荒城に白百合ありて

著者 :
  • KADOKAWA
3.46
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本棚登録 : 488
感想 : 63
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041084335

作品紹介・あらすじ

森名幸子から見て、母の鏡子は完璧な会津婦人だった。江戸で生まれ育った母は教養高く、武芸にも秀でており、幸子の誇りで憧れだった。
 薩長軍が城下に迫り、白装束を差し出して幸子に自害を迫った時も、母の仮面が崩れる事はなかった。しかし、自害の直前に老僕が差し出した一通の手紙が、母の、そして幸子の運命を大きく変えた。手紙から視線を外し、再び幸子を見た母は、いつもの母とは違うものに変わってしまっていた。その視線を見て、幸子は悟った。
 ――母は、この美しい人は、いまこの瞬間、はじめて私を「見た」のだ、と。

 薩摩藩士の青年・岡元伊織は昌平坂学問所で学ぶ俊才であったが、攘夷に沸く学友のように新たな世への期待を抱ききれずにいた。そんな中、伊織は安政の大地震の際に燃え盛る江戸の町でひとりさ迷い歩く、美しい少女と出会う。あやかしのような彼女は聞いた。「このくには、終わるの?」と。伊織は悟った。「彼女は自分と同じこの世に馴染めぬいきものである」と。それが、伊織の運命を揺るがす青垣鏡子という女との出会いであった。魂から惹かれあう二人だが、幕末という「世界の終わり」は着実に近づいていて――。

 この世界で、ともに生きられない。だから、あなたとここで死にたい。
 稀代のストーリーテラーが放つ、幕末悲劇、いま開幕。

感想・レビュー・書評

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  • 今まで戦国時代はすごく興味があり大好きだったけど、幕末は興味がなかった。だけどこの作品を読んで幕末の歴史が気になり、どうやって明治維新に進んで行き、そこにはどんな背景があったのが、また、どういう戦争だったのかあまり知らなかった戊辰戦争について知ることができた。
    最後は少しあっけなかったように思う。一目でも二人が生きた姿で再会してほしかったなって、切なくなった。

  • 安政の大地震の災禍の中で出会った二人。
    薩摩藩士の岡本伊織、会津藩士の娘鏡子。
    互いの中に、この世に馴染めず、ほんの少しずれている場所から眺めているという「同じ人間」を見出し、強く惹かれあう。
    敵対する立場にある両藩に属するゆえ、この世では共に生きられない。それは、白百合の花言葉=純潔や穢れなき心ととに「死者に捧げる」から、ラストは想定内といえるだろう。
    詳細に綴られる激動の幕末に重点を置き、歴史小説と読むか、けっして結ばれない二人の運命の恋愛小説と読むか・・・

    『また、桜の国で』もそうだし、本作『荒城に白百合ありて』も、その魅力ある題名に思わず手に取ってしまい、著者の巧まざる技に感服する。

  • 最後のシーンではロミオとジュリエットが思い浮かんだ
    私の好みの作品かと問われれば…好みでは無かったー泣
    幕末辺りの歴史はめっぽう弱く、自分の中で上手く消化しきれなかったなと思う

    でも、物語の最後にかけてとても惹かれる
    なんとも言い難いこの読了感
    ハッピーエンドでも、バッドエンドでもないのかなって
    鏡子さんも伊織さんも若干悔いが残るのかなと思いつつ、でも最後には自分が選択した道を歩もうとしたから悔いなんてものは無かったかもしれないと彼らの気持ちを推し量る
    鏡子さんの少し歪に感じる性格が、彼女の姿が印象深く残っている

  • 幕末、会津の女と薩摩の男が出会ってしまった。互いにこの世でたったふたりだけの生き物という気づきがそこにはあった。

    悲恋物語という簡単な言葉には言い表せない深い心の交流。歴史の波に呑み込まれそして散っていったピュアな命ふたつ。
    ラノベのように読むこともでき、歴史の中で生きた藩士たちの生の声としても読むことができる。戊辰戦争の種々様々な本を読む中でのこの本を選択するという機会を持てて幸いだった。

  • 脳内で大河ドラマの「八重の桜」キャストが動きまくってましたわ。
    日本人ならだれでも知っている会津の悲劇。容保の、白虎隊の、幕府と共に散るその命の悲しみ。
    でも、そこには表には出てこないもっとたくさんの人生があったはず。あのときそこにあったであろう二つの命の物語。
    会津と薩摩。幕末に欠かせない両藩の間に、こんな命のやりとりがあったなんて。
    たった三度しか会ったことのない人と、こんな風に激しく冷たくそして熱く思いを重ね合わせられたら、そりゃもう他には何もいらないでしょうし、なんびとたりともその思いを遮ることなどできようもなく。
    運命とか宿命とか、そういうものさえ超越した何かによってつながった縁としか言いようもない。
    何が二人とこんなにも強く惹きつけ合わせるのか。死の間際にしか交わせない思いも、死でもって結ばれる関係も、言葉でいえば悲劇でしかない。
    なのに、この悲劇的な関係が、この上なくうらやましく思える。もし、こんな風に最期に思いを重ねられるのなら、他に何も望むことなどない。

