ナイチンゲールの沈黙(上) (宝島社文庫 C か 1-3 「このミス」大賞シリーズ)
- 宝島社 (2008年9月3日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
- / ISBN・EAN: 9784796663588
感想・レビュー・書評
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前作のバチスタ・スキャンダルから9ヶ月が経った東城大学医学部附属病院が舞台。
小児科病棟では網膜芽腫の子供たちが入院している。彼らを受け持つ看護師、浜田小夜は病棟一の歌唱力の持ち主。
患者の一人、佐々木アツシ。5歳。
カエル宇宙人にハマっているらしい。まだ幼く、母と離れると不安になるが、浜田にはかなり懐いている。
アツシと同室の患者、牧村瑞人。14歳、中学3年生。
親が見舞いに一度も来ず、ネグレクトが疑われる。本人は病気を受け入れているが、積極的治療を拒んでいる。
こちらも浜田は受け入れている様子。
浜田は瑞人の父親に手術の同意を求め会いに行くが、そこでも拒否される。
後日、父親から連絡があり会いに行くが部屋へと連れ込まれる。
病気への不安や家族がいない不安は子供たちには大きすぎる怖さを連れてくるだろう。大人だって怖いもの。軽減してくれている看護って本当にすごい。頭が上がらない。
アツシと瑞人をMRI検査を受けさせる際、浜田の同伴を許した島津。
落ち着かせるため歌をうたった浜田。
その検査結果に驚くが、上巻ではまだなにが起こっているのかは分からない。
浜田の歌にはどんな力があるのか。
アツシの不安の大きさと瑞人の家庭環境や治療の拒否から、小児科看護師長の猫田から田口へ不定愁訴外来の依頼がくる。
問題なく進んでいた田口外来だったが、2回目に瑞人が急遽小児科へ呼び戻される。
父親が殺されたという。
院内で唯一、瑞人の父親に会ったことがある浜田も刑事のもとへ呼ばれる。
浜田と瑞人の父親との間に、何があったのか。
下巻へと進む。
こちらでも上巻では例のゴキブリ厚労省、もとい、白鳥は出てこない。
ここからは個人的に好きな登場人物について。
メインではない速水に何度か沸く。
ドラマでは白鳥と同期だった速水も好きだったが、原作で田口と同期なのも良い。
どちらにも共通しているのが、常に冷静でいること、多分面白いことが好きなこと、女性にモテること、ドクターヘリへの強い要望。
"行灯クン"かわいい。
それから田口の同期がもう一人、島津。
彼もドラマとはまた違った立場だが、どちらも好き。子供への対応は天晴れ!
がんがんトンネル魔人、的確すぎて良い。
田口速水島津が同期で揃っている東城大学医学部附属病院、強すぎる。
チームバチスタ原作本はそれぞれの関係性が強くて感情移入してしまう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人気歌手・水落冴子と小児科看護師・浜田小夜の2人の歌には不思議な力がある、という設定。そこから眼の癌を患った少年の父親が殺されるなど、前作と少し様相が変わるので苦手な人も多いのかな?アツシ少年の愛くるしさと瑞人の張り詰めた脆さに惹かれてページが進む。歌のパワーについて医学的に述べるシーンも下巻にあったが、現実にそういうケースはあるのだろうか。
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前作、舞台の手術室と違って、今回は神経内科病棟と小児科が主な舞台。それぞれの病棟の雰囲気、登場人物の個性が伝わってきます。加えて桜宮警察署から加納警視正、玉村警部補。もう魅力的な人物てんこ盛りです。病院、警察と組織改革の困難さを持つ二つの組織に、改革派・保守派を置いてあるところも流石!下巻へ。
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あの「バチスタ事件」の騒動から暫くの時間が流れ、やっと落ち着いたかと思われた東城大学医学部付属病院。
