沈みゆく大国 アメリカ (集英社新書)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087207637

感想・レビュー・書評

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  • 医療費の計算の部分に明らかなミスがあったし、その他でもデータの扱いが乱雑であったり、一人のインタビューをもとに(しかもその一人が平均的代表意見とは言い難く感じるものも多い)その業界の多数派意見であるかのような記述、大した裏付けも検証もないままの原因と結果の強引な結びつけ、さらには非情に扇情的な書き方。書かれている問題点の相当数は実際に問題がないわけではないと思うだけに残念。

  • 日本の官僚は半分以上が東大で、官僚主義が蔓延ってるという悪評もあるが、一方で優れた頭脳が官僚になることで国のシステムの大きな破綻は、アメリカに比べれば少ないのかもなぁと思った。

    オバマケア、めちゃくちゃなルールだったんですね。。この大混乱が予期できてなかったとしたら、作ってる側は能無しだったとしか。。。

    内容は広く薄く、しかし悪くなかったです。もう少しちゃんとした本を読みたくなりました。

  • ちょっとショックです。やはり知らないということは罪ですね。医療保険制度について知識を深める努力、必要と強く感じます。

  • エセ国民皆保険のオバマケアによって医療はビジネスに、医師たちはワーキングプアに変わり、庶民に手の届く医療が失われてしまったアメリカ。
    そしてアメリカをめちゃくちゃにしたウォール街による集金メカニズムは、すでに安倍政権のもとで日本にも深く食い入ってきている、という2014年時点の警告。

    消費税増税も医療機関にとっては死活問題とか、知らなかったな。医者はどうせ高給取りなんだから、なんて周回遅れの固定観念を抱いてる間に、病気になっても診てくれる医者がいない社会がやってきてしまう。その理由はこの本を読めばわかります。
    インタビューに応じてる中には、命を投機対象としか見ていない金融アナリストとかもいて、その価値観には心底ぞっとした。

    本としての出来は、同じ堤未果さんの名著「貧困大国アメリカ」3部作には及ばない。説明がどうにも粗くて、どれだけ急いで書いたんだという印象。全米最大の保険会社はいくつも出てくるし、ときどき主語がない(察しもつかない)し、金額は年額なのか総額なのかわからなかったり、とにかく不備は多い。

    しかしそれでも、この人の本からしか知れないことがある。続編もやっぱり、読んでみないとと思う。

  • 知らないってことはこんなにも怖いことなのか。
    そう戦慄した一冊。
    主テーマはアメリカの医療制度。とりわけオバマ大統領政権下で成立した「オバマケア」。
    恥ずかしながら私も言葉すら知らなかった。

    というか、アメリカの医療制度と比較しその非営利性が素晴らしい「宝の1つ」と述べられてた日本の医療制度も私はよく分かっていないのだと実感した。
    世界へ門戸が開く法案が成立し、日本の医療制度も変容していくかもしれない事実も。

    「無知は弱さになる」。著者が述べる通りだ。自分たちの身を守るためには、無知では許されない。そう危機感を覚えた。

    しかし民主党・オバマ元大統領政権は個人的にはクリーンなイメージが強くて、アメリカ国民に受け入れられてた感覚があったけど、実際はこんなことになってたんだ、というのは驚いた。
    国民には綺麗な面だけをアピールしその裏ではしたたかに富める者に利益が流れる仕組み。おぞましい。

    共和党トランプ大統領の勝利は医療制度面での国民の反発も少なからず影響してたのかもなって本著を読んで感じた。

    しかし、アメリカは知れば知るほど貧困格差が広がり続ける国ってのが見えてくる。
    そして日本がその道を辿らない保証はどこにも、ない。

    著者の現状への危機感と「伝えなければ」という使命感をとても感じる。それを受け取った私たちができることは無知を恥じること、自分でも政治に興味を持ち、届く情報を鵜呑みにせず、自分の頭で考え続けることだ。
    少なくともこういった著書が何の圧力もなく当たり前に出版され続ける世の中を守りたいと私は感じる。

  • オバマケアの実態を暴く。トランプが生み出される土壌がいかに作られたかの一端が理解できる内容なので、今読む価値のある本。野放図な外資系商品の流入を避けるためにも改めてTPPが結ばれない方が良いと言えるかもしれない。

  • アメリカの医療、医療保険についての絶望的なルポ。医療がすっかり保険会社にイニシアチブを取られてしまったため、病院が診察や治療を拒むとか、どんな治療をするかは医師ではなく保険会社が決めているとか、皆保険になったのは表面上だけのことで保険会社に引き受けを強制した結果よい(加入者にとって割安な)保険は廃止されてしまったとか、医師も保険会社から支払いを断られると持ち出しになるし医療訴訟の保険料が収入の8割を超えてワーキングプアだとか、本当にもうウンザリするような話しのオンパレード。
    本書の鳴らす警鐘には傾聴に値するものがある。
    統計的な話しと実例、インタビューもよく書けている。

