- Amazon.co.jp ・本 (421ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163220901
作品紹介・あらすじ
北関東新聞の古参記者、悠木和雅は、同僚の元クライマー、安西に誘われ、谷川岳に屹立する衝立岩に挑む予定だったが、出発日の夜、御巣鷹山で墜落事故が発生し、約束を果たせなくなる。一人で出発したはずの安西もまた、山とは無関係の歓楽街で倒れ、意識が戻らない。「下りるために登るんさ」という謎の言葉を残したまま-。未曾有の巨大事故。社内の確執。親子関係の苦悩…。事故の全権デスクを命じられた悠木は、二つの「魔の山」の狭間でじりじりと追い詰められていく。
感想・レビュー・書評
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下るために登るのさ
この言葉の意味をずっと追いかけている。
視点が過去と現在をいったりきたりするので、少しずつ今の主人公に迫って行く形になる。
主人公が新聞記者というあまり私が読まないようなタイプの主人公だったが、新聞一つにとっても色んな人の思い、会社としての意向があり作られているのだと思うと普段読んでいるものにもしみじみと思うものがある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
・悠木和雅 群馬県の地方紙 北関東新聞の記者
・日航ジャンボ機墜落事故
その日に、悠木は安西と翌日、衝立山に登る予定で、待ち合わせていたが、悠木は事故の連絡を受けて、行けなかった。安西は、道中で倒れてしまい、意識不明に。
悠木は、日航デスクのトップになった。
翌日、社の記者が命からがら取材原稿を送ってきたが、掲載できなかった。翌日、雑感として1面掲載する予定だったが、中曽根靖国参拝に1面を取られ、またもトップ記事で掲載できなかった。
・取材の中で、事故原因、隔壁を突き止めて、取材を深め、トップスクープとして掲載予定だったが、ギリギリの最終判断の所で、掲載断念の判断をした。決断できなかった。
・望月彩子 事故で亡くなった若い記者のいとこ
命の重さについての投稿を勇気に持ってきた。それを紙面に掲載して、多くのクレームを受けた。悠木は、左遷。草津支所に飛ばされた。
・17年後に、悠木は、安西の息子燐太郎と、衝立山に登っていた。これまでの回想を通して並行して進められた。悠木家族との関わり、確執、そしてエンディング -
星5つでもいいかなと思いますが。ほぼ2日で読み(読め)ました。
企業戦士の我が儘で強圧で図々しくてそのお腹黒さにむなくそわるくなりながらも信念を守り通す男たちに胸がすく思いもしました。
でも、ここまで腹の探り合いというかつぶしあいというか、そんな一つにまとまれない企業がいい仕事できるのかな?と思ったり。
あまりそういう会社で働いたことがないからわからないけど。ゾッとしつつもここまで熱くなれる仕事というのもすごくうらやましく思います。
何よりもこの本の一つの舞台は私が30歳の時に起こった大事件でした。520人が乗った飛行機が山中に墜落という、とても強い衝撃でした。絶望的で悲惨。そんな中で生存者があったことに驚喜もしました。それはこの本の中でも描かれています。
どこだか忘れてしまったけれども、読みながら歓声を挙げた部分もありました.あの参事の裏側で体を張って真実に迫り、おのれの職務を全うしようとした男たちに“あっぱれ!”です。 -
「1985年8月12日、群馬県の御巣鷹山に日航ジャンボ機が墜落した。乗客韻524人のうち、520人もの命が失われた。前代未聞の事故を題材にかいたこの小説は、報道にたずさわった地元の新聞記者の苦闘を描く。
メディアの本質をえぐる問題も示される。新聞は遺体が錯乱する現場の真実を伝えたか。人命は等しく重いと言いながら、人を選別し、命の軽量をはかり、その価値観を押し付けてはいないか。
あたえられた使命にひたむきに取り組む姿は時にぶざまだが、胸をうつ。「今」と格闘する者たちの物語である。
著者、横山秀夫は群馬県の上毛新聞の記者だった。日航機が御巣鷹山に墜落したときには現場にいき、1カ月半を過ごした。多くの記事を書いたはずだが、「手も足も出なかった」とふりかえる。作家になり、小説で再びこの事故と向き合った。「クライマーズ・ハイ」の出版は2003年。「記録でも記憶でもないものを書くのに、18年の年月が必要だった」と語った。」
(『いつか君に出会ってほしい本』田村文著の紹介より) -
重みと勢いのある小説でした。
新聞社の仕事の日々の緊迫感が凄かったですし、日航機墜落事故というとても大きな題材を扱っていることで、より筆圧を感じました。
事故当時私は生まれていませんが、この時期に読んで少しでも知っておきたいと思い手に取りました。
取材陣目線ということもあり、現場の非現実的な光景がかなりしっかり描かれていて、「悲惨」の一言では片付けられないことが伺えます。
またご遺族だけでなく、いろいろな人の人生が事故によって動かされたことも伝わってきました。
組織のゴタゴタの中で奮闘する系統のお仕事小説はあまり得意ではなかったのですが、それを超える迫力がありました。 -
インパクトが正確さか。情報機器の発達していない当時ならではの現場の緊迫感が伝わってきます。それぞれのプライドが交錯する中で、自分は何を大切にするのか。
爽やかなラストでよかったです。 -
熱い情熱はあるがなんとも煮えきらない感じ
下りるために登る
時には下りるが登り続ける人生を目指したい