忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫)

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制作 : 土屋 政雄 
  • 早川書房 (2017年10月14日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200915

忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 霧に覆われた記憶を頼りに息子に会いに行く老夫婦の旅路。骨太さと抒情さが同居した品のある文章が私は好きです。
    シンプルな根源的な旅だからこそ思うことがいっぱい。
    忘却の霧の危険性や、なにを信頼して、なにを疑うべきか、賢者達や剣士との出会いで、危険のなかにあってもあるべき心の持ちようを、忘却の霧の中から見つけ出してもらったみたい。危機や恐怖のなかでも、人でいられる術を教示されている気持ちでした。

    忘却で憎しみの連鎖を断ち切り憎しみの相乗効果を減らしたいとクエリグの存在を善と捉えて守るアーサー王の甥ガウェイン卿と、忘却は結局争いを引き延ばしているに過ぎないという理由から悪と捉える屈強な戦士サクソン人ウィスタンとの一騎打ちにも、こころを揺さぶられずにはいられませんでした。

    アクセルとベアトリス夫妻をはじめ登場人物の誰もが今は悪から遠い優しい人々で、皆平和を切望しています。
    が、実はウィスタンはアクセル属するブリテンに裏切られた過去があり、ガウェインとアーサーは過去に同士、こんな小さな集まりにもいろんな感情が渦巻いています。
    起こってしまった争いや痛みは、ウィスタンの言う通り忘却や霧では解決しない。私達ひとりひとりの心に愛と真理、道、いのちが必要です。

  • 単行本で読んだ時あまりしっくりこなかったせいなのか、いくら探しても家で発見出来ず、この度の文庫化で買い直し。
    そうなんだよねー、記憶はアイデンティティだよね、個人にとっても、国家にとっても。

    そして、確かに、愛とは記憶、とは言えるだろう。
    共通の記憶の集積が愛になり得るのは確か。

  • 冒頭が、とりあえず訳し方に慣れる苦痛があったというか……しんどかった。

    中盤以降、ブリテン人とサクソン人の登場人物が出揃う辺りからは、ああ成る程って読めるのだけど。
    アーサー王伝説を名前くらいしか知らない私には、読むのが早すぎたのかもしれない。
    ガヴェインとマーリン。名前は知ってるんだけど。

    忘れることの良い面と悪い面。
    憎しみや怒りを忘れてしまったから、違和は残るけれど平和は保たれた。
    けれど、あった出来事を忘れるというのは、何かに仕舞いこむようなイメージなのか。空白がぽかりと出来るイメージなのか。
    とにかく、そんな違和を抱えながら生きていくことから脱したアクセルとベアトリス。
    息子は本当に存在するのか?ずっと疑問に思っていたことが、雌竜の死によって明かされる。

    忘却というテーマで書かれた作品は多いよね。
    忘却で終わる作品だってある。
    ラストシーン、二人は無事に島へ渡ることが出来るのだろうか。
    それとも。ベアトリスは思い出してしまったのだろうか。

  •  ノーベル賞を取るちょっと前に読んだんだけど、まあ、確かにもらってもおかしくないよね(ウエメセごめんw)。
     インタビューでも答えてたけど「忘れるってことの意味」それも、個人レベルではなく、集団(国家)レベルで忘れるってことの意味が雌龍クエリグの比喩を使ってうまく表されてます。戦前の日本を忘れるとか、原発の危機を忘れるとかと通底する社会の問題ってか。
     前半のペースがイマイチだったり、最後、渡し船の比喩もわかりにくいんだけど、奥さんがずっと胸を痛がってたからってのはなるほどです。長男の行く末もよくわからなかったけど。
     イシグロさんのはこれまで「日の名残り」しか読んだことがないんだけど、次は「私を離さないで」かな。とにかく全部ジャンルが違うらしい。
     わが村上御大は「偉大なマンネリ」ですが、イシグロさんはそれとは対極にあるようなので、楽しみです。

  • カズオ・イシグロの一番新しい小説かな?ノーベル賞受賞というのことで、読んでみた。

    話は、なんと6〜7世紀のイギリス。アーサー王亡き後、と言っても、まだその甥は生きている、みたいな世界。そんな中で、竜退治にいくファンタジー小説?