年末の病院には重度の肝硬変を抱えた人気歌手が急患で運び込まれる傍ら、小児病棟では眼球内のガンを抱える少年の手術が年内に出来るのかと心のケアが課題となっていた。
何年か前に読んだ「チーム・バチスタの栄光」のあらすじをほとんど忘れてしまった状態でこちらを読了。
Amazonのレビューなどでは本作に対する評価はあまり芳しくないようで、「ミステリーとして成立していない」「キャラ造形が古臭い」「現実離れしすぎ」「医療倫理的にどうなのそれ?」…等々、ツッコミや批判の数々はすべて納得というかごもっともな意見だと思う。特に、下巻の種明かしの手法はもはや反則の域に入っていると私も思う。
でも私自身は楽しく読んだので☆4つ。
この作者は医療界の問題を社会に提起したくて小説を書いている…といった感じのことをどこかで聞いて以来、どうしてもこの人の作品を読むときにはその点に注目してしまう。
今回も大学病院の組織が抱える疲弊感や縦割り主義、死の近い患者が本当に幸せに最期を迎えるためには医療は何をするべきか、そして、医療として超えてはいけない一線に関する問題提起など、多くのサブテーマがあり、とても興味深かった。
早く次の作品を読まなくては。そして、時間があるときに「バチスタ」も読み返そう。 -
「チームバチスタの栄光」で一世を風靡した作者による、田口・白鳥コンビ作品第2弾。
東城大学病院・不定愁訴外来、別名「愚痴外来」の担当医である田口。
彼は病院の忘年会の日、当直になっていた。
その忘年会では小児科病棟の看護師・浜田小夜が、
個人では異例の「桜宮大賞(要するに忘年会の出し物における優秀賞)」を獲得していた。
その後、浜田は友人の看護師と共に飲みに出かけ、そこで「伝説の歌手」のライブを目の当たりにする。
が、ライブの途中で歌手・水落冴子は大量に吐血し、病院へ運ばれる事になった。
翌日、通常勤務に戻った小夜は、担当する網膜芽腫(レティノブラストーマ)の子供たちと相対する。
その中の一人、牧村瑞人に対しては父親が病院に現れない為、手術への詳細な説明も出来ない。
そんな中、ある日その父親に会う機会を得るが。。。
何だろう。イマイチ読み辛い気がする。
前作と比較してしまうからだろうか。
田口が子供達と対面する辺りからは随分とすんなり読めたのだが。
やはり、田口のキャラが前面に出ていないと面白さが少ないのだろうか。
物語としては上巻なので、様々な謎をまずは散りばめている感じだ。
瑞人の父親の事、小夜の歌声の謎、小夜の行動、水落冴子とマネージャー・城崎の関係などなど。
恐らくは下巻に白鳥が登場し、関係者を巻き込みまくって真実に迫るのであろう。
そのやり口は楽しみである。
しかし、「酔いどれ迦陵頻迦」って呼ばれる伝説の歌姫っていうのはどうなんだろうか。
とりあえず一発変換出来ない。
“迦陵頻迦”というモノ自体、初めて知った。
そんな所に若干の違和感を感じつつ、下巻に期待。
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病院の日常を描いた小説としてニコニコして読んでたら、唐突に事件が起きてちょっとびっくり。そいえば、これミステリーでしたね(笑
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前作ほどの驚きがない。
そして、相変わらず白鳥が出てこない。 -
小児科病棟を舞台に繰り広げられる医療ミステリー。
抜群の歌唱力をもつ主人公の看護師浜田小夜を筆頭に、魅力的なキャラクターが散りばめられています。
ストーリー自体はゆっくり進んでいき、とても読みやすいです。登場人物の人物描写がとても丁寧に細かく描かれており、上巻を読み終わるまでにはすっかり感情移入をしてしまいました。ただ、主要人物以外の病院スタッフなどの登場人物が少し非現実的かなという印象。綺麗な心の持ち主ばかりではない、リアルを描きたかったのかは分からないですが、少し極端かなという気持ちもあります。
印象的だったのは田口医師や白鳥コンビの子供達とのやりとり。1人の人間としてしっかりと向き合おうとする描写はとても微笑ましく好きなシーンでした。
事件が起こり、下巻での展開が気になります。