クライマーズ・ハイ

著者 :
  • 文藝春秋
3.97
  • (349)
  • (335)
  • (327)
  • (21)
  • (2)
本棚登録 : 1995
感想 : 323
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (421ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163220901

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 日々手元に届く新聞ができあがるには、こんな裏事情があるのだということを知った。この著者は12年間記者をしていたとのこと。だからこんなに臨場感あふれる描写ができるんだろうなと思った。
    著者が一番伝えたいことは一人一人の命の重さなんだろう。マスコミで派手に報道され多くの人が悲しむ死と誰にも知られずひっそりと去っていく死と、命の重さに差はあるのかどうかということ。この問いを読者へ訴えるためにこれだけ多くの伏線があり、多くの人物が描かれ、壮大な物語になっているところがやはり作家というのは筆力があるなあと思った。
    出てくる人物がそれぞれの場所で懸命に生きていて、読後感が良い話だった。

  • 主人公の悠木は北関という新聞社の記者で、日航機墜落事故で全権デスクを任される。一方、休日には同僚の安西と登山を楽しむ。ある日、安西に谷川岳の衝立岩を登ろうと誘われる。しかし悠木は日航機墜落事故の対応のため、安西は突然のくも膜下出血に倒れ登れなくなってしまう。
    17年後、悠木は安西の息子と衝立岩に登る。

    日航機墜落事故から数日間の記者と関係者の緊迫感に満ちたやり取りと、17年後の登山のシーンが交互に描かれる。

    正直、主人公の悠木は良いところがなく、スクープを逃すし上司や同僚ともあまりうまくいっていない。私生活では息子ともうまくいっていない。
    それにしても、当時の新聞社の殺伐とした描かれ方には驚く。作者が元上毛新聞社の人とのことなのでかなり忠実なのではないか。

    名作なのは知っているが、個人的にはいろいろともやもやするため星3つ。

  • ・悠木和雅 群馬県の地方紙 北関東新聞の記者
    ・日航ジャンボ機墜落事故
     その日に、悠木は安西と翌日、衝立山に登る予定で、待ち合わせていたが、悠木は事故の連絡を受けて、行けなかった。安西は、道中で倒れてしまい、意識不明に。
     悠木は、日航デスクのトップになった。
     翌日、社の記者が命からがら取材原稿を送ってきたが、掲載できなかった。翌日、雑感として1面掲載する予定だったが、中曽根靖国参拝に1面を取られ、またもトップ記事で掲載できなかった。
    ・取材の中で、事故原因、隔壁を突き止めて、取材を深め、トップスクープとして掲載予定だったが、ギリギリの最終判断の所で、掲載断念の判断をした。決断できなかった。
    ・望月彩子 事故で亡くなった若い記者のいとこ
    命の重さについての投稿を勇気に持ってきた。それを紙面に掲載して、多くのクレームを受けた。悠木は、左遷。草津支所に飛ばされた。
    ・17年後に、悠木は、安西の息子燐太郎と、衝立山に登っていた。これまでの回想を通して並行して進められた。悠木家族との関わり、確執、そしてエンディング

  • 新聞を買いに来た母親の件は考えさせられる

    中から見た自分たちと

    外から見た自分たちは違う

    どちらが正しいのか?

    中から見た自分たちが、本当かもしれないが

    あるべき姿はどうだろうか

    外から見られた姿であり、期待に応えるべきではないだろうか


    命の重さは均一である、本当は
    だけど、人の主観が入れば違う事もある

  • 新聞記者の人生が日航機墜落事故によって大きく揺さぶられ、生き方を見つめ直すまでに翻弄される記者の物語。
    記者の記事に懸ける情熱がよく伝わってきたし、スピード感もありました。
    横山作品は短編が多いですが、これは著者初の長編作品です。
    読み応え充分で、満足しました。

  • ぼくはこの飛行機墜事故を情けないことに知らなかったし、その壮絶さを想像することもできないです。でも、この小説を通して、ほんの少しでも事故や事故に巻き込まれた人々の思いに近づくことができれば、、と思います。人間とは、仕事とは、家族とは、いろいろなことを考えさせてくれた素晴らしい小説でした。

  • 日本航空123便墜落事故を題材にした作品だが、本質は新聞社により新聞が発行されるまでのドラマを描いた作品だった。この作品を読んで、普段読み流している新聞の見方が変わった。少し冗長気味にも感じたが、良い作品だと思う。

  • 群馬の地方紙の記者達の、未曾有の航空機事故発生からの1週間の暑い日々。
    17年後、記者として、父として、自分に向き合った悠木は、谷川岳衝立岩に挑んでいた。

    新聞が発行されるまでの緊迫した状況に、常にドキドキしながら読み進めました。
    携帯のない、ようやくポケベルで連絡を取り合う時代だからこその焦れったさが、そのドキドキに輪をかけていたように思います。

    事故の悲惨さは、当時も連日の報道で見聞きしていましたが、今回また改めて思い出しました。
    現場に向かう記者、それを総括するデスク、必要な情報、生かしたくても生かせない記事、部外者としては歯がゆくて仕方がなかったですが、この世界には当たり前の事なのですね。
    組織に翻弄されながらも熱く戦う男達に魅了されました。
    悠木が隔壁の記事に踏み切れなかったところは、事実を知っているだけに苦しく悔しかったです。

  • 地元・群馬に墜落した日航機の全権デスクを命じられた北関東新聞記者の悠木。彼の確執と苦悩に満ちた日々が始まる。特に好きという訳ではないけど、のめり込むように読んでしまった。エンターテインメント性が高いと思う。男の意地の描写では時代遅れ感も否めないが昭和話だし当たり前か…。

  • 著者は元新聞記者。新聞社内の派閥や部署間の軋轢やドロドロした人間関係の描写に 改めて男性の厳しい職場なのだと知る。それぞれの仕事に対する思いや地元紙としての義務、スクープを載せたい欲求、いろいろな思いが交錯して 新聞というものが作られているのだと実感、そして尊敬。一読後に容易に破棄される情報誌なのに、だ。
    最近はさらりとしか読んでいなかった新聞だけれど 各面の意味も考えながら読んでいきたい。そしてそれを自分はどう消化したのか実感しながら先へ進むようにしたい。

全323件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

1957年東京生まれ。新聞記者、フリーライターを経て、1998年「陰の季節」で松本清張賞を受賞し、デビュー。2000年、第2作「動機」で、日本推理作家協会賞を受賞。2002年、『半落ち』が各ベストテンの1位を獲得、ベストセラーとなる。その後、『顔』、『クライマーズ・ハイ』、『看守眼』『臨場』『深追い』など、立て続けに話題作を刊行。7年の空白を経て、2012年『64』を刊行し、「このミステリーがすごい!」「週刊文春」などミステリーベストテンの1位に。そして、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞(翻訳部門)の最終候補5作に選出される。また、ドイツ・ミステリー大賞海外部門第1位にも選ばれ、国際的な評価も高い。他の著書に、『真相』『影踏み』『震度ゼロ』『ルパンの消息』『ノースライト』など多数。

横山秀夫の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×