世界から猫が消えたなら (小学館文庫 か 13-1)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094060867

感想・レビュー・書評

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  • イケメン俳優、佐藤勝くんが出演した映画だけど、映画はまだ見ていない。
    映画より先に原作を読んでみたい派なので。

    「何かを得るためには、何かを失わなくてはならない」
    はっとさせられ、考えさせられ、気づかされる哲学的名言の宝庫だったが、
    「僕を生んでから、すべての時間を父と僕のためにささげてきた母さんが、最後の最後に自分のためにその時間を使うはずがなかった。母さんは最後まで父と僕のために、みずからの時間を使おうとしたのだ。」(P153)
    昨秋に母を喪った私には、この描写が自分と母の最期に重なり過ぎて、深く共感し、川村元気はすごい作家だと心底思った。
    母は痩せ細った身体を人工呼吸器と何本もに点滴の管に繋がれながら、私や弟や父が充分に別れを惜しむ時間を持てるよう、家族の絆を再確認する時間を持てるよう、母の最期の時間を使ってくれたと感じていたから。

    そして、「本当に大切なことを後回しにして、目の前にあるさほど重要ではないことを優先して日々生きてきたのだ。」(P138)
    私も目の前にある仕事や日々の家事・雑事に追われて疲れてしまい、母に会いに行く、母に電話するという本当に大切なことを後回しにしてしまっていた。
    会社は年休を取って休めたのに。。。家事だって、私一人で全部負わなくて、主人や子ども達に当事者意識を持って分担してもらう働きかけをすれば、いくらでも母に会いに行く時間を作れたのに。。。

    「ほとんどの大切なことは、失われた後に気付くものよ」(p117)
    本当にその通り。。。後悔先に立たず。

    そして、読み終わった今、佐藤勝くんの演技は好きだけど、原作の小説に多少なりともアレンジが加えてあるであろう映画はやっぱり見れないな、と思う。

  • タイトルだけは知っていたけれど...知っていたが故に今まで読んでなかった作品です。一言で言えば...心に残りました。死を前にしての心情で一番しっくり来たのが、“あるべき未来への後悔”でした。そして今まで気がつかずに、または気がつかないふりをしていた物や感情。悪魔が神様に負けたという理由を聞き、これまた納得。私自身もこういう身辺整理を出来たらいいなという憧れを残しました。

  • 自分の飼い猫が死んでしまったこともあり、一年ぐらい積読にしたままでいた本。映画化されていたけどストーリーに関する知識もなくまっさらな状態で読んで見た。いい意味で意外な本でした。消える対象が猫じゃなくてもいいように思ったけど、がんじがらめに生きている人間と対極の存在として猫を題材にしたのかな。何かを得るために何かを失うだとか、考えさせられるフレーズが多かったです。

  • 最初に『僕』の方を読んだせいか、主人公の心情とかが伝わらず消えた、生きた、消えたで、、
    悪魔とのやりとりとか服装とかどーでもいい。

    だからこの内容から『僕』を方を上手に作ったなーと思いました。お笑いの要素を入れたいのかも知れないけどそれも笑えない。

    単純に悪魔と主人公の会話で終わったって感じで小説よりも漫画みたいな、、

    でも確かにと思う部分はある。「何かを得るには何かを失う」それは現生活にもあり、あたり前に存在してる事だしそれがないと生きてはいけない。でもその部分をもっと深く書いてあればいいのにと思う。

    感想は一言でいうと『あっ、猫は生きれたのね』で終わる。内容が薄いと感じました

  • 普段当たり前にある物とか人たちが、いつまでもずっと変わらずに在り続けることって、本当はありえないことで、ましてや自分自身ですら明日も生きている保証はどこにもない。
    私も家で犬を飼っていて、その愛犬がいつか居なくなってしまうなんてことは今はまだ全然想像できないししたくもない。
    それは家族や友人にも当てはまるけれど、私は未だ近しい友人も身近な家族の死にも直面したことがないから、いつかその時が来てしまった時に、一体どれほどの衝撃を受けることになるのか想像することもできない。あまりにも辛くて苦しくて、立ち直れないかもしれないと思うと行く先には恐怖しか無く、こんなことなら「出会わない方が良かった」なんて思うこともあるかもしれない。

    だけど、この作品を読んで感じたことはそういった“後悔”できることこそが唯一無二の自分らしさであり、幸せなのだ、ということでした。自分の世界から消えてしまったことや、なくしてしまったものたちに悲しみを感じることが出来るのはそれだけ好きで、愛していたから。「出会わなければ…」なんて思ってしまうのは出会った喜びを知ってしまったから、普段当たり前にこうして過ごせているのは家族や友人のおかげであり、自然の営みや文明の利器のおかげ。あまりにも近すぎて見えなかった大切なものに気づかせてもらうことができました。

    こんなにも幸せそうで、
    希望に満ち溢れた中で死と向き合う主人公は初めてでした。

  • 「これ映画になるって言ってたやつだ!」と思って最初手に取りました。その後、話の内容が気になったので、買ってすぐに近くの喫茶店に入って読みました。すると、周りに人が居ることも忘れ、気がつくとポロポロ泣いていました。

    ひとつ、またひとつと自分の周りにあった大切なものが失われていくことを考えると、とっても寂しく、悲しい事だと思います。

    当たり前すぎて、身近すぎてあまり大切さに気付けていないものって本当に沢山あると思います。

    もし、あと一日 生きれる時間を延ばせるのなら
    あなたは何を失いますか?

