- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062777254
作品紹介・あらすじ
「不良債権と寝た男」死に物狂いの仕事人生
安宅産業崩壊、平和相銀・イトマン事件、「住銀の天皇」磯田追放、銀行大合併、郵政民営化。その現場にいたのは、いつもこの男・西川善文だった。
秘話多数収録!
感想・レビュー・書評
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2023/12/31
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英語のBankerは銀行員よりも銀行家、投資や財務処理を生業とする投資銀行家という意味だそうで。そういう意味では西川さんをラストバンカーと呼ぶのはしっくり来る。安宅にイトマン、住専と、まるで時代劇の始末屋のように様々な財務処理をやってきたからこそ日本郵政初代社長に推挙された事がわかる名著。端々に三井住友の裏話や三菱、日興の印象が書いてあるのも読んでて楽しい。あと政治家やマスコミ嫌いなのも隠さないのが微笑ましい。
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戦後からリーマンショックの時代まで、住友銀行ー日本郵政社長として活躍した西川善文氏の回顧録。
丁度自分が働き出す前のことで、時代の移り変わりがよく分かった。金融関連で勤務する若手ならば押さえておきたい歴史がわかる。西川氏の仕事は歴史に残る、大変なものが多い。
恐らく世間的には悪人で、今も評価の分かれる方とは思うが、文章からも凄みを感じた。 -
しんがりの中で敵対する銀行として描かれるのは住友だったのですなー。昭和から平成にかけての銀行の動きがわかりやすく切り取られている。
後半の郵政は、これは改革してよかったと思える内容。求められた役割はあったといえ、特定郵便局制度などは完全に制度疲弊してしまっていたのだなぁ。調達方針のあたりは身につまされる。 -
三井住友銀行頭取西川氏の人生はもちろんのこと、日本の歴史についても知ることができおもしろい。
メモ
・簡潔であること
・事前に大枠を押さえておく、仮説を立てておくということ
・現場に行って実際に見て、話を聞いて理解する。
・課題の定義と優先順位付け。トップの仕事。
・実務は現場としても方針を決めること。 -
銀行は野戦病院だ。なるほど、確かに。駆け込んできた傷ついた兵士を、何とか動けるように、何とか戦えるように応急手当をする場。完治を施す、銃後の病院ではなく、前線の野戦病院。だから、犠牲を出さないのではなく、犠牲を最小限にして、残せるところを最大限にする。そこまでが役割。銀行っていうと、お高くとまって、出来るだけ火の粉を浴びないようにしている印象があったが、実態は、夜戦病院のほうが実態にあっているのかも。そんなバンカー人生を歩まれてきたのが伝わってきた。伊藤忠時代の瀬島龍三氏の3箇条が、人となりを示すエピソード。
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寡黙で中身の見えない風体の西川氏が当時なにを考えてビジネスをしてきたか...というより、困難に直面し続けるさまを見てとれる回顧録。「現状維持は衰退」と認識させられる。時代の変化を目の当たりにしながらビジネスを推進するにはとにかく危機感を持ってスピーディーに取り組むことが必要だ。意外と郵政時代のはなしにページを長く割いていた感じがする
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自分のことはよく書きたいという思いは誰しも持つものなので、それを割り引いて読めば、とあるバンカーの自伝として、また昭和・平成の経済史の勉強として、興味深く読める一冊。
民間企業として利益を追求することは大前提としつつも、人との血のこもったつながりが大事、とする著者の言葉がもしも本当だとすれば、一度彼の元で働いてみたかったものだ。 -
大阪市東洋陶磁美術館の核となる安宅コレクションが散逸せずに、現在鑑賞できるのは安宅産業の破綻とその処理によるものだという経緯を知り、著者の西川さんに感謝したい。ことを知った。安宅産業の破綻、イトマン事件、住友と三井銀行の合併についてが読み応えあり。
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「不良債権と寝た男」。マスコミは西川善文氏をこう呼んだ。その
