小倉昌男 経営学

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  • / ISBN・EAN: 9784822241568

感想・レビュー・書評

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  • メーカー系の経営学は多いけど、第3次産業の経営学は初めて読みました。ものすごくためになりました。思わず電車で読みながらメモを取ったほど。

    しばらくしたら再読したいです。

    ○フラットな組織
    ☆ラインと対極。自分のところの組織をフラット化できるか?

    ○10年ごとの時代。
    S20年代:飢えと戦いの時代、S30年代:二次産業・生産性の向上の時代、S40年代:三次産業・流通革命の時代、S50年代:消費の時代、S60年代:生活者の時代、それ以降:ボーダーレスの時代
    ☆ボーダーレスの時代は、ちょうど失われた10年に該当するか。書かれた当時のそれ以降は、1995〜2005年と考えると、2005年からの10年は何の時代か?失われた10年に続く「再生の時代」とかなら良いのになぁ。

    ○戦略的発想とは、「安全第一・営業第二」のように順位をつけること。トレードオフのどちらかを選択するのかが戦略的判断。時と場合によって「安全第一」とか「営業第一」とか行っているのは戦略的発想とは言えない。
    ☆まさに、その通りだ。我が社もなかなか順位をつけようとしない。あれも大事、これも大事と時と場合に応じて言っている。第二をつけるのは非常に勇気がいることだ。自分の中でこれは第二と責任を持って言えるような戦略的判断ができるようになりたい。

    ○ 攻めの経営の神髄は需要を作り出すこと。
    ☆そう、ウォークマンや携帯を知らない消費者にリサーチしてもウォークマンや携帯が欲しいという回答は絶対出てこない。
     需要を作り出すクリエイティブな発想が必要だ。

    ○護送船団方式は×。適切な競争が必要。
    ☆どうしても弱者切り捨てのように聞こえて反発が起こってくる。そこをどうやって対処するか。

    ○役人は国民の利便を増資することが仕事であるはず。
    ○ 役人の欠点は結果に責任を持たないこと。

    ○経営者には優れた広報マインドが必要。
    ○宣伝と広報は違う。消費者に関係のあるニュースを正確に迅速に伝えてもらうという姿勢。
    ☆我が社の場合、どのような広報が考えられるか。

    ○経営者は常にプラス思考であるべき。他人の人格を尊重し、長所をみつけて認める。
    ☆私はプラス思考はプラス思考だと思うけど、最近ちょっと愚痴や悪口を言いがちかもしれない。肝に銘じよう。

    ○経営者に必要なのは倫理観と利用者に対する使命感。
    ☆倫理観と使命感を羅針盤として戦略を考える!

  • ウィニングの解毒として併読

  • 1年の幕開けに、ビシッと背筋の伸びる本を読もうと思って手に取った。

    冒頭の三越との訣別に至る考え方からして惹きこまれてしまう。運送業界についても知らなかったことばかりで、とても興味深く読めた。

    「サービスが先、利益は後」というように、意地とかロマンとか筋とか、そういった社長としての姿勢にばかり目が行きがちだが、常に具体的な数字で考えておられたことが印象に残った。

    [more]
    (目次)

    まえがき

    プロローグ ―― 三越との訣別、そして宅急便へ

    第1部 牛丼とマンハッタン ―― 宅急便前史

    第1章 宅急便前史
     戦前は日本一のトラック会社
     過去の成功が災い ―― 長距離輸送に出遅れる
     儲かる会社、儲からない会社
     善い循環と悪い循環
    第2章 私の学習時代
     生産性向上
     二次産業と三次産業の経営の違い
     物流革新の進展
     講演で学んだマーケティング/業態/全員経営
    第3章 市場の転換 ―― 商業貨物から個人宅配へ
     通運、百貨店配送 ―― 多角化への道
     業績の悪化
     二つの市場
     個人宅配市場への関心
     吉野家に学んだメニューの絞り込み
    第4章 個人宅配市場へのアプローチ
     デメリットへの対策
     カギは集配ネットワーク
     ネットワーク事業の特徴
     マンハッタンでの確信

