いちまろの つんどく書架

九段理江『Schoolgirl』

文學界新人賞受賞(2021.5月号『悪い音楽』)後の第一作。
この作品にて、第166回芥川賞ノミネート。

この作品は、80年以上前に同誌に発表された、太宰治『女生徒』の本歌取りといえる内容になっている(とてもオマージュ、なんて言葉では足りない。)
そのため、2つの作品を並べてみての感想を。


母と娘の物語。
2作品とも、彼女たちのたった1日の物語である。けれど、そこに彼女たちの、私たちの、少女から大人になるまでの「長い厭な期間」(太宰治『女生徒』。以下『女生徒』)のすべてが描かれているように思う。

「どうして女の子は、娘っていうのは、こんなにいつでも、お母さんのことを考えてばかりいるんだろう」p120
かつて私も14歳の女の子で、母親のことばかり考えていた。母のことを愛しながら、母の愚鈍さに苛立ってばかりいた。そして今、私の娘が14歳だ。

「私を「お母さん」と呼ぶ、この気難しい女の子は一体誰だろう?」p88
「私が生まれる前から存在しているあの女の人は、一体誰?」p112
母と娘というのは、過去と未来を写す分身のようなものだと思う。
母の中に娘がいて、娘の中に母が在る。まるで入れ子細工のように。

「七つも、八つも、あけていって、とうとうおしまいに、さいころくらいの小さい箱が出て来て、そいつをそっとあけてみて、何もない、からっぽ」(『女生徒』)


あれだけ娘時代に「苦しくて苦しくて、それでも、やっとそこまで堪えて、何か世の中から聞こう聞こうと懸命に耳をすまして」、やっと大人になり「あの山の頂上」に着いたはずなのに、結局「私たちみんなの苦しみ」の正体は、わからず仕舞いだ。(引用部『女生徒』)

その誤魔化されてしまったものの正体を、「小さな説」p118なら、掬い取ってくれるだろうか。
14歳の女の子だった時の苦しみを、「あなた」(p122)が一体誰のことなのかを、思い出させ、共に考える道標を、読点ばかりの小説であれば、示してくれるのではないだろうか。



2作品を読んで、世の中を動かす「大きな説」も大切だけど、私たちに寄り添ってくれる「小さな説」の必要性も、しみじみ感じました。小説と、小説家の力はすごい。2022年初読に相応しい作品でした。芥川賞、獲ってほしい。

2022年1月2日

読書状況 読み終わった [2022年1月2日]
カテゴリ 小説
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探偵といえば、頭をボリボリかきながら謎を解き、誰かの名にかけて真実はいつも一つであることを声高に告げるイメージがあるが、この物語の探偵は違った。
真実を探る中で、依頼人の想像もしていなかった事実を知る。その事実を知った後も、依頼人の人生は続いていく。真実や犯人を告げて物語の幕が下りるわけではないことを、この探偵は過去の傷から身に沁みてわかっている。

さて、となると、どんなに難解な謎を見事解いたとしても、「犯人はあなただ!」と指差し叫ぶことはできない。
そうできたら、どんなに痛快なラストになったろうか。
知ってしまった真実を前にして、私も動けずにいる。

2021年12月19日

読書状況 読み終わった [2021年12月19日]
カテゴリ 小説

図書館の順番を待ちわびて、連絡をもらった時は、やった、ついに来た、と嬉しさに天を仰ぎました。

期待以上に面白く、一人でわははと笑いながら一気に読了。
それな!と激しく納得したり、
そうきたか!と仰け反ったり。
楽しいひとときを、福井県立図書館さん、どうもありがとう。

司書さんのレファレンス回答が、
これまた優しさに溢れているのです。
とんでもない覚え違いも、優しく受け止め、その間違いの経緯を想像し共感しつつ、さりげなく正してくれます。(たまに共感しないことも。笑)

「本を読むことはあらゆる人に認められた権利」という理念の下、私たちと本との橋渡しをして下さる司書さんたちに、図書館なしでは生きていけない私は日々感謝の気持ちを新たにしました。

