坊っちゃん (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101010038

感想・レビュー・書評

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  • お気に入りの10冊に入れよう。それぐらち良い小説だった。教師の私にはより面白く感じられた。教師にはぜひ一読してもらいたい。夏目漱石自身が松山で教師をやっていた頃の体験を下敷きにして生み出された物語。

    坊ちゃんが正しい!江戸っ子の主張が気持ち良い!しかし、筋が通らない。悔しい。こういった感じの場面が、この小説にはいくつもある。
    フラストレーションが溜まりに溜まって、最後にスカッとする池井戸潤的な話の構成。

    表面上はよい顔をしている人々。裏で策略を回している。取り繕って、陰で好き放題している(これは、現代に通ずるところがかなりある)。そうした現状に真正面から立ち向かう坊ちゃん(江戸っ子)と山嵐(会津っ子)。物語の結末は上述したように一見スカッとしている。かと思いきや、社会的には負けているんだよなあ。う~ん、悔しい。


    江戸時代の良き心構えが、時代の流れに取り残されていくニュアンスが描かれている。でも、だからこそ、坊ちゃんや山嵐の生き方に触れると、大切なことを思い起こさせてくれるのだろう。

    山嵐のセリフも心に響いたな。

    時代の流れに呑まれ、忘れ去られていく大切なことに触れさせてくれる物語であった。人情味溢れる坊ちゃんを好きになること間違いなし。

  • 登場人物のキャラがたっていてどんなひとたちか分かりやすかった。ストーリーとしてはすっきり終わったのかな?散々嫌がらせをしてきた、生徒や教頭、校長たちに仕返しができたのかな?もうちょっと最後スカッとする場面が欲しかった。
    あと、坊っちゃんはなんでも否定的に考えているところがあんまり好きじゃなかった。

  • 少し前に漱石の『吾輩は猫である』を読み直していて、これは子供の頃に読んだつもりでいたのと全く別物(小中学生の頃に読んだのは子供むけ簡略版)だと気づいたので、『坊ちゃん』も読み直してみよう、と再読。結果、こちらはページ数的にみても、おそらく小中学生の頃に読んだものそのままだった。とはいえ、改めて読んでもとても面白かった。

    筋書きは人口に膾炙してるので省くけれど、とにかく文体に勢いがあるのが良い。坊ちゃんの性格そのままに、漱石の筆も勢いよく走り出したのだろう。ただ、一般的に思われている(というか自分が思い込んでいた)坊ちゃんが悪人をやっつける痛快作、というイメージは、大人になった今読むとちょっと違うな、と。

    赤シャツと野だいこが坊ちゃん&山嵐から受けたのは社会的制裁ではなくシンプルな暴力だし、そういう意味では坊ちゃん側のやり方はあまり褒められたことではない上に、結局、赤シャツも野だいこも、一時的にしょんぼりはしても、坊ちゃんと山嵐が去った後、反省して行動を改めるとは思えない。うらなりも去っていったままだし、赤シャツはきっとこのあとマドンナを手に入れて、学校でもやりたい放題だろう。つまり坊ちゃんが一時的に溜飲を下げたところで、根本的な解決にはなっていない。

    とはいえ、だから評価できない、というのではなく、世の中とはそのような世知辛いものであり、何もかも自分の思うようにはならないよなあ、という変な切なさがある。坊ちゃんはその真っ直ぐさゆえに損をすることもあるだろうが、そうやって生きていくのだろうし、自分も不器用なりに生きていくしかないんだよなあ、と。

    江戸っ子の坊ちゃんは、ご先祖が幕臣であり、山嵐が会津出身という設定も、なんだか象徴的だ。ある意味彼らは敗者だけれど、官軍に一矢を報いて、自分の生き様を貫いていく。

