そして世界に不確定性がもたらされた―ハイゼンベルクの物理学革命

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152088642

作品紹介・あらすじ

1927年、若きドイツ人物理学者のハイゼンベルクは、量子力学の根幹をなす「不確定性原理」の考え方を初めて世に送り出した。すなわち、因果律に従い完璧に予測されるものだと考えられていた世界が、偶然と確率と可能性に支配された不正確なものに代わってしまったのである。これはあまりにも革新的な概念だった。当時すでに著名な科学者であったアインシュタインはこの原理を認めようとせず、また、ハイゼンベルクとその師ボーアとの間にも確執が生まれた。科学界だけではなく、文学や哲学にも大きな波紋をよんだ。だが、量子論と不確定性の考え方は、ある日突然現れたものではない。浮遊した微粒子がランダムに動くブラウン運動など、19世紀には不規則で統計的な現象の存在が明らかになっていた。また、第一次大戦後、敗戦国の屈辱を味わっていたドイツには、科学者の間にも決定論的な運命を認めたくないという向きが強まっていた。あとはただ一人の若き秀才の登場を待つのみだったのである。世界を揺さぶった不確定性の概念と、それをめぐる著名な科学者たちの人間ドラマとをみごとに描き出した、渾身の科学ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 近代物理学黎明期の天才達がとても魅力的で、苦悩に感情移入してしまいました。
    波動関数のバカ野郎!!って思っていましたが、シュレディンガーやハンゼンベルグが苦労して成し遂げた成果を尊敬し、改めて感謝しなければと思いました。

  • ハイゼンベルクやボーア、ディラックのこの時代の量子論の書籍は何冊も出ているので、取り立ててこの本を読む必要はない

  • 量子力学における不確定性原理と、その誕生を語ったお話。学問的な話ではなく、ハイゼンベルクを取り巻く人間関係に焦点が置かれている。



    量子力学と不確定性原理は、その解釈だけが様々な物語や考え方の中で取り上げられる。この本もそんな本。不確定性原理を巡るドラマを描きたかったようだが、内容が浅すぎる上、話がポンポン飛び、何を言いたいのかさっぱり分からなかった。恐らく著者が読者に伝えたいものはなく、知識を羅列するに終始している。新書で書かれるレベルの内容。


    ボーア、ハイゼンベルク、アインシュタインにフォーカスが当たるので、そこだけ読もう。

  • 日常生活について私たちが普通に持っている形式張らない理解と同じように、科学知識も合理的であると同時にたまたま得られた結果であり、確固たるものであると同時に条件によって左右される。京大であっても万能ではない。
    ラプラスの望んでいたように現在を知れば過去と未来を完璧に理解できるという時代はおわった。

    政治的社会的な喧噪からはなれて完璧な美しい世界を描くということを古典科学者はもとめていたらしい。それはほとんどのいまの通常科学でも変わらないな。。。

    ちょっと能力に対する執着など人間ドラマ色が強くてきつかった。

  • ハイゼンベルグのことだけだと思っていたら、ちょっと話がこみいっていて難しかったです…。

  •  量子力学の不確定性原理が発見された時のことを情景豊かに追ったドキュメンタリー。
    当時の科学者と同じ気持ちで
    「なんてことだ・・・」
    とつぶやいてしまう。
    量子の不思議な振る舞いを観察した時、ハイゼンベルグは神様をほんの少し追い抜いていた。

  •  二度目の読了ナウ。よく知られている量子力学に関するハイゼンベルグの「不確定性原理」の物語。不確定性原理そのものは、素人でもなるほどと思うことができる簡単な内容。ところが、ボーアとアインシュタイン達を絡めながら原理が出て来た経緯をたどることで、その奥深い意味がだんだん判ってくるという筋立てになっている。
     アインシュタインの相対性理論は、現実感覚とは隔絶した現象を解き明かす理論であったが、そのアインシュタインでさえ受け入れ難かったのが不確定性原理。常人とは別世界の天才達が考えることを読み説いてくれる本書は、仕事のストレスをしばし忘れさせてくれる。

  • 2010年12月25日読み始め 2010年12月27日読了。
    戯曲「コペンハーゲン」を読もうと思ったら、帯にこの本の宣伝が書いてあって面白そうだなと先にこっちを読みました。
    ハイゼンベルクとボーア、そしてアインシュタインの3人を軸に、量子力学の歴史と人間ドラマを描いてます。
    量子力学やアインシュタインがノーベル賞をとったブラウン運動の理論について、この本ではさほど詳しく説明していないので、全く知らないという人にはちょっと難しいかもしれないです。私はちらっと知ってるだけなので、ついていくのが精一杯といった感じでした。
    が、ドイツの歴史や個性的な科学者の人間くさい一面、師弟関係とライバル心など、人間ドラマとしても面白く読めます。
    数式がいっさい出てこないこと、章立てが短いことは科学に詳しくない私でも取っ付き易いなと思いました。

  • 物理学の英雄たるアインシュタインが悪玉で登場するところが面白。ハイゼンベルクというよりもボーアの本だと、個人的には思いました。

  • 1900年初頭から1930年までの量子力学の確立に苦悩した物理学者たちの物語。量子力学に関わった偉人の物語が紹介されているが、
    やはり主役はハイゼンベルク。アインシュタインとも争った若き物理学者の不確定性原理は、科学界だけでなく、哲学にも大きな波紋をよんだ。
    学生時代に量子力学をかじった人で、20世紀の物理の歴史を振り返って見たい方にはお薦めしたい本。

