女には向かない職業 (ハヤカワ・ミステリ文庫 129-1)

  • 早川書房
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感想 : 88
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  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150766016

感想・レビュー・書評

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  • コーデリア・グレイは駆け出しの私立探偵。共同経営者がある朝オフィスで自殺し、持ち込まれた事件を自分一人で対処することになる。はじめての依頼は高名な微生物学者からのもので、息子の自殺の動機を調べること。亡きパートナーの教えを頼りに調査を始めたが、不審な事実が次第に明らかになり…。登場人物表の2番目に書かれている人(おそらく重要人物)が、いきなり1ページ目から亡きものとなってるところに思わずうなった。うーん、つかみが巧い。ケンブリッジを舞台とした事細かな描写…キングズ・カレッジ・チャペル、書店、ポークパイ、ケム河でのパンティング、自転車向きの田舎道…なども個人的にツボ♪主人公コーデリアは若さあふれる真面目さと冷静さを持つ、度胸の据わった22歳の女性。話し方がすっきりしていて好感が持てる(訳がいいのかも)。初めての事件は手探り状態ながらも、自分の判断と教えを信じて、着々と調査を進める姿がすがすがしい。でも、さすがに自殺した青年の住んでいたコテージ(首吊りの遺体があった部屋)に住み始めたときには、おいおいやめときな!っと突っ込みを入れたくなってしまった。すごい度胸。こんなところも「女には向かない職業」って絶妙なタイトル。暗闇に首つり枕を仕掛けられて何者かに警告を受けたり、井戸に放り込まれて傷だらけになりながらレンガを這い上ったり、車で追いかけたりというハードな探偵っぷりを発揮する側面ももちろん楽しい。だが、コーデリアがかつて進学をあきらめたケンブリッジに奇妙な巡り合わせでとうとうやってきた!という束の間の感激を現す場面や、事件後パートナーの上司だった警視に対して冷静沈着さの糸が切れ、感情のまま抗議をぶちまけた場面にこそ、心を動かされる面白さがある。(ちなみにこの警視は別シリーズの名探偵役)。いい読書時間を過ごせる傑作だ。 

  • 前半の読みにくさ。遅々として進まないストーリー。
    わざと難解にしてるとしか思えない句読点の少なさ。

    それらもすべてラストの主人公の独白ですべて覆る!
    最後まで、必ず最後まで読んでほしい作品。

  • 昔からある小説だと思うけれど、装丁カバーが刷新されたのか、とても惹きつけられてやっと読んだ。いや、良かった~。女探偵のミステリー小説であることは間違いないんだけれど、主人公・22歳コーデリアの心理描写だけではなく他の登場人物の人物造形や設定がしっかり描写されているからか、場面を想像しやすく先が気になるいいエンタメ小説のようだった。 作者は寡作な作家だったらしいので同じ主人公の続編が1編しかないらしいのが残念だけれど、まああるだけいいか!と思うことにする。

    • miyacococoさん
      続き)続編読むの楽しみです♪
      続き)続編読むの楽しみです♪
      2023/11/05
    • 111108さん
      miyacococoさん、『皮膚の下の』ですね!私も今ダルグリッシュ警視物読んでます。分厚くて返却日までに読めるか心配‥
      miyacococoさん、『皮膚の下の』ですね!私も今ダルグリッシュ警視物読んでます。分厚くて返却日までに読めるか心配‥
      2023/11/05
    • miyacococoさん
      111108さん、そういえば以前コメントでおっしゃってましたよね。分厚いんですね~(((^_^;)やっぱ年末とかにしようかしら(笑)
      111108さん、そういえば以前コメントでおっしゃってましたよね。分厚いんですね~(((^_^;)やっぱ年末とかにしようかしら(笑)
      2023/11/05
  • 描写が細かくのめり込むように読めた。一昔前のイギリスの雰囲気がおしゃれでよかった。
    コーデリアちゃんの幸が薄いけど逞しいところが好き。
    もっと活躍が見たいので『皮膚の下の頭蓋骨』も読みたい。

  • イギリスの少し古めの推理小説に抵抗がなければ、楽しめる。
    出版が時代的に少し古いので、そのためか翻訳されている会話も少々堅苦しいセリフ回しが多い。また、文章も回りくどい。
    英語を忠実に、そのまま前から訳したような文章が、読むリズムをもたつかせる。