呼び名通り、住友銀行時代の氏の仕事は不良債権処理が連綿と続いて
いたと言っても過言ではあるまい。
新聞記者志望だった大学時代、友人に誘われて住友銀行の面接を
受けたのをきっかけに入行が決まる。西川氏の面接にあたったのは
後に頭取となり「住友銀行の天皇」とも呼ばれ、イトマン事件で
西川氏と対立することとなる磯田一郎氏だった。
私には金融関連の知識が圧倒的に不足しているのだが、安宅産業や
イトマン事件、平和相互銀行事件の処理、銀行の合併の経緯等、
どのような考えの下に最適な判断を下して処理を担当したかの
事実を淡々と綴っているので理解しやすかった。
自慢話でも成功秘話でもないところに好感が持ているし、それぞれの
処理に関しても「誰が悪い」との個人攻撃もなく、自身が引導を渡す
ことにもなった磯田氏に対しても恨みつらみは一切ない。
それが一転して、恨み節とも受け取れぬこともないのが日本郵政の
社長時代の回想だ。
郵政民営化を争点にして解散総選挙を行った小泉政権。衆院選で
圧勝し、当時の小泉純一郎首相からの強い要望もあり日本郵政の
社長に就任した西川氏だったのに逆風が吹きまくる。
かんぽの宿売却問題、東京中央郵便局の再開発問題。あの頃の報道は
「西川が悪い」一色だったし、私もそんな印象を受けていた。
だが、郵政民営化に反対して自民党から出た議員を復党させたこと
で「お前ら、本当は民営化したくないんじゃないか?」となって
行く。
その標的が西川氏であり、急先鋒が当時の総務相だった鳩山邦夫氏だ。
かんぽの宿にしろ、中央郵便局再開発にしろ、邦夫氏のパフォーマン
スだったのかと感じた。それに乗っかった報道を鵜呑みにして、当時は
西川氏を悪役だと思っていたことを謝りたいわ。
高度経済成長、バブル期及びバブル崩壊、平成不況をバンカーとして
生きた人の回想録は、読み物としても大変興味深かった。 -
元三井住友銀行頭取、日本郵便初代社長である西川氏の回顧録。大銀行の社長になる人はやはりただ者ではない。仕事に対する熱意や考え方、リーダーシップも格段に高い。結局、郵政民営化に反対する議員たちに退陣させられたが、政治家のお粗末さがよくわかった。日本の政治の問題は何とかならないものか。あまりに自分勝手すぎで、選挙のことしか考えていない。情けない。
「いい会社とも、よくない状態の会社とも付き合った。そしてわかったのは、会社はやはり最後は人だということだ」p49
「(安宅処理について)休みなどなかった。平日も毎晩毎晩、深夜まで仕事が及んで、電車もなくなり、タクシーで帰っていた」p79
「安宅の損失2000億円を合計16行が協力して負担することに決まった。裏を返せば、日本の銀行業界にある横並びの体質の賜物なのかもしれない」p84
「(ゴルフ場内の送電線を)、大変な交渉をして鉄塔の位置を変えてもらった。これを強引な交渉と後で言うのは自由だが、当時はとにかく安宅の追加損失を回避するために、あれも大変、これも大変などとは言っていられない気持ちだった。どんなに困難なことでも相手の了解をどうしてもとりつけなければならないとなったら、部長の私がやりきるしかない。部下を難しい交渉の矢面に立たせるわけにはいかなかった」p92
「直前に山一証券の破綻があり、窓口販売要員と、そのリーダーを務められる人材を約150人も山一証券から採用できたのも運がよかったと思う」p158
「経営は、失敗を全体として一定範囲内に納める技術ともいえる。完璧主義、満点主義からは何も生み出せない」p188
「官の事業というのは、本質的なところで改革意欲や競争力強化という意欲が乏しい。民間企業であれば競争に負ければ市場から退場させられてしまう。生き残りたいと思うならば、スピードを上げて全力で取り組むしかない。その点、官の事業には退場がない」p229
「リーダーシップとは、直面する難題から逃げないことである。リーダーが逃げないから部下も逃げないし、前のめりで戦う。遅滞なくスピード感をもって決断する」p301 -
本書は三井住友銀行元頭取であり日本郵政初代社長であった西川善文氏の自叙伝である。しかし回顧録という趣ではなく在任中の批判に対するExcuseのように感じる。銀行時代は安宅やイトマン、不良債権処理にあたり、GSや竹中平蔵氏との距離感から、その顔立ちも相俟って(失礼、、)ややもすると闇のフィクサーのような扱いを受けていた。それは裏を返せば迫力や凄みは西川氏が数々の修羅場を経験したことの証であり、彼のハードネゴシエートを持ってしてから難事案を着地に導くことができたといえよう。西川氏自身があとがきで語っているように、産業勃興支援や企業再建など頭取としてのダイナミックな側面ではなく、負の側面を主に執筆したのは引退してもなおファイティングポーズを崩さぬ彼の気骨なのかもしれない。
