罪の余白 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041023877

感想・レビュー・書評

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  • 女子高生いじめモノ。娘の隠された遺書を見て、父親が復讐しようとするというプロットなのだが、流石は芦沢さんというか、一捻りも二捻りもした展開に驚く。父親の復讐に対する思惑、イジメの主犯の無垢な悪意、腰巾着の子の人間味、など「こんな筈じゃなかった」という描き方がとてもよい。

  •  一人娘の転落死の真相を追う大学講師の父親の姿を描いたサスペンス。

     小説のテーマはどちらかと言うと使い古された感のあるものだったのですが、非常に巧くまとまった秀作だったと思います。

     心理描写が個人的に良かったです。娘を失った父親の後悔などの心理描写はもちろんのこと、ヒエラルキーや仲間外れを恐れる女子高生の心理描写、そして自分の行為が明るみに出ないか恐れる心理描写が非常に真に迫っていてサスペンスフルで読まされます。

     登場人物でもう一人重要な位置にいるのが主人公安藤の同僚の小沢早苗。アスペルガー症候群などではないものの、相手の言い回しや比喩表現が理解できない彼女と、安藤のやり取りが安藤の、そして陰鬱なストーリーのこの本の救いでもあります。
    複雑な人間関係や”空気”というものに対し彼女が無自覚で、冷静に外から見ているからこそ、彼女の心理描写が描かれる場面は一種のエアポケットのような安心感がありました。

    第3回野生時代フロンティア文学賞

  • 最初の方は物語りになかなか入ってこれず、内容がわかりずらかったのですが、中盤以降、名前を偽ってお線香を上げに行く所からお話しがゾクゾクしてきました。
    終盤は手に汗握るやりとりが迫力満点でした。
    相当考える終わり方をして、全体を通してサスペンスフルな作品でした。解説を先に読まない方がいいです。ネタがバレバレでした。

  • 思っていたより軽めな内容で拍子抜けしました。
    気軽に綴った文面がまさか遺書になるとは思いもよらぬでしょう。
    女子高生だからこそ気軽に重い言葉も綴ってしまったのでしょう。
    それでも何故だか死の理由?となった彼女達を許せない私がいます。
    あと咲は本当にカースト上位なのか気になりました。
    咲の友達として明記されるのは2人です……少なくない!?(笑)
    その分、分かりやすいのはメリットではありますが、矛盾を感じざるをえません。
    早苗の不器用で健気な姿が印象的でした。

  • 娘の転落死は自殺だったのか事故だったのか…
    娘の同級生だった木場咲や、真帆、孤独となってしまった父親のお世話をする早苗など、登場人物の心理が巧みに描かれていたと思います。でも今ひとつ入り込めませんでした。。

  • 最近芦沢さんにハマっていて読みました。
    映画化されているんですね。

    娘の転落死の真相を探ろうとする父親。
    事件か事故か。
    娘をいじめていた同級生の女子2人の心理描写がよかった。

    身内に人の気持ちが汲めない者がいるので、父親の同僚のアスペルガー症候群の女性が周りに理解されないところや本人の気持ちの描写はとても興味深かったです。

  • 許されようとは思いません。を読み
    芦沢さんに興味も持って購入しました。
    死んだ娘のため、父が復讐をする。
    シンプルなテーマではありますが、
    思春期特有のヒエラルキーの中で
    落ちぶれまいともがく真帆が印象的。
    咲は嘘に嘘を重ねて戻れなくなっていく。
    ラストはスカッとするわけでもなく、
    ただただ嫌な気持ちがじわっと残ります。

  • 娘をいじめ死なせた二人の高校生に対する父親の復讐。
    人々の心底の、タールのように
    こびりついた思い、またはかさぶたを、ベリベリ剥がすような書き方が上手い。ヒリヒリする文章。

    小さなところから生まれる大きな悲劇。

    「人の心は読めない」というのがテーマかな?

  • まず、この著者は映像の言語化がとても上手で映画やドラマを見ているように小説を読むことができる。回りくどくなくて、自己陶酔してるわけでもなくて、中立的で客観的な表現でもって世界観を構築している印象を受けた。内容はイジメ。加害者が陰湿であることは間違いないが、センセーショナルなほどえげつないイジメというほどの描写はなされておらず、どちらかというと、ナルシスや自己愛、現実逃避、責任転嫁などの痛々しいほどの負のストレス回避法の成れの果てのような内容だった。これはこれでえげつない発想ではあったが。死んだ娘の父親の側にいる小沢さんの存在がちょっと謎めかしい。存在の必要理由がピンとこないが、父親の精神崩壊をすんでのところでとどめ続けた立役者…なのかな?この人が登場するのと登場しないのでは、小説のテイストはどう変わるのかも気になるところです。

