イオカステの揺籃 (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
3.52
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感想 : 57
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120055683

作品紹介・あらすじ

バラが咲き乱れる家で、新進気鋭の建築家・青川英樹は育った。「バラ夫人」と呼ばれる美しい母。ダムと蕎麦が好きな仕事人間の父。母に反発して自由に生きる妹。英樹の実家はごく普通の家族のはずだった。だが、妻が妊娠して生まれてくる子が「男の子」だとわかった途端、母が壊れはじめた……。

感想・レビュー・書評

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  • 青川英樹32歳は大阪で建築家として活躍しています。
    妻の美沙とは結婚したばかりです。

    英樹には妹の玲子25歳と、2歳の時に亡くなった弟の和宏がいました。
    玲子には同棲中の恋人で鍵屋の完がいます。
    父の青川誠一はとても美しくバラ婦人と呼ばれる妻の恭子がいますが、会社の部下の23歳年下の悠乃と不倫をしています。

    そして美沙が男の子を妊娠して切迫流産の危機に陥ったとき、恭子が度の過ぎた過干渉で、美沙はノイローゼになります。
    そのあとは、ひたすら怖い恭子のまだ産まれない初孫の男の子に対する濃厚すぎる溺愛ぶりが描かれ、美沙は離婚を考えます。

    バラ婦人のバラの描写も凄いです。
    バラのお菓子に、バラのお茶、むせかえるようなバラの香り。バラの匂いがしただけで吐きそうになる美沙の気持ちがよくわかります。

    玲子の恋人の完ちゃんはネグレクトで育ちましたが、性格が温かく、唯一のなごみでした。

    母の恭子も少女時代を、これ以上ないほどの毒親の元で送った不遇な過去がありますが、最後まで恭子の呪縛は消えません。


    濃厚で、とても淋しい話だと思い、それでも涙しました。
    でも読んでいて、凄く疲弊する作品でした。

    • まことさん
      くるたんさん。こんばんは♪
      やっぱり、読まれていましたか。
      そろそろじゃないか、と思っていました。(*^^*)
      バラづくしは、鼻がおかしくな...
      くるたんさん。こんばんは♪
      やっぱり、読まれていましたか。
      そろそろじゃないか、と思っていました。(*^^*)
      バラづくしは、鼻がおかしくならないのかなぁ。と思いました。
      恭子の、お母さん凄かったですね。
      ラストの展開は、なんか、恭子がいい人みたくなってしまいましたよね。
      ところで、宇佐美まことさんは、読まれていませんか、私は今、読み始めましたが、なんか、難しい。
      2022/10/04
    • くるたんさん
      まことさん♪そうそう、結局、恭子は完璧な母として家族を呪縛したのかな、って^^;

      宇佐美さん!今日借りてきましたよ。
      漢字すごいですね、フ...
      まことさん♪そうそう、結局、恭子は完璧な母として家族を呪縛したのかな、って^^;

      宇佐美さん!今日借りてきましたよ。
      漢字すごいですね、ファンタジーなのかな、早くも読める自信がなくなってきました^^;
      2022/10/04
    • まことさん
      くるたんさん♪

      私も宇佐美さん、読むのやめようかと思ったけど、せっかく予約1番だったし、もったいないから、読んでますが、レビュー書けるのか...
      くるたんさん♪

      私も宇佐美さん、読むのやめようかと思ったけど、せっかく予約1番だったし、もったいないから、読んでますが、レビュー書けるのかな~。
      2022/10/04
  • 「バラ夫人」と呼ばれる美しい母が、妻の妊娠がわかりお腹の子が男の子だとわかった途端、異常なまでに執着し、無事に生まれるまで…と妻を監禁する。

    その間、父は浮気相手を追いかけ回し警察沙汰に。
    母を嫌って家を出ていた妹が、父を迎えに行く。
    監禁されて身動きできない部屋の鍵を開けたのは、妹と同居している鍵屋の完だった。

    どろどろした嫁姑の確執か、と思っていたがそうではなく、母・恭子の異常さは、幼い頃の母娘関係に問題があった。
    こんな母がいるのだろうか?と思えるほどで怖すぎて、恭子の母こそとても異常でめちゃくちゃなのだ。

    「いやらしい」と事あるごとに「いやらしい」と言われ続けて育つって考えられない。
    まるで女であることを恨んでいるようだ。

    母娘の関係ほど難しいものは無い…と訴えているようで最後まで目を離すことはできなかった。

    恭子の最後は、言いようのない虚しさを感じた。
    それでいいわけではないだろうに。
    そうすることしかできなかったのか…。


  • きゃー!これホラーだったの?
    いつもの暗雲たちこめる遠田潤子+昼ドラ?韓ドラ?

    母親大好きで優しいけど鈍い息子
    義母に気をつかうけど生理的に嫌ってる嫁
    若い女と不倫する父親
    母親を嫌悪して実家から離れた娘

    嫁が妊娠してから加速する母親の異常な行動…

    なんで母親がこんなに壊れていくのか途中までわからないし、読んでる自分も追いつめられてく。

    誰一人好きになれない登場人物…
    でも気になって読みたい…
    恐るべし遠田潤子( ̄▽ ̄)

    やっと母親の育った環境がわかった後は、もう可哀想すぎて母親同情派になってました。


    自分は大丈夫だろうか?
    ウザい姑になってないかしら?
    ちょっと心配になってきて余計に怖い(/ _ ; )

