坊っちゃん (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101010038

感想・レビュー・書評

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  • 勢いで読んだ。坊っちゃんの性格もさることながら、山嵐に赤シャツ、野だ、清、出てくる登場人物がみんな個性豊かで愛おしい。
    坊っちゃんのように、思慮は少なくとも、威勢よく、正義に満ち溢れた主人公は見ていて清々しい。

    それにしても、全く違う作風の『坊っちゃん』と『草枕』がほぼ同時期に書かれているのが面白い。

  • 数年ぶりに再読。
    無鉄砲で傲慢な坊っちゃんがいろいろしでかすお話。
    初めて読んだときは、最後の場面にスカッとしたが、今読み返してみると、赤シャツが少し可哀想に思えた。

    5分後に意外な結末という本に、中間管理職の苦悩という赤シャツ目線で書かれたお話があるが、それを読んでからだと赤シャツに対する見方が変わる。
    赤シャツは本当は若い女性が接客するお店はあまり好きではなく、他の教師との義理でやむを得えずつきあわされていた。
    マドンナに対しても下心など些かも抱いていない。
    学校でも校長やら他の教師やらから、仕事を押し付けられ、東京から赴任してきたという生意気な新任教師がいる中で安牌な人間関係を保たなければいけないというプレッシャー。

    どの人物の目線で語られるかによってこんなに受け取り方も変わるのかと感嘆した。

  • 正直な人が生きにくいのは、今に限ったことじゃないんだなぁ。
    坊ちゃんは何度か読んでいるけれども、何度読んでも清との関係性に心打たれる。
    気性がまっすぐな坊ちゃんを唯一心から慕う清。

    それと先生という職についてからは、読み直したのははじめてで、生徒の嫌がらせや、私利私欲の塊みたいな赤シャツ、太鼓持ちののだいこ、あやふやなことしか言わない狸などのわかりやすい悪役の印象がより鮮明になった。

    田舎だからかなんなのか、子どもたちの嫌がらせには腹が立つ。
    坊ちゃんが正直で単純だから、それに比べると坊ちゃんと合わない奴らは複雑で本心を見せない。
    建前と本音をつないわけて、陰でこそこそ悪口を言うし、排除するために手段を選ばない。
    排他的だし、いやらしい奴らが多い。
    山嵐はそんな中でも中立的な立場だと思うが、坊ちゃんと同じく私欲を肥やすずるい奴らとは相容れない。
    正直ものはバカを見るというが、山嵐は割とその場にあった発言をしつつもしっかり主張もするタイプで、理想の先生像だと思う。こんな人柄だから生徒からも人気がある。
    夏目漱石は観察眼が鋭いのだろう。

    短くてさっくりした作品だが、田舎と都会、知恵と心、本音と建前といろいろな対比関係も読み取れて非常に興味深い。
    これだけコテンパンにやられて、最後の仕返しはぽこぽこ殴るだけかっていうのはあるんだけど、不思議な読後感の心地よさがやはり好きだ。
    いつでも清が待っていてくれる。
    名前のつけられない絆で結ばれた坊ちゃんと清。
    お墓まで待っていてくれるなんて、泣ける。
    今風に言えばエモい。

  • この上なくシンプルな終わり方、これが良い。読後のさわやかな、しかし心が少しあったまるような、そんな最後の文だったと思う。「だから清の墓は小日向の養源寺にある。」と書かれることで初めて、この作品はもう既に清が亡くなった後に当時を懐かしむように思い出しながら描かれた作品であることが分かる。この「だから」という一文が、この作品が書かれた理由を示している。つまり、この作品は清の墓が小日向の養源寺にある理由を書くための文章だったのだ。そしてもう清が亡くなってしまっていることに対する寂しさと、しかしそれが情を乗せずに表現されており押しつけがましくないため、我々の胸にもスッと入ってくる。

    私は普段は基本ミステリーなどストーリが面白いことを売りにした作品を読むため、話の展開があまりないようなものを読むのは学校の授業ぶりだったかもしれない。が、これはこれで悪くない、むしろそれなりに面白さを感じられたと思っている。特に良かったポイントは、文章自体の良さと登場人物の個性の2点だろう。久しぶりに現代以外の書き手の文章で、読み始めは内容が入って来づらいと感じていたが、声に出しながら読んでみると、音にしやすいことこの上ない。音になれば自然に脳にも入ってきて、すらすらと読めるようになった。それ以降は音読をせずとも、頭の中で声が自然に再生され、のめりこむように読めた。
    また登場人物の個性の側面として坊ちゃんは、他人の言うことなすこと全てをふっかけられてるように捉えてしまう。それがつまり親譲りの無鉄砲さである。癇癪持ちで何にでも突っかかる姿勢に最初は驚くが、次第にそれが悪くなく思えてくる。そんな中で一番の仇となりそうな山嵐が出てくるが彼もいい役だ。来月GWに四国に行く際には、彼らに会いに行こうと思う。

