ヨーロッパ退屈日記 (新潮文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784101167312

感想・レビュー・書評

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  • 「伊丹十三」のエッセイ集『ヨーロッパ退屈日記』を読みました。

    『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』から、ヨーロッパ繋がり(東と西の違いはありますが… )ですね。

    -----story-------------
    この人が"随筆"を"エッセイ"に変えた。
    本書を読まずしてエッセイを語るなかれ。
    1965年、颯爽と登場したデビュー作!

    1961年、俳優としてヨーロッパに長期滞在した著者は、語学力と幅広い教養を武器に、当地での見聞を洒脱な文体で綴り始めた。
    上質のユーモアと、見識という名の背骨を通した文章は、戦後日本に初めて登場した本格的な"エッセイ"だった。
    「山口瞳」は本書をこのように推した。
    「私は、この本が中学生・高校生に読まれることを希望する。汚れてしまった大人たちではもう遅いのである」。
    -----------------------

    「伊丹十三」が俳優として渡欧した際のことを描いたエッセイです。
    (当時の芸名は「伊丹一三」、マイナス(-)をプラス(+)にして「伊丹十三」に変更した… とのこと)

    1965(昭和40)年の作品とは思えない… 50年近く前の作品なのに古臭さを感じさせない作品でした。

    クルマ、料理、ファッション、マナー、語学、音楽からヨーロッパの街並まで、幅広いテーマについて、「伊丹十三」が自分の価値観で語って(思いっ切り主張して)いますが、嫌味な感じがせず、愉しく読めましたね。

    「伊丹十三」の幅広い知識や教養、拘りには頭が下がる思いです… そして、某議員への苦言やアメリカへの偏見も堂々と主張する等、権力に媚びない、自分の主張に自信を持った小気味良い語り口が、読んでいて気持ち良いですねぇ。

    装訂と挿絵も自ら手掛けて、イラストレーターやデザイナーとしての優れた才能も表現された作品になっています。

    愉しめたし、読みやすく、そして笑えたエッセイでした。

    以下、収録されているエッセイ全89篇です。

    ■第一部
     1.わたくしの職業
     2.これは本当に映画だろうか
     3.ハリーの話
     4.ジャギュアの到着
     5.白鳥の湖
     6.大英帝国の説得力
     7.想像力
     8.旅馴れてニタリと笑う
     9.マドリッドの北京
     10.ニックとチャック
     11.晩餐会
     12.同居人マイクル
      百三十六階の住人
      スミス氏の散歩
     13.お兄様と寝る
     14.四人の俳優
     15.エピック嫌い
     16.ロンドンの乗馬靴
     17.監督の条件
     18.原子力研究所員の恐怖
     19.外国語を話す外国人
     20.あいづちについて
     21.握手の名人
     22.産婦の食欲
     23.マイクルの韜晦
     24.楽しい飛行機旅行
     25.ミモザ
     26.おばさんの収入
     27.ランドリーその他
     28.和文英訳
     29.スキヤキ戦争
     30.ハイ・スクール・イングリッシュ
     31.これだけは知っておこう
     32.さて、心構えを一つ

    ■第二部
     33.沈痛なバーテンダー
     34.カクテルに対する偏見
      マルティニ
      ギムレット
      ジン・バック
      プランターズ・パンチ
     35.おつまみ(アーティショーその他)
     36.スパゲッティの正しい調理法
     37.湯煙りの立つや夏原……
     38.ソックスを誰もはかない
     39.そしてパリ
     40.場違い
     41.原則の人
     42.机の上のハガキ
     43.天鵞絨のハンドル・カヴァ
     44.正装の快感
     45.銀座風俗小史
     46.左ハンドル
     47.ボックス・ジャンクション
     48.ハイヒールを履いた男たち
     49.ダンヒルに刻んだ頭文字
     50.ミドル・クラスの憂鬱
     51.女性の眼で見た世界の構造
     52.喰わず嫌い
     53.何故パリは美しいか
     54.素朴な疑問
     55.わたくしのコレクション
     56.パリのアメリカ人
     
    ■第三部
     57.ロンドンからの電報
     58.息詰る十分間
     59.女狩人の一隊
     60.ロータス・エランのために
     61.渡された一頁
     62.“GO AND CELEBRATE"
     63.紙の飛行機
     64.リチャード・ブルックスの言葉

    ■第四部
     65.英国人であるための肉体的条件
     66.日暮れて道遠し
     67.イングリッシュ・ティの淹れ方
     68.エルメスとシャルル・ジュールダン
     69.香港
     70.三ツ星のフランス料理
     71.飲み残す葡萄酒
     72.イタリーびいき
     73.キリストさまたちとマリヤさまたち
     74.スパゲッティの正しい食べ方
     75.ふたたびパリ
     76.注意一瞬、怪我一生
     77.ジャパニーズ・トマト
     78.スモウク・サモン
     79.三船敏郎氏のタタミイワシ
     80.キング・クラブ
     81.ペタンクと焙り肉
     82.ミルク世紀
     83.ステレオホニックハイハイ
     84.この道二十年
     85.母音
     86.子音
     87.アイ・アム・ア・ボーイ
     88.古典音楽コンプレックス
     89.最終楽章

