川端康成異相短篇集 (中公文庫 か 30-7)

  • 中央公論新社
4.11
  • (10)
  • (11)
  • (7)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 189
感想 : 20
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122072169

作品紹介・あらすじ

没後50年を迎えた川端康成の短篇から、現世界から少しだけずれた、あるいはその奥行きの見方が通常と異なる別の相を感知していると読める作品を集めた一冊。

幻想的、あるいは怪談的と受けとめられる作品も多いが、選択にあたっては、あくまで生の不可解さを自然主義的叙述によらず、技巧的に描いた作品であることを基準とした。

川端文学の特異な一面を堪能できる小説選。


(収録作品)心中/白い満月/地獄/故郷/離合/冬の曲/朝雲/死体紹介人/蛇/犬/赤い喪服/毛眼鏡の歌/弓浦市/めずらしい人/無言/たまゆら/恋情/二黒/眠り薬

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 小川洋子さんのラジオで知った「心中」と「白い満月」「地獄」「離合」「たまゆら」は生者と死者の境目が曖昧な話で好み。「故郷」「冬の曲」「朝雲」は不思議より清々しさを感じる。既読の「死体紹介人」は通俗さと異相感のバランスが絶妙。

  • 111108さんのレビューで出会うことができました。ありがとうございます!
    死の世界への渇望が溢れ出ていて、美しい文体なので更に怖さと不安がじんわり広がる。現実味があるような非現実的な構造で「異相」の不思議な世界。
    「私は七年前に死んでいるが、生き残っている友人の西寺とときどき怖い話をする」『地獄』、「新平が奇麗な着物だねと珍しいことを言ってくれた梅の小紋縮緬」が見たいと思う『冬の曲』、「あの方の美しい幻が浮かんで胸苦しくなると、私は鏡の前に座って自分の美しさをさがした」女学生の『朝雲』、大黒帽をかぶった耳のうしろに鉛筆を一本挿している女車掌のユキ子さんの持っていた男女のけしからん写真が気になる『死体紹介人』、玉虫色ってなんだろうとおもった『蛇』、九州の弓浦市を探してみた『弓浦市』、「今日もまためずらしい人に会ったよ」という父の言動にふりまわされる『めずらしい人』、「たまゆらに昨日の夕見しものを今日の朝は恋ふべきものか たまゆらに露も涙もとどまらず亡き人恋ふる宿の秋風」『たまゆら』、「新年に際し、自分と同じ星の人々の興奮を祈るは人情である」『ニ黒』、睡眠薬服用時の怪談のような体験の『眠り薬』
    どの作品も短編なのに長編のような濃ゆさ。

    • 111108さん
      ☆ベルガモット☆さん、お返事ありがとうございます!

      ベルガモットさん「圧倒的な孤独感」を川端康成に感じるのですね。「意外に変な趣味」としか...
      ☆ベルガモット☆さん、お返事ありがとうございます!

      ベルガモットさん「圧倒的な孤独感」を川端康成に感じるのですね。「意外に変な趣味」としか捉えられなかった私恥ずかしい。次読む物ではもうちょっと何か感じられたらいいなと思ってます。女性を凝視してしまう癖、興味を持つと文字通り目が離せなくなってしまったのでしょうか。
      還暦を迎えるまでに‥わぁリミット近いな汗。でも食わず嫌いせずに追っていきたいです♪
      2023/05/14
    • ☆ベルガモット☆さん
      111108さん、こちらこそコメントありがとうございます!

      少し前まで川端氏は優等生で裕福な家庭だと勝手に思っていました。両親、祖父母...
      111108さん、こちらこそコメントありがとうございます!

      少し前まで川端氏は優等生で裕福な家庭だと勝手に思っていました。両親、祖父母、姉と死別し中学は寄宿舎に入ったということを少し前の著書で知ったり、療養生活での東山魁夷との交流などなんとなく心細さを感じとったのかもしれません。

      お恥ずかしながら文豪作品をあまり読んでいませんので、こっそり登録したり、食わず嫌いは…するかもです。

      ここでお伝えするのもなんだかですが、ダヴィンチ掲載祝宴の時は本当におつきあいありがとうございました♪
      2023/05/14
    • 111108さん
      ☆ベルガモット☆さん