  • 読み応えのある物語りでした
    この人は文章が本当に上手いと思う
    大した中身ではないはずなのに
    物凄く重厚な物語に変えてしまう

  • 会津と薩摩という2人を中心に進む幕末。

    生きづらい世の中で出会い、惹かれ合いながらも、結ばれぬ時代。

    美しい最期の瞬間。


    生きづらいと感じる今の時代、
    共感できるところが多かった。

  • フォローしているshintak5555さんが読んでて
    おもしそうだから、読んでみたよー!!

    幕末って、いろいろな登場人物がいて、
    分からないことが多かったんだけど、
    興味深く読めたよ。
    尊皇攘夷ってなんだっけ?という私が、
    いろいろと調べながら、幕末にも少し
    詳しくなれた気がします。

    会津藩の森名鏡子と薩摩藩の岡元伊織の話。
    うまく言えないけど、この2人は、
    同じような存在。
    引かれ合いつつも、お互いの本心の想いを
    最後の最後まではっきりと伝えない。

    この時代、男性、女性と役割が明確になりすぎて、
    考え方によっては生きづらい。
    今の世の中を知ったら、この時代を生きた人は
    どう感じるのかな。
    羨ましいと思うのか、それとも、
    改革がまだ必要と思うのか。
    そんなことを考えてしまったよー。

    • shintak5555さん
      そう言って下さるとめちゃくちゃ嬉しいデス。
      Facebookを始めた2011年からノート機能を使って記した備忘録(同じ本を買ったり借りたりし...
      そう言って下さるとめちゃくちゃ嬉しいデス。
      Facebookを始めた2011年からノート機能を使って記した備忘録(同じ本を買ったり借りたりしないように)540本の中にも読んでみて欲しい作品がいっぱいあります。
      うずうず。笑
      2021/04/15
    • ほくほくあーちゃんさん
      540本!!!?
      はぁー、スゴすぎです!!
      毎回、読書の参考になってますー!!
      540本!!!?
      はぁー、スゴすぎです!!
      毎回、読書の参考になってますー!!
      2021/04/17
  • 読書備忘録575号。
    ★★★★。
    歴史モノを得意とする作者の会津戦争悲話です。
    日本史は最も苦手。笑
    舞台は幕末。尊王攘夷が吹き荒れ、幕府は風前の灯の中、全国の藩はそれぞれの思惑で結託し、裏切りつつ新しい世界を描く。
    幕府に命をささげた会津藩は滅びの運命にある。江戸の藩邸で暮らす青垣鏡子。尊王攘夷を掲げる薩摩藩。江戸の昌平坂学問所で学ぶ岡本伊織。
    安政2年(1855年)、安政江戸地震で燃えさかる江戸。そこで幼い鏡子と伊織は出会う。血まみれになりながら燃える江戸を見つめる鏡子に、自分と同じ人格を感じた伊織。そこから2人は相容れない藩の宿命を背負いながら惹かれ合っていく。ただ、面倒くさい時代。好きだ好きだとはならない。笑
    そうこうしながら(歴史は良くわからん!笑)、慶応4年(1868年)、世に言う戊辰戦争における会津戦争。薩長軍が会津に雪崩れ込む。
    そして2人は運命の導くまま邂逅する・・・。なんなんこの悲しい結末!でも、短く太い恋愛。良いです。流石須賀さん。あっぱれ。

  • 大河や歴史番組、小説を通して知っている限りの会津の武家の在り方・考え方は、リベラル寄りで現実主義的な思考回路の私には少し息苦しく感じるところもあるけれど、その真っすぐで誠実なさまがあまりに可憐で、肩入れせずにはいられない。私自身はまだ足を踏み入れたことがないけれど、大好きだった父方の祖父が会津地方の出身なので、つい思い入れを持ってしまうせいもあるのかもしれない。
    好きな作家さんで、しかも幕末に会津の武家娘が薩摩藩士と出会って…という話だというので、たいへんな期待をもって読み始めたけれど、この小説に関して、主役2人の人間性や2人の間の関係性を、私はすんなり理解することができなかった。主役に絡む登場人物たちも魅力的に感じたので、この小説世界全体を、もう少し、書き込んでほしかった。

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著者プロフィール

『惑星童話』にて94年コバルト読者大賞を受賞しデビュー。『流血女神伝』など数々のヒットシリーズを持ち、魅力的な人物造詣とリアルで血の通った歴史観で、近年一般小説ジャンルでも熱い支持を集めている。2016年『革命前夜』で大藪春彦賞、17年『また、桜の国で』で直木賞候補。その他の著書に『芙蓉千里』『神の棘』『夏空白花』など。

「2022年 『荒城に白百合ありて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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