- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122072169
作品紹介・あらすじ
没後50年を迎えた川端康成の短篇から、現世界から少しだけずれた、あるいはその奥行きの見方が通常と異なる別の相を感知していると読める作品を集めた一冊。
幻想的、あるいは怪談的と受けとめられる作品も多いが、選択にあたっては、あくまで生の不可解さを自然主義的叙述によらず、技巧的に描いた作品であることを基準とした。
川端文学の特異な一面を堪能できる小説選。
(収録作品)心中/白い満月/地獄/故郷/離合/冬の曲/朝雲/死体紹介人/蛇/犬/赤い喪服/毛眼鏡の歌/弓浦市/めずらしい人/無言/たまゆら/恋情/二黒/眠り薬
感想・レビュー・書評
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小川洋子さんのラジオで知った「心中」と「白い満月」「地獄」「離合」「たまゆら」は生者と死者の境目が曖昧な話で好み。「故郷」「冬の曲」「朝雲」は不思議より清々しさを感じる。既読の「死体紹介人」は通俗さと異相感のバランスが絶妙。
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111108さんのレビューで出会うことができました。ありがとうございます!
死の世界への渇望が溢れ出ていて、美しい文体なので更に怖さと不安がじんわり広がる。現実味があるような非現実的な構造で「異相」の不思議な世界。
「私は七年前に死んでいるが、生き残っている友人の西寺とときどき怖い話をする」『地獄』、「新平が奇麗な着物だねと珍しいことを言ってくれた梅の小紋縮緬」が見たいと思う『冬の曲』、「あの方の美しい幻が浮かんで胸苦しくなると、私は鏡の前に座って自分の美しさをさがした」女学生の『朝雲』、大黒帽をかぶった耳のうしろに鉛筆を一本挿している女車掌のユキ子さんの持っていた男女のけしからん写真が気になる『死体紹介人』、玉虫色ってなんだろうとおもった『蛇』、九州の弓浦市を探してみた『弓浦市』、「今日もまためずらしい人に会ったよ」という父の言動にふりまわされる『めずらしい人』、「たまゆらに昨日の夕見しものを今日の朝は恋ふべきものか たまゆらに露も涙もとどまらず亡き人恋ふる宿の秋風」『たまゆら』、「新年に際し、自分と同じ星の人々の興奮を祈るは人情である」『ニ黒』、睡眠薬服用時の怪談のような体験の『眠り薬』
どの作品も短編なのに長編のような濃ゆさ。-
☆ベルガモット☆さん、お返事ありがとうございます!
ベルガモットさん「圧倒的な孤独感」を川端康成に感じるのですね。「意外に変な趣味」としか...☆ベルガモット☆さん、お返事ありがとうございます!
ベルガモットさん「圧倒的な孤独感」を川端康成に感じるのですね。「意外に変な趣味」としか捉えられなかった私恥ずかしい。次読む物ではもうちょっと何か感じられたらいいなと思ってます。女性を凝視してしまう癖、興味を持つと文字通り目が離せなくなってしまったのでしょうか。
還暦を迎えるまでに‥わぁリミット近いな汗。でも食わず嫌いせずに追っていきたいです♪2023/05/14 -
111108さん、こちらこそコメントありがとうございます!
少し前まで川端氏は優等生で裕福な家庭だと勝手に思っていました。両親、祖父母...111108さん、こちらこそコメントありがとうございます!