    ちなみに「ジャギュア」は英国自動車メーカーの「ジャガー」のことです。

  • 「貧乏はしていても貧乏くさい真似はいやだね。
    毅然たる構えが欲しいね。」

    伊丹十三はエエとこの坊で、IQも高いが捻じれたプライドもすこぶる高い。エッセイの根底に流れるものは、彼の非常に高い美意識だ。英国車ジャギュア(ジャガー)やパリの食文化などを称賛しつつも、『退屈』と自虐を入れるあたり相当面倒臭い。

    伊丹十三を初めて知ったのは、ドラマ「北の国から」いしだあゆみの恋人役。五郎と正反対の役だ。
    都会的でスマートだけど本当は臆病で不器用な男。倉本聰は見抜いていたのか? ハマりすぎていて、以後そのイメージがずっと払拭できずにいる。

    小田実「何でもみてやろう」(未読)と同時代で同じヨーロッパが舞台というのも興味深い。
    私が高校生時代に二作品を読んだなら、どちらに傾倒しただろう?

  • うーん、ちょっとタイトル通り本当に退屈…苦笑
    当時のヨーロッパの風俗が垣間見えるという触れ込み自体はその通りなんだけど、そもそも人の日記なんて、その人自体に興味がない限りは、時代や国が違えど大して面白いものでもないのかもしれないな…

  • 結構前に読んだ作品で内容はあんまり覚えてない(ごめんなさい)んだけど、筆者の語り口に驚かされた。
    また再読しよう…

  • 「粋だな~」とこの一言に限る。
    所作が自然な大人って本当に格好良いなと思う。
    そんなことを強く思わせてくれた一冊。

  • 出版されたのが1965年ということをまず念頭にいてほしい。そうでなければ、時代遅れの価値観や差別意識に腹をたてることになるかもしれないからだ。

    まだ海外というものに一般の人はなかなか行けなかった時代。海外生活の経験談はさぞ刺激的に受け取られたのではなかろうか。エッセイの皮切になったというのもわかる。

    しかし全体的に上流階級贔屓で、その他の労働階級や日本を見下しているところが多く、性差別もある。

    例えば"自動車事故の結構な割合が若者だから免許の年齢制限を上げろ"とか
    "女は科学的知識を持ち合わせていないから女の目から観た世界観を書いてみたいものだ"とか
    "ビートルズファッションをしている低俗どもが街の品位を下げるのだ"とか。
    Twitterならば毎日大炎上パーティの発言が目白押しなのだ。

    現代にも通じる価値観も勿論あるし、文体は軽やかで読みやすい。時代を知る文献として価値があると思う。
    伊丹十三のファンか、こいつ言ってラァ時代は変わったのだよと笑い飛ばせる人にはおすすめです。

    あとなんといっても挿絵がいいですね。
    ここまで書きましたが、旅の前に読むと背筋が改まる一冊です。お嬢さん放浪記と合わせて気持ち旅に向けたいときに。

  • 映画俳優、デザイナ-、映画監督として多彩ぶりを発揮した伊丹十三氏(1933-1997)の若き日のエッセイ集。いち映画ファンとして注目したのが『北京の55日』で共演したチャック(チャ-ルトン・ヘストン)やデヴィッド・ニーヴン、エヴァ・ガードナ-、ニコラス・レイ監督の回顧場面であり、『ロード・ジム』では主演のピータ-・オトゥ-ルの律儀な役者魂を誉めちぎっているところ。語学堪能で若さほとばしる、軽快にして豪胆なエッセイの数々がギュウギュウ詰めにされている。いまは亡き伊丹さんの非凡な才能を偲びながら読む。

  • 独特の視点で綴られたエッセイ。
    ユーモアたっぷりに皮肉っている文章が少し癖になる。

    文章の節々にヨーロッパの街の香りが漂っていて心地よかった。

  • いやーよかったな、文体がとても好きでノートに書き写すのが捗る

  • 著者が二十代の時に書かれた文章であるということに、驚き。貫禄がある。内容も、60年代に書かれたというのが驚き。ミシュランや、パスタ、英語の発音、お酒の話など、今では知っている人も多いのだろうけど、60年代時点では、最先端だったのだろう。

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著者プロフィール

1933年生まれ。映画監督、俳優、エッセイスト、テレビマン、CM作家、商業デザイナーなど、興味のおもむくままに様々な分野の職業に分け入り、多彩な才能を発揮。翻訳も多数手がけた。1997年没。

「2020年 『ちょこっと、つまみ おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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