松本隆 言葉の教室

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  • マガジンハウス
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  • Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784838731879

感想・レビュー・書評

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  • 松本隆の言葉との付き合い方について、本人へのインタビューを通じてその片鱗を垣間見ることができます。難しいことは語らず、ただただシンプルな内容が語られており、まあ、やっぱり才能やセンスに溢れているんだろうなぁと再認識しました。

  •  
    ── 松本 隆《言葉の教室 20211116 マガジンハウス》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4838731876
      
    https://news.yahoo.co.jp/articles/1286c9593de3025ec894622457e7e45b68b4bf96
     
    ── 息子が語る黒川 紀章と膨大な借金「とにかく努力の人だったと
    知った《20230528 16:30 (AERA dot.) 週刊朝日》
     延江 浩(のぶえ・ひろし)/TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー
    https://news.yahoo.co.jp/articles/1286c9593de3025ec894622457e7e45b68b4bf96
     
     TOKYO FMのラジオマン・延江 浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌
    連載「RADIO PA PA」。中銀カプセルタワーと黒川 紀章さんについて。
     
    【写真】森の中のサマーハウスはこちら
     
     銀座8丁目の中銀(なかぎん)カプセルタワービルが昨年姿を消した。
    11階建てと13階建て2棟に140個のカプセルユニットがあり、SONY のAV
    機器が据え付けられ、円形の窓が近未来を示し、一つ一つのカプセルの
    中で日々の生活が営まれていた。
     
     新陳代謝を意味する建築運動「メタボリズム」のリーダーだった黒川
    紀章はその象徴として中銀カプセルタワーを設計、1972年に竣工した。
    「時代の変化に沿って建物は変化し、増殖していくべきだ」。カプセル
    を交換しながら200年維持する構想だったが、どれか一つを取り換える
    のが難しく、全てを一挙にという手法も所有者の意見がまとまらなかっ
    た。
     
     時代に建築は即応するべきと黒川が唱えたが、このビルの消滅は衰退
    の一途を辿(たど)る日本のディストピアを示していた。これもまた
    メタボリズムなのだろう。
     
     ギャラリーを営んでいる友人から誘われた。軽井沢にカプセルが遺
    。山の中腹で待っていると、先導のためにスポーツカーが下りてきた。
    「こんにちは」。降りてきた黒川未来夫(みきお)は長髪でロック・
    ミュージシャンのような風貌だった。世界に名を知られた建築家の息
    子は50代半ばだが、切れ長の目は父に似て鋭い知性を感じさせ、少年の
    ような印象を持った。「カプセル建築は可能性が無限。都会にそびえ立
    つ中銀カプセルタワービルに対し、小さなサマーハウスを作ることでそ
    の可能性を示したかったようです」
     
     外から眺めるとサマーハウスは森の中でひっそり呼吸しているように
    見えた。国内外で出版された黒川紀章作品集、レコード……。そこかし
    こに父の匂いのする品々が置かれた部屋で彼は話し始めた。
     
    「父の周辺にはいたくなかったんです」。受けたのは東京藝術大学だが、
    建築ではなく美術学部。「藝大? 受かるわけない」と父の言葉も聴こ
    えてきたが「2浪の末、合格しました。美術学部絵画科油画専攻です。
    この科が日本で現代美術を勉強する上で適した場所だと聞いていたから」
     *
     
     父が亡くなり息子は父の会社を継ぐが、そこには膨大な借金も残され
    ていた。「父は世界のコンペで闘い続けていた。そのためにも運転資金
    を必要としていたんですね。父が死ぬとたちまち資金が枯渇して……」
     
     父の会社で激務の中、役員、社員から父のことを毎日のように聞く日
    々が始まった。もちろん良いことばかりではない。怒鳴られたり、叱咤
    されたり。殆(ほとん)ど知らなかった父の日常が見えてきた。「睡眠
    は3時間以内。それ以外は事務所での設計か、本を書くか、読書か。と
    にかく努力の人だったと知ったのです」
     
     息子は父の作品を語った。「森の中の空港というテーマで設計された
    クアラルンプール新国際空港は連鎖する森のような機能に対するデザイ
    ンが高い次元にあるし、大阪の国立文楽劇場には伝統的なディテールが
    編み込まれ、それでいて和の建築ではない。見事と思った」
     
     改めて話を聴いたのは半蔵門のビルの一室。夕刻になり、隣の建物も
    彼の父の作品だと気づいた。そのワコール麹町ビルを見上げ、今度一緒
    に黒川紀章が関わった建築を観て歩きたいと思った。
     
     延江 浩 Nobue, Hiroshi 1958‥‥ 東京 /慶大卒。TFM「村上RADIO」
    ゼネラルプロデューサー。小説現代新人賞、アジア太平洋放送連合賞
    ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、
    ギャラクシー大賞など受賞。(20230602 週刊朝日)

     