ちなみに、勝手に私のお気に入りベスト3を発表させて頂きます(笑)
(タイトル一部のみ抜粋)

3『俺がいて俺だけ』
2『あだしはあだしで』
1『ドクタードリンク』(笑)

2021年12月17日

読書状況 読み終わった [2021年12月17日]
カテゴリ エッセイ

装丁が美しかった。
華やかな衣装とは裏腹に、墨絵のように描かれているのはどこか線の崩れた女性。儚げなタイトル文字。
松井久子は初読。(というか小説は初らしい)

主人公は70歳を迎えた女性脚本家。
「自分をどこまで解き放てるか。あるがままの自分の、完全なる自由。それが、いつの頃からか彼女が求めるようになったものだ。」p3

古稀を迎え、これまでの人生で満たされずにきたものへの焦燥と諦め。
なるほど、それらとどう折り合いをつけていくのだろうかと読み進むと、どんどん話はエスカレートしていき、主人公と相手役とのSNS上の会話は、まるでシェークスピアを読んでいるかの如く難解でついていけず。
相手役の幼少期の環境や、そこから生じた性癖やらが、主人公にとって(70歳の女性にとって)都合が良すぎる。

仕舞いに「いつの間にか~母か姉になったような気持ち」p261
「私は、またひとり生きていく。自由に、寂しさを友としながら、私自身のままで。」
うーん、なんか、単に婆さんとオジサンの癖が強い恋愛を見せられただけな気がして、読了後しばし呆然。

「私たち団塊世代にとって、「身体感覚」は、長いこと蓋をしたまま置き去りにしてきた大切な問題」p265 と、あとがきで明かす作者にとっては意欲的な作品だったのかもしれないが、作者も主人公と一緒になって盲目的になりすぎている気がして、読んでいるこちらは冷めてしまった。

2021年12月11日

読書状況 読み終わった [2021年12月11日]
カテゴリ 小説
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芸術音痴のため、原田マハには勝手に劣等感を抱いて手を出せずにいたが、帯と装丁にひかれ今回ついに初読。

作品世界には、不遇の内に生涯を閉じたとされる天才画家たちへの、原田マハの敬愛の念があふれていた。
「過去を変えられないとわかっていても、フィンセントも、ポールも、決して不幸のうちに人生を終えたのではなかったと信じたい。」p286
「彼らはタブローの自由を勝ち取るために闘った。その事実は、彼らに画家としての幸福をもたらしたとは言えないだろうか?」p288

100年以上も前にこの世を去った巨星たちの、「生きて、描いた」その息遣いが、ファン・ゴッホの死にまつわる「秘密」と共に、あざやかに蘇る。
とてもワクワクしながら読みました。


「画家であるからこその嫉妬や確執、そこを超えた友情、そして彼らはなにを乗り越えられて、なにを乗り越えられなかったのか。」(原田マハ公式ウェブサイト『リボルバー』インタビューより)


それからびっくり。原田マハって、原田宗典の妹だったのか!!(極めて初心者発言でスミマセン)

2021年12月9日

読書状況 読み終わった [2021年12月9日]
カテゴリ 小説
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「僕という人間は”ぽい”だけで、ネタやツイッター以外の文章など全く書いたことがない。」p4
...そうなんだ!
絶対”ぽい”と思ってた!
確かに最初の方は頑張って書いてる気がする。でも「通販の段ボールを切り刻んで感じた後味の悪さ」p127 あたりから、”ぽく”なってきた感がある。

岩井氏が猫好きと知ってから好感をもつようになり読んでみたわけだが、組み立て式の棚と格闘したり、ルイ・ヴィトンの7階でペンギンと見つめ合っているその人は、私の中でいつのまにか濱家になっている。かまいたちの。慌てて岩井に顔を戻すが、気づくとまた濱家に。ゴメン岩井。

