも組み合わせてこそだとも考える。

    日本は国土の70%以上を森林を持つ国であるが、国でつかわれる木材はオーストラリアから輸入し被害を他国に押し付けているとの記載があったがショックを受けた。
    このようなことからも、物事には一面的にみることができないことはたくさんあるということを気づかされました。

    複雑な問題を抱える現在の社会を生きる人にとって、解決策を考えるためのヒントになる本だと感じた。
    ぜひいろんな人に読んでほしいです。

  • 過去の事例を紐解き、現代に警鐘を鳴らす良書。かなりのボリュームで読むには根気がいるが、後世への負の遺産を残すことなく、この世の永続は環境との共存と人類の謙虚さ、慎ましやかさが必要だ。意思決定システムのエラーは人類の最も恥ずべき行為である。三人寄れば文殊の知恵ではない集団心理を構造的に抉るには様々な知見が必要だろう。

  • 栄えていた文明が、どんな要因で崩壊に至ったのか?
    その要因を、過去の文献・地質調査などから事細かに洗い出していく。
    化学実験のように現象を再現はできないが、過去に起こった出来事をシミュレーションして法則を導き出す。
    本書では、気候変動・人口増加・環境破壊・外敵を要因と推測(まだあったかもしれない)。これらの要因はからみあって、次第に後戻りできないところまで崩壊が進んでいってしまう。
    何百年と続いた文明が崩壊した過去。その地続きである現代の文明も崩壊してもおかしくない。崩壊の要因となることは現代でも起こっている。むしろ科学技術の発展により、より加速している。
    こうすれば崩壊は防げる、というような銀の弾丸は示されない。環境破壊については、企業が長期的な利益を考えて環境負荷が低い行動をとるようにする流れがあること、消費者が環境に良い製品をより購買する傾向がみられること、などを上げている。(しかしまだまだ少数派)
    グローバル化は世界が繋がってひとつの世界となりつつあること。ひとつの国・企業の影響が他のところに連鎖的に影響を与える。
    過去の文明が滅びた時は、その地域だけで済んでいたことが、全世界規模で起こりうる可能性がある。
    世界で起きてることは他人事じゃあない。

  • ・成功・存続した社会
    ・アフリカの人口爆発
    ・ドミニカ共和国とハイチ
    ・中国
    ・搾取されるオーストラリア

    文明社会はその絶頂期に人口を大幅に増やし、周辺環境を破壊して滅亡に至るのか。
    環境が許容できる以上の人口を持ってしまった社会の結末は。
    環境問題解決の2つの道;トップダウンとボトムアップ
    中規模な社会はなぜ滅亡に至ったか。大規模な中央集権体制が鍵か?
    イースター島やマンガイア島などの中規模の社会は、島全体を治める中央主権的な政治組織を持てず、分裂した集落が互いの争いで環境破壊を促進した。

    景色健忘症:徐々に進む環境変化に要注意。
    変化は突然訪れない。はい進む常態なのだ。イースター島の樹木は徐々に少なくなり、重要性を失って行った。最後の一本が切り倒された時、木は、とうの昔に経済的な意義を失っていたのだ。

    当然ながら、それぞれの環境にはその環境が許容できる人口がある。環境が回復に必要な時間以上に消費が早いのであれば 、その文明は崩壊する運命にあると言える。

    翻って、現代社会はどうか。
    持続可能な社会保障な統一的な機構を現代社会は持っているのだろうか。それぞれの国家が互いの争いで環境破壊を促進してはいないだろうか。

    ルワンダの事例は、環境問題と社会的な構造が破滅的な結果を招いた事例だ。世界はこの方向に進んでしまわないか?

    ドミニカ共和国とハイチの例も、同じ環境でも社会が異なることで結果が大きく異なることを示している。

    中国はその巨大さから、その将来が人類の将来に大きな影響を及ぼす。そして中国は振り子というべき歴史的な特徴を備えている。
    中国はその統一された政治体制から、国民とその環境を大きく変更させることが可能なのだ。

    オーストラリアは絶望的なほど脆弱な環境状況で、今後改善する可能性はあるのかな?
    破壊される環境と環境を懸念する民間と政府の対抗措置の2頭だての競馬は果たしてどちらが勝つのだろうか。

