樹木たちの知られざる生活: 森林管理官が聴いた森の声 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

  • 早川書房
4.24
  • (71)
  • (60)
  • (26)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 1029
感想 : 80
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150505318

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 植物、樹木への理解を深めることができ、そして読みものとしても最高に楽しめる本でした。私のボンクラな植物や樹木の概念を根底から覆えされました。私にとっては、ある意味衝撃の一冊となりました。
    私は、これまで植物は意志を持たずただ偶発的な自然環境に左右される生物という認識でいました。本書を読むとわかりますが、決してそんなことはなく外敵が来れば近くの樹木にその情報は伝達していたり、巨木となるような樹木はしっかりと子育てをしていること等を知りました。著者の森林に対する無垢な好奇心と愛情が感じられる語り口がとても心地がよく、いつまでも聴いていたい(実際には読むという行為ですが、著者から直接聴いているような感覚で表現しています)と思えた作品です。

    2017年に単行本、2018年に文庫本が出版されていますので、すでにお読みの方は多いのでしょう。今年(2023年)になって初めて読んだ私的には、今年のノンフィクション部門のベスト1です(笑)。

  • 「樹木は根で他の樹々と交信している」「人間が手間をかけて世話をする自然保護区とは違って、(原生林こそが)自然の自由な営みを観察することができる」と、いまの日本の自然保護関係者が見たら眉を潜めそうな事柄まで記されている。
    ただ、著者の思想に通底しているのは「人間は原生林が発する声を聴くべき」という、ごくまっとうな事柄。

    僕は地元の里山保全ボランティア団体に関わっているのだけれど、仲間の中でもいろいろ意見が分かれる所。しかし、こうした「多様性」こそが、森の持続性をもたらしてくれるものだと思う。

  • 自分の世界観をガラッと変える本にはあまり出会えないけれど、この本はそんな一冊。「いつも見ているのに見えていないもの」がこの世界にはたくさんあるんだなぁ。ああ、木が好きだぁ。

  • 原生林に行って一日中ぼ〜っとしたくなった。

    樹木を感じたい笑

  • 最新の科学と長年の観察が明かす木々の驚くべき社会的な営みとは?ドイツで長年、森林の管理をしてきた著者が、豊かな経験と科学的事実をもとに綴る樹木への愛に満ちた世界的ベストセラー。
    面白かった!無知すぎてこんなに樹木が助け合いながら何百年もかけて成長し、危険に立ち向かっているとは思いもよらなかったな。動物と同じ、もしかしたらそれ以上に感情や記憶もあるのかもしれないと考えるとすごいことだ。人間の目に映らないからといって、イコール何もないわけではないという事実を分かりやすく伝えてくれる一冊。完全に手を加えずに育った森林を見てみたいけど、それを見るのは何世代も後の子孫たちになる。せめて彼らに今より豊かな樹木を残してあげたいものです。

  • 木同士が香りで会話をするなんて知らなかった。虫や菌の侵略により身の危険を感じると葉の成分を変化させて身を守り、さらに香りや根のネットワークを使って周りの仲間に危険を知らせることまで出来るなんて想像もしなかった。木は本当に生きているし、人間が思っている以上に仲間と繋がっている。そんな仲間からはぐれた街路樹をストリートチルドレンと名付ける著者のセンスには脱帽である。木に関する様々な知識を、著者の木への愛を持って科学的に教えてくれる良書。

  • 山歩きをする度に、樹木がまるで意思があるかの様に見えて『夜になると動いているのではないか』と想像を膨らませている私にとって、スーッと入ってくる納得の内容で、ワクワクしながら読んでいます。ただ文の表現が分かりにくくて疲れてしまうので、他の本と同時進行で少しづつ読み進めているところです。

  • 樹木は生き物で無機質なモノじゃないんだ、人より長生きをするし、ゆっくりだが成長もする、もしかしたら言葉って発する、樹木同士助け合いをする仲間思いであり、時に負けず嫌いてもある。そんな樹木の魅力がこの本に詰まっています。ぜひとも読んでほしい一冊です!

  • 森林にある広葉樹は子どもの木を教育している。…なんて、面白い。樹木の根が人でいう脳で、春が来たかどうか記憶している。
    樹木を観る目がかわる一冊。

  • 人間を含めた動物達は植物たちが地球上で生きていてくれなければ、
    一瞬たりとも生きていけないのにね。
    植物たちは動物が持っている「脳」のものは持ち合わせていないけれど、
    「根」にそのようなものがあるのではとは著者の見解。
    だから植物たち同士必要に応じて「助け合ってる」という。
    著者の植物たちへの愛情は深い経験に基づいていて、共感した。

    「樹木たちの知られざる生活」
    ペーター・ヴォールレーベン 早川書房

    人間の汗に含まれるフェロモンがパートナーの選択で最も重要な基準となるそうだ。(略)私たちは香りを使って秘密の会話をしていることになる。そして、樹木にも同じ能力が備わっていることがわかっている。

    人体と同じように、電気信号を走らせることもできる。ただし、その速さはとてもゆっくりしていて、人間の電気信号は1000分の1秒ほどで全身に広がるが、樹木の場合は1分で1センチほどしか進まない。葉の中に防衛物質を集めるまでに、さらに1時間ほどかかると言われている。

    ブナの成木の内側では毎日500リットルを超える水が枝や葉を駆け巡っている。

    菌類は動物と植物の中間のような存在だ。菌類の細胞壁は、昆虫によく見られ、植物には含まれてないキチンという物質でできている。つまり、菌類は植物よりも昆虫に近い。つまり、菌類は植物よりも昆虫に近い。その上、光合成もできないので、ほかの生き物から栄養を得るしかない。

    アメリカのオレンゴン州では九平方キロメートルの範囲に広がり、重さ六〇〇トン、推定年齢二四〇〇歳と言うキノコが見つかっている。つまり、地球上で最も大きな生き物は菌類、キノコということになる。(略)
    これら巨大キノコは樹木の敵なのだ。

    どうして根がいちばん大切なのだろうか? それは、この部分に樹木の脳があると考えられるからだ。
    (略)地中にある根は、樹木の中でもいちばん長生きする部分だ。根ほど情報を長期間蓄えるのに適した場所は他にないだろう。(略)根の先には信号伝達組織に加えて、動物の体内にも見られる器官や分子が存在しているそうだ。地中で根が伸びるとき、これらが刺激を察知する。しかも、研究では行動の変化を引き起こす電気信号も計測された。

    植物と動物にたくさんの共通点があることが証明されれば、私たち人間の植物に対する態度がより思いやりのあるものになるのではないかと、私は期待している。

    マツ林の中の空気は針葉が発するフィトンチッドの働きでほぼ無菌

    とても嬉しい物質をクルミの木は葉から発散している。リラックスベンチを置く場所を探しているのなら、クルミの木の下。蚊に刺される確率が格段に低くなる。針葉樹のフィトンチッドがとてもいい香りがする。特に夏の暑い日に香りが強くなる。

    以下、略

全80件中 11 - 20件を表示

ペーター・ヴォールレーベンの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×