罪の余白 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 2813
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041023877

作品紹介・あらすじ

高校のベランダから転落した加奈の死を、父親の安藤は受け止められずにいた。娘はなぜ死んだのか。自分を責める日々を送る安藤の前に現れた、加奈のクラスメートの協力で、娘の悩みを知った安藤は。

感想・レビュー・書評

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  • 面白くて読みやすくて一日で一気読み。文章から情景、心情がそのままダイレクトに伝わってくる

    思春期が特有の高いプライドとか、ドラマの主人公かのようにふるまう感じとか、陰湿なイジメなんだけど周りから見ると普通の仲良しグループに見えるところとか、女の子独特の特徴がうまくふんだんに詰め込まれていてちょっと懐かしく、すごく想像しやすい。主犯の女子高生もギリギリサイコパスとまではいかない、自己中でプライドの高い女の子ならしうる行動かな・・ていうところで止まってるし、若さ故か性格故か、考えが浅はかなところも割とリアル。綿密に計画するサイコパス女子高生だったらつまらなかっただろうけど、この程度が絶妙によい。

    娘の自殺の理由が分からなくて絶望するお父さんが痛々しくて辛い。最初はなんでベタ(魚)がこんなに出てくるんだ?と思ったけど少しずつ壊れていく父親の様子を魚(ベタ)の殺し合いで表現していたり、あとから意味が分かって納得。

    唯一早苗さんの役割はイマイチ分からなかったけど。いなかったら父親が救われなさすぎるのでね。

    読みやすくて一気読みしちゃったからかもしれないけど、何年も先まで覚えているような深い作品ではなかったかもな。でも面白かったから満足。

  • それぞれの人の心情に入り込められる。学校と家庭しかない中高生 人間関係大変さがわかる

  • 初めての作家さん。
    寝床でプロローグを読みはじめすぐに辛くなって本を閉じてしまった。そして気持ちを変えるため別の本を読みはじめていた。
    しばらくそのままにしていたが、やはり気になりそれからは一気読み。
    妻亡き後、男手ひとつで大切に育てた娘が自殺(?)
    どうしても納得いかない父親が真実を知ろうと立ち上がる。
    父親、娘の同級生2人、そして父親の女性同僚の4人の目線で物語は進んでいく。
    子供を亡くした父親の悲嘆反応
    、友達を死に追いやった事への重大さに恐れ戦く同級生、そしてその気弱さを強く避難するモンスターの様な少女、場の空気が読めず人間関係で苦労している女性同僚。この4人から様々な問題提起がなされていく。

  • 屋上からの飛び降りにより
    亡くなった娘の父親が
    その理由を追求する復讐劇

    父親、娘、その友達、父親の同僚と
    大きく5つの目線で紡がれるストーリー

    文字がそのまま情景になるような
    とても読みやすいサスペンス。

    激情する父親と父親思いの娘
    人の心情を解すことができない同僚
    エゴにまみれた友人に自己肯定感の低い友人
    登場人物の個性が物語をなお面白くしている。

  • これがデビュー作とは
    恐るべし。

    皆が皆こんなはずじゃ
    なかった、なんです。

    転落死した主人公の娘、

    彼女を虐めていた友人、

    母親にまで誤解される
    主人公の同僚、

    そしてもちろん主人公
    も。

    こんなはずじゃ・・・
    なんで?どうして?と
    とまどう心は、

    出口なき迷宮を彷徨う
    に似て、

    行けども行けども漆黒
    の闇ばかり。

    いずれ精根尽き果てる
    前に差し伸べられた手
    にすがればいいのです。

    その手は常に目の前に
    あるのに、

    手を伸ばせばすぐそこ
    にあるのに、

    暗闇の中にいるせいで
    全く見えないのが最大
    の難点ですが。

  • 芦沢央の作品は、これまで『許されようとは思いません』、『悪いものが、来ませんように』、この2作品読んだことがあったのですが、そのときは、面白いけど、これを「素晴らしい!」と絶賛するのは、どこか抵抗があった。

    しかし、本作は、面白かった。
    夢中になって最後まで一気に読み終えた。

    「芦沢央、面白い」と素直に思った。

    今まで私は強がっていたただけではないか。
    芦沢央の作品を絶賛するって、どこか幼いんじゃないか、と。

    だから距離をとって、「もし学生のときに読んでいたら、とてもハマっていただろうな」なんていう、言い訳のようなことを言って、素直に認められず、強がっていたのではないか。

    そう思ってしまうほど、本作は、面白かった。


    “イヤミス”なんていう言葉があるけど、そんなふうに括ってはいけないように思った。

    確かに、嫌な気分にはなった。

    例えば、父親(安藤)が、ベタの殺し合いを見つめるシーンがあるのだけど、これが絶妙に嫌な気分にさせる。わざわざこんなの差し込まなくてもいいのに、と突っ込みたくなるほど。
    それまで“良いお父さん”のイメージだったのが、変わっていく。見たくない姿に変わっていく。憎悪に蝕まれていく様がとても不快。

