甘い罠 8つの短篇小説集 (文春文庫 え 10-2)

  • 文藝春秋 (2012年7月10日発売)
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感想 : 48
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髙村薫の短編が「合田が加納にあてた手紙」の形式をとっているというのを知って一も二もなく買いに走った。

結果としてあんまり現代小説家の本を読まないので、すごくいいきっかけになった…と思う。

■江國香織…寂しいおばさんのファンタジー。人のことをおばさんと言えた年齢じゃないが、離婚されそうな女が現実を受け止められず、だんだん現実と妄想の区別が出来なくなっていく話、と私はとらえた。それともいい年した不思議ちゃんの話?
この短編から何を感じればいいのか分からなかった。あまりに何の感想も湧かないので、ちょっと長編も読んでみようかな、という気になった。

■小川洋子…地に足のついたファンタジー…かな。。。
最初は【巨人】と読んで「ものすごくでかい人」と思ったら【巨匠】的な意味だった。巨人の人柄と、彼に接することができた主人公の特別感を味わうことが出来て面白い。巨人可愛い。
そして作者が言いたいことはそこじゃないって分かってるけど巨人とダニエルの関係が気になった…。
この作者の長編が主人公視点の話でこの静かな雰囲気をまとっているとしたら、短編が私の限界だと感じた。私にはちょっとフラットすぎる。

■川上弘美…読んでてその文体に頭がおかしくなりそうだった。ほとんどアレルギーってくらいこの人の文体苦手、というか嫌いだ。一人称と三人称が入り混じってるのが私には耐えがたい。何度かマスターベーションという言葉が出てくるが、この文章自体がマスターベーションのようだ。
長編もこんな感じなのかな…こんど本屋で探してみようかな…。

■桐野夏生…ひょおおおおおおおおこわいいいいいいいいい!ごめんなさいいいいいい!
うますぎて怖い。久しぶりに絶望で目の前が真っ暗になる感覚を味わえた。悪いことはしちゃいけないな…。歴史的にももっともらしいし、こういう思いをした人はいただろうと想像させる。次はこの人の本を読みたい。

■小池真理子…まさに短編というか…小説というか…。女らしさ全開の短編。半分リアルで半分フィクション、でもこんな人生ってどこにでも転がってそうで、だからこそ文字にするのは簡単そうで難しいと思う。でもこの短編読みたいかって言われると読みたいとは思わない。現実味は現実だけでおなかいっぱいなんです。

■髙樹のぶ子…小奇麗にまとまった女のミステリ。唯一、名前さえ知らない作者だった。これだけじゃわからないから他にも読んでみようかな、とはあんまり思わなかった。あんまり小奇麗にまとまってたから、面白味がないんじゃないかと思って。実際のところどうなんだろう。でも今後も手に取らないと思う。

■髙村薫…この人の文体はいつもバブル前の日本を感じる。バブル時代は小学生だったもんでよく知らないけれど、バカみたいに日本が明るい時代になる前…昭和50年代くらい?まぁそれはいいとして、この人女性視点で本書けるのかと思った。微塵もそれは求めてないけれど。
内容自体は特に面白くはない。出版社から依頼があったイメージに沿って頑張って書いてみました、という感じ。女王らしさもない上にどんより暗くてじっとりしてる。
しかし合田が加納にこんなに長い手紙を書いたのか、これどんだけ郵便代かかったんだろう、合田は刑事より小説家が向いてるよ…等、全然別視点で考えるとすごく面白い。ほんとすいません。

■林真理子…エロいおばさんの話。タイトルと内容が一致してて面白い。でもこの年のおばさんのあれやこれやを連想させられるのは女の私でもキツいです。母親の顔が見れなくなるのでやめてください…。
いや、女はいくつになっても女ってことですよね。でもごめんなさい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2012年7月28日
読了日 : 2012年7月24日
本棚登録日 : 2012年7月28日

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