    ただ、経験上、この手の危機感を煽りまくる煽情的な話しは、話半分に割引いておく必要がある。

  • 第2版のほうを先に読んでしまったので、これは、米国の現状の医療。
    金がすべてと思えてしまうほどに、利益を上げることのためには、自分の為には、他人が不利益でもかまわないと感じる、貧富の差が非常に大きく、国が投資家を保護せざるを得ない。社会的弱者は、職もなく、市場はそこから金を取る。米国はどうなってしまったのだろう。この体制は、どうにかならないものか?
    やがて日本にも上陸するであろう、民間保険について、なすすべを知らない。

  • この本に書かれている内容が事実であれば、アメリカの医療は、市場主義導入によって崩壊寸前...。
    で、米国の製薬企業・保険企業の次なるターゲットは、日本らしい。

  • 「知らないことはすきを作ることになる」(p.183)という言葉がずしんとくる。
    オバマケアが日本の皆保険と違い、大いなる勝ち組は製薬会社と保険会社で、負け組は中流層だけでなく医者・病院!という衝撃。
    まさにタイトル通りアメリカは「沈みゆく大国」の道を歩んでいるようにみえる。

    医師や病院の負担を増加させるため、「メディケア・メディケイド」を取り扱わないところが続出し、患者(国民)にキャッシュカードを配ったけれど、ATM機が無い状態。
    保険料負担を回避するために、正社員(週30時間労働)を非正規社員(週29時間労働)に転換する企業。保険料の増加で自己破産してメディケイド対象になることを選ぼうと真剣に検討する人々。患者を商品としか考えずに安易な家庭医療提供チェーン展開に走るWalMartなどなど、悪夢のような現実が描かれる。
    そして、これが単に他国の出来事として簡単に片付けられる問題でないことが恐ろしい。TPPや国家戦略特区による市場開放は、日本が次なる餌食となる土壌作りの一歩になりかねない。
    国民一人一人が、賢くならなる必要があることを知らしめる良書。

    <追記>
    この本を読み終わって、本当にオバマケアは改悪だったのか?少しネットで調べたら、オバマケア導入前には、民間医療保険会社は保険料を自由に設定できていたが、新しく導入されたMedical Loss Ratio制度では、徴収した保険料の約8割を医療サービスの形で被保険者に還元しなくてはならなくなり、それ以上の利益分は返金の義務が生じているとのことがわかった。
    つまり本書は、「オバマケア」導入により保険料が大幅にあがってしまったり、その他、不利益を被った人々のインタビューに基づき執筆されている。そのため全てが「改悪」というシナリオを裏付けるサイドの証言しか取っていないのがちょっと気になった。
    それは読んでいる途中、元保険会社重役のリズ・ファウラー氏(p.151に大きな写真入りで出て来る)の描写から、私もちょっと不思議に思った点。
    彼女は、「大手保険会社ウェルポイント社から上院金融委員会に潜り込み、メディケア処方薬法改正の設計に関わり、成立後に古巣のロビイング部門副社長、数年後に今度は上院金融委員会の院長直属の部下となり医療・製薬業界にとって不利なシングルペイヤー案を法案から取り除き、保健福祉省副長官に栄転」と紹介されており、政府と保険会社との癒着を示す事例となっている。
    確かに、こういう事実を記すことは、大変重要で多いに参考になったのだが、それでは何故、彼女をはじめとして、法案を立案する側や、「オバマケア」により恩恵をうけたサイドの証言が一切ないのだろう?という疑問も残る。

    同列に比較するのは大変失礼で、本意ではないが、最近話題の、自称「完全ノンフィクション」と豪語してTVで大々的に宣伝までして販売している百田尚樹氏の「殉愛」という本が、実は嘘まみれで、片一方の意見のみを聞いて書いた「フィクション」だったことが発覚したことを思い出した。

    もちろん堤氏の本書は嘘が書いてあるわけではないし、「オバマケア」問題が日本にも余波として襲ってくる危険の警鐘にもなっており、そこにフォーカスした続編も用意されているので、大変意義深いし、続編にも多いに期待している。

    ただ、「殉愛」のように、「ノンフィクション」と称しながら、(著者も認める)嘘・隠し事が発覚し、出版差し止め請求が出ているのに、出版社も著者も書店も、まるで何事もなかったのごとく販売を続けていられる世の中って何なんだろう?最近の編集者って、あんまり著者に「つっこみ」をしなくなったんだろうか?などと、本書とは直接関係ないことが気になった今日この頃。

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著者プロフィール

堤 未果(つつみ・みか)/国際ジャーナリスト。ニューヨーク州立大学国際関係論学科卒業。ニューヨーク市立大学院国際関係論学科修士号。国連、米国野村證券を経て現職。米国の政治、経済、医療、福祉、教育、エネルギー、農政など、徹底した現場取材と公文書分析による調査報道を続ける。

「2021年 『格差の自動化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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