    「“イヤミス”なんていう一過性のブームで括ってはいけない」、
    そう思ったのは、この不快な感じは、例えば30年後に読んでもきっと不快だろうな、と思ったからだ。
    それは『許されようとは思いません』、『悪いものが、来ませんように』も同様。

    嫌な気分にさせる作風というか、その技術というか、これは一過性ブームではなく、きちんと評価されるべきだろう。文筆力がなくては不可能な技術である。人の心をしっかり動かしている。


    とはいえ、「もうちょっとこうしてほしかったな」という、気になる部分もあった。

    咲という人物。
    「こんな女子高生、滅多にいないでしょ」と思うほど、強烈なキャラクターなのだが、こんな人物が生まれるには、家庭環境が大きく影響していると考えるのが自然だろう。

    しかし、家族、家庭環境という背景がほとんど描かれていない(なんなら、お母さんはごくごく普通の人)。
    なので、「突然変異的に生まれたサイコパス」のような存在となってしまっている。
    まぁ、それならそれでいいのだけど、家庭環境がどうなっているのかほとんど書かれていないのは、違和感があった。

    小沢早苗という人物に関しても、「そこまでロボットのような、無機質な性格である必要はあるのかな」と思ってしまった。
    小説を書くにあたって、登場人物に引きがあるキャラクターを与えるために用意した設定――そんなふうに見えてしまった、正直。作者側の意図が露骨に見えてしまうと、冷めてしまう。


    と、このように気になる点もいくつかあったけど、
    それと小説が面白いかどうかは、私個人としては、ほとんど無関係である。

    「細かいことは気にするな」、である。

    細かいことを気にすると、ほとんどの小説は楽しめないだろう。
    ミステリー作品なら尚の事。

    「細かい部分に引っかからないこと」、これは小説を楽しむコツ、小説を楽しめる人の才能だと思う。

    小説の面白さは“大局”にある。

    大局でみたときに、この『罪の余白』は大変面白かった。

    次の展開がどうなるか、ワクワクさせるって、もうそれだけでじゅうぶんです。すごいです。

  • 娘・加奈を亡くした父親、その娘を死に追いやったであろう娘の同級生・咲を軸にした物語

    物語は転落していく加奈の心情から始まります
    加奈は死にたくないと思っているし、父親に対してもこんな事になってゴメンと思っている
    この加奈の気持ちを先に知らされているため、余計にこの後に書かれる父親の苦悩が心をえぐってきます
    父親の苦悩と対比で同じく悩んではいるが、それは自身の保身のためである咲の軽薄さ身勝手さが不快さを煽ってきます

    父親の同僚とし登場する早苗の存在は、この小説の各登場人物の心情パートを細かく繋げていく書き方にハマっていて、一見分かりにくい彼女の行動に人間らしさを現していたように感じました

    終始咲の言動に胸糞悪い気持ちにさせられますが、物語の後半からはグッと展開が早くなりサスペンス要素が強くなり惹き込まれました

  • 久々の芦沢さん作品でした。独特の嫌な気持ちになるので続けては読めないけど、たまーに読みたくなるタイプの作家さん。
    本作もぶつけどころのない怒りが湧いてきて、気分悪いわと言ってたけど、続きが気になって一気読みしました。救いようない。読み物としてはおもしろい。。いらいらするけど。。

    自分が女子校出身でスクールカーストも感じたことない身で、周りに合わせることも小さいときからあまりなかったタイプなので、この手の話を読んだ時は、大変な世界なんだなぁと。自分はこういうことで今まで悩まずに生きてこられてラッキーだったのかと、よく思います。

  • 最初の方は物語りになかなか入ってこれず、内容がわかりずらかったのですが、中盤以降、名前を偽ってお線香を上げに行く所からお話しがゾクゾクしてきました。
    終盤は手に汗握るやりとりが迫力満点でした。
    相当考える終わり方をして、全体を通してサスペンスフルな作品でした。解説を先に読まない方がいいです。ネタがバレバレでした。

  • 先日のパラダイスクローズドにも登場した、熱帯魚ベタ(闘魚)。こちらでも、時折登場してきます。
    縄張りとか威嚇のモチーフかな。
    好きな作家の芦沢さん、10年以上前の作品ですが、女子高生達の軽薄な意識に悪寒を覚えます。
    本人は、決して死ぬつもりは無かったが、教室のベランダから転落死した女子高生。
    彼女は、何故死んでしまったのか。
    父親は、残されたパソコンの日記から、同級生から嫌がらせを受けていた事を知る。父親は、自殺と確信する。愛する娘を奪われた父親は、人生をかかけて復讐を決意する。
    親や家族の愛情さえ踏み躙る、女子高生の悪意ある行動。彼女達の正義はスクールカーストの保身のみのよう。
    この父親に寄り添う、人の感情を読み取ることができない同僚の女性が、興味深いのだけれども、
    登場が中途半端でもったいない。この病んだ女子高生と関わって、彼女らの罪に対する意識を変えて欲しかった。

