何でも見てやろう (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (458ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061315839

感想・レビュー・書評

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  • こんなに各国ですぐに友達を作っちゃうなんて、どんだけ社交的やねん!


    私が生まれる前の、世界。
    今とは情勢も、日本の置かれている立場も異なるけれど、人間の文化の基本的なところとか考え方、物の見方なんかはあまり変わらないのかな。

    この、1960年代は、各国で日本は人気だったとのことだが、今はどうなんだろう。
    まぁたしかに、“日本ブーム”みたいなことは話には聞くから、まったく興味をなくされた、というわけでもないんだろうけど、日本に対する期待感みたいな、そういうものは薄らいでいるんじゃないかな。
    何より、私も含め、日本人本人が、日本という国を心から誇れなくなってしまっているのではないかな。

    アメリカの裕福さから、インドのかっこにくくられていない、貧困まで。
    世界は、広い。広くて、多様。
    そんな当たり前のことを、小田さんは身を持って目の当たりにした。

    世界に対する好奇心の一方で、冷静な視点で各国を眺める。
    その視野、考えは私にはまだ消化しきれてない感じもする。

    ともあれ、どこへ行っても、どうしようもない人間や愛すべき人間はいるもんだなぁと、思わずプッと笑ながら読んでしまった。

  • バックパッカーの原点とも言える作品

    『世界をたかり歩いて』『世界ころがり込み記』と自身でも評しているとおり、低予算で幅広くみていくスタンスでの旅行記。ただしタイトルにある通り、低予算でもそこで展開される世界はどんな手を使っても見に行こうとする踏ん張りが随所で見受けられる。

    バックパッカーのバイブルといえば沢木耕太郎氏『深夜特急』が有名であるが、こちらは比較することが難しいといえるほど違う作品となっている。

    まず時代背景が異なるという点。日本人が珍しいことから様々な場面や国で恩恵を受ける世界線だった。
    その中で、1日1ドルの低予算(現在に換算した時に700円ほどの価値)で過ごしたことが、この本の凄さであり、名著であり続ける所以と思う。

    本で見たときに、文量の多さ、独特すぎる文体が癖になる。それでいて読み飽きない。他にない体験記が他で生まれることのない文体で、より他にない世界観が展開されていて良かった

    まぁ、なんでも見てやろう、と謳ってはいたものの、見た世界はどちらかというとヒッピーや貧乏な世界が大半を占めている。深夜特急と比べると、情景の描画は仔細に及んでおらず、想像は明度をもたない。主眼は、行動力の凄まじさ、独特の文化に触れた際の分析と感想、出会った風変わりな人々の様子となっている。

    170ページあたりでアメリカやメキシコから脱して世界各国を回り始めるが、ここまでがこの本の盛り上がりと思う。これ以降の紙面が多く割かれているが、独特の世界観を直に感じたのはアメリカとメキシコでの出来事だった。これは、前述した情景を頭の中で描けなかったことが起因しているのかもしれない。

    著者は2007年に亡くなっている。旅行記の刊行は少なく、活動家としての経歴が長いが、この作品は長く読まれていくだろう

  • ずっと読みたいと思っていた本。なかなかタイミングが合わず読めていなかったが、やっと読むことができた。沢木耕太郎さんが深夜特急の旅をする前にこの本は読んでいたという、伝説中の伝説の1冊。60年ぐらい前のことなので、今の状況とはかなり違う。欧米に旅する日本人が極端に少なかった時代。かなり奇異な体験だったと思う。本当にざっくばらんな書きっぷり。小田実さんは名前は知っていたが、著作を読むのも初めてだしどんな活動をしていたかも知らなかったが、かなり興味を持った。世界中を旅するのが好きな人は一度は読むべきだと思う。

  • 凄いボリューム!
    文字が小さく、境目もあんまりないのでダラダラ読んでしまいました。

    1967年ですよ!
    booking.comもLCCもない、1日1ドル予算?そんな世界で旅していた筆者に感服です。

    アメリカでは黒人差別、インドでは貧困に喘ぐコジキ、ベトナム反戦運動や外国人好きのギリシア人達…見たもの全てを包み隠さず文章に落とし込み、経済的な問題や社会の欠陥について論じています。