2021年11月30日

読書状況 読み終わった [2021年11月30日]
カテゴリ エッセイ

時間を忘れて何度も泣きながら一気に読んだ。
2021年本屋大賞受賞。

「ひとというのは最初こそ貰う側やけんど、いずれは与える側にならないかん。いつまでも、貰ってばかりじゃいかんのよ。」p224

自分に向けられた言葉に思えてはっとした。私を含め、そんな理すら危うくなっている現代の大人たち。
心の弱い者が、立場の弱い者を虐げる。
「つよくなる。これから、もっと」p256 13歳の愛の言葉。
強く、優しくならなければならないのは、52ヘルツの声に耳を澄まさなければならないのは、私たち大人だ。

2021年11月26日

読書状況 読み終わった [2021年11月26日]
カテゴリ 小説

12組の登場人物たちによる対話からなる物語。
その1つ1つがショートストーリーを読んでいるような、二人舞台を観ているような完成度。
さすが恩田陸。群衆を書かせたら、この人は本当に巧いなあ。

大きな災害が起こると、人はそこに様々な啓示を見、自身の心の闇を投影する。
カタルシス、リセット、神(あるいは大きすぎて見えない存在)、私利私欲、憎しみ、試練、狂気...

理由なく崩れ去る日常に、人はどうにかして意味を見出だそうとあがく。
「いつもの場所、ありふれた当たり前の場所だったんです。だけど、そうじゃなかった。そんな場所でみんな死んだ。やはり、日常など、どこにもなかったんだと悟ったんです」p201

震災しかり、コロナしかり。
私たちも、常に問いを問われ続けている。




《恩田陸を読むぞ2021⑪》 
ルール:図書館にある恩田陸の棚の、左側にある本から先入観無しで読んでいく。シリーズ物に当たったら、1から順に読む。

2021年11月19日

読書状況 読み終わった [2021年11月19日]
カテゴリ 小説
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第2回本屋大賞
第26回吉川英治文学新人賞

今年、恩田陸を意識して読んでいたら、15年ほど前に読んだこの本を、もう一度読みたくなって再読。

気づけば、高校生の主人公たちではなく、それぞれの母親に感情を傾けていて、年月を感じてしまった(笑)

「みんなで、夜歩く。ただそれだけのことがどうしてこんなに特別なんだろう。」
「たったそれだけのことがこんなに難しくて、こんなに凄いことだったなんて。」p414

思い返せば、人生には「ただそれだけのこと」が溢れている。その「特別」さ、愛おしさに、気づくかどうか。

「新作にしてすでに名作」とは、文庫版解説の池上冬樹の名言。



《恩田陸を読むぞ2021⑩》
※ルール外

2021年10月30日

読書状況 読み終わった [2021年10月30日]
カテゴリ 小説
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第34回山本周五郎賞
第165回直木賞

質量ともに重量級で、内容はかなりの曲者。果たして自分に読み切れるのか不安だったが、気づけば引き込まれて読んでいた。
こんな世界に救いなんてあるのかと結末の行方を案じたが、「クーデター」の名を持つ一人の少年の登場で、世界が変わり始める。

作者の強面な見た目に反して(失礼)文体には癖がなく、グロテスクなシーンもどこか静謐さがあり、現代の神話の語りを聞いているようだった。
佐藤究氏がこの緻密で膨大な熱量の果てに描きたかったものは何だろうか。
目を背けたくなるような暴力や、闇社会の抗争劇は表舞台の仕掛けであり、
奈落にあるのは、アステカの恐ろしくも美しい神々の姿、予言めいた暦の不可思議さ、それらが生み出す壮大な謎解きだったのではないだろうか。

ラスト、師の娘に会いにきたコシモの瞳が澄んだままだったことに救われる気持ちがある反面、そもそもコシモとは何だったのだろうと思う。
その瞳は善を宿すことで「澄みきって」いるわけではなく、「動物の目のようにも思えたが、少しちがって」「奇妙な光を帯びていた」p542 のだという。
繰り返し暗示される暦の符号。
「アステカ王国の滅亡から正確に五百年をかぞえた夏の夜」p? の出来事。
コシモとは、作者が現代に甦らせたアステカの最高神(テスカトリポカ)だったのではないだろうかと思う。彼の瞳が動物のように澄んでいるのは、善ではなく神を宿しているからなのではと。 
ただ一つ福音であることには、彼の心には、師から教わったマタイによる福音書の一節「わたしが求めるのは、あわれみであって、いけにえではない」という言葉が刻まれていることだ。