      文豪、私もあまり読んでなかったので大人になって楽しめてよかったです♪食わず嫌い‥私もしちゃうかも。

      ダヴィンチのや...
      ☆ベルガモット☆さん

      文豪、私もあまり読んでなかったので大人になって楽しめてよかったです♪食わず嫌い‥私もしちゃうかも。

      ダヴィンチのやりとりは、こちらこそとても楽しかったですよ〜また掲載されたら祝宴呼んでくださいね♪
      2023/05/15
  • 三島由紀夫と川端康成、文豪2人の自殺の原因に「新事実」 2人はノーベル文学賞を争っていた!?: J-CAST テレビウォッチ(2019年2月5日)
    https://www.j-cast.com/tv/2019/02/05349680.html?p=all

    川端康成異相短篇集 (中公文庫 か 30-7) | ダ・ヴィンチWeb
    https://ddnavi.com/book/4122072166/

    川端康成異相短篇集 -川端康成 著/高原英理 編|文庫|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/bunko/2022/06/207216.html

  • 半分も追えていないが、現在活躍中の作家で最も尊敬している高原英理が、なんと川端康成の短篇集を編むという、俺得な企画。
    結果、最高。
    一作品ごとに読書メモをつけたり、★をつけたりしているが、本書に関してはほぼ全作品★。
    もちろん解説も素晴らしい。

    小説16篇、随筆3篇。
    うち4篇は「掌の小説」より。
    私的BGM:「諏訪根自子の芸術」

    ■心中 ※「掌の小説」収録 ※wisさんの朗読で何度も何度も聞いているが、やはり壮絶。巻頭に置かれるのに最適だし、高原英理の解説も素晴らしい。
    ■白い満月 ※お夏の異様さに加え、私と上の妹八重子、下の妹静江の挿話も加わって、全員どうかしている。
    ■地獄 ※幽霊! なのに生臭く生々しく。女を遣り取りするホモソーシャルな会話でもある。
    ■故郷 ※「掌の小説」収録 ※「掌の小説」収録 ※時間と空間をやすやすと飛び越える自在の小説。小説だからこそ。それをヘリコプタアと表現するあたり、いい。
    ■離合 ※ゴーストばかりだが、果たしてジェントル、なのか……?
    ■冬の曲 ※内田百閒でおなじみの宮城道雄が出てくるが少し嬉しい。
    ■朝雲 ※「新女苑」という雑誌に掲載。本書を「幻想短篇集」としなかったのは、こういう作品を入れるため、みたいだが、その判断素晴らしい。よき百合とまずは簡単に書いてしまうが、こういう小説の語り手の不思議さを考えるための好例だと思う。
    ■死体紹介人 ※これは凄まじい……川端康成でなければ書けないのではないか……ネクロフィリア……無機質な美しさ……。私が朝木新八の話を聞いている、という枠物語であることが、小説として巧み。
    ■蛇 ※「掌の小説」収録 ※ちょっと難しいな。
    ■犬 ※川端、犬を大好きなのに、犬と一緒に撮影されても無表情な写真がいくつもある。犬も女も陶磁器も同じだったんだろう。好きな犬でこんな小説を書くあたり、どうかしとる。
    ■赤い喪服 ※母子の会話。こりゃ赤痢っていう言葉ありきで書いた思い付きだと思うが、それをこんな形に仕立てるとは。
    ■毛眼鏡の歌 ※やや難しいが、エモい話だとは思う。
    ■弓浦市 ※実在しない町という意味で、ちょっとしたネットジャーゴンになっている、のか? いつかどこかでだれかのトラウマになり得る小説を送り出した作家。
    ■めずらしい人 ※「掌の小説」収録 ※編者が解説で「いたたまれない異物感」を書いているが、確かに。血縁近しく身近で親しみも持っているのに、どうしても判らないことって、ある。
    ■無言 ※タクシーで乗り合わせる幽霊というありがちな話を取り込む貪欲さ。と、脳障害者へ書けばいいのにという非道さ。
    ■たまゆら ※死者を前に物品を遣り取りすることの、残酷さと美しさ。
    ■恋情(以下、随筆)
    ■二黒
    ■眠り薬
    ◇解説

  • タイトル通り、川端康成の異色作品を集めた短編集。川端康成は、有名な「伊豆の踊子」や「雪国」は実は読んでない(読んだけど忘れてる可能性もある)けれど、「眠れる美女」や「片腕」「たんぽぽ」などの変な作品はとても好きなので、この作品集もとても好みだった。

