- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102167038
感想・レビュー・書評
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下巻だけあって上巻がない店を二件巡りました。
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クラリス・スターリング FBI特別捜査官
第一部 ワシントンDC
「ふん。あたしの体液をくらえ、このクソアマ!」毛布が揺れ、空気が震えた。その刹那、クラリスは、イヴェルダ・ドラムゴの上唇を撃ち抜いた。イヴェルダの後頭部が吹っ飛んだ。
1990年代のタブロイド紙ブームで最大の恩恵を蒙った『ナショナル・タトラー』紙は、同紙自体の基準に照らしても異様としか思えないような号外を発行した。
“死の天使。FBIの殺人機械、クラリス・スターリング”
キッチン・ナイフで封をあけて、すべすべした一枚の紙をとりだした。手紙の送り主がだれか、署名に目を走らせるより先に察しがついた。
親愛なるクラリス きみが名誉を失墜し、公然と辱めを受けた経緯を、熱心に見守ってきた。
エコロジーの観点から言えば、レクターの処理法はギロチンにも優った。が、ギロチンほど瞬時にケリがつくわけではなかった。
第二部 フィレンツェ
1487年4月26日のあの日曜日、ドォオーモ(大聖堂)におけるミサの場でジュリアーノ・デ・メディチを殺し、ロレンツォ豪華王を殺しそこなったのがたたって、パッツィ一族は残らず辱めを受けたのである。
ハンニバル・レクターはフィレンツェに逃亡していたのだ。
フェル博士こそ、ハンニバル・レクターだ。
まだ早い時刻に、ハンニバル・レクター博士は騒々しい街路からこの世でもっとも香しい場所の一つ、ファルマチーア・ディ・サンタ・マリーア・ノベェッラに入った。ここは七百余年の昔、ドメニコ会の修道僧たちによって創られた薬舗である。奥の内扉まで伸びている廊下で博士は立ち止り、両目を閉じて顔を仰向けると、名高い石鹸やローションやクリームの芳香、作業室に並ぶ各種の原料の香りを心ゆくまで吸い込んだ。用務員は博士とは顔馴染みであり、ともすれば日頃尊大な態度を隠さない店員たちも彼には大いなる敬意を抱いている。このフィレンツェで暮しはじめて以来、身嗜なみに気を配る博士がこの店で購った商品の総額は、それでも十万リラを超えないだろう。だが、それらの香料や香油はよくよく厳選され、しかも並はずれた感性によって組み合わされていた。その感性は、鼻によって生きている香りの商人たちの胸に驚きと敬意を植えつけずにはおかなかった。
このファルマチーアの、奥の売り場に通じる典雅な廊下。その天井を飾る大きなアール・デコ調のランプが放つ仄かな光の下に立って香りをかいでいると、レクター博士の頭にはさまざまな記憶の断片が、閃光のようによみがえってくる。その記憶の中に、牢獄につながるものは何ひとつない。ただ―あれは何だ?クラリス・スターリング。どうしてだろう?
ああ、サポーネ・ディ・マンドルレだ。このファルマチーアの名物でもあるアーモンド石鹸の香り。
ファルマチーア・ディ・サンタ・マリーア・ノベェッラはフィレンツェ駅に近いスカーラ通りにあって、修道院に隣接している。信心深いカルロは、そのファルマチーアの斜め向かいの建物の前にさしかかると、扉の上部の壁に嵌め込まれた聖母マリアの絵の下で思わず帽子を脱いだ。 -
2015/2/15
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今回の訳者さんは読みやすかったです!
作品の大部分を忘れていたにも関わらず、情景を思い描くことができました。
レクター博士が逃げてから10年?後くらいの話。
彼の被害者であるメイスンという富豪が、彼を残虐に殺すために懸賞金をかけており、その懸賞金を巡って密告者との話が進んでいく、というストーリー。
レクター博士とイタリアというのがとてもしっくり来て、美しささえ感じました。
不思議なことに、レクターには無事に逃げおおせて欲しいと思ってしまう。
下巻が楽しみです。 -
60冊目
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和訳が読みづらいと言って触れなかった時間がもったいない。映画よりほっそりした印象のレクター博士、かっこよくて食べられたくなります。
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「いいえ。レクター博士は仮説には関心を持っとらんのです。“三段論法”も哲学的な“総合”もいかなる意味での”絶対”も信じとらんのです博士は」
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映画の原作です。映画で見るよりも細かい設定がよくわかって楽しめました。