2021年10月11日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2021年10月11日]
カテゴリ 小説
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第165回直木賞受賞。
大きすぎる存在であった父(河鍋暁斎)と同じ絵師の道を、迷いながら進むとよ(河鍋暁翠)の生涯。


「真っ白な紙の上に~命あるものの世を作り出す技は、古今東西の画人と自らを競わせ、呻吟と苦悩を伴う修羅の道」p145

「泥濘にまみれてもなお描き続けねばならぬ自分たちの宿業」p175

「あの親父は、俺たちにゃ獄(ひとや)だ」p183
「絵を描くとはすなわち、あの父に捕らわれ続けることなのだ」p184

「奔放なる暁斎の才能が羨ましく、そして憎らしかった」p195


全編通して、とよの絵師として、娘として、妻として、母としての苦悩が延々と書き連ねられ、とよも作者もどれだけ生真面目なんだと辛くなる。
それが、ラストで知らず知らずに抑え込んでいた描くことの喜びに気づき、やっとこさとよの口から「深い深い吐息」p316 が溢れた場面、読んでいるこちらも救われた気持ちになった。

2021年10月8日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2021年10月8日]
カテゴリ 小説
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現代美術と言われても、芸術オンチの私は納得してしまうような作品から、そのゆるさに脱力してしまう作品まで、古代の「かわいい」は奥深い。

一体、古代人にどこまでユーモアがあったのか。きっと本人は大真面目に製作した結果おやおや?というのもあれば、恣意的に遊び心をちらつかせた趣味人もいたのだろうか。
ちょっと真剣に作者の意図を知りたくなるほど、見ているこちらの気持ちが揺さぶられる。

お気に入り
・後ろ足がかわいいイノシン
・数の神様 
・ニコちゃんマークの土器
・蒼いガラスの腕輪
・脱力系ヒトガタの須恵器

2021年10月6日

読書状況 読み終わった [2021年10月6日]

あかるいかなしみが、しみじみと漂う物語。

「ばたばたばかまる出しにあばれていたのが、今はだかれたままじっとモモヨの顔に顔をこすりつけてくる」p86

歳を取った雑種犬のオイモ。
過去と今とが綯い交ぜになって、記憶の中に混在する。いなくなったり、現れたり。

わが家の雑種犬もおじいちゃんになり、「ばかまる出し」だった幼い頃が懐かしいけれど、モモヨとオイモみたいに、どんどん距離が近づいて、どんどん切なくなっている。

2021年10月2日

読書状況 読み終わった [2021年10月2日]
カテゴリ 小説

人は誰しも孤独で、寂しい。
その生の寄る辺なさを、仮想現実やVF(ヴァーチャル・フィギュア)によって埋めたとしても、そのことによって寂しさはより深まる。皮肉なことに。
結局、我々が有するそのプリミティブな寄る辺なさを埋められるものは、誰かの心の中に自らの「言葉によって引き起こされる反応」でありp431、「恐る恐る、腕を伸ばし」触れる、手の温もりp432 だけなのかもしれない。

平野啓一郎氏の問いかける死生観には、今回も考えさせられた。
(以前には『空白を満たしなさい』の分人思想)
作中でその是非が問われている「自由死」=「死の自己決定権」という概念。
以下、作中で老人が語る言葉である。
「人間は、一人では生きていけない。だけど、死は、自分一人で引き受けるしかないと思われている。~死こそ、他者と共有されるべきじゃないか。生きている人は、死にゆく人を一人で死なせてはいけない。一緒に死を分かち合うべきです。~さもなくば、死はあまりに恐怖です。」
「他者と死を分かち合うというのは、臨終に立ち会うだけじゃない。時間を掛けて、一緒に話し合う時間を持つ、ということです。」p409

あるいは、「もう十分」と言える生とは何か?


