- Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122024137
感想・レビュー・書評
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「陰影礼讃」谷崎潤一郎著、中公文庫、1975.10.10(1995.09.18改版)
214p ¥500 C1193 (2020.11.03読了)(2020.10.28借入)(2011.06.20/21刷)
10月のEテレ「100分de名著」で「谷崎潤一郎スペシャル」が放映されました。
その中で紹介された作品は、以下の4作品でした。
第1回 『痴人の愛』―エロティシズムを凝視する
第2回 『吉野葛』―母なるものを探す旅
第3回 『春琴抄』―闇が生み出す物語
第4回 『陰翳礼賛』―光と影が織りなす美
「吉野葛」と「陰影礼讃」が未読だったので、この機会に「陰影礼讃」を読むことにしました。「陰影礼讃」が書かれたのは、昭和8年ですので、「支那事変」(昭和12年)の前です。
「陰影礼讃」は、小説ではなく随筆です。この文庫本には、6つの随筆が収録されています。
【目次】
陰翳礼讃 (1934年1月)
懶惰の説 (1930年5月)
恋愛及び色情 (1931年6月)
客ぎらい (1948年10月)
旅のいろいろ (1935年7月)
厠のいろいろ (1935年8月)
解説 吉行淳之介
●厠(12頁)
日本の建築の中で、一番風流に出来ているのは厠であるとも云えなくもない。
やはりああ云う場所は、もやもやとした薄暗がりの光線で包んで、何処から清浄になり、何処から不浄になるとも、けじめを朦朧とぼかして置いた方がよい。(13頁)
●漆器(25頁)
「闇」を条件に入れなければ漆器の美しさは考えられないと云っていい。
☆関連図書(既読)
「痴人の愛」谷崎潤一郎著、新潮文庫、1947.11.10
「刺青・秘密」谷崎潤一郎著、新潮文庫、1969.08.05
「細雪(上)」谷崎潤一郎著、新潮文庫、1997.04.10(1955.10.30)
「細雪(中)」谷崎潤一郎著、新潮文庫、1997.04.10(1955.10.30)
「細雪(下)」谷崎潤一郎著、新潮文庫、1997.04.10(1955.10.30)
「鍵・瘋癲老人日記」谷崎潤一郎著、新潮文庫、1968.10.25
「源氏物語 巻一」紫式部著・谷崎潤一郎訳、中公文庫、1973.06.10
「源氏物語 巻二」紫式部著・谷崎潤一郎訳、中公文庫、1973.07.10
「源氏物語 巻三」紫式部著・谷崎潤一郎訳、中公文庫、1973.08.10
「源氏物語 巻四」紫式部著・谷崎潤一郎訳、中公文庫、1973.09.10
「源氏物語 巻五」紫式部著・谷崎潤一郎訳、中公文庫、1973.10.10
(2020年11月11日・記)
(表紙カバーより)
人はあの冷たく滑らかなものを口中にふくむ時、あたかも室内の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融けるのを感じ、本当はそう旨くない羊羹でも、味に異様な深みが添わるように思う。(本文より)
―西洋との本質的な相違に眼を配り、かげや隈の内に日本的な美の本質を見る。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
思いの外読みやすく、自分が意識している外側を刺激されている感覚に落ちていった。
技術の先端を追い求めるのも良いが、陰影による美しさを感じ取る感性を常日頃から持ち、必要なだけの明かりの中で「心地よい」と感じる風情を意識的に残していかなくては、自分の身の回りから大切なものが抜け落ちてしまいそうだ。
不必要な明かりによって生じる熱を、また電気を使って冷ますというようなわずわらしさからも、是非解放されたいと思う。 -
【陰翳礼賛】
日本文化の微妙で、きめ細やかな美的感覚がここまで情緒溢れる言葉によって捉えられていることに感動する。
文章によってここまで豊かな情景を想起させられる経験はなかなか出来ないと思った。谷崎潤一郎の文章の技巧と陰翳の持つ不思議な魅力が普段忘れがちな日本人としての感性を呼び覚ましてくれるような気がした。 -
これを読んだとき、谷崎潤一郎ってなんてすごい人なんだと感動した一冊です。
文章だけで、古典的で美しい情景を想像させるのと同時に、ひょっとして現代を生きっているのと思うような指摘も持ち合わせていて、なんだかんだマイベスト谷崎潤一郎本かなあと思います。
暗と羊羹のはなしの部分が好きです。 -
日本のデザインの原点とも言われる「陰影礼讃」、大学受験の時以来、十何年かぶりに読みました。
今読むと、少し前から流行っている「ミニマリスト」の部屋に対して自分が感じている違和感の正体が分かった気がした。
ミニマリストの部屋はものが何もない。すると、たいていのワンルームマンションの場合、チープなフローリングの床や、白いクロス張りの壁と天井の存在があらわになり、それが明るい照明に照らされてなんとも白々しくて味気ない。
日本の昔からの建築にある畳や障子、砂壁なんかが作り出す薄暗い陰影があってこそ、狭くて四角い何もない空間を豊かなものとして味わうことができる。闇に潜めることでこそ際立つ美しさがある…のだが、世界はますます煌々と明るく、逃げ場がなくなっている。試しに電燈を消すところから始めてみようか。 -
なんか、凄い感銘を受けたというか、日本的な美しいさってなんなのかを物凄く分かりやすくよく書いてるなと思って心に深く入ってきて感動してしまった。闇を前提としてる美しさなんだなって物凄く納得できて、そう思うと、日本的な美しさってもう日常にはないんだなって寂しくもなる。この前、モネ展に行ってきたが、モネって凄く西洋的で(あたりまえなんだけど)、光にたいしてのこだわりが凄くて、最終的にたどり着いたのは光だけを描く目とそれを描く技術なんだなと感じて、それはそれでこの人美術史の40年位先まで到達して死んだんだなそれはすごいな流石巨匠って思う一方でそこまではまらなかった自分もいて、光だけじゃつまらないでしょって心のどこかで思ってたと思う。が、なんでそう思ったのかがわかった気がして、心のどこかで陰りを芸術に求めてるのかもしれないなと思った。京都に行ってお寺とかみるとなんでいいとおもうのかなって、今までは職人的な技術の集大成に対して膝まづく感じかなとか思ってたけど、陰の芸術だからこそ好きなんだなと理解できました。
さすが大谷崎!
ドナルドキーンが日本文学には谷崎という大きな山脈があるって言ってたけどほんとかも! -
陰翳に美を見出す点は共感するものも多いが、現代においてその陰翳を味わえる場所というのはほとんど残っていないと思うのは少し残念である。