理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062879484

感想・レビュー・書評

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  • 著者は人間の理性を3つの側面から限界があると説いている。
    アロウの不可能性定理によって、社会科学の限界。
    ハイゼンベルクの不確定性原理によって、自然科学の限界。
    そして、ゲーデルの不完全性定理によって、認知科学の限界を。

    我々がここから得るべきは単なる悲観論であってはいけない。一つは我々が礎としてきたものが完全でないように、我々自身もまた完璧な存在ではないという事。もう一つは限界を知る事によって、得られる飛躍の可能性を知る事。

    その点を明瞭にして、示してくれる稀有な著書であると大きくかぶりをふって頷きたい。

  • mixiレビューから転載。

    昨夜(3月30日)の某ニコニコ生放送で、
    「高橋昌一郎がこの手の詳しいよ」「高橋昌一郎本オススメ」
    といっていたので衝動買い。

    まだ読み始めたばかりだけどこれは面白い!
    手にとって軽くぱらぱらしたとき、
    「あっ…、対話(形式)かぁ…。苦手なんだよなぁ…、対話。」
    と思っていたのだが、この対話がまた面白い!!
    対話形式を軽く超えたこのガヤガヤ感!
    各種専門家に各種変人、ただシンポジウムにあつまってるだけ
    なのにみんなどこか個性があるように見える
    (この本って実際にあったシンポジウムの記録じゃないよね?)
    カント主義者ちょっと黙れ!!
    ルペン万歳って、
    ちょ、みんなフランス政治の話で盛り上がりすぎだしw
    それとカント主義者だまれ!!
    みたいにツッコミ入れながら読める読める。
    それだからか、通常の教科書的なものよりはよく頭に入ってくる。

    ということで自分からもこれオススメ。

  • タイトルに惹かれて買った!

    複数人の対話方式なのが面白い!
    論理学好きにはたまらないですね。

  • 架空のシンポジウムという形式で書かれており、とても読みやすい。

    頭が良くなった気になれる

  • 「ゲーデルの哲学」に引き続き同著者の本。内容は人間理性の限界を示す3定理について一気に概略をつかんでしまおうという、今思い返せばかなり無謀な本。

    内容が架空のシンポジウムという対話形式になっており、極端なネタキャラっぽい人も混じっていたりなんかで、比較的読みやすい。厳密性は置いといて、20世紀を代表する難解な3大定理の概略をつかむには、こういうざっくばらんな形がいいんだろうなと思う。

    個人的には、殆ど知らなかった「アロウの不可能性定理」が凄く新鮮で良かった。社会科学の範疇に入るらしいこれ。理系の人はゲーデルの不完全性定理とハイゼンベルクの不確定性原理は知っている人多いと思うけれど、多分アロウは知らない人多いんじゃないだろうか。

    人間理性の限界を垣間見て、哲学的な気持ちになってしまえる珍しい本。たまにはこんな本で、人生見つめ直すのもいいかも。

    カント主義者のぞんざいな扱いは、なんだろ。著者、カント嫌いなのかな(笑)

  • 選択の限界、科学の限界、知識の限界・・・現代における理性の限界についてのまとめ本。
    (様々な主義主張の人物による)対話形式になっていることが、読みやすさ、親しみやすさのポイント。

  • 不可能性・不確定性・不完全性というものを、様々な人物が登場するシンポジウムという形を通して解説。
    「アロウの不可能性定理」「ハイゼンベルグの不確定性原理」「ゲーデルの不完全性定理」など難解な話を分かりやすく紹介している。

    登場人物が意見を交換し合いながら進んでゆくのだが、カント主義者がカントについての話をし出すと、「そのお話は、また別の機会にお願いします」と司会者にたびたび諌められるところなどには笑いがある。本の最後では、運動選手が大学生のA子さんを「今度はぜひ、僕の競技を見にきてください!」と誘うところで終わる。良い関係になることを願おう。

    この世の中には論理では求めることができないこと、是非では語れないことがある。そうであれば、ロマン主義者が引用したパスカルの言葉のように、「理性を超えるものを理性によって認めること」が必要だろう。
    論理では解明できないものを認めることによって、人間はその先にある光を見出すことができるのではないだろうか。

  • ■本の内容・特徴
    社会科学、自然科学、形式科学、それぞれの分野の「限界」についての考察。
    「他者理解」のもと、各分野の専門家や一般の会社員などが登場し、ディスカッション形式で話が進められる。


    ■学び
    <1 理性の限界>
    (アロウの不可能性定理)
    完全に民主的な社会的決定方式は存在しない。アロウが厳密に定義した意味での完全民主主義を実現することは論理的に不可能。多数決の原理そのものに大きな方法論上の欠陥がある。

    (マーヴィン・ミンスキーの心社会論)
    集団である「社会」と同じく、人間の心も一個の「社会」とみなす理論。集団の合理的選択の限界があるように、個人にも合理的選択の限界がある。さまざまなエージェントが相互作用して影響を及ぼし合い、多層的なシステムを構築て、最終的に人間の行動を決定していると考える。

