さらば愛しき女よ (ハヤカワ・ミステリ文庫 7-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150704520

感想・レビュー・書評

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    『さらば愛しき女よ』
    著者:レイモンド・チャンドラー
    訳者:清水俊二
    装幀:辰巳四郎
    発行所:株式会社早川書房
    初版発行:1940年
    発行:1976年 ハヤカワ・ミステリ文庫
    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    レイモンド・チャンドラー(1888〜1959年)
    アメリカ文学に多大なる影響を与えた
    レジェンドであり、私立探偵フィリップ・マーロウを
    主人公としたハードボイルド探偵小説を生み出した。

    日本では村上春樹が翻訳したことでも知られる。
    そんなレジェンド、チャンドラーであるが
    小説を書きはじめたのは44歳と遅咲きだが、
    長編第1作目『大いなる眠り』は
    『三つ数えろ』と改題され映画化された。
    主人公フィリップ・マーロウを演じた
    トレンチコート姿のハンフリー・ボガートの
    いぶし銀な姿も相まって「ハードボイルド」という
    男の矜持を世に知らしめた。

    本書は、
    そんなチャンドラー2作目の長編小説となっている。
    刑務所から出てきたばかりの大男、"大鹿"マロイは、
    別れた恋人ヴェルマを探しにセントラル街を訪れた。
    だがそこでマロイは再び殺人を犯し逃亡してしまい、
    その現場に居合わせたフィリップ・マーロウは
    取り調べを受けることになる。

    その後、
    別の依頼を引き受けたフィリップ・マーロウは
    その依頼中にまたしてもトラブルに見舞われる。

    はじめてのチャンドラー小説だったが
    彼に影響を受けた村上春樹の初期作品
    『風の歌を聴け』に見られるような、
    洒落た言い回しやジョークを
    ふんだんに用いた台詞や会話を楽しむのが本書の、
    いやチャンドラー作品の魅力の1つだろう。
    特に美女とフィリップ・マーロウの
    男女としての駆け引きの場面ではそれが顕著だ。

    ふたたびの殺人を犯した
    大鹿マロイはどうなってしまうのか?
    そのマロイの別れた恋人ヴェルマはどこにいるのか?
    私立探偵フィリップ・マーロウが
    ウィスキーを飲み紫炎をくゆらせ、
    事件解決へと奔走する。
    ネタバレは回避するが、
    結末はタイトル通り、
    まさしく『さらば愛しき女よ』にふさわしい
    内容となっている。

    男と女の悲哀、
    これもまさしく「ハードボイルド」に
    必須な要素なのだ。

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  • 何十年ぶりの再読。
    チャンドラーを読んだ人間と読んでない人間では、人生観が違うのではとまで思った少年時代。

    今回あらためて読んでみて、筋を追うだけでは事件の全体像が最後の最後まで分からないので、終盤マーロウが何をしたいのかチンプンカンプンだし、読み通すのにめちゃくちゃ忍耐が要った。

  • 「レイモンド・チャンドラー」の長篇ミステリー作品『さらば愛しき女よ(原題:Farewell, My Lovely)』を読みました。

    『チャンドラー短編全集3 待っている』に続き「レイモンド・チャンドラー」作品です。

    -----story-------------
    前科者「大鹿マロイ」は、出所したその足で以前別れた女を捜し始めたが、またもや殺人を犯してしまった。
    たまたま居合せた私立探偵「マーロウ」は、警察に調べられる。
    その後、「マーロウ」は、高価な首飾りをギャングから買い戻すための護衛を依頼されるが、自らの不手際で依頼人を死なせてしまう。
    苦境に立った彼を待っていたものは……。
    全篇に流れるリリシズムとスリルと非情な眼は、既に探偵小説の域を超え独自の世界を創り上げている。
    -----------------------

    「レイモンド・チャンドラー」の私立探偵「フィリップ・マーロウ」を主人公とする長編シリーズ全7作品のうちの第2作目(1940年発表)… 一般的にイメージしているミステリー作品とは違い、トリックや犯人捜しを愉しむというよりは、「マーロウ」の生き方、独特の世界観や美学を愉しむ作品という感じでした、、、

    物語の根幹から外れた枝葉の部分や洒落た科白で、独特な愉しみがあるものの、「マーロウ」の価値観が理解できないと面白味が半減してしまう、そんな作品でしたね… 警察官が汚職に手を染めていたり、悪党の首領が紳士的だったりと、敵味方の区別がつきにくいのも本シリーズの特徴ですね。

    刑務所から出てきたばかりの大男「大鹿マロイ」は、昔の恋人でナイト・クラブ「フロリアン」の歌手だった「ヴェルマ」を探しに酒場「フロリアン」を訪ねるが、酒場の主が何も答えようとしないのでカッとなり、再び殺人を犯し逃亡する… 偶然、仕事で現場に居合わせて「マロイ」と話しこんでいた私立探偵「フィリップ・マーロウ」は警察に尋問されるが、「マロイ」を捕まえたいならまず「ヴェルマ」を見つけることだという勧告を警察が受け入れないので、自ら「ヴェルマ」、「マロイ」探しを始める、、、

    そんなとき「リンゼイ・マリオ」という男から、盗まれた翡翠のネックレスを買い戻すことに立ち会ってほしいという怪しげな用心棒的仕事の依頼が「マーロウ」の元に舞い込む… その取引の最中に「マリオ」は殺され、「マーロウ」もまたなぜか命を狙われる中、「ヴェルマ」がかつて雇われていたナイト・クラブ「フロリアン」の元女主人「ジェシー・フロリアン」も殺される。