    ある朝、起きてふと昔の記憶の断片が甦り、旅に出ることにした老夫婦に戦士と子供が加わり、途中から、アーサー王の円卓の騎士のガウェイン卿も関係しながら、少しづつ竜のいる穴に近づいていく、みたいな典型的な「英雄の旅」に乗っ取っている。

    途中の戦いの描写などの細かさなど、手に汗握る。誰が敵で、誰が味方なのか、見事なエンターティメント。

    が、当然、いわゆるファンタジーで終わるわけもなく、なんだか心の襞に染み入っていく切なさ。自分の人生の記憶(=アイデンティティ)をなんとか取り戻そうとする心の働きの複雑さ。

    そして、民族間の対立の絶望的なまでの根の深さ。そうした中での、生命の儚さ。

    ストーリーは比較的単純なのだが、色々なものが複雑に織り込まれている感じ。

  • 憎しみの気持ちを忘れることによって結び連れられる絆もある。ということか。

    曖昧な記憶によって紡がれたアーサー王の伝説と世界的に普遍的な竜と鬼の存在する世界を舞台にしているが、
    憎しみの代償的存在があってこそ、人は許すことを受け入れられるのかもしれない。

  • カズオ・イシグロがノーベル文学賞を受賞した直後に文庫化されるっていうので話題になっていたので読んでみた。
    舞台は6、7世紀のブリテン島で、アーサー王伝説が下敷きになっているので、そこら辺の知識に疎いのでちょっととっつきにくさは否めなかった。
    章ごとに視点が変わり、時間も進んだり戻ったりする書き方に、引き込まれるものを感じた。
    「忘れられた巨人」という何か違うものを想像しながら読んでいたけど、ちょっと、終わりがあっけない気もする。

  • もっと一気に読みたかったが通勤電車の中だけで読んでいたので読了までに1週間以上かかった。ときには電車を降りたあと、ホームで続きを読むこともあった。いまからおそらく1000年以上も前の、イギリスの風景が頭に思い描けた。後半で戦士が少年に向けたことばがとても重たく心に響く。サクソン人である戦士はどうしてそこまでブリトン人を憎むのか。民族の紛争は今も絶えない。記憶がなくなれば、うらみも消えるであろうか。忘れることで平和がもたらされるのであろうか。高校生くらいのとき、宗教の時間だったかで被差別部落の問題が取り上げられた。当時は、寝た子を起こすようなことをしなければ、次第に差別の意識がなくなるのではないかと思えた。そのような発言もしたように思う。しかし、担当の教員は、起こったことをなかったことにはできないし、きちんと知るということが大切で、そのうえで差別がなくなるよう意識を持つべきである、というようなことを言っていた。同意する部分もあるし、でもな・・・と思う部分もある。騎士も言っていたではないか。記憶がなくなることで平和が続いてきたと。雌竜を倒すことは本当に正しかったのだろうか。しかし、歴史が繰り返すことを思えば、やはり記憶にはとどめておくべきなのだろう。ところで、つれあいを「お姫様」と呼ぶのはどうなんだろう。もとの英語は、“LADY”か? なんか、ずっとしっくりいかないまま読んだ。それで、ネットでいくつか調べているうち、最後の船に乗るシーンの話に出くわした。「死」、なるほど。すっきりした。「お姫様」のことはどうでもよくなった。

  • [手に取った理由]
    2017年ノーベル文学賞を受賞したから。
    いつか読もうリストの作家。

    [主な登場人物]
    アクセル…老人
    ベアトリス…老婦人
    ウィスタン…戦士
    エドウィン…少年
    ガウェイン…騎士
    ホレス…軍馬

    [感想]
    文章は読みやすいです。ストレスを感じません。
    記憶についての謎を追いながら、淡々と物語が進みます。私も淡々と、これからの展開を考えながら読みました。

    四人での旅は終わりました。けれど、それぞれの新しい旅が始まります。決して平坦ではないでしょう。

    深いです。

  • 老人活躍空想活劇。地味だが読み続けられます。

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遠方の息子に会うため老夫婦は村を出た。戦士、少年、老騎士……様々な人々に出会いながら、ふたりは謎の霧に満ちた大地を旅する

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