    (囚人のジレンマ・ゲーム)
    しっぺ返し戦略は、非常に幅広い戦略を相手にしても有効であることが証明された。

    (ミニマックス理論)
    相手の利得をマックス、自分の損失をミニ。勝とうとするよりも、まず負けないようにする戦略。プレイヤーの利得の合計が相殺してゼロになるゼロサムゲームにおいては、ミニマックス戦略が最も合理的。


    <2 科学の限界>
    (ハイゼンベルグの不確定性原理)
    ミクロの世界の不確定性。理性の限界を示す一大発見とも言われる。究極的に小さい数を意味するプランク定数が、あらゆる観測精度の限界を示している。

    (ファイヤアーベントの方法論的虚無主義)
    哲学者。徹底的に突き詰めて、あらゆる科学理論の選択基準を「何でもかまわない Anything goes!」と主張した。これはあらゆる方法を許容するという姿勢。逆に言えば、唯一の方法などないと否定する姿勢。


    <3 知識の限界>
    (語用論的パラドックス)
    発言が行為と結びついて生じるパラドックス。真と偽、いずれにも解釈できる。


    <ワード1>
    コンドルセのパラドックス/ボルダのパラドックス/アロウの不可能性定理/心社会論/しっぺ返し戦略/ミニマックス(戦略)理論/ナッシュ均衡
    <ワード2>
    光速度不変の原理/特殊相対性理論/一般相対性理論/ハイゼンベルグの不確定性原理/知覚の因果説/プランク定数/実在的解釈/相補的解釈/観念論/二重スリット実験/量子論/EPRパラドックス/方法論的虚無主義
    <ワード3>
    ゲーデルの不完全性定理/自己言及のパラドックス


    ■感想
    先日読んだ、『数学的にありえない 上下』に刺激を受け、やっと、やっとこの本を読むことができました。どうしても通読することができずにいたんです。
    この本は、一般人を交えながら解り易く例を出しながら、ディスカッション形式で話が進みます。また司会者がいて、時々深みに入りがちな専門分野も途中で調整がなされます。読み手の好奇心を刺激するのも上手いんです。
    でも理解するには、やはり難しい・・・。前回読んだ時もそうでしたが、第3章は流し読み程度になってしまいました。とりあえず、積読の山から既読に移動できる程度には読めたと思います。機会があればまた再チャレンジ。

  • 新書にしてはなかなか面白かった。不可能性・不確定性・不完全性についていろんな職業の人によるディスカッションという形式で展開されています。だから読みやすい作品でした。

  • うげっ!なんと近寄りがたいタイトル!
    「不可能性・不確定性・不完全性」?なにそれ?おいしいの?
    帯には「ゲーデル、ハイゼンベルク、アロウ、知的刺激にあふれる論理学ディベート
    囚人のジレンマから神の非存在論まで」
    誰だよそいつら!俺の理性が限界だ!と思ったが気になった単語、

    「ディベート」

    ほう。小さい頃から議論やディベートを好いてきた。
    こういう高尚な話題でディベートした本いうたらガリレオの「天文対話」
    みたいなもんかなとペロリぺろりとめくってみたらガッツン。
    「コンドルセのパラドックス」や「ラプラスの悪魔」、「アルゴリズム的情報理論」
    など頭が痛くなるようなトピックスの中に「アメリカ大統領選挙の矛盾」
    「シュレディンガーの猫」、「チキンレース」など、興味をそそるトピック。

    そこで繰り広げられているのは政治学者や論理学者、数理経済学者や科学史家
    なんて現実にいたらとっても敬遠してしまいそうな方々の中に会社員や大学生、運動選手や急進的フェミニスト
    を加えて進められる、進歩的なシンポジウム!

    架空のシンポジウムで架空の人々が行う議論のはずなのに、一般生活にはなんら意味を成しそうに無いトピック
    なのに、なぜか自分達にもあてはまるように感じ始め、そして人間の「選択」「科学」「知識」の限界を知る。

    学問の専門化が進み、知らない分野への興味が失せていく。
    そんな中、この本を通じて本来なら自分から絶対に知ろうとはしない量子論や論理学、政治についても
    「マジか」と驚き、おもしろウィと感じることが出来た。
    少々専門的で読みづらいところはあったが、専門家の優しい解説、司会者の公正さ、クスリと笑わせてくれる
    カント主義者の発言など、ただのおカタい本として読まずに済んだ。

    あー楽しい本だった。★5!

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著者プロフィール

國學院大學教授。1959年生まれ。ミシガン大学大学院哲学研究科修了。専門は論理学、科学哲学。著書は『理性の限界』『知性の限界』『感性の限界』『フォン・ノイマンの哲学』『ゲーデルの哲学』『20世紀論争史』『自己分析論』『反オカルト論』『愛の論理学』『東大生の論理』『小林秀雄の哲学』『哲学ディベート』『ノイマン・ゲーデル・チューリング』『科学哲学のすすめ』など、多数。

「2022年 『実践・哲学ディベート』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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