「死の一瞬前に誰といたいか、
誰といる自分で死を迎えたいか」
そう問いかけながら、
「生きている限り、人は変化し続け、今のこの瞬間の僕は、次の瞬間にはもう、存在していない」p5 と鴨長明のごとく謎かける。
バックグラウンドにあるのは、作中「縁起」と呼ばれる宇宙空間だ。
「無にも等しい小さな元素」p219 である我々は、一瞬一瞬変化しつつ、寂しさに震えながら、傍らに手を伸ばし、互いに生じる反応によって、さらなる変化を続けていく。
それはリアルでしか味わうことのできないことであり、現実ゆえに意のままにはならないことだ。その隙間を埋めるのは、誠実に他者と向き合うこと以外ないのかもしれない。

2021年9月27日

読書状況 読み終わった [2021年9月27日]
カテゴリ 小説

1年生ではないんですが...たまに基本に戻らないと忘れるもので。

2021年9月20日

読書状況 読み終わった [2021年9月20日]
カテゴリ 仕事・勉強

なんか、じわじわと好きなんです。阿佐ヶ谷姉妹。めっちゃファンというわけではないんだけれど、テレビに出てるとつい見ちゃって笑っちゃう。
1月に図書館の順番待ちに並んで8ヶ月。嬉しくてオフの日に1日読んでしまった。(買えよ、と思われるでしょうが、積ん読な私は買うと読まずに終わってしまうので..)

お二人と同世代の私。
みほさんとは、そのひとりっ子気質なところや、闇を感じる映画の好みに激しく共感し、
えりこさんとは、八方美人で意外と小心なところに親近感を感じ、
自分を取り巻く世界を大切にしながら、日々を面白きちんと生きていらっしゃる姿に、ますます阿佐ヶ谷姉妹が好きになりました。

しかしお二人とも小説まで書かれて。しかもなかなかにお上手。
えりこさんの「ふきのとうはまだ咲かない」には、うっかり泣けてしまいました(笑)
そして揃ってピンクドレスに疑問を感じていることに、笑ってしまいつつも、まあそりゃそうよねと納得。私服のお写真もレア感があり楽しめました。

って、なぜか口調が姉妹のように。
私も阿佐ヶ谷のアパートにお茶しに行きたい。

2021年9月16日

読書状況 読み終わった [2021年9月16日]
カテゴリ エッセイ

若く無邪気でいられた頃が終わるのは寂しい。
歳を取り、大切な記憶を少しずつ失っていくのは寂しい。

だけど、誰かと一緒なら。
「自分以外の人を愛」し、「自分以外の人と時間を共に」p180 することで、世界は変わる。

音楽を愛する29歳無職の宮路だけでなく、
安全な日常の中に自分を嵌め込んでいた介護職の渡部君も、
憎まれ口をたたく水木のばあさんも、
「いつでも何かに手を伸ばせるように準備をしていた」p180 本庄さんも、
それぞれが、お互いを思う気持ちの中に、世界が変わる「その音」p184 を聴いた。


「寂しさの向こうにちゃんと光がともっている」p54
「どんな状況の中にいても、明日やその先にすてきなことが待っていることをぼくたちは知っている」p170

そう思えるのは、
大切な人たちと過ごした日々を知っているからだ。

扉をたたく音は、私たちのまわりにあふれている。

2021年9月10日

読書状況 読み終わった [2021年9月10日]
カテゴリ 小説

映画を観て、面白かったんだけれどもモヤモヤが残り、原作を読めば解消するかと思いきや、さらなるモヤモヤが(笑)
映画化にあたり、吾朗さんの創作が入っているらしい。それがいい意味でインパクト大だったもので、原作にないのが逆に残念。
佐竹美保さんの挿絵や、セリフなんかはかなり忠実に再現されている。