    麻薬漬けにされて「ソンダボーグ」の病院に監禁された「マーロウ」は、脱出する際に病院内に「マロイ」が匿われていることを突き止め、「ヴェルマ」に会わせると伝えて「マロイ」を自宅に呼びだす… 「マーロウ」の指示で別室に身を隠す「マロイ」のもとに現れたのは翡翠のネックレスの持ち主である「グレイル夫人」だった、、、

    明らかになる真相、そして最後の悲劇が訪れる… 愛する女性、8年間も追い求めていた女性に、ようやく出会えたのに、女性は彼を待っておらず、女性は彼に銃を向ける。

    うーん、哀しい結末でした… 「マーロウ」は、どんな結末を予想して二人を引き合わせたのかな、、、

    「マーロウ」は捜査を手伝ってくれた「アン・リアードン」と良い雰囲気になって… というエンディングなので、ちょっとなぁ って感じはしましたね。

    後味がスッキリしない感じがしましたが、、、

    「マーロウ」を主人公としたハードボイルド作品として割り切れば、この結末もありなのかな… と思います。

    先日読んだ、短篇集『チャンドラー短編全集3 待っている』に収録されていた『犬が好きだった男』が、この作品の骨子となっているらしく… 「マーロウ」が麻薬を注射されて病院に監禁されたり、賭博船に侵入するシーン等は、ほぼそのまま流用されていましたね、、、

    デジャヴュを感じながら読み進めた感じでした。



    以下、主な登場人物です。

    「フィリップ・マーロウ」
     私立探偵。

    「大鹿マロイ」
     身長2メートル近い大男で、腕っ節が強い。
     銀行強盗で8年間オレゴン州立刑務所に服役する。
     恋人のヴェルマ・ヴァレントを探してセントラル・アヴェニューの黒人専用のレストラン兼賭博場「フロリアン」に立ち寄り、殺人を犯す。

    「ヴェルマ・ヴァレント」
     元ナイト・クラブ「フロリアン」の歌手。マロイの昔の恋人だった。

    「ジェシー・フロリアン」
     ナイト・クラブ「フロリアン」の元経営者マイク・フロリアンの妻。
     マーロウはヴェルマの情報を求めて彼女の元を訪れる。
     不潔で自堕落な生活を送り、アルコール中毒でもある。

    「リンゼイ・マリオ」
     マーロウの依頼人。モンテマー・ヴィスタに住む。
     盗まれた翡翠のネックレスを買い戻す一件で、マーロウに護衛を依頼する。

    「アン・リアードン」
     元ベイ・シティ警察署長の遺子(一人娘)。フリーライター。

    「グレイル夫人」
     病身の富豪を夫に持つ上流婦人

    「ジェームズ・アムサー」
     神経病医。

    「セカンド・プランティング」
     アムサーに使われている用心棒で体臭の強いインディアン。

    「ソンダボーグ」
     病院を経営している怪しい医師

    「レアード・ブルーネット」
     暗黒街のボス。賭博船を二隻持っている。

    「ナルティー」
     77丁目警察署の警部。

    「ランドール」
     ロスアンゼルス警察署殺人課の警部。

  • 途中途中の繋がりが一気に回収される後半は読み応え抜群だった

  • 切れぎれに読み進めていったが、終盤の種明かしが来るまで筋が分からなかった。
    いろいろな動機になっているそれぞれの人物の過去も、それほど細かく書き連ねられるわけではないから、過去はそれだけで哀愁の源になるという感覚を読者自身が自発的に湧き起こらせながら読んでいないと、最終的に強くは心動かされないのかなと思った。そのせいか、他の読者の感想を見ると出てくるマロイへの同情のようなものも、私は残念ながら持たなかった。
    少し訳文が古い、または頭の中で再生してしっくりこない箇所もあるのは仕方ないかな。

  • 大鹿マロイ不憫。

  • (108)比喩の訳わからなさにイヤにならなければ面白く読める。メガネさんに鍛えられていれば大丈夫。中国茶のように云々。

  • 文体がとてもクール。やはり一気に読まないと話のスジがわからなくなる。村上春樹が好きというのもわかる。

    再読 19951003

  • ハードボイルドものを初めて読んだ。
    難しかった…
    比喩が多いんだけど、意味がわからない。
    会話も何のことを言ってるのかわからないことが多くて、わけがわからないままなんとなく話が進んで、いつのまにか話が繋がって、ミステリーの肝である「なるほど!そういうことか!」てのがないまま終わってしまった。

  • 初チャンドラー。

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著者プロフィール

Raymond Chandler
1888年シカゴ生まれの小説家・脚本家。
12歳で英国に渡り帰化。24歳で米国に戻る。作品は多彩なスラングが特徴の一つであるが、彼自身はアメリカン・イングリッシュを外国語のように学んだ、スラングなどを作品に使う場合慎重に吟味なければならなかった、と語っている。なお、米国籍に戻ったのは本作『ザ・ロング・グッドバイ』を発表した後のこと。
1933年にパルプ・マガジン『ブラック・マスク』に「脅迫者は撃たない」を寄稿して作家デビュー。1939年には長編『大いなる眠り』を発表し、私立探偵フィリップ・マーロウを生み出す。翌年には『さらば愛しき女よ』、1942年に『高い窓』、1943年に『湖中の女』、1949年に『かわいい女』、そして、1953年に『ザ・ロング・グッドバイ』を発表する。1958 年刊行の『プレイバック』を含め、長編は全て日本で翻訳されている。1959年、死去。

「2024年 『プレイバック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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