    • 土瓶さん
      楽しそうなレビュー^^
      そんなみんみんさんならダイジョーブっす。
      (⁠ ⁠◜⁠‿⁠◝⁠ ⁠)⁠
      楽しそうなレビュー^^
      そんなみんみんさんならダイジョーブっす。
      (⁠ ⁠◜⁠‿⁠◝⁠ ⁠)⁠
      2022/11/28
    • みんみんさん
      ありがと〜\(//∇//)
      来月結婚式よ♪楽しみ♪
      ありがと〜\(//∇//)
      来月結婚式よ♪楽しみ♪
      2022/11/29
  •  「生理的に無理、受け付けない」というセリフがあります。女性が男性に使う場合が多い気がしますが、同性に対してはどうでしょうか? 職場等で、「この人は理屈に関係なく受け入れられない」ケースはあるかもしれません。
     本作は、そんな「生理的に無理」でも、避けられない歪んだ親子・家族の物語と言えると思います。
     若手建築家の妻・美沙の視点で語られる義理母は、美沙が妊娠して以降、悪意はないのに「生理的に無理」を通り越し、狂気で身の危険さえ感じます。読み進めると、病的な怖さが際立ち、さらに過去からの負の連鎖が明らかになってきます。
     読み手は、不穏・不快を感じながらも、先が気になり仕方ありません。それこそ、こういう物語は「生理的に無理」という読者の方もいらっしゃるでしょうが、こんな展開こそが、人間の醜悪な面を追求する遠田潤子さんの真骨頂で、クセになりハマる方もいるのだろうと思います。
     それにしても、余りの濃密さに、読後大きな溜息をつき、(良い意味で)ハンパない疲労度MAX状況となりました。

  • 呪縛の一冊。

    華麗なる薔薇と共に現れたのは壊れた母親。長男の嫁の妊娠を機に彼女の壊れっぷりが半端ない。

    薔薇の香りにむせ返りそうな描写と共に描かれる物語はまさに呪縛と異常な執着の世界。

    そこに至るまでの生い立ち、母による娘への呪縛劇場は言葉にならないほどの嫌悪感がやまない。

    誰がそうさせた⁇間違いなく周囲が、情けない男たちがそうさせた。

    この苦しみが鋭い言葉にのせられ、こちらまでナイフで心を切り付けられたよう。

    儚い幸せにひたすらせつなさの揺籠揺れる。

    母、女としてのバラ夫人が残した微笑みの意味は…薔薇のみぞ知る。

  • これはもはやホラー作品なのでは と思えるほど、読んでいてゾクゾクとした。
    母と息子の歪な関係に迫ったものではあるが、その経緯で同情してしまうのは、自分が男だからだろうか。。

  • 超ネタバレ。

    主人公が恭子であるとすると
    彼女にはまず強烈な母親がいてそのトラウマが物凄いため
    夫のことは愛しているがどう接するのが良いかわからず、
    また可愛い盛りの2歳の次男を事故で亡くす
    その原因となった長男と失った次男への想い
    それがまた末娘玲子への接し方を誤らせることになったのでは。

    生きているといろいろな事件に巻き込まれることもありますが、その都度いろいろな情報を得て一番良い方法がとれたらいいと思いました。

    先日富山で二歳の子が家を出たあと海で発見されたという痛ましい事故がありました。
    ご両親の気持ちを思うと胸が引き裂かれる思いです。

    この本を読んでその事故を思い出し
    何とか乗り越えてほしい
    そして世間一般の幼い子を育てる皆さんにも
    十分気を付けていただきたいと思いました。

    まあ、それはともかく、
    最後の玲子の推測はお見事。
    そのとおりだと思いました。

  • 相変わらず登場人物にとにかく辛い目に合わせるのが好きなお方です。すいすい読めますが結局どこにも身の置き所の無いうそ寒さが漂っていて、そこがとてもいいです。女性は特に読んでゾッとするのでは。

  • 怖くて、哀しくて、苦しくて、
    引きずり込まれて夢中で読んだ。

    大切な人を、大切にする方法を、
    人はどうやって覚えるのだろう。

    満たされない想いが捩れて、
    どんどん絡まっていく。

    それでも孤高のバラのように、
    自らにトゲを張り巡らせて、自分を守ろうとする。

    絶望の淵で悲しみに揺れ惑う。
    その悲哀に満ちた色は見るに忍びない。
    歯車の溝は痛ましく噛み合い、
    やり切れない連鎖で回り続けていく。

    いつかは同じ地に戻るだけ。
    観覧車ではどこにも行けない。
    それでもそこから何か、
    何かが見えてほしいと願わずにはいられない。
    何か、光を見つけて希望を見出してほしい。

    この世に生を享けるということ。
    母親と父親の存在とその関係性は、
    生まれてきた人誰一人例外なくあるもので、
    それぞれに抱えた問題に対峙し、
    安心して自分が自分でいられる場所を作って生きていけることを願ってやまない。

    そんな優しさに揺れる想いを
    遠田さんは私たちに届けてくれました。
    コレは読み終わるまで寝れないな…ってなりました。
    凄いものを読ませていただきました!

  • もう読んでいて恐怖心を感じて読んでしまいました。イオカステとは読んでその意味を知って下さい。『ゆりかごを揺らす手』と言うサイコスリラー映画を思い出してしまいました。読む手が震えて一気読み間違い無しです。遠田潤子さんこんなにも引きつけられる作家さんはいません。あなたも読んで恐怖を感じて下さい。

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著者プロフィール

遠田潤子
1966年大阪府生まれ。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。16年『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10」第1位、2017年『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」第1位、『冬雷』が第1回未来屋小説大賞を受賞。著書に『銀花の蔵』『人でなしの櫻』など。

「2022年 『イオカステの揺籃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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