119

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 383
感想 : 70
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163910345

作品紹介・あらすじ

――怖がるなとは言わない。だが、恐怖を他人に感染させるな。 消防学校時代の担任教官が、たった一度だけ口にしたそんな言葉がいまでも忘れられない。(「白雲の敗北」より)。ベストセラー『教場』『傍聞き』の短篇の名手が贈る、心震える9つのミステリ短篇。人を救うことはできるのか――和佐見消防署消防官たちの9つの物語。雨の翌日、消防司令の今垣は川べりを歩く女性と出会う(「石を拾う女」)。新米の土屋と大杉は「無敗コンビ」だった(「白雲の敗北」)。女性レスキュー隊員の志賀野が休暇中に火事を発見(「反省室」)。西部分署副所長の吉国は殉職した息子のお別れ会で思い出を語るが……(「逆縁の午後」)ほか5篇

感想・レビュー・書評

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  • 和佐見消防署の消防官たちを描く連作短編集。


    『教場』に始まる風間教官のシリーズが一区切りついて、次は消防官か!
    舞台が舞台なだけに、生死にかかわる緊迫感があった。それも、むしろ火災の現場から離れた日常で、彼らの骨身に染み付いた観察眼や生い立ち、性格が謎を呼び、謎を解く面白さ。


    どれも面白かったけれど、苦い後味のものが多め。
    特に後半、『フェイス・コントロール』『逆縁の午後』は苦かった。
    時に命を預け合う信頼で結ばれた仲間が犯した罪や後悔を、読み取ってしまう。そこには高揚感はない。
    帯にあるように、“消防官は、ヒーローではない”のだ。

    ところで、たまたま少し前に、江戸の火消が活躍するシリーズ『火喰鳥』を読んでいた。こちらも、人々は悩み苦しみ、脇役も善人ばかりでもないのに、読後はどこかカラッと明るかった。
    短編では、笑いを誘う隙がないからかな。

  • 長岡弘樹さんの本は読みやすい。
    ブクログが 私におすすめしてくれた本だから?サラッと読めた。

    警察関係の本って色々あるけど消防関係ってあまりないから新鮮だった。

  • いつも通り予想とは違うことになる話の連作。変わらず巧いなと思う。消防士さんのことを少し知れたと思うのも良かった。

  • 「消防士」という、ある種「男の子の夢」のひとつでもあろう職業をテーマとした作品です。
    …とはいえ、進学校の男子校だと、あまり消防官を目指している、ということは聞かず、体力への自信のなさや、TVでの扱い(警察や医者はドラマになっても、消防士はドラマになることがすくない?)なども関係しているのでは、とも思います。

    ある消防署に勤務する消防士たち、一人ひとりの物語をまとめた短編集です。おおまかな時系列で短編が並んでいますが、一つひとつの物語が関連しているわけではなく、それこそ一話完結のドラマを見ているような感覚です。
    登場人物の個性も特徴がありますし、それぞれの物語には「どんでん返し」とでも言えるような「謎解き」の要素もあり、気軽に読み進めることができると思います。

    一方で、それぞれの物語について、動機が不明瞭であったり、事件の「現実感」がなかったりする、といった部分もあるように感じました。個々のストーリーを読み終えて、「感動」とまではいわなくとも確かにしみじみさせられる感覚があったり、「消防士」も一人にの人間であって弱い部分があるということを改めて気づかせてくれたりするなど、楽しめる要素もあったので、全体を通して「中途半端」な読後感となってしまったのが少し残念です。全9編の短編が収録されていますが、本数を減らして(とりあげる事件を減らして)、一つひとつの事件についてより深い作品になればもっと面白かったのかな、とも感じます。

  • 読んで面白いところもあったが、なぜだか気が滅入る終わり方が多かったような…。自分の命をかけて人を助ける仕事をする消防士さんに合掌の思いだった。

  • ガッツリ系のお仕事小説を期待していたが、消防士を主人公にした短編ミステリー。
    どこか一筋縄ではいかない作風は著者の良いところだけど、「教場」シリーズと普段の短編ミステリーのいいとこどりをした感じで、ファンからすると、どっちつかずなところが微妙でがっかり…

  • 和佐見市の消防署を舞台に、そこで働く消防官たちを主人公にした9つ連作短編。119というタイトルを見たとき、「あ~、また消防士ものね!」と「傍聞き」の二番煎じ的な仕事への矜持を描く短編と思いきや、今回はちょっと違う。

    「消防官は誰もみな、いつ顔を出すかわからない闇を抱えたまま、それをぎりぎり押さえつけている危うい存在だ。」

    警察官と並んで、自殺者が多いという消防官。現場では日々、生と死を分ける場面に直面し、救えなかった命を前に自らの中に闇を抱えていく。
    彼らはただのヒーローじゃなく、ギリギリのところでそれに応えているんだなぁ~。
    彼らの抱える様々な問題を描く9つの物語はいつものような爽やかさはないけれど、かっこいいだけじゃない姿もまた真実なのかな・・・

    ひとつひとつの短編はひねりがあり、ちょっとした伏線があとで効いてくる展開は長岡さんの真骨頂で、予想できた時はスッキリ!、ハズレたときでもそうきたか!とどちらも楽しめました。

  • 消防士が主役の連作短編集。長岡さんの作品にはためになる情報が必ずある。この本にも食品に付いてる乾燥剤の危険な捨て方や、火事の際、火のてから身を守る方法が書いてあった。固定電話をプッシュホンを押さず声でかけられるのには驚いた。どの作品にも人情や哀愁がある。そして時々、あっと驚く真実も。どの作品もわりと短めだがメリハリがあって面白かった。

  • どの話も短くて読みやすかったが、テーマのほとんどが自殺になっていて読んでいて重い気持ちになってしまった。
    印象に残ったのは「救済の枷」。読んでいて痛くなってしまった。

  • 和佐見消防署消防官たちの9つの物語

    消防官は人を助けるヒーローではない。彼らは誰もみな、いつ顔をだすか分からない闇を抱え、ぎりぎりのところを押さえつけている危うい存在。

    恐怖は他人に感染していく。迫り来る危機...

    9つの話は、微かに交わり、見えにくい。
    消防官として入官し、時が流れ、退官まで。

    最後に残るのは、苦い記憶と、微かな思い出だけ。

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著者プロフィール

1969年山形県生まれ。筑波大学第一学群社会学類卒業。2003年「真夏の車」で小説推理新人賞を受賞し、05年『陽だまりの偽り』でデビュー。08年「傍聞き」で第61回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。13年刊行の『教場』は「週刊文春ミステリーベスト10」の1位、「本屋大賞」6位などベストセラーとなった。他の著書に『線の波紋』『波形の声』『群青のタンデム』がある。

「2022年 『殺人者の白い檻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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