罪の余白 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
3.40
  • (72)
  • (227)
  • (316)
  • (76)
  • (7)
本棚登録 : 2791
感想 : 214
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041023877

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ◎生々しいスクールカースト、追い詰められた女子高生の取る行動。どれだけ人間は冷たくなれるんだ。
    安藤の娘、加奈はある日突然学校のベランダから飛び降りて死亡する。そんな加奈のそのときの回想シーンから小説は始まる。
    悲しみに暮れる安藤は、加奈がなぜ飛び降りたのかがわからない。そんな中クラスメイトから寄せられた手紙に疑念を覚え、加奈のパソコンを開こうとするが、パスワードがかかっていて開けない。
    一方飛び降りたところに居合わせた咲と真帆。二人は自分たちのしたことにそれぞれの思いを持って口裏を合わせようとする。咲は一人で安藤のいる家に向かう。偽名を使いあがりこんだ咲は盗聴器をしかけようとする。一方加奈の話を聞きたい安藤は咲を引き留めるために日記がある可能性を伝え、日記を見つける。そこに書いてあったのは咲や真帆と一緒に遊ぶ加奈の姿・・・と思いきや、いろいろないたずらをされたりして苦悩する加奈の姿があった。
    安藤は咲や真帆に復讐することを考えるが、咲と真帆は安藤の先手を打とうとする。復讐が勝つのか、先手が勝つのか。

    真帆は咲に認められたいがために咲の言うことには逆らえない。咲はクラスのリーダーというよりは誰も逆らえない裏ボス的な立場である。そんな咲を中心とする陰湿ないじめ。誰も逆らえない、誰も助けてあげない。加奈は咲とも真帆とも仲がいい、と思っていただろう。どんなに加奈は辛く感じながらも何とか仲良くなりたい、もっと遊びたい、と思っていただろう。弱みに付け込む咲は人心掌握に長けていて、スクールカーストの頂点にふさわしいと言うべき人間だろう。咲は、自分は悪くない、自分が有名になるためには誰の犠牲もいとわない。
    苦悩の末追い詰められた加奈は飛び降りる。
    安藤は早苗に支えられながら、加奈を失った悲しみにくれた状態から少しずつ人間としての精気を取り戻していく。安藤は犯人に気づいた瞬間から、復讐を計画した。しかし簡単にいかないと踏んでいた。咲と真帆を罠にかけた。安藤は追い詰めて決断する。
    咲は、安藤に追い詰められて決断する。
    決断はその場ではきっと痛々しいが最良の手段だっただろう。

    映画を見たあとに読んだ。小説だけだともしかするとふわっと話が進んでいく印象もあるので、映画から見るのもよい。映画では咲の陰湿さがより際立って見える。小説は一人ひとりの感情を理解しながら読むことができるので映画で語られない背景も十分楽しめる。

  • 一気に読んだ。
    映画は、見逃して観てない。
    だけど、上映期間が短かったから大した事ないかも…と思ってた。
    大した事、あった。
    世の中、TVや週刊誌で取り上げられてる内容だった。
    特に女子は、面倒くさい生き物だ。
    ベタって熱帯魚、初めて知った。
    安藤さん、助かって良かった。
    早苗さん、これからも宜しくお願い致します。
    って、願わずにはいられなかった。
    感情移入Maxな私でした。
    '16.01.09読書完了

  • 2015.11.28読了

  • 帯にゴンゾウの人がいたからなんか脳内で映像化しやすかった。初めてこういうシナリオの小説読んだせいもあるのかラストは焦燥感あおられた。

  • マンションのベランダから突き落とされたとき、娘と同様に死んでしまうと思った。
    良かった、安藤が助かって。
    巡りあわせの悪い安藤だけれど、せめて今後早苗と上手くいかないかなあと、願ってしまう

  • 大学講師・安藤の娘加奈が学校で転落死した。事故なのか、自殺なのか。心が悪魔に変貌した安藤の復讐がはじまる。
    大人から見ると実に小さい学校の世界。逃げ場はあるという理屈は、子供たちには通用しない。何故なら大人社会でも職場、地域や近所、公園など、小さなコミュニティ内で同じような苦痛を与えたり、感じているからだ。逃げ道は同じ境遇の者を見つけることしかない。加奈の孤独感を思うとやりきれない。
    本作品の巧いところは、対人コミュニケーション能力に欠ける早苗の存在である。加奈との対比で捉えると、彼女の個性が貴重に思える。

  • どうしよう、お父さん、わたし、死んでしまうー。安藤の娘、加奈が学校で転落死した。「全然悩んでいるようには見えなかった」クラスメートからの手紙を受け取った安藤の心に、娘が死を選んだ本当の理由を知りたい、という思いが強く芽生える。安藤の家を弔問に訪れた少女、娘の日記を探す安藤。二人が出遭った時、悪魔の心が蠢き出す……。

    いじめに加担していた咲が、最後まで罪悪感というものを持てずに自分の保身のみを優先し、1つの誤魔化しを隠すために結局は取り返しのつかない罪を犯してしまう。何て愚かなんだろうと思った。
    小・中・高と狭く閉ざされた世界が唯一と考えてしまいがちな学生時代。そこで居場所を失ったら…と恐れ、追い詰められてしまう前に「世界はここ以外にある、逃げ場所はいくらでもある」と日頃から伝え続けないといけないのかもしれない。

    読みながらずっと内野さん&吉野実憂ちゃん(映画キャスト)が頭の中で動き回っていたな。DVD化したら見てみよう。

  • 子供がいじめを苦に自殺したら、(実際は事故だったが)
    自分がどういう風になってしまうのか、犯罪をおかしてしまうかもしれないと思うのはみんなある心理だと思う。映画化ということで、ちょっと見てみたい

  • この手の小説を読むといつも思うことがある.子供って大人が考える以上に残酷な存在なんだと.中学生ぐらいになれば思考も大人と然程変わらない,強いて言えば経験不足からくる短慮が目立つぐらいだろう.本作の父親の気持ちが痛いほど分かる気がする.
    以下あらすじ(背表紙より)
    どうしよう、お父さん、わたし、死んでしまう―。安藤の娘、加奈が学校で転落死した。「全然悩んでいるようには見えなかった」。クラスメートからの手紙を受け取った安藤の心に、娘が死を選んだ本当の理由を知りたい、という思いが強く芽生える。安藤の家を弔問に訪れた少女、娘の日記を探す安藤。二人が出遭った時、悪魔の心が蠢き出す…。女子高生達の罪深い遊戯、娘を思う父の暴走する心を、サスペンスフルに描く!

全214件中 181 - 200件を表示

著者プロフィール

1984年東京都生まれ。千葉大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2012年『罪の余白』で、第3回「野性時代フロンティア文学賞」を受賞し、デビュー。16年刊行の『許されようとは思いません』が、「吉川英治文学新人賞」候補作に選出。18年『火のないところに煙は』で、「静岡書店大賞」を受賞、第16回「本屋大賞」にノミネートされる。20年刊行の『汚れた手をそこで拭かない』が、第164回「直木賞」、第42回「吉川英治文学新人賞」候補に選出された。その他著書に、『悪いものが、来ませんように』『今だけのあの子』『いつかの人質』『貘の耳たぶ』『僕の神さま』等がある。

芦沢央の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
湊 かなえ
湊 かなえ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×