甘い罠 8つの短篇小説集 (文春文庫 え 10-2)

  • 文藝春秋 (2012年7月10日発売)
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感想 : 48
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*引用*

 好きだから、セックスしたい。好きだから、セックスしたくない。好きだけれど、セックスしたくない。好きでないから、セックスしたい。好きでないけれど、セックスしたい。好きでないから、セックスしたくない。好きでなくとも好きでも、どちらでもいいから、ただセックスをしてみたい。
 頭が混乱しますね。でも、その七通りほどの感じが、明らかに若き日のわたしの中でぐるぐると入りまじって存在していた。そして、そのどれもがへんなふうにつながりあっていて、結局何がなんだか、さっぱりわからなかった。
 男と愛しあったときには、必要十分なセックスが行われるべきだ、という、いわば肉体と精神のしあわせな融合感を、女が素直に打ち出すことができるのは、恋愛の経験値がある程度高い、そしてまた、体も心もみずみずしい、そういう時期に限るのではないかと、近ごろわたしは思ったりするのです。


―― 『天にまします吾らが父ヨ、世界人類ガ、幸福デ、ありますヨウニ』 川上弘美 p.78-79

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年8月16日
読了日 : 2012年8月13日
本棚登録日 : 2012年8月16日

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