  • 環境問題に関しては気が滅入るような内容が多いが、分析力や情報量が多く非常に勉強になる。 江戸時代の森林保護などは全く知らなかった事例だった。博士が自然エネルギー技術の進展に期待を寄せていないのは少し残念な気がした。
    環境問題のキーとなるのは大企業を中心とする経済活動にあり、環境への取り組みが評価を得て会社の利益にとってもプラスとなる方向性に今後も進んで行くことを期待したい。 広く危機意識を持ってもらうためには、身近に環境問題由来の災害などが作用しなければダメなのか… より先見の明を持たせる啓蒙が急務と感じた。 日本の国会で環境問題について議論されることはあるのか?聞いたことがない… トランプ政権の方向性について見てもアメリカがどれだけ愚かな国かと呆れるばかりで、文明の将来に暗い影を落としている。 ゴアのような人物がまた出てきてほしいと願うばかり

  • マヤ文明とかエスキモーとかの話含めて、人が生きるには何が必要か?サステナビリティとはなぜ必要か?それが綺麗事でなくわかる本。

  • イースター島やノルウェー人のグリーンランドでの生活など、崩壊していった文明を紹介した上巻に対し、成功例や近代における問題を指摘する下巻。

    江戸時代に森林の管理を木々の本数単位で管理していたことを始めて知り、その意思決定をした背景や当時の利害関係などに興味が沸いた。
    (鎖国をしていた分、国内の資源を大切に思う心が備わっていたのだろうか)

    一方で、1994年という近代において、ルワンダで大量虐殺があったということを恥ずかしながら初めて詳しく知った。(やはり、学生時代に近代については真面目に聞いておくべきだった)
    フツ族とルチ族という民族間の憎悪の歴史もさることながら、人口増加に伴う食糧難や経済的困難が一般市民による虐殺に繋がったという話は、考えるだけで恐ろしいが、人間の側面を考える上で、重要な示唆だと思う。

    もし、ジャレドダイヤモンドの言うように、世の中の凶悪犯罪が資源や土地の豊かさと人口増加に伴う1人当たりの配分と強い相関があるとするなら、まずはそのバランスを取るところから国政を考える必要があるのではと思わされる内容だった。

    そして、ボーダレスな社会となっている今、世界的にそのバランスを取れる組織が必要なのだろうが、個人ごとの動機が社会性を担保できない限り、結局は利権にまみれてしまうのだろうと思ってしまう。悲観的に考えると、全ての資源を食い荒らしてしまった後の対策フェーズにおいてのみ、人類は一致団結できるのかもしれない。

    また、これまで、中国の一人っ子政策は、経済成長に大きくブレーキをかける悪手だと思っていたが、この本を読んで考えを改めた。むしろ、政策を打たずに人口増加が続いていたら、今の公害どころではなかっただろう。

    そもそも、経済成長は人類の最終ゴールにはなり得ない。仮に、全人類が飢えないことが短期ゴール、幸福が最終ゴールなのだとすると、組織や国が追うべきKPIの形は、変わっていくのかもしれない。
    だとすると、個人の(周囲に悪い影響を与える)我欲をいかに制限するかが今後の主題となりえそうだ。

  • いろいろ示唆に富んでいて、得たものは多かったのだが、特に一つ言えるのは、『土壌』が消耗される資源だという認識はコレを読むまで一切無かった。
    オーストラリアが食料(主に小麦)輸出国なのは当たり前だと思っていたが、かなり無理矢理な形なのか(そして、であるからこそ、いつまでも続くものではないのか)

  • 邦題は少し大げさで、現代「Collapse, How societies choose to fail or succeed」からも分かるように、人間社会(文化)が崩壊するのはなぜか、という内容だ。世界各地の文化が、対立や孤立、衰弱を経て滅びるのは、その社会に内在する本質なのか、あるいは、自然災害や外敵の侵入など偶発的なのかについて検証する。著者は、主な要因として、自然環境の悪化、気候変動、隣接する敵対集団、友好な取引先、環境問題に関する社会の対応(適応)という次の5つの要素を挙げる。ただし、たとえばイースター島では、森林海抜が社会の崩壊の引き金ではない可能性があるというなど、最新の学説もある。しかし、史実がどのような内容であったにせよ、著者が訴えるのは、持続的な社会を維持するためには、環境に対する意識を変え、行動することだという。全体を占める整った学説に対し、締めくくりとして語られる「環境意識の訴え」は、必然的帰結と言うより、プロパガンダと言えなくもなく、その点は多くの読者に指摘されているようだ。しかしながら、社会を価値観的に表現するなら、そのような前提があっても良いのかもしれない。

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著者プロフィール

ジャレド・ダイアモンド
1937年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校。専門は進化生物学、生理学、生物地理学。1961年にケンブリッジ大学でPh.D.取得。著書に『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』でピュリッツァー賞。『文明崩壊:滅亡と存続の命運をわけるもの』(以上、草思社)など著書多数。

「2018年 『歴史は実験できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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