この作品を読んではじめて、今までの作品をどうして好きになったのかが深くしっかり腑に落ち、この作品は千早さんの真骨頂だと思った
傷と向き合って生きていく、ということをこんなにも真摯に様々な形で書き続けられる人がいる、それに勇気づけられて生きている
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正欲 (新潮文庫 あ 78-3)
- 朝井リョウ
- 新潮社 / 2023年5月29日発売
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中盤の大展開のあと、見事に夏月と佳道を羨ましいと思ってしまうように描かれてるの、うますぎませんか?「おもしろかったー!」ってなる「べき」本ではないんだろうが、おもしろかった。
ほんでもってあとがきが好き。
正しくあろうとして、ないしは正しく伝えんとして「」を多用しちゃうのめちゃわかる
2023年12月7日
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クローゼット (新潮文庫)
- 千早茜
- 新潮社 / 2020年11月30日発売
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他人からつけられた傷と思い出したくもない記憶を、乗り越えるヒントと勇気をくれるのもまた他人。ひととかかわることで風穴があいて、やっと本当に自分を見つめ直せるのかもしれない。
そして俗な感想だけど、めちゃくちゃ映像化(連ドラ)しやすそうな物語だなと。NHKの深夜ドラマとかでやってほしい。
2023年1月29日
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熱帯魚 (文春文庫 よ 19-2)
- 吉田修一
- 文藝春秋 / 2003年6月10日発売
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美しい俳優が演じることを想定したダメ男ものの群像劇を、なぜかそのへんの一般人が主演しちゃった!ダメだよ〜人間臭すぎるよ〜!みたいな小説×3篇。好きです。
共感しながら読むやつじゃないはずなのに、自分のダメポイントを浮き彫りにされるような居心地の悪さを感じながら、ぞわぞわしながら読みました。でも妙に爽やかな読後感なのがウケます。なぜ。
2023年1月19日
物語に出てくる固有名詞をつい検索してしまうほどにリアル。
いなかをしらない、暇を持て余したオカルト好き都会人のみなさんにおすすめします。私は◾️◾️にはもう絶対に行けない。
2022年9月8日
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楽園の真下 (文春文庫)
- 荻原浩
- 文藝春秋 / 2022年4月6日発売
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虫、そんなに苦手じゃなかったのに、苦手通り越して無理寄りの嫌いになってしまった。。それくらいこわい。ウニョウニョ系も飛ぶ系も節足も全部怖い。デカいのも怖い。どうしてくれよう。
めっちゃおもろいです。
2022年11月14日
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女たちは二度遊ぶ (角川文庫)
- 吉田修一
- KADOKAWA / 2009年2月22日発売
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あらためて、クズでチャーミングで社不でセクシーな女性を描くのがうますぎるなと。。
「遭ったことのある11人の女」を小説にしたそうだが、自分のことをこんなふうに描いてくれる人がいるなんて恐ろしいけれどすこし羨ましい。
解説の田中敏恵氏
「男が語る女は、女にとってリトマス試験紙のようだ」
吉田修一さん、モテるんだろうなぁ。
2022年5月18日
ううん、、小説として読み応えがあるとは思わなかった。ポリアモリーや同性愛など今の若者をとりまく恋愛というテーマをこの早いタイミングで書いたことに意義がある本だと思う。
良くも悪くも筆者の書きたい要素が多く一つ一つが薄いので、共感できるエピソードがある人はものすごく自己投影して(補完する余地がめちゃくちゃあるので)高評価するのだろうし、そうでない自分は全く乗れなかった。
読んでよかったとは思う。
(以下、メモに入ってたやつ、供養)
こんな人、いますね
こんな人も、いますよね
みたいな本だなーっていうのが第一の感想。
ただ主人公・圭吾の感性だけがあまりにもファンタジー。要素要素としてはまあ居そうなんだけど、この性格考え方が全部盛りの成人男性はファンタジーだと思う。笑
テーマがテーマだけに、そしてキャラの深掘りが意外とされていない本であるがゆえに(読者の想像でいくらでも膨らませられるがゆえに)、人によっては読後かなり心乱されちゃうんじゃないかな。キャラの誰かしらに自己投影できた人は高評価つけそうな本。
ふわっとした気持ちを自分で言語化していくさまの書き方はリアルで上手いなと思った!
さて誰にも共感できなかった読者としては、筆者や登場人物と同じ時代を生きる未婚の同世代だから(時代を見る目が近いから)読めた本って感じがすごい。
なんか色んな意味で知り合いのブログを読んでるようなクオリティの小説だと思ってしまった。
いいように言えば瑞々しいってことなのかな。
コロナとか自由恋愛の形とか同性愛とか働くことについてとかジェンダー観とか、、タイムリーな要素を惜しみなく組み込んでいて、いまの日本の空気感を表現したかったのだろうけど逆にとっ散らかっている印象がある。
要素が多い割に短い物語なので、それぞれのテーマがもつ重さに対して読み足りなさを感じてしまうのかも。
2022年5月18日
認知症の義母、鬱病の義父を翻訳家・エッセイストである著者が別居サポートするようすを、義母目線で綴った異色の作品。
認知症という個人差の大きな病気を持つ人を主体的に描写することなどできるのだろうか、本人の尊厳を踏みにじることと紙一重なのではないか、などの心配は全くの杞憂であった!
「私」(=義母)の日常に現れる数々の「悪人たち」とそれに翻弄される「私」の怒り、戸惑い、不安、、、
老いることの自認と事実の狭間でさまよう認知症老人の苦悩を、持ち前の雑さと極上のユーモアで痛快にさばく「あの子」(=息子の嫁、著者)のふるまいや視座からは、義両親への深い愛情と尊敬の念が感じられる。
認知症患者に日々敬意を持って接することがどれほど大変なことかは経験者でなくても想像に難くないが、子育て・執筆活動・別居介護の3足の草鞋で日々を爆走しこの本を書き上げた著者の胆力…
章が進むとともに「私」の症状も刻一刻と変化していく。この時間と症状経過の描写がまた秀逸で、介護する側の難しさと被介護者の苦悩それぞれが染み入るように鮮やかに感じられた。
心がギュッと苦しくなる、先の見えないトンネル。
祖父母の介護を終えふたりを立派に見送った父も、その嫁であった母も、このトンネルの中にいただろうか。わたしは何ができただろうか。来たる介護の日々に何ができるだろうか。
半フィクションとはいえ介護される側の視点から語られる他人さまの老後生活を覗き見ることで、我が身を振り返るよいきっかけとなった。
さながら現代日本のイソップ童話である。
2022年4月8日