  • 数年前話題になったなぁ…くらいの思いで、概要を知らずに読んだ。タイトルからして愛猫との別れが描かれる涙をさそうような物語かと勝手に思っていた。
    ベースは余命わずかな主人公が家族や自分を構築しているものに対しての答えを見つけ出してゆく…といった感じだろうか。時間の概念だったり、自分が自分であるのは周りの物や人物によるものだ…という思想が出てきたり、若干哲学要素も入っていると感じた。死に直面して、普段の生活のありがたみや家族のあたたかさに気づくのはありがちなストーリーだけど、改めて「普段の生活」というものを大事にしようと気づかされる。当たり前だけれど失ってからでは遅いのだ。当たり前を幸せと感じられるかそうでないかは、気づいた人にしか分からない感情だ。
    読み始めた当初、文章のノリが苦手だった。必要か不必要か不明な補足がちょこちょこ入ったり、外国文学の訳みたいな…読みにくいとも思ってしまった。しかし読後、もう一度冒頭を読み返してみる。この本1冊が父宛ての遺書であり、書き始めた当初は父に対し本音を吐露する気恥ずかしい思いがあったのだろうと気づくと、変なノリ・変な補足にも納得した。だんだんとこの変なノリも薄れてゆき、真面目モードになってくる。終盤の泣かせようとしてる感はちょっと引いてしまったけれど。主人公の最期までは描かれていないけれど、直接会ってきっと父と和解できるだろう。
    当たり前のありがたさに改めて感謝したくなる、今、幸せなんだと思わせてくれる1冊。なにもかもが永遠ではないから、失う前にそう思える日常生活を心がけたい。

  • 2018年2月25日読了。突然現れた「悪魔」に死を宣告された僕が、命を伸ばす代わりに「この世界から消す」と決めたものは…。映画プロデューサー川村元気の小説。「泣ける」と評判らしいが、恋人との記憶・映画の記憶・両親の記憶となるほど泣けるポイントを押さえ、読んでる人の記憶を刺激して泣ける感動を外部から持ってくるあたり確かによくできた小説と思う。(自分も泣いた)自分が死んで自分の世界がなくなるとして、「どうせ死ぬんだから何したっていいや」と思えるほど人は強くないというか、そんな風に考えられるくらいだったらそもそも「生きる」ことを継続できないものなのだろう…何かについて真剣に考えられるときは、それがなくなってしまったか終わろうとしているとき、しかないのかもしれないな。

  • これは泣けました。久しぶりに小説で泣いた。
    人の出会いやすれ違い、悩んで惑う人の不完全さを、思わず愛でたくなる。
    いきなり訪れた非日常を、主人公は淡々と描写する。
    精神崩壊するわけでもなく、自分の軸はなにも変わらない。喜怒哀楽を持ったまま。でも物質的に、確実に大事なものが消えていく。きれいに整頓された、その中に流れる川村元気作品の空気は、もっと吸いたいなあと思った。

  • 内容は面白いし、消すことと繋ぐことの意味づけも面白い。
    だけど、文体が説明的でくどいため、テンポが悪い…

    最後の解説に「この小説に感動するのは、読み手の心の中にある喪失と響き合うからだ。」と書かれていた。
    たしかにレタスや母親が消えるかもしれない、その部分で号泣してしまった。(しかも電車内)

    自分の経験と重なると、人は心を動かされるのだな。
    「愛する」とは、「消えてほしくない」ということ!

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著者プロフィール

かわむら・げんき
1979年、横浜生まれ。
上智大学新聞学科卒業後、『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』『寄生獣』『君の名は。』などの映画を製作。2010年、米The Hollywood Reporter誌の「Next Generation Asia」に選出され、’11年には優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。’12年に初の小説『世界から猫が消えたなら』を発表。同書は本屋大賞にノミネートされ、佐藤健主演で映画化、小野大輔主演でオーディオブック化された。2作目の小説にあたる本作品『億男』も本屋対象にノミネートされ、佐藤健、高橋一生出演で映画化、’18年10月公開予定。他の作品にアートディレクター・佐野研二郎との共著の絵本『ティニー ふうせんいぬものがたり』、イラストレーター・益子悠紀と共著の絵本『ムーム』、イラストレーター・サカモトリョウと共著の絵本『パティシエのモンスター』、対談集『仕事。』『理系に学ぶ。』『超企画会議』。最新小説は『四月になれば彼女は』。


「2018年 『億男 オーディオブック付き スペシャル・エディション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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