    あとは何より「清(きよ)」の存在が素晴らしい。家族の愛に恵まれなかった坊ちゃんが、それでも根っこの部分でひねくれずに育ったのは、この清の無償の愛と信頼のおかげだったと思う。すべての人の人生に必要なのは清のような存在なんじゃなかろうか。

    あと、関係ないけど最近『ドラゴン桜』の続編ドラマなど見ていて、近頃の学園ドラマの不良は悪質だな、と思っていたんですが、坊ちゃんの生徒たちも意外と陰湿だったりして、こういうのって別に時代のせいだけでもないのかな、とふと思ったりもしました。

    • 淳水堂さん
      yamaitsuさんこんにちは。
      私は大人になってから(というか数年前)初めて読んだのですが、たしかに世間で言われるイメージとは違うなあと...
      yamaitsuさんこんにちは。
      私は大人になってから(というか数年前)初めて読んだのですが、たしかに世間で言われるイメージとは違うなあと思いました。
      坊ちゃんが悪人をやっつける痛快作でもないし、坊っちゃんは赤シャツたちには「あの坊っちゃん先生はかわいいもんだ」扱いだし、去った後も何も変わらないだろうし。
      それに御家人筋のぼっちゃんが松山を田舎モンと見くびっている感じもあり、現在松山で観光名所っぽくしてるけどいいのか?とも思いました。(もちろん現在の松山で観光名所にしてるってことは良いんでしょうけれど)

      でもやっぱり語呂はいいし、勢いあるし、洒落ているし、なんだかんだ言ってぼっちゃんの軽口悪口は頭の回転良さそうだし、読む言葉が痛快ではありました。
      2021/04/30
    • yamaitsuさん
      淳水堂さん、こんにちは(^^)/
      やっぱりこの作品、単純に勧善懲悪の痛快作としては読めないですよねえ。坊ちゃんのしたことは「子供の仕返し」...
      淳水堂さん、こんにちは(^^)/
      やっぱりこの作品、単純に勧善懲悪の痛快作としては読めないですよねえ。坊ちゃんのしたことは「子供の仕返し」レベルですし(^_^;)

      生徒たちの嫌がらせは確かに陰湿でしたが、坊ちゃんは「田舎者はこれだから…」みたいな認識で、結構差別的ですし。山嵐のほうは、生徒から一番人気がある先生という設定だったので、坊ちゃんもせめて生徒とちゃんと和解くらいはしてほしかったですね。

      とはいえやっぱりサクサク読めてしまうのは、テンポの良さと、坊ちゃんの口調の歯切れの良さのおかげでしょうか。筋書きよりも漱石のこの作品における文体の魅力を味わうべき作品かもしれませんね。
      2021/05/01
  • 破天荒で自分に正直、だけど荒くれ者とは言い過ぎな粗野な青年教師のお話。
    自分の感情に正直に生きて、何も解決せずに、ただ終わる。坊っちゃんが自分に正直に日々生きている、ただそれだけの話。清々しい。

  • 来週四国へ旅行に行くので、せっかくならと思い読了。
    ずいぶん前に買ったはいいものの敬遠して積読になってたものが消化された達成感は一入だ。

    江戸で生まれ育ち、曲がったことを許さない性格。それがこの小説の主人公、坊っちゃん。
    なんとなく、もっと柔らかな話なのかなとイメージしていただけにこんなに諍いが起こる話なのかと驚いた。

    物語は田舎(四国おそらく愛媛)へ赴任した主人公である新米教師が社会の意地汚さに触れて抗いながら進んでいく。

    主人公は最初、純粋であるからなんでも鵜呑みに信じてしまうが、悪に触れるにつれ不快感が高まっていく。
    この描写は私自身が社会に触れるにつれ、感じた不快感と似ていた。

    口では上手いこといいながら、裏では現金配ったりして得票数を稼いでいる政治家がいい例だ。赤シャツのような存在は世間にごまんといるのだろう。自身の体験とも結びつかせて、ここまで落とし込んだ漱石は凄い。


