罪の余白 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041023877

感想・レビュー・書評

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  • 娘を失った父親の復讐というのがメインのストーリーですが、いじめの内容や復讐に関しては、他のソレを主に描かれた作品達と比べると非常にライトで、この作品は人物描写がメインなんだと思いました。

    高校生の女の子同士の、1人になるのが、一人ぼっちだと思われるのが怖いという特有の心理がすごく生々しいと思いました。

    真帆ちゃんの、自分が学校を休んだら置いてけぼりになるかもしれないという恐怖で、風邪をひいても休まなかったり、娘さんの、親に友達がいないと思われるのが嫌で夏休み中に友達と遊んでくると嘘をついて1人どこかで時間をつぶしたり。

    確かに学生時代は、昼休みや、トイレに行くのにも、1人ぼっちにはなりたくないと思った。グループを作り、その中で嫌われないように立ち回る。
    面白いと思わなくても笑い、話を合わせるために好きでもないテレビ番組を観る。

    どうしてあんなに、周りにどう思われるのかにいつも神経を尖らせていたんだと大人になった今では思うけど、友達がいないと思われたくないという若い時のプライドがその時は全てで、そんな真帆ちゃんが1人でも平気な咲ちゃんに盲信的になるのもよく分かりました。

    一方でその咲ちゃんも、芸能人になりたいけど一生懸命夢を追うのはプライドが許さず、世間がほっとかなかったからしぶしぶ芸能人になったという展開を作るべく計算した日々を送っています。

    そういう素直じゃない所や、芸能人になりたくて必死だと周りに思われたくないという所が子供っぽく、下手に美人だとこんな性格が多いかもと思いました。

    自分の行いがバレないように画策するけど、子供の浅知恵で、ムカつく女に描かれているけど、私にはなんだか可愛く思えてきました。

    そんなドロドロな女子高生たちの思惑と対照的なのが、早苗さん。

    子供の頃から人の気持ちがわからず、周りにどう思われるかなんて考えずに生きてきた彼女が物語のいいアクセントになっていました。


    お話全体は、文体が軽くサクサク読めました。

    娘さんが亡くなった原因は100%が咲ちゃん達のせいだとは思えず、手すりを歩くのを強制されたわけじゃないし、友達を失うのが怖くて無茶した娘さんの事故とも言えると思うので、確かに反省せず揉み消そうと画策する咲ちゃんは悪いけど、けど、娘を失った父親にしてみれば憎むべき相手だし、っていうなんかモヤモヤとした話でした。
    若い作家さんならではですね。
    ある意味リアルで、現実にたくさんありそうな話です。

  • 女子高生の娘がいじめで自殺したとわかった時、父の復讐がはじまる。狡猾な女子高生は裏をかき、自分だけは復讐の魔手から逃れようとするが……

    話にしてみればシンプルな内容で謎らしい謎もないのだが、妻をガンで失い、そのうえ娘加奈を失った安藤の壮絶な日常や、いじめていた側の咲、真帆の少女特有の自意識過剰や仲間外れにされることへのすさまじい恐怖が、とにかく詳細に描かれているので…読んでいくと疲れてしまうかもしれない。

    その中で特異な位置にいるのが、安藤の同僚で他人の気持ちが理解できない、言葉通りに受け止めてしまうことを悩む早苗の存在だ。理解されない、してあげられない年月を重ねた末、他人と関わらないことを選んでいた早苗が、安藤には関わっていく。彼女の存在が普通の復讐モノ(?)とは違ったものとなっている気がした。

    そして安藤が咲を試すラスト。咲はどう応えるのか? 本当に反省していれば死ぬことはないと聞き…面白かったですね。ただちょっと都合よすぎな気もしたので(どこがかはネタバレになるので言えないが)、普通に☆3つ。

