ロケット・ササキ:ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103500711

感想・レビュー・書評

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  • ・「液晶はもういい。ロボットをおやりなさい。
    まずは言葉だね。自然言語を理解するロボットを東京オリンピックまでに作るんだ。
    世界中から集まる人々をシャープのロボットがもてなす。素晴らしい光景じゃないか。」

    そんなある日、一人のシャープ社員が佐々木を訪れた。
    景井美帆。
    「これ、まだ試作なんですけど」
    テーブルに置かれたのは、愛らしい顔の小さな人型ロボットだった。
    RoBoHonと言います。。。。

    →ほんまかいなぁ~~~wwww



    ・違うものを接げばそこから新たな価値が生まれるのか →共創

  • シャープ元副社長の佐々木正氏の伝記。
    伝記ではあるが、当時の電機業界の技術競争や成り立ちなど佐々木氏自身の話だけでなく、業界全体の話も多く、興味深く読んだ。
    本当は学者になりたかった佐々木氏だが、戦中、戦後と自身の思い通りになる世の中ではなかった。
    けれど、エンジニアとしてジョブズや孫正義に師と仰がれる。
    氏はエンジニアの前に人として素晴らしい。
    相手が分からなければ、例えそれがライバルだとしても教え、自身が分からなければ相手に聞くという、「供創」の思想は本当に素晴らしい。
    とても読み易く、佐々木氏と当時の状況がよく分かった。

  • 元シャープ副社長で、伝説的技術者佐々木氏の評伝。自ら発明したという自動翻訳機を携えて面会に来た若き日の孫正義を見込んで共同開発を行い、その後も第一勧業銀行への融資依頼に対して自らの資産を担保に出すと申し出てソフトバンク創業の一億円の資金を得た話はあまりにも有名。このことに対して孫正義は佐々木のことを大恩人と言ってはばからない。孫正義だけでなく、アップルを追われたころのスティーブ・ジョブズがわざわざ東京に佐々木の元を訪ねてきたこともあったらしい。驚くのは、それ以前にすでに米国でその二人に会っているらしいことだ。彼ら以外にも、トランジスタを発明したベル研のウィリアム・ショックレー、フェアチャイルド・のロバート・ノイス、インテルのアンディー・グローブ、ゴードン・ムーア、SONYの江崎玲於奈、などその人脈は多彩である。また、こういった人脈を活かしきる判断力と行動力が素晴らしい。

    日本の高度成長期、佐々木の指揮の元で激しい電卓戦争を勝ち抜いたシャープ。トランジスタ、CMOS、液晶、太陽電池と技術の目利きとチャレンジで新しい技術を次々とものにしていった。そこには「足を止めたら負ける」という思いがあった。1971年には国内で生産された半導体の40%が電卓に使われたという。電卓は、それだけ電子立国・家電立国日本を象徴する最先端の製品であったのだ。カシオなどとともに技術と市場を牽引するシャープと佐々木を描いた物語は爽快である。

    佐々木のポリシーは次の言葉に集約される。
    「いいかい、君たち。分からなければ聞けばいい。持っていないなら借りればいい。逆に聞かれたら教えるべきだし、持っているものは与えるべきだ。人間、一人でできることなど高が知れている。技術の世界はみんなで共に創る『共創』が肝心だ」

    終戦間もない日本にあって、米国から多くのことを学んだ経験からの言葉である。「競争」ではなく「共創」。今ならオープンイノベーションと呼ぶのだろう。そのことを何十年も前から言葉にし、実践してきた。シャープが苦境に立たされているのを、液晶技術にこだわり、それをブラックボックス化して囲い込もうとしたことにあると指摘する。

    シャープ堺工場に鴻海の資本が入った直後の2012年、東洋経済のインタビューに答えてこう伝えている。

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    今回の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業のシャープ堺工場出資については、正直、警戒しています。
    シャープは、「おカネが入ってくるから、危機を乗り越えた」と一安心してはいけません。これは勝負ですよ。郭台銘・鴻海会長に対しても、「いやぁ、ありがとうございます」なんて調子のいいことばかり言っとってはダメだ。彼が堺工場に入るすきがないぐらい、根性のある経営をしてもらわないとね。
    過去のサムスンとの技術提携と異なり、シャープが欲しかったのはおカネだけ。鴻海はシャープの技術だけが欲しい。互いに信頼しているわけではないように見えます。
    シャープの経営陣は、あんな大きな赤字が出るなんて初めての経験だから仰天したんだろうね。今は、短期的な業績が、経営陣の評価基準になる時代です。それでも経営者たる者、長期的な経営戦略を、自信を持って説明できるようでなくてはね。
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    御年101歳でいまだ存命とのこと。この度の鴻海による買収について、どのように考えているのだろうか。

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    2018年1月31日 肺炎のため死去。享年102歳。ご冥福をお祈りする。

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    「「共創」が未来を作る」(東洋経済ONLINE 2012年8月6日)
    http://toyokeizai.net/articles/-/9715