ハサミムシの意味に、「眠っている人の耳に入って悪さをする」というのがあり、なるほどと思う。
アーヤに好印象を覚えるのは何でかなと映画を観ながら考えていた。
一歩間違えば嫌われ役になりそうなのに、応援したくなるのは。
がんばるからかなあ。
作中、かなり劣悪な労働環境(笑)にもかかわらず、なんだかんだ手を抜かず役割をきっちりこなす。

あとは、根っこのところで他者を信じてるように感じるからかな。
「操る」ことが彼女の能力ではあるけれど、魔法で簡単に言いなりにするわけじゃない。わかりあえると信じて、きちんと関係を結ぼうとする。

アーヤに、すっかり操られたってことでしょうか。

2021年9月4日

読書状況 読み終わった [2021年9月4日]
カテゴリ 小説

どこかの書評で見かけて図書館の順番待ちに並び、しばらく経って手元に届いたので、内容を忘れたまま読み始めた。
脊髄損傷の女性が出てきて、ああ障がいに関する内容だったかと思ったのも束の間、4組(?)の男女の物語は、ストーリーも時代背景もどこか前後していて奇妙な違和感を覚えながらも、それぞれが興味深い関係で、引き込まれて読んだ。

各ストーリーの要所要所で、障がい者をめぐる悲惨なニュースや、知事の差別発言、排除アート(「社会から異物を追い出そうと」する意図の元に配置されたベンチやオブジェなどのこと。p129)についての考察など、社会的テーマを読み手にも考えさせる。

相手が障がいを持っていようがいまいが、人と人が出会うところには、必ずすれ違いもあり、傷つけあいもする、納得のいかないこともある。
ただ、そこまでの関係性を、日常では持つ機会がないのが、この日本の現状だ。私も、その内の一人だ。

ラストに一気に「収束」する仕掛けには、「ちょっと一回タンマ!!」と焦って思考を一時停止させたほど。
何より、読者を引き付ける力、巻き込む力がすごい。丸山作品初読ながら驚いた。あとがきを読んで、その理由がわかった。
「(障がい者(児)自身の気持ちは)私自身もわからないんです。~当事者に言わせれば全然違うのかもしれない」(web版 小説宝石2021.3)と謙遜するが、作者が敬意をもって、全身全霊で想像し、作り上げた物語だということが伝わってくる。
そして、「あなたはどう思う?」と作品を通して問いかけることで、読者全員に当事者意識を持たせようとしている。

『ワンダフル・ライフ』という書名もその一つだ。
ほんとうに人生は素晴らしいのか?自分が、大切な人が、重い障がいを負っても?考えろ、想像しろと問いかける。誰もが、「僕」や「妻」になりうるのだ。

2021年9月2日

読書状況 読み終わった [2021年9月2日]
カテゴリ 小説
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1961年ワルシャワにて初版。
以来30以上の言語に翻訳され「20世紀文学の古典」とされる作品。

構えて読み始めたが、沼野氏の訳は親しみやすく、前半は物語に引き込まれて一気に読んだ。
後半以降、度々展開される「ソラリス」研究のくだりは、あまりに学術的で、あまりに描写が鮮明で、もう何の話かついていけないけど、レムの頭の中すげえと恐れおののきつつ若干ページを飛ばす。(スミマセン) 

「人間は他の世界、他の文明と出会うために出かけて行ったくせに、自分自身のことも完全には知らない」p265
ソラリスの意図が理解できないまま、長い歴史を人類は翻弄されてきた。
不可解な現象を前に右往左往する様は滑稽ですらある。

これまで描かれてきた物語では、地球外生物と出会った人類は、平和的関係を築くか、はたまた生死をかけて戦うか、どちらにせよ「地球上に認められる諸条件をただそのまま無限の宇宙に持っていっただけ」p363 であった。
一方、レムが『ソラリス』で示したのは、「コンタクト」そのものであり「理解不能な未知の現象に出会った場合の製作見本(モデル)」p364 であった。

ラストで、「海と会うため」p341 一人ステーションの外に出ていく主人公。
そこで「用心深い、しかし臆病とは言えない無邪気さ」を見せる海に触れ、「まるで一切努力もせずに、言葉もなく、何も考えることなく、この巨人に対してすべてを許せるような境地」p343 に至る。