  • 胸糞悪いストーリーだったけど思春期の女の子の甘さ、傲慢さ、全能感がじっとりと描かれていて良かった

  • 子供であろうとも無自覚な悪意は最悪だ
    そして、実は自覚して楽しんでいるんじゃないかと思うともっと最悪だ

  • 菅野美穂さん主演のドラマ「私の教科書」を彷彿とさせる内容だった。
    事故か自殺かどちらなのか分からない転落死。どちらにせよ親としては子に先立たれるのはやるせないだろうに。
    加奈がいじめられるきっかけとしては、よくある日常のちょっとした気に入らなかった言動が発端。ただし普通であれば相手に悪意が無いことが分かればいじめまでには発展しないだろうと思う。
    けれどこのちょっと気に入らない、で意地悪したり相手が傷つく言動をわざとしてしまうという心理は誰でも持ってる感情ではないのかな。
    加奈が落ちていく時の焦りと絶望、いじめられていることを打ち明けられず恥ずかしいという感情の表現が丁寧に描かれていた。
    咲や真帆については、救いようがないのだろう。
    一線を超えた行動を取ってしまう子は人の痛みなど分かる日は来ない。

  • 【2023年35冊目】
    面白かったです、が、早苗さんの役割がイマイチわからず。父親と娘とあの二人だけだとそこまで際立たないからスパイス的な感じなのかなと思ったり。いじめは本当、犯罪というか、年齢で容赦するのはどうなんだろうと思っている派なので、しっかり裁いてくれやの思いが……

    ベタを持ってきたのもちょっとあんまりよくわからなかったんですけど、私の読み込みが足りない可能性はあります。

  • まるでその場にいるかのような、ハラハラするようなストーリーだった。わりとおすすめ

  • 切ない物語ですね。


    咲が最初から最後までなかなかのクズっぷりを発揮します。

    父親が可哀想すぎて見てられなかったですが、なんとか早苗と2人で乗り越えて欲しい。

  • ベタのエピソードとか早苗さんの特徴的な性格などがそこまで重要性をもってなかったような?
    あまり私には合わない作品でした。


  • 美人だけどその他を下に見ている子、
    常に誰かと一緒じゃないとダメな子。

    女子高生だったことがある私としては、
    いるいるこういうクラスメイト。
    と思いながら読んでいました。

    クラスに居場所がないだけで、
    友達にハブかれるだけで、
    この世の終わりのように思えるんですよね。

    愛情を注いで大切に育てた娘が
    イジメに遭っていて自殺してしまうなんて。
    親としては1番悲しいことだと思います…



  • どの登場人物も確かなリアル感で存在していて、唯一理解できないのが咲の行動だったけど、でもそれさえも『理解できない人』って言う、日常遭遇するリアルを持ってる。
    そして、その理解できない人をよりリアルにするのが早苗の存在なんだとエピローグで思い知らされる。
    途中からの咲の行動が恐怖すぎて、結末というか、その行動の後先が想像できるように巧妙に導かれてるだけに、怖くて仕方なかった。
    後味がいい話ではないんだけど、物語として凄く完成されてると思う。

  • どうしよう、お父さん、わたし、死んでしまう…。安藤の娘、加奈が学校で転落死した。「全然悩んでいるようには見えなかった」。クラスメートからの手紙を受け取った安藤の心に、娘が死を選んだ本当の理由を知りたいという思いが強く芽生える。安藤の家を弔問に訪れた少女、娘の日記を探す安藤。二人が出遭った時、悪魔の心が蠢き出す…。女子高生逹の罪深い遊戯、娘を思う父の暴走する心を、サスペンスフルに描く!

  • 意味深なタイトルに惹かれて手に取った一冊。なかなか良かったです。

    いじらしいほど「いい子」な加奈が、くだらない交友関係のために命を落としてしまうなんて… 自分が安藤聡の立場だったら、我を忘れて咲に復讐するだろうな、と思います。そうした点でどういった結末になるかが気になって、かなり興味を持って最後まで読み進められました。

    一点だけよくわからないのが小沢早苗の設定。アスペルガー症候群ぽい感じですが、この設定の必然性があまり感じられず。作品内のすべての設定に必然性がなくてはならない訳ではないですが、何となく「なんでこの人、こういう設定なのかな?」と疑問に思ったもので…