    第2部 サービスは市場を創造する ―― 宅急便の経営学

    第5章 宅急便の開発
     全員反対
     宅急便開発要綱
     ワーキンググループの編成
     キーワードは“荷物の密度”
     商品化計画
     営業開始
    第6章 サービスの差別化
     翌日配達の実行
     どこでも「翌日配達」へ
     二便制でレベルアップ
     サービスレベルのチェック
     供給者の論理、利用者の論理
    第7章 サービスとコストの問題
     サービスが先、利益は後
     車が先、荷物は後
     なぜ社員を増やすのか
     安全第一、営業第二
    第8章 ダントツ三ヵ年計画、そして行政との闘い
     創業五年で採算点クリア
     ダントツ三ヵ年計画
     運輸省との闘い
     モデルチェンジ、そして再び運輸省との闘い
     過疎地の営業はプラスかマイナスか
    第9章 全員経営
     現場が自発的に働く体制
     セールスドライバーは寿司屋の職人
     優秀なフォワードたれ
     米国はプロ野球、日本は学生野球
     日本人にとって働き甲斐は生き甲斐
     やる気のある社員集団
    第10章 労働組合を経営に生かす
     組合の役割
     リストラをしない法
     労使間で信頼築く
     現場の情報をどうすくいとるか
     そして一心同体
    第11章 業態化
     業態化とは
     トヨタと組んだウォークスルー車の開発
     自動仕分け機の導入
     情報システム
    第12章 新商品の開発
     スキー宅急便
     ゴルフ宅急便
     クール宅急便
     コレクトサービス
     ブックサービス
    第13章 財務体質の強化
     宅急便以前の状況
     資本調達の多様化
     日銭の入る商売

    第3部 私の経営哲学

    第14章 組織の活性化
     戦後の組織論 ―― ライン・スタッフ制
     事業部制の流行
     個人償却制
     ピラミッド組織からフラットな組織へ
     人事考課の制度
    第15章 経営リーダー10の条件
     1 論理的思考
     2 時代の風を読む
     3 戦略的思考
     4 攻めの経営
     5 行政に頼らぬ自立の精神
     6 政治家に頼るな、自助努力あるのみ
     7 マスコミとの良い関係
     8 明るい性格
     9 身銭を切ること
     10 高い倫理感

    あとがき

  • ヤマト運輸の生まれについて、書かれている、だけじゃない。全員経営について、非常に具体例とともに載せられている。経営哲学が学びたい人は必読。

  • 経営はもちろん、職場の改善運動などに関わりのある方は、やはり読んでおくべきでしょう。スゴイ、です。

  • ヤマト運輸(いわゆるクロネコヤマトの宅急便)の元社長、小倉昌男氏による、経営論。彼に関する本は、去年森健氏の「祈りと経営」を読んだが、本書は1999年に出版された、本人によるもの。
    彼は創業者の息子として生まれ、初代社長からそのまま社長の座を46歳で引き継いだ。彼がいかにして、宅急便事業を始めたか、どんな工夫や苦労をして、経営にあたり何を大事にしているか、どんな経営者でありたいかということが詳しく書かれている。
    労働組合との関係が興味深かった。ともすると対立しかねない(というよりは一般的に対立の立場を取る)労働組合と、経営者はどう付き合っていけばいいのか。彼は非常にうまくやっていたと思う。また、ヤマト運輸ならではの、ドライバーこそが一番大事な従業員であり、サッカーでいえばフォワードであるという理念はさすがである。ドライバーをただの運転手にさせず、営業活動も担ってもらうことにより、顧客から感謝されやる気が起きるという。
    今では当たり前に思えるが、クール宅急便が最初に登場した時は、田舎から取りたて冷蔵の魚が届いてセンセーショナルだった。また、利用したことはないがゴルフ宅急便やスキー宅急便も、便利らしい。最近は翌日配達を頑張りすぎて、オンラインショッピングに対応しきれずニュースになっていたが、日本の会社は本当に真摯にサービスするのだなと思う。

