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感想・レビュー・書評
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ラストが「あっ、そういう終わり方なんだ……」みたいな。
カンボジアが舞台の小説って初めて読んだかも知れない。
カンボジアを舞台にした作品で記憶にあるとすると、小説ではないが、戦場カメラマン一ノ瀬泰造氏を扱った映画『地雷を踏んだらサヨウナラ』(浅野忠信氏主演)は見たことがあったようななかったような……。
あとはやっぱり映画で『キリング・フィールド』くらいですかね。
読んでる最中にちょびっとポルポトについて検索をかけたら、ポルポトはバカスカ地雷設置しまくったらしい。
地雷、安上がりらしいですもんね。
ちなみにポルポトは大して出て来ません。
なんか小説読んでるとよく出てくるガルシア=マルケス『百年の孤独』的な、マジックリアリズム的なあれらしいです。
面白い小説ですけど、拷問シーンとかもあるので、そういうの嫌っ!って人は注意かもです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
なんかもう、歴史小説、大河小説、SF、ファンタジーとさまざまな要素が詰め込まれている感じで、すごく読みごたえがあっておもしろかった。翻弄され、のみこまれて、えーなんなのこれ?っていうところもあるんだけど、どんどん読める感じで。ところどころ、文章とか会話とかユーモアがあって、深刻だけじゃなくてファニーな感じがするところも好き。
大雑把にいうと、カンボジアが舞台で、前半は、ポル・ポト政権による大虐殺とかが起きた時代の田舎の村の話で、このあたりは歴史小説とか大河小説みたいなおもしろさ。それに、いわゆるマジック・リアリズム(わたしの理解では、非現実的なファンタジー的なことが、現実のなかでごく普通のことみたいに起きるっていう)が入ってる。私はこの手の奇妙な話が苦手なんだけど、この小説の流れで語られると説得力があるというか、あんまりイヤとは思わずに読めた。
ポル・ポト政権についても、たいして知らずに読みはじめたんだけど、これからは貧富の差をなくしていこう!みたいな、一見希望に満ちた革命が起きたのに、一般の人々にとってはその革命後の生活がもう最悪最低だったっていうのがものすごく恐ろしかった……。
後半は、一転して現代で、脳波を使ったゲームの話にもなっていくんだけど、意外と、SFっぽいこの後半のほうが好きだったかも。記憶とか脳波とか難しい話だけど、わかったような気にさせてくれて興味深かった。
あと、カンボジアの現代の問題、貧困などへの支援があってもさまざまな社会状況が絡み合って、そううまくは支援にならなくて、みたいな話に考えさせられたりもした。
ほんとうにさまざまな要素がつまっている感じで、まったく感想がうまく書けないんだけど、ルールとかゲームとかに話から、人生哲学、みたいなことを感じさせられるところが好きだった。
いやー、小川哲氏の書くもの、おもしろいと思う、これからも読んでいきます。-
去年最初の方だけ読んでそのままになっていたのですが、ご感想を読んで早く続きを読まねば!という気になりました。小川哲さん、短編をいくつか読んだ...去年最初の方だけ読んでそのままになっていたのですが、ご感想を読んで早く続きを読まねば!という気になりました。小川哲さん、短編をいくつか読んだことがあるのですが、どれも面白くて才能ありますよね。2023/07/09
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けっこう長いですがおもしろかったです。壮大な物語を最後まで読ませるパワーがあって文章も上手いと思うし、ほんとに、才能ある!って感じですよね。...けっこう長いですがおもしろかったです。壮大な物語を最後まで読ませるパワーがあって文章も上手いと思うし、ほんとに、才能ある!って感じですよね。短編は読んだことないのですが読んでみたいです。でも長編が好き(笑)。2023/07/09
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いやあ素晴らしかったです。実は昨年上巻を少しだけ読んであまりハマれずリタイヤしていたのだが(←この後ろめたさを著者あとがきでまるっと肯定してもらえたことに驚いた)今回は下巻まで一気に貪るように読み耽った。たぶん間にラシュディ『真夜中の子供たち』をはさんだのが良かったのだろう。『真夜中』ではあまり具体的に描かれずちょっと物足りなかった異能の子どもたちの活躍が本作上巻でフルに堪能できて、輪ゴムのクワンや泥といったお気に入りのキャラもできたりして。歴史小説としての苛烈な描写の合間にすっとぼけたセリフが笑いを誘うのも『真夜中』と重なる。そして下巻は脳波やら記憶やら、そうだよね、これはSFなんだよねっていう話になってきて、それがソリヤとムイタックが追い求めたゲーム=人生観と絡めて語られるのがめっぽう面白く、覚えきれない登場人物ひとりひとりが魅力的で…そして、ある章で、緊迫する会話に、バックで流れる通販番組のナレーションが重なる、実験的な語りに幻惑されながら、私いま龍さん以外に感じたことがないスリルを感じてるってことに気づいたときにはドキドキがMAXに。ラストの着地も好みのエモさ加減でしみじみ良かった。『オーバーストーリー』で感動的だったゲーム上での交歓、小川哲さんはパワーズより先にやっていたんだね。とりとめなくなってきたけども、とにかくこんなに「好きだ!」と思えた小説はそのパワーズの『われらが歌う時』以来、つまり15年ぶり。15年生きのびて良かった。小川哲さん、短編幾つかと『君のクイズ』しか読んでなかったけど、他の作品も読まなくては。とりあえず今ゲームの王国ロスです…
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上巻のクメール・ルージュ時代から大きく飛び、2023年のカンボジア近未来を主な舞台にした下巻。フンセンが「元首相」として扱われているのが意味深。勿論、実際には本書刊行後の2018年の選挙でも、直前に野党を解党して勝利しており、2023年でも本書のような事態にはならなそう。下巻で漸く「ゲームの王国」の意味が明らかになる。個人的には上巻の方が面白い。下巻はだんだんと意味が掴みにくくなるし、カンボジアが舞台であることと結びつき難い。ただ、大作で、秀作で、読み応えがあった。
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小川哲天才。前作『ユートロニカのこちら側』を読んだ時、これは伊藤計劃の再来か?と思った記憶があるけど、それが確信に変わった。
日本のSF史における新たな時代の到来よ、おめでとう。 -
上巻での流れを無視するかのように、下巻はいきなり2023年のとある場面からスタートする。
が、ここに至ってようやく、本書の向かう方向が見えてくる。上巻で描かれた数多くの登場人物(そのほとんどは死んでしまったが)と奇想天外な能力、事実に基づいた出来事と巧みに織り込まれた虚構……。なんの意味があるのか、どんな繋がりを持つのかわからず読んできたそのすべてが重なり、うねる。下巻はある意味、耐えに耐えた上巻の鬱屈が解放される読書体験となった。
そして知るのだ。このタイトルに込められた意味を。