- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167277208
感想・レビュー・書評
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向田邦子、唯一の長編小説。(他の小説は、ドラマシナリオを他の作家が小説にしたものだから、ということらしい。)本作品も、テレビドラマや映画化されている。舞台は第二次世界大戦突入前の東京。戦友の2人とその家族(妻、娘)の話。一方は、戦時突入前、実業家で羽振りが良く、もう一方のサラリーマン家庭を陰で支える。友人が抱く友人妻への恋心。
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年齢を重ねた時に読み返したくなる一冊。
年齢や立場によって、夫婦だったり、その子どもであったりと、魅力的な登場人物に重なる心が変化するのを実感できる。
電子ではなく、紙で持っておきたい作品です。
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昭和初期の情景がすぐに浮かんでくるような、そして不安定だけれど安定しているような友人や家族の日常を描かれていて、とても大好きな本になりました。言葉のひとつひとつが沁みます。
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なんか古本屋で安かったので、お盆っぽいという期待を抱きつつ読みました。やー面白かった。出てくる人たちみんな大人ー。
破滅に近い状態から薄皮一枚隔てて日常を過ごしつつ、決して薄皮の向こう側に行かないこの自制心、こういうのが好きになるってのは俺も大人になったということでありましょうか。いいわー。色恋に対してなあなあで、一大事にならないこの感じ。 -
図書館のロビーでやっていた古本市で文庫3冊100円で買ったうちの1冊。
読み終えて、あれ?「あ・うん」はドラマ見てなかったっけ?、だったのだ。
向田邦子のドラマは何度も再放送されていたし好きだったので、見たつもりでいたけど、話に覚えがなかったよ。(=^_^;=)ゞ
それにしても、今こうして読んでみると、戦前の明治から昭和の匂いって祖父母を通して自分の嗅覚にもそれなりに残ってると思っていたが、なんとも(・_・?)ハテ?これは何だっけ?となるような表現もあって、寂寥感とも申し訳なさともつかない感覚に囚われる。
ついこないだのことなのに、ああいう“匂い”ってのは文字だけでは残せないないんだなぁ…と改めて感じる。
中でもなんてことないシーンなのだが、「芋俵」の冒頭に出てくる水田と門倉が碁を打つシーン、尻取りでやりとりをするところが、おじいちゃんがよくこんな掛け合いをしていたなぁと思い出され、あの落語にも川柳にも通じるユーモアの洒脱さがいいよなぁ~と思う。
ああいうセンスって、普段から川柳や俳句など極端にシンプルかつ創意があるってのを作ったりして言葉の体操みたいなことをオツムに課してないとなかなかキープできないよなぁ…、なんてことを考えていると、江戸の大衆文化ってたいしたもんだよなぁ…、なんてことまで考えてしまったのである。
ドラマも見てみなくちゃ。 -
「いちばん大切なことって、人には言わないものなんでしょ。」
曖昧な物事や関係まで、何もかも全部わかりやすく白黒つけるだけが正しいわけではない。言語化のはばかられる事柄まで、無理に言語化して浅く分かった気になる必要はない。大切なことは言葉にせずにじっくりと胸の中であたためる、というのが必要な時もある。 -
《図書館》【再読】おじさん二人の友情物語。映画化もされてる作品。映画も観てみたい。
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磁石のように同体として惹かれ合い弾き合う、狛犬の如く阿吽の門倉修造と水田仙吉。彼らの生き方はこと現代においては許されるものではないかもしれないけれど積将棋と同じようにすべてが微妙なバランスで完璧な形で成り立つ。血肉となった二人の関係は門倉の突然の決別は同質化することと喪失することへの恐れであろう。戦争の色を濃くしていった時代の閉塞感と鬱積を比し、それでも人々の諸事を描く妙は向田邦子氏ならでは。義理や人情とは異なる、誰もが持つアンビバレントな不思議な人間模様を描き出している秀作。
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時代が時代なのもあるが、正直令和の今読むと、登場人物の感覚に違和感を通り越して苛立ちを感じた。明治以前であればアリなのかなと思うが、昭和初期という古くも新しくもない時代だけに余計そう感じるのかも。