    純粋に自分の正義を信じられるような坊っちゃんに私もなりたい。

  • とりあえず名作からと思っていたところ、短い作品であったため読んでみました。

    江戸っ子である坊ちゃんを中心にした物語。
    坊ちゃんというくらいだから、わんぱく坊主の話だろうくらいに思っていたが、全く違う話だった。

    ストーリーは至ってシンプルで東京で育った主人公が大学卒業後、田舎の学校に教師として赴任し、......というもの。
    何も特別な要素はないのにこれだけ読み継がれているのは、話の爽快さや登場人物のキャラが立っているところが理由なのだろうか。

    主人公の坊ちゃんは登場人物全てにあだ名を付けるのだが、それがどれも秀逸で印象深い。


    ただ、純文学としては話も爽快で非常に読みやすいのだろうが、普段読書をしない身からすると読むのがしんどい気持ちもあったとだけ言っておこう、、、

    • ノートさん
      わんぱく坊主の話だろうっていうのは
      甘く見過ぎですwww
      わんぱく坊主の話だろうっていうのは
      甘く見過ぎですwww
      2020/05/16
  • 漱石の描く文章はどうしてこうもリズミカルなのか。こんなに注釈の多い作品を現代の若者にも飽きずに読ませられるのは、やはり物凄い語感のセンスだと感じる。
    本能や直感のままに生きる主人公と山嵐、打算で生きる赤シャツと野だ。最後は赤シャツと野だに華麗なる復讐をお見舞いして主人公と山嵐は学校を去るが、客観的に見ると道理の通った2人は結局のところ職を失い現場を離れる羽目になり、勝敗で物を言うならば敗北してしまった。
    それでもこの物語の最後、とてもあたたかい気持ちにさせられるのが清との再会である。幼い頃から絶えず愛情を与え続けてくれた清は主人公にとって帰る家そのものであり、破天荒で他人に執着のない彼にとって唯一の愛すべき人だった。終わり方は糸がぷつんと切れたように簡素だが、じんわりとした余韻がつきまとう小説だった。

  • へー、こんな話だったんだ。
    赤シャツやら山嵐やら聞き覚えのある登場人物に、なんとなく知っているようで実はよく知らなかったおはなし。
    教科書や試験問題で一部だけ読んでもわからないよね。
    有名な冒頭がやはりかなり面白く、ラストは切ない。
    真ん中あたりは愚痴だらけ(笑)

    最終的に、赤シャツをまんまとやり込めて、マドンナにも感謝され、生徒からも慕われ、ハッピーエンド…というヒーロー像をイメージしていたので、なんかあっけないというか、物足りないというか。
    現実はこんなものなんでしょうな。

    坊ちゃんの独りよがりで上から目線の語り口調に、ちょっとついていけないところもあったけど、気持ちよく共感できるところもあった。
    散々けなされている松山にもなんだか行きたくなってしまう。

  • 一つ前に読んだ太宰の作品に比べて、キレとリズムが良い文体だったので一気に読了した。江戸っ子で義理人情があり真っ直ぐな若い主人公が、社会人デビューとして高知(当時を考えるとかなり異国の地)にある学校の数学教師として赴任したものの、そこで白黒簡単につけられない理不尽な世界に直面し、日々葛藤する物語。それでも心折れず持ち前の江戸っ子精神で、学校の闇に真っ直ぐ迫る姿は、読んでいて気持ちが良かった。まさに明治の鬼塚英吉(GTO)。

  • 小さい頃にアニメで見た記憶がうっすらあるだけで実は読んだことはなかったな、と思って読みました。
    私としては坊ちゃんが教師として生徒と熱い関係を築いてくれることを期待してました。何故か勝手に(笑)
    夏目漱石の作品の主人公は暗いイメージがあったけれど、珍しくとても真っ直ぐで心まで健康なキャラクターで微笑ましかったです
    全編通してイキイキとした作品でした

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著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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