住友時代の業績への批判は諸々あるが、少なくとも日本郵政時代に奮った辣腕は至極正しい経営判断であり鯨並みの巨躯をスピード感持って動かしていた、と個人的には高く評価したい。国民の税金で放漫経営をしていた郵政の「世間ずれ」を大きく補正した功績は大きい。それを民主党政権や鳩山大臣らの政治パフォーマンスに利用されてしまったのは、なんとも口惜しく国民的損失であったと思う。入行から退任まで政治に右往左往させられた私怨のような発言が文中の節々から感じ取れるが、その気持ちはわからなくもない。
銀行時代の権力内紛の個人批判もあり偏りはあるように思うが、頭取にまで上り詰めた者が語る内情は面白い。 -
お金に困ってない人の本
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「ー」
住友時代の話、郵政時代の話、どれも面白い。 -
新聞記者を目指していたのに、瓢箪からコマのような銀行入行。実質4、5年の営業店配属のあとは、ずっと、安宅産業、平和相銀合併問題、イトマン事件、バブル崩壊による不良債権処理と、問題案件の処理に奔走し、頭取まで上り詰め、三井住友銀行へと大型合併を成し遂げ、その後は郵政公社の総裁へ転進。華麗な経歴にも思えるが、細かく見ていくと、あの時こうしておけば、みたいなことも語られ、また郵政公社転進後は、今になってみると著者の方針が正しかったのに、政治家の闘争に巻き込まれて頓挫、挫折というシーンも描かれ、私が政治音痴だったから、と言うけど、では打つ手はあったのだろうか、とも思ってしまう。かんぽの宿は今も赤字を垂れ流し続けている、といった記載からは無念がにじみ出ているように思う。ただ、それも含めて、回顧録にありがちな、私だけが正しかった、ヒーローだった、みたいな筆致ではなく、いいとも悪い子も書かれていて、少なくとも「住友銀行秘史」などよりは、すっと身に入ってきた感がある。「会社は最後は人だ」という最初の方の言葉が、最後の方まで貫かれていたように感じた。
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安宅産業問題、イトマン事件、不良債権問題、郵政民営化など、日本経済の歴史について銀行目線から知るにはちょうどよい。
西川氏のいうことを盲信するのはアレ。
住友銀行秘史とセットで読むと西川氏の悪行も書かれておりバランスが取れるとのことなので、このあと住友銀行秘史も読む。 -
銀行はメガバンク化しましたが、頭取の顔は普通のひとにはほとんど見えません。巨大組織で巨大なお金を動かす組織のトップが、どんな歩みで今の地位を得たのかは外からほとんど見えることはなく、本当に遠い世界の住人のように感じます。
銀行員の王道ではなく、不良債権処理に半生をかけ、最後は迎えられたゆうちょ銀行を不本意な形で去るまで、すべてが「ザ・ラストバンカー」の形容にふさわしいです。
組織の中で、自らのしごとと信じるものに全力で取り組み、正しいと思うことを行い続けようとする信念と、その限界に思いを馳せるのによい本です。 -
この厳しい時代のぎりぎりの環境下でどう切り抜けてきたのか、よくわかる本であった。常に不良債権整理を行い、不正に戦ってきたのは半沢直樹と似ているのかもしれない。苦労を苦労とも思わせないところに凄さを感じた。日本はずっと危機の時代、伊藤忠のねらい目は新日鉄の商圏、スピードは競争力そのもの、チャレンジして失敗しても構わない、リーダーシップとは直面する課題から逃げないこと等FAS WAYに似ている。やはり仕事の基本は同じなのだろうか・
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知られていない裏話なものを期待していたが、普通の回顧録だった。
以上 -
回顧録だから、あまり自分に都合のよくないことは書かないだろうが、「失われた20年」のある意味での主役の一人の貴重な証言だと思う。
郵政民営化や、三井住友銀行誕生時、安宅産業救済など興味深い話が多い。
心に残った文が一つ。
「リスクを取らず無難にまとめようとする人で、出世した人を見たことがない」
銀行だけではなく、全ての社会で通じる金言だと思う。