- Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103096344
感想・レビュー・書評
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第2次十字軍の実にあっけない敗退と、イェルサレムの陥落までを描く第2巻。これまでの十字軍に関する書物が、キリスト教徒の側からばかり語られてきたのの対して、この巻では特にヌラディン、サラディンといったイスラムの側の英雄にも焦点を当てて語られるのは従来にはないものだろう。イエルサレムを守るキリスト教徒側では、悲劇の王ボードワン4世が光る。
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12世紀に入った頃、十字軍の第2世代の時代になると、確保したエルサレムを防衛するというキリスト教サイドの大変さが今でいう米国のアフガン駐在などと重なります。その中でライ病持ちのボードワン4世というエルサレム王国の若い国王の人望、実力など、個別には魅力的な人材がいたのですね。一方、イスラム側はヌラディンからサラディンという英雄が出て、1183年のボードワン4世亡き後のエルサレムへの闘いが・・・。テンプル(聖堂)騎士団、聖ヨハネ(病院)騎士団の2つの性格の違いなど詳細な記述で、騎士団の存在は映画の中では良く見ますが、背景などを改めて良く理解できました。1187年のエルサレム陥落を巡るサラディンとバリアーノ・イベリンの対決と友情は宗教を超えた騎士道が通用した時代であると感動モノです。そしていよいよ十字軍は第2段階を終わり、再び陥落したエルサレムの奪還へ向けた次の物語への期待が高まります。
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サラディンはクルド人だったんだ!
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やっぱりおもしろかった!
エデッサ陥落を機に始まる第二次十字軍の失敗。イスラム勢の反撃とサラディンの登場。そして、イェルサムの陥落までの物語。
イスラム側に優秀なリーダーが登場するなか、孤立した十字軍は劣勢に・・・。前作とは異なり攻めから守りに、やっぱり歴史は振り子のように揺れるな。それでも約90年くらい王国を守れたのは、少なくなったとはいえ有能な王がいて、テンプル騎士団と協力出来ていたからかな・・・と感じた。
心に残ったフレーズ
・平凡な人間でも、平凡を突き破る道がある。それは、自分自身の限界を冷徹に見極め、自分一人で何もかもやろうとせずに他者に任せることの重要性を認識したときに眼の前に開けてくる。
・広く人間世界に眼をやれば、まるで噴水でもあるかのように、一時代に人材が輩出する現象がしばしば起るということに気づく。そして、これまた噴水のように、多量の水を勢いよく噴き上げた後は、ストンと落ちる感じで、人材涸渇の時代に入っていく。
・外交面での誤りは、他国との関係のみ留らず、自国の国益を守ることにも深く関係してくるのである。
・二十一世紀のヨーロッパには、「ビザンチン式」という言い方がある。些細なことにこだわったあげくに大局を見失ない、そのときはトクしたように見えても結局はソンすることになる、という意味を端的に示した言葉である。
・ルネサンス時代のマキアヴェリは、成功するリーダーに必要な条件として、次の三つをあげている。力量、幸運、時代が必要としている資質
・リーダーにとっての第一条件は、自分がリーダーであることを強く自覚していること、にある。 -
サラディン最強説
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第2巻はイスラム教側の反撃がはじまる。キリスト教側は十字軍国家を成立させるものの、その後維持していくのは難しいという至極当たり前の問題に直面する一方、イスラム教側はサラディンという英雄を輩出。ジハードを掲げたサラディンは1187年、イェルサレムをキリスト教側から「開放」する。印象に残っているのは、サラディンはキリスト教徒に寛大であり、聖墳墓教会を破壊したりモスクに変えずに残した為、現在の私達がそのままの形で見れる事。また、サラディンはクルド人であった事。クルド人は自分の国というものを殆ど持つことの出来なった悲劇的な民族であり、今も民族問題を抱えて衝突している。何とも皮肉だな、と感じました。第3巻はいよいよ第三次十字軍のお話し。
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作者は一貫して歴史物の体裁を借りて「リーダー」を書いてきたんだと思う。
本作で書かれるのはイスラム側のリーダー、サラディン。興味は尽きない。
気になるのは諸作品に比べて密度が薄いような。登場人物の経歴然り、戦闘場面然り。想像だが資料が古代ローマ時代より少ないんじゃないか。
それにしても一神教には困ったものだ。 -
いつの時代も、明確な意志と覚悟を併せ持ったリーダーが現れない国はいずれ滅びてしまう。たとえそれが大国であったとしても。
2巻では聖地を奪還されたオリエント勢がイェルサレムを取り戻すまでの話である。十字軍の凋落(優秀な人材に恵まれないという側面で)は、どこか日出る国と似たような状況に思えて悲しいかな。