    • ゆーき本さん
      映画にもなったやつだね。
      観た気になってたけど わたしが観たのは「渇き。」のほうだった!イヤミス??
      映画にもなったやつだね。
      観た気になってたけど わたしが観たのは「渇き。」のほうだった!イヤミス??
      2023/12/01
    • みんみんさん
      イジメの話はキツいな(。>ω<)
      イジメの話はキツいな(。>ω<)
      2023/12/01
    • おびのりさん
      うん。思っていたのと少し違いました。
      最初、死ぬ場面からなんだけど、少女は、自殺だと思われちゃう、って思いながら死ぬのよ。
      確かにいじめられ...
      うん。思っていたのと少し違いました。
      最初、死ぬ場面からなんだけど、少女は、自殺だと思われちゃう、って思いながら死ぬのよ。
      確かにいじめられていたけど、本人は、死ぬつもりは無かったのね。
      日記を見ちゃったお父さんと、いじめがばれそうな女子高生の、駆け引き。
      気持ち悪いのは、相手が死んで自分の罪を考えるではなく、保身に走るところ。
      イヤミスよりだけど、最後にちょっと救いがある。
      2023/12/01
  • 死んだ娘がいじめられていた大学教授のお話。
    よくある系だなーという感じでした。特に盛り上がるとこもなく。

  • 落下シーンから始まる。安藤の娘、加奈が学校で転落死した。警察は自殺と判断。学校はいじめの事実はなかったと。妻もなくしている安藤は、なぜ娘が自殺しなければいけなかったのか知りたい。到底納得がいかないのだ。

    葬儀を終えて放心状態の安藤の元に、1人のクラスメートが線香を上げにやってくる。そこで加奈の日記を探すことになり、そこが真実を解く端緒となった。

    安藤の同僚の早苗は元来冗談が通じない。人の心の機微が全く分からない。アスペルガーかと脳を調べてみたが正常だった。安藤と早苗、クラスメートの咲と真帆の視点で紐解かれる。それぞれの想いが交錯する。

  • 芦沢央さんの作品は最高

  • 最後すっきり、咲ほんと嫌やったわ

  • 女子高校生の陰湿ないじめから自殺と見せかけた死亡事故。悲しみのどん底に追いやられる父親。人の気持ちがわからないと感じながらも、その父親に寄り添おうとする同僚。そして、罪を隠すためにさらに罪の上塗りをしようとする女子高生。
    特に女子高校生の関係性が辛かった。人間は一人では生きてはいけないが、他者に依存しすぎても生きるのが辛くなる。

  • 女子高生いじめモノ。娘の隠された遺書を見て、父親が復讐しようとするというプロットなのだが、流石は芦沢さんというか、一捻りも二捻りもした展開に驚く。父親の復讐に対する思惑、イジメの主犯の無垢な悪意、腰巾着の子の人間味、など「こんな筈じゃなかった」という描き方がとてもよい。

  • 胸糞悪いストーリーだったけど思春期の女の子の甘さ、傲慢さ、全能感がじっとりと描かれていて良かった

  • 娘を亡くした父親と、彼女を死に追いやった同級生の話

    日々機械的に"生かされている"ような父親が、復讐の計画によって徐々に生気を取り戻していくのが読んでいて辛かった
    狡猾に見えて、明らかな罠にまんまとはまってしまう咲の幼さも、どうしてこんな風になってしまったんだろうと考えるけど救いようもない
    一番ありがちなのが真帆のポジションで、"普通"の子がとんでもない犯罪に加担してしまうところがリアルだった

    発達障がい(たぶんASD)で、人の気持ちを読み取るのが苦手な早苗だけがこの物語では救い
    行動や思考に裏表のない早苗の存在が、裏の顔だらけの他の人物たちを引き立たせているようだった

  • 子供であろうとも無自覚な悪意は最悪だ
    そして、実は自覚して楽しんでいるんじゃないかと思うともっと最悪だ

  • 芹沢央さん作品やっぱり好きだ

    感想と違うけど
    早苗の苦悩は手に取るようにわかります…

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著者プロフィール

1984年東京都生まれ。千葉大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2012年『罪の余白』で、第3回「野性時代フロンティア文学賞」を受賞し、デビュー。16年刊行の『許されようとは思いません』が、「吉川英治文学新人賞」候補作に選出。18年『火のないところに煙は』で、「静岡書店大賞」を受賞、第16回「本屋大賞」にノミネートされる。20年刊行の『汚れた手をそこで拭かない』が、第164回「直木賞」、第42回「吉川英治文学新人賞」候補に選出された。その他著書に、『悪いものが、来ませんように』『今だけのあの子』『いつかの人質』『貘の耳たぶ』『僕の神さま』等がある。

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