  • 初めてのP・D・ジェイムズ。とっつきづらいイメージに反してリーダビリティが高く、読みやすいじゃん!と思ったけれど、解説によればこの作品が例外的に読みやすいらしい。
    共同経営者を自殺でなくしたばかりの女主人公コーデリアが、自殺とみなされた青年の死の原因をひたむきに探る物語。年若い女探偵ものらしくスリリングなピンチもあり、真相を探るべくひたむきに頑張るいじらしさに胸打たれ、そして後半に至る怒涛の展開、最終盤のある意味でのどんでん返しには驚いた。本当に面白かった。ダルグリッシュ警視ものを他にも読んでみたいけれど、なかなか難易度が高そうだなぁ

  • 名探偵コナンのあのキャラ名の由来。ずっと読みたいとは思っていたが、ハヤカワ文庫が新カバーになったのを見てついに購入した。
    本書が著されたのはかなり以前で、ずっと新訳もされていないようなので、少し読みにくさを感じるのは仕方ないように思った。特に序盤は、一読して意味の取りづらいような箇所があった。それでも、物語が進んでいくにつれ、それほど気にならずに読み進めることができた。
    ミステリであり、もちろん、コーデリアが謎を追っていく過程も面白いのだが、舞台が大学都市?のイメージの強いケンブリッジであることや、随所に英国の文学者からと思われる引用があったり、ケンブリッジの川の風景描写が鮮やかだったり、安易に展開の面白さを追求しているというよりも、落ち着いた文学的な教養のある小説の要素も強いように感じた。
    おそらく一般的に、本書はミステリーとしての評価もさることながら、コーデリア・グレイという若い女性がたった一人で探偵としての最初の仕事をひたむきにこなしていく姿を描いていることに、より着目されて語られることが多いのではないか。
    そして確かに、率直に言って、コーデリアが悲運な状況にもめげずに、探偵という仕事を一人でこなそうと立ち向かっていく様子に好感を持った。一種の仕事小説のようにも読める。青山先生の灰原哀のイメージももしかしたらまさにコーデリアから取られている面もあるのではないかとも思った。
    ただ、コーデリアの魅力だけではなく、謎が明らかになる過程や、密かに持った銃で犯人側と渡り合ったり、何とか窮地を脱出したりする場面など、細部も含めてスリリングで飽きさせない作品であると思った。
    また、意外であったのは、一応の真相がすべてわかってから、コーデリアが亡きパートナーの仇とも言える警視と相対するまでの物語にも割と紙面が割かれていたこと。
    こんなに魅力的な女性の探偵はなかなか出会えないように思った。ただ、残念に思ったのは、コーデリア・グレイのシリーズはたった2作しかないことである。そして第2長編も購入したので、いつか必ず読んでみたいと思う。

  • 学生の頃に自分で作ったランキングの上位にあるが内容を覚えてない本が意外と多い。これもその一冊だがまったくの初読のように楽しめた。まだ女性私立探偵が女性らしく描かれなかった時代に書かれた男社会の中で抗う22歳の私立探偵コーデリア。自殺した息子の動機を調べてくれと依頼される。この話は二重構造になっていて、事件を解決するコーデリアの推理譚の一方で、自殺した元パートナーの元上司でラスト数ページで現れたダルグリッシュ警視が倒叙ミステリのようにコーデリアの秘密を追い詰めていく。だが決して敵対的ではない。ダルグリッシュはコーデリアに目を細める。若いコーデリアの成長と今後を期待させる、PDジェイムスらしからぬ面白さの傑作

  • 読みやすく面白かったです。この作品のオマージュ本が出たので、読みました。

  • 探偵事務所の主を自殺という形で失った女探偵コーデリア。

    新米探偵が依頼を受けた、ある青年の自殺の理由。

    今は居ないバーニイの教えを胸に刻みながら
    ひたむきに事件の真相を暴いていく。

    コーデリアが危険な目に合いながらも冷静に切り抜ける姿に頑張れ!って言いたくなる。
    後半は、そっちに行くか~って感じの事件解決だったけど
    探偵として頑張るコーデリアを応援したくなりました。

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