    既読のものでは「地獄」がやはり好き。ほとんど掌編のようだけれど飼い主が死んだら犬が殉死しなくてはならない村の話「犬」もすごいインパクト。何十年も前に会ったという女性にとうとうと当時のことを語られるも全く記憶にない作家の「弓浦市」も奇妙な味わい。

    「毛眼鏡の歌」になると、自分を振った女性の残していった櫛やごみ箱から抜け毛を集めてそれで眼鏡を編む男という、いささか変態じみたフェティシズムになり、とはいえ妙に詩的なので笑うに笑えない。

    「朝雲」は、美しい女教師に憧れる女学生の独白で、川端康成はこの手の百合ものも好きですよね。

    「死体紹介人」は奇抜なアイデアが面白い反面、「多分恋人もなくつつましく暮らしていた娘が、死体となって初めて、白い解剖台の上で、若い男達に女としての媚びを現した」という部分などに現れている、女性を勝手にモノ化した表現が個人的には不愉快だった。編者の高原英里はこれを「実に美しく忌わしい」と書いているけれども。男性目線だと思う。まあこれが「眠れる美女」に繋がっていくというのはわかる。死んだ(眠った)抵抗しない女はそりゃモノでしょうよ。そしてそれが川端のフェティッシュなのでしょう。

    ※収録
    心中/白い満月/地獄/故郷/離合/冬の曲/朝雲/死体紹介人/蛇/犬/赤い喪服/毛眼鏡の歌/弓浦市/めずらしい人/無言/たまゆら/感情/二黒/眠り薬

  • 判然としない「異相」短編集です。まず冒頭の「心中」から驚いてしまう。この底知れぬ恐ろしさはなんだろう。夢か現実か、ただの妄想なのか、一読して分からない作品が多く、だけどその読後が心地よい。不思議な作品集でした。

  • 私は川端がどうにも好きでないのだけれど、それは、彼の小説に出てくる女性や少女が、あくまで男性の作った像に思えて、リアリティもなければ共感も感じたことがなかったからである。こんな喋り方しないでしょーとか、こんな女は男性の妄想でしょーとかつい思ってしまって。
    でも、それも異相の世界の話と捉えれば、なるほどと納得してしまう。

    際立つ表現も多々。
    『朝雲』『死体紹介人』が◯。

    地元では常識の幽霊トンネルも、もしかしてこの『無言』が出どころでは。

  • なんとも雲をつかむような物語ばかり。
    常軌を逸したことも当たり前のような文章で語られるため、頭がふわふわとしてくる。
    現実なのか虚構なのか判別つかず、登場人物たちの生死も判然としないものもあり、読んでいるとだんだん夢見心地にさせられる。
    怪しい話もあれば、不思議な清々しい話もあり、文章の美しさは著者ならでは。
    他の名作よりも個人的にはどの話も読み易かった。

  • 「死体紹介人」が典型だが、明らかに変な話をつらつらと、当たり前のことのように語るので、そうなのかなと読んでる間は騙されるのだが、ふとしたはずみに正気に返って、呆れるような話が多い。迂生は川端氏のよい読者ではないけれど、何冊か読んだ長編の記憶を呼び起こすと、「古都」とかもそうだったかな。この不思議な感じは何なんだろうね。

  • 川端康成といえば、
    『雪国』や『伊豆の踊り子』のように、
    揺れ動く繊細な恋愛心理を端的かつ美しい文章で表現する作家のイメージだったが、
    本作は「人間の不気味さ」が同じ手法で描かれている。

    性愛の変態的嗜好や、霊的な恐ろしさがありつつも、後味が悪いわけでは全くない。

    不気味なのに、美しい。面白い。

全20件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

一八九九(明治三十二)年、大阪生まれ。幼くして父母を失い、十五歳で祖父も失って孤児となり、叔父に引き取られる。東京帝国大学国文学科卒業。東大在学中に同人誌「新思潮」の第六次を発刊し、菊池寛らの好評を得て文壇に登場する。一九二六(大正十五・昭和元)年に発表した『伊豆の踊子』以来、昭和文壇の第一人者として『雪国』『千羽鶴』『山の音』『眠れる美女』などを発表。六八(昭和四十三)年、日本人初のノーベル文学賞を受賞。七二(昭和四十七)年四月、自殺。

「2022年 『川端康成異相短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

川端康成の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
シャーリイ・ジャ...
ホルヘ・ルイス・...
エイモス・チュツ...
マーガレット・ア...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×