  • 若さゆえの無責任というか自己中心的的な思考に、ただただ然るべき罰が下ってほしいと思って読んでいた。

  • 加奈の死の真相が父親に伝わってよかったと思う反面、自殺ではなくても、直接手は下していなくても、行き着くところはいじめで殺されたという事で複雑な気持ちになった

    咲は多分、なんでもっとうまく証拠隠滅できなかったんだろうと後悔してると思う

  • 行動心理学者の安藤は高校生の娘・加奈と二人暮らし。妻は過去に癌で亡くしているが、父子仲は良い。
    なのにある日加奈は学校から飛び降りてしまう。

    こういう子いるいる!と膝を打つほどリアルな加奈の友人たちには、思わず目を背けたくなった。

    娘の死の真相を探ろうと悲しみと狂気に飲み込まれる安藤をなんとか人間たらしめていたのが、“人の感情を上手く汲み取れない”早苗だったのが、なんとも皮肉だなあと思った。

  • 上手いなぁ…イヤミスと言われても引き込まれて今回も一気読み。内容的にはほんと辛くてこんなことが…となるのだけど。はーーーすごい。

  • 初めから嫌な予感しかしない書きっぷり。
    娘は運が良いのか悪いのか。

  • 娘を亡くした父親と、彼女を死に追いやった同級生の話

    日々機械的に"生かされている"ような父親が、復讐の計画によって徐々に生気を取り戻していくのが読んでいて辛かった
    狡猾に見えて、明らかな罠にまんまとはまってしまう咲の幼さも、どうしてこんな風になってしまったんだろうと考えるけど救いようもない
    一番ありがちなのが真帆のポジションで、"普通"の子がとんでもない犯罪に加担してしまうところがリアルだった

    発達障がい(たぶんASD)で、人の気持ちを読み取るのが苦手な早苗だけがこの物語では救い
    行動や思考に裏表のない早苗の存在が、裏の顔だらけの他の人物たちを引き立たせているようだった

  • 物事って視点によって様々。蝉の抜け殻。

  • 世代的に今時の女子高生の分からない部分もあるけれど、自分の時代よりも精神的苦痛によるイジメが多いのだろう、とはいえグループやクラス内の自分の居場所、などなど悩みもつきない年頃というのは変わらず昔もあったと懐かしく思い出した。娘を亡くした父の心理は想像できないけれど心理学者ということもあり最後に逆転できたのは痛快だった。頭も良く誰もが羨む美貌の咲への復讐は叶ったのかその後の咲の心情も知りたかったけれどそこは読者の想像にお任せということか。映像も並行して見たけれどやはり小説を先に読む方が自分には合っているかな。

  • お父さん頑張ったけど
    たまたま生きてただけで死なずに咲を本当に後悔させてら心から謝らせて欲しかった。
    罪を背負わすには咲が大成功して幸せになって娘も産んで人生経験を積んで 色んな人の感情ができてからかも。捕まっただけできっと本当の反省はできてないだろうな。

  • テーマも内容も非常に重いけれど短さ故に簡潔に、だけど要所をしっかり掴んでいてあっという間に展開され一気に読めるものだった。加奈の視点を初めのプロローグにもってくるところからグッと引き込まれ、それ以降は加奈の視点は出てこないのだけれど、それぞれの視点から加奈という人柄がいじめの背景に乗せられありありと見えてくる。
    狭い教室という箱の中で懸命に生きようとする彼女達。きっと誰しもが味わったことのあるヒエラルキー構造から成る居場所のあり方。
    大人になれば、何をあんなに狭い場所で狭い視野で前ならえで過ごしていたのか、と思うけれどその渦中に居る彼女達にとってそれは彼女達の全てで。居場所の全てで。自分の価値を図る場所で。
    そういう意味では真帆の友達への依存も、咲の異常なほどの周りからの評価への執着も、とてもわかる。
    そして唐突に娘を失わなければならない父親の果てのない痛みと憎しみも。
    直接咲に手を下させることが彼女達の罪に対する一番の罰になったのかは読み終えた今でもわからない。

  • 『人は、遺伝子を残すために生きているのではない。物語を刻むために、生き続けるのだ』

    中盤にあるこの文章が心に響いて、のめり込むように一気に読んでしまった。後半の謎解きはスピード感があり面白い。
    この作者の他の作品も読んでみたいと思う。

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著者プロフィール

1984年東京都生まれ。千葉大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2012年『罪の余白』で、第3回「野性時代フロンティア文学賞」を受賞し、デビュー。16年刊行の『許されようとは思いません』が、「吉川英治文学新人賞」候補作に選出。18年『火のないところに煙は』で、「静岡書店大賞」を受賞、第16回「本屋大賞」にノミネートされる。20年刊行の『汚れた手をそこで拭かない』が、第164回「直木賞」、第42回「吉川英治文学新人賞」候補に選出された。その他著書に、『悪いものが、来ませんように』『今だけのあの子』『いつかの人質』『貘の耳たぶ』『僕の神さま』等がある。

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