  • 量子力学を発展させた理論物理学者の栄光と挫折を描いた作品。

    とくにHeisenbergによる不確定原理(本書では観測による不確定性との混乱を避けるために「非決定性」や「決定不可能性」と呼んでいる)を受け入れるべきか、決定論を維持するか・・・・
    当時の物理学者が量子力学をどのように発展させたのかがうまく伝わる。

    Heisenbergによる不確定原理やSchrödinger方程式の解である波動関数の振幅の2乗は粒子の存在確率(Born解釈)を与えるということは、今や理系の大学なら教養程度で学習する内容であるが、この本を読むと、その解釈の方法に関して当時の物理学者がどれほど頭を悩ませたかがよくわかる。そしてEinsteinが量子論を受け入れられなかったことも。

    Newtonの「もし私が他の人よりも遠くを見ているとしたら、それは巨人の肩の上に立っているからだ」という言葉がピッタリだと思う。

  • 2008

    ボーアに始まる量子力学が、シュレディンガーやハイゼンベルクによって大成され、物理学の柱の一つとなるまでを描いたもの。
    物理の知識がないと理解しにくい部分が多いかもしれないが、人間関係も含めた展開で大いに楽しめた。

  • 「そして世界に不確定性がもたらされた」

    著者 デイヴィッド・リンドリー
    訳者 阪本芳久
    出版 早川書房

    p248より引用
    “科学的心理の力は強大であっても、万能ではない。”

    量子力学とその重大理論・不確定性原理が生まれるまでと、
    生まれてからの歴史に関する一冊。
    科学者達の奮闘と苦悩、
    人間関係が歴史の流れと共に書かれています。

    上記の引用は、
    不確定性原理から導かれる結論の一つだとおもいます。
    観測することによって、
    対象が影響を受けるという事を初めて聞いた時は、
    目から鱗が落ちる思いでした。
    科学というものは、
    もっとはっきりとした物であると思っていた為ですが、
    何事にも限界はあるみたいだなぁと思いました。
    一度読んだだけでは、
    正直人物名を覚えきることも出来ませんでした。
    じっくりと時間を掛けて読める方に。
    ーーーーー

  • 量子力学が生まれ、確立していくまでの過程で出てきたキラ星がごとく輝く科学者たちのヒューマンヒストリーを綴った一冊。特に原題の副題("Uncertainty - Einstein, Heisenberg, Bohr, and the Struggle for the Soul of Science")にある通り、ソルヴェー会議での熱い議論を中心にしたアインシュタイン、ハイゼンベルグ、ボーアの3人を中心とした中盤で描かれる論争戦は、量子力学がほぼ確固とした理論として受け入れられた現在から見ると滑稽なところがあるのも含めて、人間的でかつ印象的である。それにしても、この当時の人は、よく手紙を書いていたんだなと思う。また、こうやって後の世で私的書簡が公開されるのも不思議。今の世ならEメールやSNSなので、もっと話が早かったのかもしれないですね。

    なぜ今更、量子力学なの?というテーマに関する疑問はあるが、サイモン・シンなどが開拓した、特定の有名な科学的テーマを巡った人間模様をきちんとした科学知識の背景を押えて書くという、サイエンスライティングの一分野として広がっていけばよいと思う。

    前提知識の過多に影響されるので、好き嫌いはあるかと思うが、私としてはとても楽しんで読めた本。

    タイトルが原題と大きく違っているが、キャッチーで味のあるもので個人的には好き。でも、やはりハイゼンベルグだけでなく、アインシュタインとボーアも同じくらい主役級なので副題に含めてほしかったな。

  • 個人的に、わかりやすくておもしろかった。
    ハイゼンベルグとシュレディンガー方面両方から量子力学の成り立ちを読めるし。

  • 2008年2月ごろ。市立図書館で。
    20世紀初頭、物理学のスーパースタァたち(科学史)を淡々と綴った本。
    フェルミ推定の芋づる読みのつもりでしたが、何故この本が検索に引っかかったんでしょうか。
    読む方も読む方ですが。

  • 不確定性原理をめぐる本。理論の説明や解釈よりも、当時の物理学者、ボーアやシュレディンガー、アインシュタインらの言動の描写がメインハイゼンベルクによる量子力学の概念はパウリに「ぼくに生きる喜びと希望を与えてくれた」と言わせたが、アインシュタインは「(量子論は)大しくじりだ」と否定し、最後まで認めなかったという。理解することは予測することであるという因果律を明らかにすることこそが科学であるという立場から、確率に支配された量子力学はとても受け入れられなかったのだろう。最後に触れられているように、古典物理学ではどんな出来事であれ、それに先立つ出来事が原因となる必要があるため、宇宙が生まれた理由については語りえない、というのはまさにその通りで、ビッグバン理論に量子力学がからんでくる背景が少し理解できたように思う。ボーアの相補性物事の見方には複数あり、互いに補完しあう相補的な見方がある。生物は、物理学的には多数の分子がつながりあった集団とも、意志や目的によって機能している統一体ともとらえられる。が、同時に二つの見方をすることはできない。ボーアはある講演で「目的という概念は、力学的解析には無縁のものであるにもかかわらず、生物学ではある種の適応性がある」、つまり目的というものは分子レベルでは全く意味がないし、このように観察のレベルが異なれば異なった所見、場合によっては矛盾するような所見も現れる。■私としては原子の世界では決定論を放棄したいとおもう(ボルン)

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