    当時の世界は良い方向に向かって一生懸命に進んでいた…そんな気がします。


  • ネルーとかナセルとかその時代ですよ!!
    東大とハーバードで学んだ青年が、
    1日1ドルでヨーロッパやアジアを旅行した時の
    バイタリティー溢れるカオスな体験記。
    ただ面白おかしいだけではない。
    愉快な文体や鋭い着眼点にいかんなく発揮されている知性が後押しして、ページをめくる指は止まらない。ニッチな旅が好きな人や好奇心が人一倍っていう人は必読

  • とにかくおもろい本である。
    筆者が旅先で出会った人々の体温、体臭がリアルに伝わってくる。語り口は軽妙だが深く思弁的であり、わが国のわれわれの将来を憂いてくれた、こんな素敵な先輩がいたことを知るのが遅すぎて痛切に残念であると思った。

  • 130-163Pが抜け落ちていた。私が読んだのは昭和37年発行のカドカワペーパーバックス初版。日本と西洋のことをアジアのこと、よく考えていたんだな。

  • 深夜特急より、何十年も前の作品と思うと、作者のバイタリティには驚かされます。ネットなどの情報が簡単に入らない状態でも、ここまで海外で生き抜くことができるなんて、生命力あると感じました。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99275289

  • 「小田実(おだまこと)」の紀行『何でも見てやろう』を読みました。

    先日読んだ「沢木耕太郎」の『深夜特急』でも紹介されていた一冊です。

    -----story-------------
    26歳のフルブライト留学生が、欧米・アジア22ヵ国を貧乏旅行したこの旅行記は、ユニークな「世界現代思想講座」である。
    著者が欧米のスマートな知識人と媚びることなく対等につき合い、垢だらけの凄惨なインドの貧困にも目をそむけることなく向き合う姿は、爽快で頼もしい。
    アメリカの豊かさとその病根、人種差別を直視する痛烈で優しい眼は、ヨーロッパやアジアにも向けられる。
    若者らしい痛快な笑いとセンチメンタルな涙、本物の、上等な知性と勇気のベスト&ロングセラー。
    -----------------------

    1959年(昭和34年)、アメリカのフルブライト基金により渡米… その後、一枚の帰国用航空券と持参金200ドルで世界一周旅行に出かけ、一泊1ドルのユースホステルなどに宿泊しながら、世界のあらゆる人たちと語りあった旅を描いた作品、、、

    現在のバックパッカーの先駆けともいえる旅… 「小田実」の名前を一躍有名にした紀行です。

     ■まあなんとかなるやろ―「留学生業」開業
     ■何でも見てやろう―美術館から共同便所まで
     ■「考える人」―いよいよ出発
     ■ビート猫・ZEN猫―アメリカ(猫)の悲劇
     ■ゲイ・バーの憂鬱―アメリカ社会の底
     ■アメリカの匂い―さびしい逃亡者「ビート」
     ■ヒバチからZENまで―アメリカの「日本ブーム」
     ■ハーバードの左まき「日本人」
      ―アメリカ人ばなれのした人たち
     ■幸福者の眼―アメリカの知識人
     ■松の木の下にウナギ―ニューヨーク貧乏案内
     ■フランス語を学ぶには―カナダ紀行
     ■芸術家天国
      ―ただし、あなたの原稿はハカリで計られる
     ■黒と白のあいだ―南部での感想
     ■「月世界」紀行―「文化大使」メキシコへ赴任す
     ■メキシコ天一坊―シケイロス氏らと会う
     ■「資本主義国」U・S・S・R
      ―一日一ドル予算の周囲
     ■Sick,Sick,Sick......しかし
      ―そしてオデュセウスの船出
     ■フィッシュ・エンド・チップス
      ―「怒れる若者たち」のなかみ
     ■あいるらんどのような田舎へ行こう
      ―ズーズー弁英語の国
     ■「求職」あるいは「おしのび」旅行
      ―北欧早まわり、オスロからコペンハーゲン
     ■金髪と白い肌は憧れる―「サムライ」の魅力
     ■ユース・ホステルの「小便大僧」たち
      ―ハンブルグ、アムステルダム、ブラッセル
     ■ビデとカテドラル―アメリカの女の子とパリを観れば
     ■「反小説(アンチ・ロマン)」の財布
      ―ロブグリエ氏会見記および世界各国作家清貧物語
     ■ニセ学生スペイン版―アンダルシア放浪記
     ■ビザを買う話―貧乏旅行の悲喜劇
     ■「ルパナーレ」の帽子―イタリア貧乏滞在記
     ■パン屋のデモステネス君、仕立て屋のアリストテレス氏
      ―ギリシア無銭旅行
     ■アクロポリスの丘―ギリシア、そして「西洋」の意味
     ■腐敗と希望―ピラミッドの下で考える
     ■ナセル氏「随行」記―エジプトからシリア、レバノンへ
     ■たがいにむかいあう二つの眼について
      ―イランの「外人」のなかで
     ■のぞきメガネ「ヨーロッパ」―テヘランをうろつく
     ■にわかヒンズー教徒聖河ガンジスへ行く
      ―ニュー・デリーからペナレスへ
     ■不可触賤(アンタッチャブル)小田実氏
      ―カルカッタの「街路族」
     ■アミーバの偽足―むすび・ふたたび日本島へ
     ■再訪
     ■あとがき・1
     ■あとがき・2
     ■あとがき・3
     ■解説 井出孫六

