ユーモレスク

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  • マガジンハウス
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  • Amazon.co.jp ・本 (155ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784838714278

感想・レビュー・書評

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  • 弟は隣家から聞こえてくるユーモレスクが好きだった。六年前に行方不明になった弟・真哉。鏡合わせに一棟を分けた隣家は、それ以来「近くて遠い」場所となった…。不在の人の記憶が紡ぎ出す切ない物語。(e-hon)

    壁一つでつながっている二家族。つながっているようで、つながっていない。それでも時間がたつごとに、実はこの二家族が切っても切れない関係にあったことがわかっていく。
    そして、弟の死亡が法的に確定されたとき・・・。
    いつか、行方不明になった弟が返ってくるのではないかと待ち続ける家族。その姿は痛々しく、そしてほほえましい。
    行方不明というのが一番家族にとってやりきれない子供の失い方に違いない。
    いつか、区切りをつけなければ。いつか、弟が返ってくるかもしれないなどという期待は捨てなければ。それがわかっているのに、なかなかできない家族にかかわる人々。
    長野まゆみらしい作品だ。少年たちの恋、弟と隣人との関係。そして、仕事先でかかわることとなった高校生と、隣人の関係。
    複雑なようで、実は単純な人間模様が読みやすい。
    また、どこまでも現実的に進むストーリーがほっとする。もしかして、弟が返ってくるのでは?などという家族同様の期待を読者にも持たせつつ、最後までひっぱる文章力は巧みだと思う。

  • なんかなーよく分からんかった。。

  • 長野さんは女性を書くのもとても上手。

  • どこにもない夢の国みたいな話を書く人と思っていた。かなり普通のお話だった

  • 実は、ユモレスクの曲自体が浮かばなくて…検索かけてMIDIを聴きました。あぁ、この曲という感じなんですが。
    のどかな曲ですよねー。音楽はあまり詳しくないのですが耳にしたことは何度もあります。

    今まで何作か読んでいる割には長野作品の傾向とか色々があまりよくつかめていなかったりします。
    うん、それでも、雰囲気が好きですね、この人の作品は。世界観に時々むしょうに触れたくなります。
    本のお友達のお勧めでしたし、装丁の魅力は大きかったですねー。でも、買って損なし、でした。

    どこかでピアノの音がする。意識をそちらへ向けたわたしは耳を疑った。小母さんは入院中のはずなのにユーモレスクが聴こえてくる。すみれさんが、不協和音のようなピアノ曲の合間に弾いていた曲だ。

    こんな感じの記述がユモレスクの流れる場面に出てくるのですが、これがなんとなく好きだなぁって思うんです。
    最初に書いたようにゆったりしたこの曲が聴こえてくる様な気がします。
    そして、そのままゆらゆらと思い出がよみがえって来るような想いがするのです。ユモレスクが好きだった
    真哉。消えてしまった彼の思い出を語る瞳は誰しもが優しい。真哉の不在をどこかで持て余しながら、どうにか
    折り合いをつけていこうとする姿が、生きているものに課せられた努力なんだと思いました。
    私的には和の印象がとても強く残っています。特に、周子が描写する、和の持って生まれた育ちのよさというか
    特徴に関しての描写がすごく好きでした。

    小学生のころ、意識している男子の名前をこっそりノートに書いてみた。たったそれだけのことで、脂汗がにじみでて鉛筆を持つ手がすべった。秘密にしておくためにすぐ消すのだが、存在そのものを消す、という感覚に囚われてたじろいだ憶えがある。もしこれが名前を消すたびに寿命が縮まるという変なお呪いだったら、どうしようかと大まじめに考えた。

    ふふ、と昔私もやったなーなんて思い出しました。試験の答案にね、好きな人の名前を書いてから解くといい点が取れる、というのをなぜか信じてて、そっとそっと書いては消してました…。懐かしい。

    思い出すと胸の痛むような思い出が表れてくる、そんなお話でした。

    (2003年6月10日)

  • 長野さんの作品では珍しく主人公が女性のお話です。
    周子が勤めているのはデパートの中でも紳士服売り場なのですが、ネクタイの話やシャツの話は興味深いし、同じ売り場の同僚、三ノ宮や子供服売り場の萌らがそれぞれ個性的で面白いです。
    デパートの売り場の裏側を知らないので、店内アナウンスのエピソードなどは驚きでした。(実際どうなのかはわかりませんが;)
    普段見られない場所や場面を舞台にした物語はやっぱり興味があるし、実際楽しめるので好きです。

  • 女性視点の話なんですが、全体的な空気がすごく好きです。これくらいの時期の長野作品はピッタリくる。私も小学校の放課後流れる音楽が、ユーモレスクでした。

  • 結局弟は・・・??
    なんとなく読み終わった。

  • 不在の人の記憶が紡ぎ出す、切ない物語-。弟は、隣家から聞こえてくるユーモレスクが好きだった。六年前に行方不明になった弟・真哉。鏡合わせに一棟を分けた隣家は、それ以来「近くて遠い」場所となった…。

  • 長野まゆみさんの書く文体や、描き出す人物ってどうしてこんなに甘美で色っぽいんだろう。いやらしいという意味ではないんだけれど。(笑)
    読んでいてどきっとするような描写が幾度もでてくる。私も背筋をしゃっきり伸ばして生きよう。
    長野さんの本はいつも束の間美しい世界を見せてくれます。

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著者プロフィール

長野まゆみ(ながの・まゆみ)東京都生まれ。一九八八年「少年アリス」で第25回文藝賞を受賞しデビュー。二〇一五年『冥途あり』で第四三回泉鏡花文学賞、第六八回野間文芸賞を受賞。『野ばら』『天体議会』『新世界』『テレヴィジョン・シティ』『超少年』『野川』『デカルコマニア』『チマチマ記』『45°ここだけの話』『兄と弟、あるいは書物と燃える石』『フランダースの帽子』『銀河の通信所』『カムパネルラ版 銀河鉄道の夜』「左近の桜」シリーズなど著書多数。


「2022年 『ゴッホの犬と耳とひまわり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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