  • ▼読了日
    2018年4月7日

    ▼調べた単語
    ・焦眉の急(しょうびのきゅう):さしせまった危険や急務。

    ▼付箋をした箇所
    P.37
    経営とは自分の頭で考えるもの、その考えるという姿勢が大切であるということだった。
    P.53
    市場で消費者が何を求めているか、それを知るためにマーケティングが行われ、それを受けて商品化、マーチャンダイジングが行われる。営業活動の中核はマーケティングだから、運送業界にマーケティングという考え方がないのは、外から見て非常におかしいと思う。
    P.55
    スーパーは安く売るところに、コンビニは便利さを売るところに特質がある。業態が違えば、経営の論理が違ってくることを教えられたのである。
    P.56
    篠田教授は特にコミュニケーションの重要性を強調された。社長の持っている情報と同じ情報を従業員に与えれば、従業員は社長と同じように考え、行動するはずである。従業員が、社長はこうして欲しいだろうと推察し、自発的に行動するのが、パートナーシップ経営だというのだ。ただ、社内コミュニケーションの難しい点は、全従業員に同時、そして等量に情報を与えなければならないということである。というのも、情報が与えられなかった従業員は、そのことを恨みに思い、反抗的な態度をとるおそれがあるからである。社内の派閥とか、主流派とか、反主流派とかいったものは、すべて情報の流れが偏っていることに起因する。篠田教授はそう話した。仕事の際に従業員が上司の監督下を離れ、外に出ていくのが必然である運送業では、個々の従業員が経営目標に向かって自発的、自主的に行動してくれれば大変ありがたい。それを可能にするというパートナーシップ経営に、私は非常に興味を覚えた。それ以降ヤマト運輸では、さっそく「全員経営」の体制作りを始めたのである。
    P.60
    本来ならば、基幹部門がしっかり利益を出し、それに関連部門の利益が上乗せされる、というかたちで多角化が進むのが理想である。
    P.65
    荷主のどんな形の物流需要でも満足させるのが良い企業だというのは、幻想に過ぎないことに気づかなかった。
    P.131
    サービスとコストは常にトレードオフ(二律背反)の関係にある。サービス水準を上げればコストは上がり、コストを抑えればサービス水準も下がる。経営者の仕事とは、この問題を頭に入れ、そのときそのときでどちらを優先するかを決断することに他ならない。
    P.146
    社長の役目は、会社の現状を正しく分析し、何を重点として取り上げなければならないかを選択し、それを論理的に説明すること、つまり戦略的思考をすることに尽きると思う。
    P.148
    宅急便を始めて気がついたのは、これまでは、荷主の輸送担当者にあごで使われていたという感じだったのが、集荷に行っても配達に行っても、家庭の主婦から必ず「ありがとう」「ご苦労様」という言葉をかけられることであった。これまで聞いたことのない感謝の言葉を聞いて、現場を回るドライバーたちは感激してしまった。
    自分のやった仕事がこんなに感謝されるとは思ってもみなかっただけに、嬉しく、そして働き甲斐を感じたとか、異口同音に話すのであった。
    P.151
    トップには、社内に対してその理由と対策をはっきりと説明する義務がある。
    P.153
    余談であるが、ここでヤマトのシンボルマークの話しをしておこう。おそらく日本中の大半の人が必ず目にしたことがあるであろうあの「クロネコ・マーク」もともとアメリカの大手輸送会社アライド・ヴァン・ラインズ社がシンボルマークに使っていた三毛猫がヒントである。
    P.153
    「母猫が子猫を運ぶように荷物をやさしく確実に運びます」というマークのメッセージに共感、ラインズ社から使用許可を得て、図案化したのである。ちなみにあのクロネコのデザインの元となったのは、社員の子供が書いたイラストであった。
    p.154
    「経営三カ年基本計画」をスタートさせた。名称は社内から公募し、千八百三十三通の応募から女子社員の出した「ダントツ三カ年計画」に決まった。
    P.171
    「全員経営」とは、経営の目的や目標を明確にしたうえで、仕事のやり方を細かく規定せずに社員に任せ、自分の仕事を責任を持って遂行してもらうことである。
    P.172
    上智大学教授の篠田雄次郎氏の提唱されたパートナーシップ経営の理念に共鳴し、全員経営の理念を採り入れた新しい人事制度を構築しようと考えていた。宅急便の開始に合わせて「全員経営」の体制を基本に人事、労務管理を進めることを決定したのである。
    P.186
    具体的には、役職への昇進から年功序列の要素を取り除くこと、実力主義で適材適所を進めることが必要である。同時にパストのいかんを問わず、企業への貢献度に応じて報酬を決める制度を採用する。
    P.189
    会社に同じ数の社員がいても、やる気のある社員とやる気のない社員では、労働の成果はまるで違ってくる。社員にどうしたらやる気を持たせることができるか、これは経営上の大きな課題である。
    P.190
    では、社員全員がやる気を出し、与えられた仕事を自主的にかつ自律的にやり、目標とする成果を達成するには、どうしたらよいのか。キーワードはコミュニケーションである。具体的には、まず企業の目的とするところを明確にする。達成すべき成果を目標として明示する。時間的な制約を説明する。競合他社の状況を説明する。そして戦略としての会社の方針を示す。その上で戦術としてのやり方は各自に考えさせる。しかもなぜそうするかを納得のいくように説明する。
    P.192
    コミュニケーションとは、内容が具体的で曖昧でないものでなければならない。
    P.248
    情報社会では、あらゆる垣根が取り払われて、その結果、ベンチャービジネスが次々に生まれる時代になることは間違いないと思う。ただ、情報が新しいチャンネルを伝わって流れたとしても、物が空中を飛ぶわけにはいかない。
    P.260
    戦後、日本の経済を支えた産業は、次々と変化した。繊維に始まり、鉄鋼、造船、家電、自動車などが興隆し、トップ企業が国内経済や輸出をリードした。しかし、いずれも時代の移り変わりとともにリストラの波を被っている。栄枯盛衰は世の習いだ。目先の戦術も大事だが、長期的に見通す戦略の重要性はいうまでもない。
    経営とは論理の積み重ねである。なかには成功した他社の真似だけをしている駄目な経営者もいる。だが、なぜ他社が成功したか、自社の経営に生かすにはどこを変えるか、論理的に考える必要がある。考える力がなければ経営者とはいえない。
    企業は社会的存在である。それは財なりサービスなりで社会に貢献するとともに、雇用の場を提供するからである。したがって企業は永続しなければならない。永続するには、倫理性に裏打ちされた優れた社格が求められる。
    倫理性、それは、顧客、取引先、株主、社員など関係者に対し、フェア(公正)な姿勢を貫くことだ。社員の先頭に立つトップは常にフェアでなければならない。
    p.270
    私は、人柄の良い社員はお客様に喜ばれる良い社員になると信じている。
    P.271
    経営は論理の積み重ねである。したがって、論理的思考ができない人に、経営者となる資格はない。また、経営者は自立の精神を持たねばならない。常に論理的に考えて、攻める姿勢が必要なのだ。併せて経営者には高い倫理観を持ってほしい。社員は経営者を常に見ている。トップが自らの態度で示してこそ企業全体の倫理観も高まると、私は信じている。
    P..275
    経営には戦略と戦術がある。戦術は、日常の営業活動において競争に勝つための方策であり、戦略は、経営目標を実現するための長期的な策略である。