少し前まで川端氏は優等生で裕福な家庭だと勝手に思っていました。両親、祖父母、姉と死別し中学は寄宿舎に入ったということを少し前の著書で知ったり、療養生活での東山魁夷との交流などなんとなく心細さを感じとったのかもしれません。
お恥ずかしながら文豪作品をあまり読んでいませんので、こっそり登録したり、食わず嫌いは…するかもです。
ここでお伝えするのもなんだかですが、ダヴィンチ掲載祝宴の時は本当におつきあいありがとうございました♪2023/05/14 -
☆ベルガモット☆さん
文豪、私もあまり読んでなかったので大人になって楽しめてよかったです♪食わず嫌い‥私もしちゃうかも。
ダヴィンチのや...☆ベルガモット☆さん
文豪、私もあまり読んでなかったので大人になって楽しめてよかったです♪食わず嫌い‥私もしちゃうかも。
ダヴィンチのやりとりは、こちらこそとても楽しかったですよ〜また掲載されたら祝宴呼んでくださいね♪2023/05/15
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タイトル通り、川端康成の異色作品を集めた短編集。川端康成は、有名な「伊豆の踊子」や「雪国」は実は読んでない(読んだけど忘れてる可能性もある)けれど、「眠れる美女」や「片腕」「たんぽぽ」などの変な作品はとても好きなので、この作品集もとても好みだった。
既読のものでは「地獄」がやはり好き。ほとんど掌編のようだけれど飼い主が死んだら犬が殉死しなくてはならない村の話「犬」もすごいインパクト。何十年も前に会ったという女性にとうとうと当時のことを語られるも全く記憶にない作家の「弓浦市」も奇妙な味わい。
「毛眼鏡の歌」になると、自分を振った女性の残していった櫛やごみ箱から抜け毛を集めてそれで眼鏡を編む男という、いささか変態じみたフェティシズムになり、とはいえ妙に詩的なので笑うに笑えない。
「朝雲」は、美しい女教師に憧れる女学生の独白で、川端康成はこの手の百合ものも好きですよね。
「死体紹介人」は奇抜なアイデアが面白い反面、「多分恋人もなくつつましく暮らしていた娘が、死体となって初めて、白い解剖台の上で、若い男達に女としての媚びを現した」という部分などに現れている、女性を勝手にモノ化した表現が個人的には不愉快だった。編者の高原英里はこれを「実に美しく忌わしい」と書いているけれども。男性目線だと思う。まあこれが「眠れる美女」に繋がっていくというのはわかる。死んだ(眠った)抵抗しない女はそりゃモノでしょうよ。そしてそれが川端のフェティッシュなのでしょう。
※収録
心中/白い満月/地獄/故郷/離合/冬の曲/朝雲/死体紹介人/蛇/犬/赤い喪服/毛眼鏡の歌/弓浦市/めずらしい人/無言/たまゆら/感情/二黒/眠り薬 -
判然としない「異相」短編集です。まず冒頭の「心中」から驚いてしまう。この底知れぬ恐ろしさはなんだろう。夢か現実か、ただの妄想なのか、一読して分からない作品が多く、だけどその読後が心地よい。不思議な作品集でした。
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私は川端がどうにも好きでないのだけれど、それは、彼の小説に出てくる女性や少女が、あくまで男性の作った像に思えて、リアリティもなければ共感も感じたことがなかったからである。こんな喋り方しないでしょーとか、こんな女は男性の妄想でしょーとかつい思ってしまって。
でも、それも異相の世界の話と捉えれば、なるほどと納得してしまう。
際立つ表現も多々。
『朝雲』『死体紹介人』が◯。
地元では常識の幽霊トンネルも、もしかしてこの『無言』が出どころでは。 -
なんとも雲をつかむような物語ばかり。
常軌を逸したことも当たり前のような文章で語られるため、頭がふわふわとしてくる。
現実なのか虚構なのか判別つかず、登場人物たちの生死も判然としないものもあり、読んでいるとだんだん夢見心地にさせられる。
怪しい話もあれば、不思議な清々しい話もあり、文章の美しさは著者ならでは。
他の名作よりも個人的にはどの話も読み易かった。 -
「死体紹介人」が典型だが、明らかに変な話をつらつらと、当たり前のことのように語るので、そうなのかなと読んでる間は騙されるのだが、ふとしたはずみに正気に返って、呆れるような話が多い。迂生は川端氏のよい読者ではないけれど、何冊か読んだ長編の記憶を呼び起こすと、「古都」とかもそうだったかな。この不思議な感じは何なんだろうね。
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川端康成といえば、
『雪国』や『伊豆の踊り子』のように、
揺れ動く繊細な恋愛心理を端的かつ美しい文章で表現する作家のイメージだったが、
本作は「人間の不気味さ」が同じ手法で描かれている。
性愛の変態的嗜好や、霊的な恐ろしさがありつつも、後味が悪いわけでは全くない。
不気味なのに、美しい。面白い。