愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (504ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061847392

感想・レビュー・書評

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  • カナダでトウジとゼロが出会う。帰国後、タイトルにあるビデオをある人物から譲り受ける。トウジの政治思想に共鳴する仲間を集めていく。1980年代半ば当時の日本・世界情勢を背景に、水面下でゆっくりと、だが着実に勢力を拡大していくさまは、たとえれば交響曲の序曲。

    米国を猛然と追いかける日本経済。その裏に、貧富の差の拡大があった。もしこういう政治勢力が日本を動かしたらどういうことが起こるか。

    これは壮大な思考実験の書。上巻で構築された基盤は、混乱と期待をはらみながら下巻へ昇華していく。

  • 作者はいつこんなに経済、会計の勉強をしたのだろう。

  • 69と同時期に読了。
    今の私には不要も、思い出深い小説。
    当時は近未来小説かと思ったが、何も変わっていなさそうで、実は全てが変わった平成を過ぎた今となっては、昭和らしい最後の小説の一つとしてしか読まれないだろう。

  • メモ
    サンクチュアリに似てる?

  • 20代の時に読んだが、熱量が多い一冊

  • カリスマに胸を撃ち抜かれた

  • ハンターの鈴原冬二は、カナダで「ゼロ」こと相田剣介に出会ったことがきっかけで、日本が直面する危機を克服するために政治結社「狩猟社」を立ちあげます。

    ハンターとして自然との厳しい交渉をおこなってきた冬二は、生態系にえらばれた者のみが生きのびることができるという弱肉強食の原理を体現しており、そうした彼の生きかたに惹かれた仲間たちが彼のもとに集まります。やがて「ザ・セブン」と呼ばれる、世界経済を支配する企業のトップたちの組織が冬二に接触し、冬二は彼らと互角にわたりあいながら、日本社会において地歩を固めていきます。

    狩猟社が日本の政治と社会を変えてくれるのではないかという人びとの期待は、冬二をファシストへと押しあげていくことになりますが、彼だけはけっして変わることなく、ただ彼を取り巻く時田史郎や高榎通孝、そしてゼロまでもが、熱狂のなかですこしずつ自分をうしなっていくのが印象的です。

    庵野秀明が本作から影響を受けたことはよく知られています。村上春樹の作品がある意味で「セカイ系」を準備したということができると思うのですが、本作は「サヴァイヴ系」の元祖に位置づけることができるかもしれません。そうした意味での評価は著者自身も本書の愛読者も求めていないとは思うのですが、わたくしにとっては、そうした視点から本作が1987年に刊行されたことの意味についていろいろなことを考えてみたくなるような読書体験でした。

  • わからん。

  • 2021.1st
    「半島を出よ」で好きになり、「コインロッカーベイビーズ」で嫌いになって読まなくなった村上龍。
    8年ぶりに村上龍作品を読みました(^^)
    まず設定のリアリティがすごい!描写の臨場感もすごい!
    鈴原冬ニのカリスマ性の描き方もすごい!
    こんな政治家いないよね。設定はすごく複雑だけど、冬ニのカリスマ性に惚れて、人が集まってるので、人間関係は明瞭。
    下巻も楽しみます!

  • この作品を執筆するにあたって、作者の村上龍氏は大量の政治・経済に関する本を読み耽ったそうで、当然の如く内容は難解で専門用語が頻出する。とはいえ、政治・経済に関する知識が浅い人でも十分に楽しめる内容になっていると言えるだろう。(もちろんその道に詳しい人はより楽しめるはずである) 全体的に攻撃的で得体の知れない怒り、憤りが物語の中に充満していて、今にも張り裂けそうな危うさのようなものを感じる。人によってはこの作品に大きな影響を与えられるのではないだろうか。

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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