異質な他者と対峙した時、それに対する「違和感を保持しながら、それでもなお他者と向き合おうとする」p359 姿勢をとり続けること。
親切な訳者解説で、この大作をどうにか理解できました。地球上においても、”未知との遭遇”を経験した際に覚えておきたい。

2021年8月27日

読書状況 読み終わった [2021年8月27日]
カテゴリ 小説

朝日小学生新聞「中学入試で取り上げられた本」より。(ちなみに、近畿大学附属中ほか)

あるある...
言ってるこのセリフ...
これ、わが家のドキュメンタリーか??
夏休みということもあり、毎日ムスメにくどくど言ってるセリフが、そのまま書かれてて苦笑い(笑)

「大人ってけっこうまちがうの」
「大人になると自分はまちがってない気がするの」p181

そんな大人に反発しながら、考えるんだ。自分は本当は何をしたいのか。何になりたいのか。アンタはまちがってる、と大人に言うために。

2021年8月22日

読書状況 読み終わった [2021年8月22日]
カテゴリ 小説
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朝日小学生新聞「中学入試で取り上げられた本」より。(ちなみに、桜蔭中ほか)

少し前に読んだ『彼岸花の咲く島』で、女性だけが学べる「女語」という言葉が登場した。
こちらは「女書」(ニュウシュ)という女性だけに伝わる文字の話。

理不尽な風習や、古くからのしきたりの中で、自由を奪われてきた女性たち。
「文字があなたの(纏足をした)足の代わりだよ」「思いをつづることで、心がきっと自由になる」p82

誰もが文字を学べ、読み書くことができる今、
指先でつぶやくだけで世界中とつながれる今、
自らの思いを託せる「文字」の持つ不思議な力を、改めて感じた。
文字は、人を生かしもすれば殺しもする。

「言葉を大事にするんだよ」p153
「辛いときは、書きましょう
苦しいときは、歌いましょう」p205

「人は初めて書く文字では、思いやりや優しい気持ちを言葉にする」p251あとがきより



「女書」と検索してみた。
装丁に描かれた刺繍のような美しい右上がりの文字。この文字が、女性たちの悲しみや喜びに寄り添ってきたんだな。

2021年8月22日

読書状況 読み終わった [2021年8月22日]
カテゴリ 小説

朝日小学生新聞「中学入試で取り上げられた本」で紹介。(ちなみにラ・サール他)

家族に何かが起きた時には余計、
相手を思う気持ちが強ければ余計に、家族はギクシャクしてしまうものかもしれない。

「家族っておかしなもんなんだよ。父親とか母親とか兄とか弟とか、そういう役みたいなものをそれぞれが全うしようとするんだよな。外れないように無意識に演じあっている」p207


「失うことの、奪われることの苦しさ」p282
それは、たとえ家族や恋人であっても分かち合うことはできないのだろう。


「ふたりで走っていても」「走ることはやっぱり孤独だ」「孤独で、自由だ」
兄も弟も、きっかけはお互いのためと始めたブラインドマラソンだが、自分のために走っていたことに気づく。役割を演じるのではなく、自分自身を生きる。そこから、スタートする。



『車夫』より、吉瀬さんが友情出演してるみたい。そちらも読んでみようかな。

2021年8月16日

読書状況 読み終わった [2021年8月16日]
カテゴリ 小説

百田尚樹初のミステリー。

緊張したー面白かったー!!
遅読の私が(半日かけて)一気読みでした。犯人をこれほど応援したことはない!(笑) 

切ない人生ばかり。「社会のはざまに落ち込んで」p262しまう怖さ。
メディアやSNSの無責任さ。
どれも自分のすぐ側にあるものだ。

松下さんの長く辛い人生の終わりに、「お釣りがくる」ほどの出来事があってよかった。
「急なお別れは辛いだろう」「笑って生きようや」

2021年8月14日

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読書状況 読み終わった [2021年8月14日]
カテゴリ 小説
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