  • 大滝詠一と松本隆のキラーコンビに陶酔殺戮されたあたしがこの本を読むことは必然だった。実際、雨のウェンズデイを聴きながら幾つも落涙をした。どうしようもなく、恋!
    県北の教会へと続く旅路にこの本を携えて汽車を、バスを乗り継いだ。彼の作詞した曲をいくつも聴きながら。流れる景色に言葉とメロディが耳と目に優しかった。恋煩いを限りなく正しくしていることを自覚した。
    好きよ、は一番好きな言葉です。そう書かれていた。とってもときめいた。あたしだってなんどもすき、と伝えたでしょう。だのになんだか流れて行くみたい、いつも。歌詞って、歌って、とってもずるい!だって恥ずかしくないんだもの、きちんと染み込むかんじがするでしょ。松本隆さんみたいなことばをもって好きを伝えられたらいい、好きって言葉を使わずとも。装丁の緑がかったブルーが美しい。図書館で借りたけれど、購入したいと思っている。あの日sweet memoriesをあなたと唄ったね、甘い記憶ってほんとうにあるんだとわかったの。過ぎ去った過去、しゃくだけど 今より眩しい、ってあたしもそう思う。君は天然色の妹さんのエピソードを、大滝詠一に伝えることもなく彼が亡くなってしまったこと、初めて知った。大滝詠一がこの世に居ないことが本当に悲しい。あまめく歌声をもっているひと、あたしの恋を深くしたひと。美しい仕事をするひとが好きです。随分と堕落したわたしの生活も(どこでまちがえたのか?)と呟くはっぴいえんどの春よ来いを聴きながら愛していきましょうね、言葉を育てて伝えたいひとがいることを忘れちゃいけない

  • 三人称の醍醐味についてとても勉強になりました。

    自分の感動や思い出がフックになっていても、三人称の世界や二人の対比に世界に落としていく松本さんの表現。だから共感度が高いのか

    Amazon ミュージックで松本さん作詞の曲をかけながらの読書。とても贅沢な時間になりました。

  • 松本隆の言葉は胸の奥にすっと落ちてくる。言葉の選び方だけでなく日本語の魅力までも伝わってくる。

  • 夕日を言葉にすることが
    いかに大切なのか、、
    言葉に出来ない人は言葉にしようとしていないし
    心のフィルターがそもそも 綺麗な景色色々なものを
    捉えようとしていないのかもしれないね。
    車じゃなくて、歩いて何処かへ向かう その道すがらに何かを掴むのかもね。

  •  つい読んじゃう松本隆もの。
     しゃーないよね、パラパラと開いたら、知ってる詞がたくさん並んでいて、その舞台裏を語ってくれているのだから。

     でも、どこかで聞いたような話も多いし、聞き手が突っ込んだ質問をしてないのか、松本隆が好きなように語りたいことを語っている域を出ていない気がする。同じ松本隆との対話の書き起こしなら『喫茶店で松本隆さんから聞いたこと』(夏葉社)のほうが面白い(https://booklog.jp/edit/1/4904816374)。

     本書は「~教室」というタイトルの割りに、作詞、あるいは言葉の使い方についての教えは少ない。それは冒頭、松本隆も「定型やテクニックは、ぼくからいちばん遠いところにあります」と切り出しているので、そういう内容でないことは知れる。詞の作り方なら、むしろ『喫茶店で~』のほうが、その心がけが語られている。

     「僕が使わない言葉は、言わなくてもいい人称代名詞。(中略)理由は字数の無駄だから。重要なところに「あなたに」なんて書いてしまうと、それだけで四文字も使っちゃう。それを言わなくても分かるように書けばいいわけだから、必要最小限度にとどめる。そうすれば、ほかでいろんなことが言える」
     
    「否定形を使うと一見かっこよくなるんだよね。(中略)でも、「not」を多用しているとどんどん弱くなってくる。心理学的にはマイナスの方向に働く力だから。あんまり多いと世の中が暗くなるの。それを歌のなかでやりたくないから、できるだけ「not」を削ろうと思うのね」

     もちろんこれもテクニックの話ではない。ただ、こうした話者の思いをいかに引き出せるか、そのあたりが聞き手の力量か。
     本書は、その時代時代の想い出や裏話的な話題が多いのは、聞き手(著者)が松本隆と同時代を過ごし(世代が近い、出身校が同じ等)、業界的にも近いところにいたことが災いし、そうした思い出話を面白いと感じ傾聴してしまった結果か。よう知らんけど。

     とはいえ、「定型やテクニックは、ぼくからいちばん遠いところにあります」と語ったわりに、多くの作品を並べて語らせることで、色をいかに表現するか、目に見えないものをどう表わすか、対象との間に1つフィルターを挟む作詞家の視点など、松本隆のテクニックが垣間見える内容になっているのは逆説的に面白い。

     “「ポケットいっぱいの秘密」の秘密”の話は、面白かった!

  • 日本歌謡史に残る、数々の名曲を誕生させた作詞家・松本隆。当時私は、曲先行で好みを選んでいたが、「これ、だれの作詞?」と、”言葉”の方を意識し始めたのが、松本隆さんの曲だった。昨年、トリビュートアルバムを購入し、TVの特別番組を拝見し、彼の作詞に対する姿勢に大変興味をもった。「言葉の教室」というタイトルのこの本は、予想した内容とは若干違ったが、それでも、人の心の琴線に触れる言葉を生み出すために実践されている松本氏の数々のエピソードに心打たれた。言葉の奥深さと美しさ、そして可能性について見つめ直してみたいと思う。

  • ロンバケの発売が延期になった理由と、「君は天然色」の意味するところ。

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著者プロフィール

1958年3月31日生まれ、東京都出身。
TOKYO FMゼネラルプロデューサー。
「村上RADIO」などのラジオ番組を手掛けるほか、作家としても活躍。
国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞。

「2022年 『さはしひろし 今夜、すべてのロックバーで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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