  • すごい人がいたんですね。現在のIT技術とその応用製品の礎を全部作った人なんだなと感じる。ノーベル賞受賞者の江崎玲於奈、シャープの創始者・早川徳次、コンピュータ、パソコンの心臓部であるMPU、超LSI、などなど。彼自身が創ったというよりもヒントを与え、専門家を紹介し、お金を出したなどにより新しい技術・製品を作り出していった。技術はみんなのためにあると言う精神、彼はこれを「共創」といった。手助けをした人の有名所としてはインテルのノイス、孫正義、西和彦、スティーブジョブズ等錚々たる人々がいる。サムスン電子にも技術供与をしたところからシャープを崩壊させた人のように言われるが、懐が大きすぎるが故なのですね。逆に彼が現役から去った後、自由に研究させて新しいものを作っていこう気風が無くなってきたが故だと思う。

  • 2016年度系推薦図書 4系(環境・生命工学系)
    【配架場所】 図・3F開架 
    【請求記号】 289.1||OH
    【OPACへのリンク】
     https://opac.lib.tut.ac.jp/opac/book/177540

  • プロローグの「孫正義の大恩人、スティーブ・ジョブズの師」を読んだだけで一気に引き込まれ、その日のうちに読了。日本にこんな偉大な人がいたなんて、凄い!

  • 20世紀のシャープの躍進を支えたロケット・ササキ(佐々木正)の伝記。1915年(大正4年)生まれで2016年現在、101歳で存命とのこと。ササキの生涯を追っていくことで電子立国日本の20世紀の技術史を俯瞰することもできる。ササキは戦前のコスモポリタンな台湾で育ち、京都帝大を卒業。戦争中、軍部の命令で殺人レーダーの開発に携わったようだが、それが戦後は電子レンジの開発に繋がるなどの話は興味深い。戦前からグローバルに活躍していた佐々木正。シャープ(早川電機)に招かれたときは実は京大の教授になる予定だったというだけあり、その人となりは企業人というよりアカデミックな雰囲気を感じさせる。多様で多くの人脈を持ち必要なら人に教えを請い、そして請われれば教える”共創”を旨としていたようだ。本書では孫正義やスティーブ・ジョブズなどが有名人が登場してくるが、そう言えば孫正義の伝記「あんぽん」にササキが登場していたのを思い出す。彼らの伝記技術を囲い込んで自分だけ儲けようとしていては短期的には良くても競争がなくなり技術発展が送れ、結局は破綻するというのは、昨今のシャープの没落に通じる。人類の進歩を技術者達が協力してで共に創り上げていく共創。大学まで生き残りをかけて競争している現代。少なくともアカデミックな世界は競争の中に共創の精神を持ち続けていきたい。

  • ★2016年8月4日読了『ロケット・ササキ』大西康之著 評価A
    この本というよりも、この佐々木正というシャープの元副社長の人間の面白さと大きさに評価Aということ。
    それにしても、何とこの時代の人たちは人間が大きくて、おおらかなことか?!
     いまのシャープにこの人のDNAが残っていなかったから、いまの没落があるのか?彼がサムソンに液晶技術を教えてしまったから、没落したのかは分からない。しかし、少なくとも佐々木氏の持論から言えば、その地点にとどまってしまえば、負けるのだから、先に進まねばならなかったということなのだろう。
     また、目のつけどころがシャープ!の原点となった人であることがよくわかる。

     戦前、戦中、戦後の彼の仕事ぶりは、それぞれ非常に興味深く、科学技術を愛し、その使い方、目的をよく分かって、人々のために商品を開発することをその信条としていた。
     文中で彼の仕事に関わる人物が、このインターネット社会を創造してきた人ばかりで、ロケット・ササキと呼ばれた彼の人柄と交際範囲の広さは驚くばかりである。
    何のために仕事をするのか?人生は何のため?と悩む若い人にはぜひ読んでもらいたい作品である。元気がもらえる筈だ。

  • 文章のテンポがよく、サクサクと読めてしまった。

    いまやシャープは鴻海に買収されてしまったが、
    昔日の栄光ぶりを追想するかのごとく、
    電卓戦争の勝利や液晶開発の端緒といった点が、
    つまびらかにされている。

  • “イノベーションは、共創から生まれる” この方の思想が家電業界に浸透していたら、ガラパゴス化なんて起きなかっただろう。 戦時中研究者としての壮絶な経験。未だご健在という事実に驚かせられる。 「電子立国」時代の、最後の(?)生き字引。これほどのスーパーボスが居た会社でも、すぐに崩壊への道へ進んでしまうのだもの。技術で生き残って行くことの難しさたるや。

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著者プロフィール

大西 康之(オオニシ ヤスユキ)
ジャーナリスト
1965年生まれ。愛知県出身。1988年早稲田大学法学部卒業、日本経済新聞社入社。欧州総局(ロンドン)、日本経済新聞編集委員、日経ビジネス編集委員などを経て2016年4月に独立。著書に『稲盛和夫 最後の闘い JAL再生にかけた経営者人生』『ファースト・ペンギン 楽天・三木谷浩史の挑戦』(以上、日本経済新聞出版)、『三洋電機 井植敏の告白』『会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから』(以上、日経BP)、『ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正』(新潮社)などがある。

「2021年 『起業の天才!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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