  • クロネコヤマトがなぜ成長できたのかが分かる。

  • ヤマト運輸の2代目の経営論。
    創業者かと勘違いしていたけど、2代目だった。もともとデパートなど法人向けの運輸サービスを展開していたが、業績の悪化、社会の変化を感じて、成功しないと言われていた民間運輸サービスである宅急便の展開を推進し、運輸省・郵政省との規制緩和を繰り広げ、核となるサービスを作り上げた。
    経営論というタイトルだけあってヤマト運輸の経営をどう進めたが書いてありどれも具体的で分かりやすかった。頭がいいから文章も分かりやすい。小倉昌男さんが今のヤマトを作ったのだろう。ブラックと言われているけど、トップに立つにはここまで生産性を向上を突き詰めなければいけないので仕方なかったのかもしれない。利益を求め社員が楽しく働ける職場というのは現代で求められているが、当時は小倉さんの進め方が正しく現代の会社としてどう経営するかは別問題だという気がした。

    宅急便ビジネスを始める際も数字を意識した論理的な考えをもとにしており、マーケティングに優れた人たと感じた。当時運輸業界でマーケティングは浸透しておらず、積極的に社外セミナーに参加したことで学んだと述べられていた。数字を使った論理的思考、攻めの経営が経営者として必要なのだと改めて思った。ジョブズも後世につながる企業になることにこだわっていたが小倉さんも永続的に社会に貢献することこそ企業だと言っていた。1発のヒットではなく長期的に考えることが経営者なのだろう。
    サービスが先、利益は後という言葉は社長が言うからこそ浸透する。このことを分かって展開していたのだろう。ここまで数字で考える人なのに財務は弱いというからファイナンスは深いのだろう。また組織論についてもきちんと考えられておりマルチな考えをする人だと思った。

    すごい人だけど、三越や父親を嫌うなど起伏もありそうなので、社員は大変だったかもしれない。経営者としてプラス思考のねあかであるべきというのは、ちょっと違った観点で興味深かった。

  • 業界慣習にとらわれず、新たなチャレンジを果敢に行う経営者としての視野、視座を学びたい方に。

    本当良い本。
    この本は時間をおいて、何度も読んでほしい。
    なんのために働くのか?
    何を大切にしたいのか?
    そして、
    いかに成果に結びつけていくか。

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