明日をさがす旅 故郷を追われた子どもたち (世界傑作童話シリーズ)
- 福音館書店 (2019年11月13日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784834083859
作品紹介・あらすじ
ナチスドイツから逃れるユダヤの少年、カストロ政権下のキューバを出てアメリカに向かう少女、内戦下のシリアからヨーロッパをめざす少年。故郷を追われて旅立つ3人の物語が、時代や国を超えて同時進行で語られる。彼らの運命はやがて思わぬところで結びつくことに……。命の危険にさらされ恐怖と闘いながらも、明日への希望を見失わず成長していく子どもたちの姿を描く。歴史的事実を踏まえたフィクション作品。
感想・レビュー・書評
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1938年、ドイツ ベルリン。半年間強制収容所に入れられていた父が国外退去を条件に釈放されたので、12歳のヨーゼフは母親と妹とともに客船セントルイス号に乗り込みキューバへ向かう。ところが、キューバ沖に停泊したもののいつまで経っても上陸許可が出ない。乗客たちは次第に不満を募らせていく。
1994年、キューバ ハバナ。父が、市民の暴動に加わって警察に追われる身となったために、11歳のイサベルは、祖父、両親、隣の家族とともに、手作りのボートでアメリカへの脱出を試みる。ところがまもなくエンジンが止まり、巨大なタンカーが近づいてきた。
2015年、シリア アレッポ。12歳の少年マフムードは、ミサイルにより自宅を破壊され、両親、弟、赤ちゃんの妹とともにトルコ経由でドイツに行こうと考える。ところが道中武装した兵士に車に乗り込まれ、その後銃撃に遭い、車と荷物を捨てなくてはならなくなった。
3人の少年少女を中心に、難民となった家族の苦難に満ちた旅を、史実を基に描いたオムニバス。
*******ここからはネタバレ*******
ユダヤ人を乗せたセントルイス号の話は有名らしいですが、私は知りませんでした。ナチスの人たちが、仕事とはいえユダヤ人をもてなしていたなんて、ヨーゼフが驚いたのもうなずけます。
ヨーゼフたちが行きたかったキューバから、その60年後に大量の移民が出てくるなんて、当時は想像できなかったのでしょうね。
大量の難民を出したドイツが、最後には難民を受け入れ、そのホストファミリーは、もとユダヤ人難民だったということが、このオムニバスの「接点」なのでしょうが、これは表紙裏のカバーで種明かししてほしくはなかったところです(個人的感想)。
この作品の原題は「refugee」。原題はそのものを表していますが、そのままだと日本の子どもたちは手に取りにくいかもしれませんね。
日本語訳が非常にわかりやすいので、高学年から読めると思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1939年、ドイツからキューバ経由でアメリカを目指すユダヤ人少年ヨーゼフ、1994年、経済が崩壊したキューバからアメリカを目指す少女イサベル、2015年、戦火のシリアからドイツを目指す難民の少年マフムード。3人の子どもたちの過酷な旅をたどる物語。それぞれの登場人物に心を寄せずにはいられない。彼らの辛い運命と立ち向かう勇気。驚愕の結末にしばし茫然としてしまう。
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1939年、ナチスの手を逃れ家族でドイツからキューバを目指すヨーゼフ。1994年、政治的抑圧と貧困でキューバを脱出、アメリカを目指すイザベル。2015年、自宅が爆撃で破壊され、シリアからヨーロッパを目指すマハムード。
3つの旅がやがて邂逅する。
衣食住の“住”の大切さがひしひしと伝わる。
平時であればしっかり守ってくれた両親が、戦乱や非常時の中であるものは迷い、あるものは壊れてしまい、子どもたちが家族を引っ張っていかざるをえない状況になる。
実際に起きた事柄をベースにした物語。
国を追われる人々のことを自分事としてとらえるために。 -
「ナチスドイツから逃れるユダヤの少年、カストロ政権下のキューバを出てアメリカに向かう少女、内戦下のシリアからヨーロッパをめざす少年。故郷を追われて旅立つ3人の物語が、時代や国を超えて同時進行で語られる。彼らの運命はやがて思わぬところで結びつくことに……。命の危険にさらされ恐怖と闘いながらも、明日への希望を見失わず成長していく子どもたちの姿を描く。歴史的事実を踏まえたフィクション作品。」
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ナチスとキューバのカストロとシリアの内戦と、3つの物語が交代で語られる。
どれも厳しい現実からの逃避行で、犠牲を伴うつらい話だった。
ひとつひとつの物語をもう少し長く語ればいいのに。
続きが気になってページを飛ばして読んだり、前がわからなくなってページを戻したり、
読みにくかった。