    「小田実」が旅に出たのは60年近くも前のこと… 「沢木耕太郎」が旅に出る20年近く前のことですからね、、、

    この時代にアメリカの基金を活用し、僅かな現金を持って、「まあなんとかなるやろ」という心持ちで自由で冒険的な旅を実現できたことは驚きですね… しかも、アメリカに始まり、メキシコからヨーロッパ、アジアと東向きにぐるりと世界を一周して日本に帰ってきたんですからね、ホントに凄いと感じました。

    アメリカを見たくなり旅を決意… 特にニューヨークの摩天楼とミシシッピ河とテキサスの原野というばかでかいものを見たかったという動機もなかなか大胆ですよね。

    そして感じたのは、西洋(欧米)という一括りが考えてしまう地域も、国によって大きく文化や風習等が全く異なること、、、

    便所、食事のマナー、コーヒーの習慣等々、私たちが西洋(欧米)では当たり前と、勝手に思っていることが、実は国によって様々で、洋式トイレと呼んでいる座って用を足すトイレもヨーロッパの南部では和式に近いトルコ式がスタンダードだったり、スープの飲み方や食事中にひじをつくことの是非等はイギリスとフランスで異なっていたり、アメリカでは食事をしながらコーヒーを飲むがフランスではコーヒーは食後に飲むし、そもそも、飲み物だってコーヒーだけでなく、紅茶からチャイ、カフェオレ、エスプレッソ等様々… 私たちが西洋(欧米)の常識と思っていることが、実はアメリカやイギリスでは常識でも、その他の国では非常識だったりするんだよなぁ。

    でも、考えてみりゃ、東洋(アジア)だって、中東とインドと中国と日本じゃ全然違うし、もっともっと地域によって多様性がありますからねぇ、、、

    ステレオタイプで物事を考えちゃダメですね… それを改めて教わった感じがしました。

    読んでいて最も印象に残った地域はインド… 『深夜特急』と同じですね、、、

    悲惨なもの、滑稽なもの、崇高なもの、矮小なもの… それらが全て目の前にあり、臭気と虚無感の漂う、他には比べ物のない異文化圏… 自分の中で消化しきれない、そんな胃が重たくなるような印象が残ります。

    『深夜特急』と同様に、若い頃の読んでいたら、人生が変わったかもしれない… そんな想いを強く感じる一冊でした。

    以下、旅の軌跡です。

    【アメリカ】 ハワイ、シアトル、シカゴ、ボストン、ニューヨーク
    【カナダ】 モントリオール、ケベック
    【メキシコ】
    【アメリカ】 ニューヨーク
    【イギリス】 ロンドン
    【アイルランド】 ダブリン
    【ノルウェー】 オスロ
    【デンマーク】 コペンハーゲン
    【ドイツ】 ハンブルク
    【オランダ】 アムステルダム
    【フランス】 パリ
    【スペイン】 マドリッド、コルドバ、ヘレス
    【イギリス領ジブラルタル】
    【スペイン】 トレド
    【イタリア】 ヴェネチア、ローマ
    【ギリシャ】 アテネ、ペロポネソス、ミコノス島、クレタ島
    【エジプト】 メンフィス、カイロ
    【シリア】 ダマスクス
    【レバノン】 ベイルート
    【イラン】 テヘラン
    【インド】 ニューデリー、ベナレス、コルカタ

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