  • 「親譲りの無鉄砲で小供の頃から損ばかりしている」という有名な一節から始まる、夏目漱石の代表作「坊っちゃん」
    夏目漱石の作品は初めてだったが、古典作品の中では十分読みやすい作品だったかなと思う。
    ひょんなことから、東京を出て松山の中学校で教鞭を取ることになった”坊っちゃん”
    こと主人公。狸、赤シャツ、山嵐、野だ、うらなり…等面白いあだ名をつけられた人物たちとの間で起こる争いが描かれている。
    無鉄砲と自分で言うだけあって、主人公の坊っちゃんの破天荒ぶりは非常に痛快であった。江戸っ子気質でどこまでも真っ直ぐなところも非常に魅力的であった。
    ストーリーとしては特段眼を見張るものではないが、明治という時代の学校の様子も垣間見えて、また今の時代とも重なる部分もあり、面白い一冊だった。
    もう少し夏目漱石の作品を読んでみたいと思う。

  • いまさらながら言うが面白さといい、構成といいよく出来た傑作、夏目漱石の「坊ちゃん」。

    昔読んで印象に残っていた場面は、布団に入れられたバッタでへいこうした坊ちゃん先生が生徒たちの「そりゃ、イナゴぞな、なもし」でぎゃふんとなったところ。かけあいがたまらん。

    再読してみて、ユーモラスな新任先生騒動記だけれど、読み方いろいろ今回は「赤シャツ」が気になった。

    坊ちゃん先生をいろいろ親切にしてくれると思いきや、ずるい策士であった。やさしい声でのここちいい話の裏にはたくらみがあった。

    これは坊ちゃん先生でなくても経験する。とくに入学、入社、入院、引越しで新天地に入った時。

    やけに親切にすりよってくるひとには注意。後で必ずわけがある。しかし、みぎもひだりもわからない時教えてくれるひとは有難く、ついほだされる。

    こういう私めも、かずかずのほろ苦い思いをしているので笑ってしまった。

    「坊ちゃん」の最終章、一本気の坊ちゃん先生、そういう「やから」をやっつけてしまうカタルシスがあるのだが、結局職を失うという痛みがあるのである

  • いつも同じことを言ってますが、昔の小説ってどうにも読むまでに気合いというか“読むぞ”って意気込みみたいなもんが要るんですけど、いざ読み始めると、とても読み心地が良いです。

    特に漱石先生は、未だにいろんな人に読み継がれているだけあって、その心地良さがとても顕著で、文章に不自然な部分がなく、スルスルと頭に入ってくる感じがして気持ち良いです。

    とは言ってみたものの、漱石先生の作品は“こころ”くらいしか読んだことなかったので(本棚には何作品か差さっているのだけれども、、)今回なんとなく“坊ちゃん”を読んでみました。

    この“坊ちゃん”、ストーリーはもの凄くシンプルで、東京育ちの主人公が学校を卒業してから、松山の中学校に数学の教師として赴任したのだけれど、、、ってだけの話なのに、こんなにも面白いのは、やっぱり登場人物のキャラ立ちの良さなのかなぁ、、と勝手に思ったりします。

    冒頭の「親譲りの無鉄砲で子供のときから損ばかりしている。」って文に全てが集約されているよね、、とか、したり顔で言いたくなるような、主人公のキャラ。
    良く言えば正直で真っ直ぐ、悪く言えば空気の読めない主人公、、、(多分名前は出てきてない?)そりゃあんたの言っていることは正しいよ、正しいけどさぁ、、って場面が物語の最初から最後まで貫かれていて、主人公の心の声というか独白のシーンでさえ、独りよがりで共感できないのに、なぜか憎めない、この絶妙なラインのキャラ設定が出来てしまうのが漱石先生の漱石先生たる所以なのだ!と勝手に納得してみたり、、。

    劇中に主人公が、街中で団子やら天ぷらソバやらを食べたら、次の日に黒板に団子やら天ぷら先生やら書かれて、生徒にからかわれる、みたいなシーンがあるのですが、こんな昔(時代設定は恐らく本書発行当初の1906年(明治39年)?)から、生徒が教師をからかう文化があったのか、と思うとなんだかドス黒い気持ちになりました。

    あと、昔の小説なだけあって分からないところが結構あって、巻末の脚注のページにポストイットを貼って、行ったり来たりしながら読んでいたのですが、“赤シャツ”の策略だったり、主人公に起こったいろいろなことは、結局は彼の被害妄想だったのか、それとも実際に主人公が“正直者”だからこそ、引き起こしてしまったトラブルなのか、、その辺が気になるところです。

    それにしても主人公の田舎のディスりかたが凄かった。
    でもそれすらも、「上手くいかないことを田舎のせいにして自分を守っている小せぇ器の主人公」ってニュアンスを遠回しに表現することが狙いなのだとしたら、やっぱり漱石先生凄いなぁとか思ってしまいます。

  • 坊っちゃんの性格に心底傾倒するということは無いが、
    坊っちゃん目線で書かれた本なので、展開がこ気味良い。

    所々クスっと笑わせてくれたり、会話文には感心させられたり、
    流石は夏目漱石だなぁと思う。
    もっと難解な小説を書くのかと思ったら、大変読み易く面白い。

    個人的には清の存在がとても印象的だった。

  • ドラマ「吾輩は主婦である」で、赤パジャマと呼ばれる登場人物がいたが、ここに出てくる赤シャツから来てるのかな。

  • 純文学って私にとっては難しくてなかなか読み終わるまで時間がかかるのですが、この坊ちゃんはスラスラと爽快に読めて楽しかったです。昔の本なのに、身近に感じれたというか。夏目漱石の作品にもっと触れてみたい気持ちが強まりました。

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著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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