  • 学校のベランダから転落して一人娘を亡くした父親が、その真実を追ううちに、いじめの事実に突き当たっていき、そして…というサスペンス。
    理性を保っていたはずの父親が、あるエピソードをきっかけに強い殺意を抱く場面が恐ろしくてそして哀しい。その憤りと気づけなかった自らに抱く後悔が限界まで高ぶって、あまりにも残酷だと感じました。
    父親の敵となる女子高生は生々しい造形で、エゴのかたまりな行動と言動のすがすがしいまでの迷いのなさには彼女の空虚さの深さを感じ取りました。誰よりも実は彼女の思考は幼い。けれど発達した知能が、ひどく冷酷な結果を抱いていくという歪みがリアルに迫るように感じました。
    もうひとりの大学教員の女性のキャラクタもまた一つのスパイスとなり、双方の「対決」を冷静な視点から眺める役割ともなっていて面白いなと思いました。彼女ほどは行かなくても、巧く相手と距離感をつかめないと感じるときはだれしもあるもので、だから彼女に親近感や頑張ってほしいという気持ちを抱きもしました。

  • 屋上からの飛び降りにより
    亡くなった娘の父親が
    その理由を追求する復讐劇

    父親、娘、その友達、父親の同僚と
    大きく5つの目線で紡がれるストーリー

    文字がそのまま情景になるような
    とても読みやすいサスペンス。

    激情する父親と父親思いの娘
    人の心情を解すことができない同僚
    エゴにまみれた友人に自己肯定感の低い友人
    登場人物の個性が物語をなお面白くしている。

  • 最後すっきり、咲ほんと嫌やったわ

  • 女子高校生の陰湿ないじめから自殺と見せかけた死亡事故。悲しみのどん底に追いやられる父親。人の気持ちがわからないと感じながらも、その父親に寄り添おうとする同僚。そして、罪を隠すためにさらに罪の上塗りをしようとする女子高生。
    特に女子高校生の関係性が辛かった。人間は一人では生きてはいけないが、他者に依存しすぎても生きるのが辛くなる。

  • 芹沢央さん作品やっぱり好きだ

    感想と違うけど
    早苗の苦悩は手に取るようにわかります…

  • 起承転結・時系列が分かりづらく始めのうちは読み進めるのが少し大変だった…が、人物ごとの目線で描かれていたからこそそれぞれの人物に感情移入し理解が深まった。
    いじめというよくあるテーマに何の要素がプラスされるのかというところで、心理学教授が2人もいることから、相当な心理テクを用いて加害者を炙り追い詰めるのかと期待していたが、残念…正直安藤父の罠が幼稚で単純だと感じたし、それにまんまと引っかかる咲もどうかと思ってしまった…
    ただやはり、人物それぞれの背景がしっかり書かれているので、読み進めていくごとに愛着が湧いてきた。特に小沢早苗。物語のキーマンにはならなかったが、影で安藤父を支えたという点では影の立役者的な側面がありそう。それよりも「悩めるロボット」の背景を持つキャラクターとしての魅力があって、安藤との関係性もすごくドキドキした。始めは面白みのない脇役と思っていたのに、中盤・終盤にいくにつれて、「早苗が何かしてくれないかな、何か考えてないかな」と期待させられる。結果的に察しの悪いロボットだったので何もキーマンらしいことはしてないが、読者の興味関心をそそる大事な役割ではあったんじゃないかなと思う。

  • お父さんが終始可哀想で電車で思わず泣きそうになりました。
    被害者と加害者、両方の視点を描くことでこの物語の本質を魅せられていると思いました。
    発達障害を持っている可能性がある小沢早苗の言動や心の中が秀逸に描かれていると思います。
    映画化されているみたいですが、予告を見た段階で小説以上に木場咲にイライラしそうだなと思ったので見ません。

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著者プロフィール

1984年東京都生まれ。千葉大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2012年『罪の余白』で、第3回「野性時代フロンティア文学賞」を受賞し、デビュー。16年刊行の『許されようとは思いません』が、「吉川英治文学新人賞」候補作に選出。18年『火のないところに煙は』で、「静岡書店大賞」を受賞、第16回「本屋大賞」にノミネートされる。20年刊行の『汚れた手をそこで拭かない』が、第164回「直木賞」、第42回「吉川英治文学新人賞」候補に選出された。その他著書に、『悪いものが、来ませんように』『今だけのあの子』『いつかの人質』『貘の耳たぶ』『僕の神さま』等がある。

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