アライバル

  • 河出書房新社
4.28
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本棚登録 : 2440
感想 : 324
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309272269

感想・レビュー・書評

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  • ショーン・タンの字のない絵本。
    アメリカ(それともオーストラリアかな?)とおぼしき国へと移住した家族たちのお話。

    ひとりの男(夫であり父である)がまず、仕事を求めて船にのり、新天地に降り立つ。そこでの慣れなさ加減や文化がユーモラスに描かれる。奇妙な生き物に奇妙な食べ物に奇妙な言語。

    (妻と娘は、謎の黒々とした触手がはびこる祖国で不安にさいなまれながら夫そして父からの連絡を待っている。)

    そこで出会う人々がかつてこの土地に渡ってきたときの記憶もまた、男に触発されてよみがえる。どちらかといえば、思い出したくない、暗い記憶だ。
    それとともに、人々の表情はつかのま歪み、目は陰る。

    こうして男は徐々に生活に慣れていく。ぶじ、家族も呼び寄せることができた。この場面では、こみあげるものに抗しがたい。

    とはいえ、もっともグッときたのは、男が船に乗っている場面で、いくつもある船窓から見える雲が(あるいはひとつの窓から見える、移ろいゆく雲の形かもしれない)、ひとつひとつ丁寧に描き分けられている見開きのページ。ここはちょっと、私的事情も相俟って涙腺がヤバかった。

  • 『THE ARRIVAL』・・異星への「到着」と異星物との「遭遇」・・奇抜な着想と幻惑のイラストで、夢幻の世界へと誘われます。新大陸アメリカに活路を求め、トランクに妻子の写真を詰めて単身ニュ-ヨ-クに到着した男を迎えたのは、言葉がまるで通じない、奇妙な生き物がたむろする異次元の世界でした・・・。幻想的なイラストが連続して進行する物語は、読者に託されたマジック・スト-リ-のようですが、妻子との再会がかない、新世界での暮らしに希望の光を見て終わるエンディングに、ほっとタメ息をつきました。

  • セピア色 幻想的な世界 グラフィック・ノヴェル
    移民者の方々の体験談から着想を得た世界

    家族との別れ
    長い旅路
    通じない言葉の中でなんとか思いを伝え交流し助けられ生活していく
    文字はなくても、文字があるように
    移民先の世界観、人々の日常が伝わってきた

    とても細やかな描写
    観入ってしまった

    カバー表紙折り返し部記載文
    arrival / 到着、(新しい方法・製品などの)出現、(季節・行事などの)到来、やって(引っ越して)来た人、新顔、新参者、誕生、赤ん坊
    新たな発見土地に移民した者が、その土地で生まれ変わり、新生児のように成長していく。
    そこには過去の自分を捨てなければならない辛さと、新しい人生を歩むチャンスを手にした幸せとの両面がある。それをまるでサイレン映画のように一切の文字を使用せず表現した、究極の文字なし絵本

    作者あとがき~
    この本の大部分は、さまざまな国や時代の移民の方々の体験談から着想を得ている。

    ギュスターヴドレ Over London by Rail

  • 文字が無くてもちっとも不自由しない。
    映画を見終えたような充実感。ですが映画と違い、気に入った場面をじっくり眺めたり前に戻ってみたり、自分のペースで読めるのが絵本ならではの良さですね。ひととき幻想的な異世界にどっぷり浸りました。

  • 月イチ絵本。
    うむ。
    わからん。
    絵はスゴいし、変な生き物は好きだし、なんだかわからん奇妙な国もよい。
    が、わからん。
    セリフ文章なしのサイレントなのでますますわからん。
    そしてなんとも言えない不安感。
    サイレントだからさらに不安感が増す。
    しかしページをめくる手は止められない。
    わからんのに。
    最後までわからん。
    なのにわかる。
    わかってしまう。
    そうか。
    色々大変だったし不安だったよな。
    でも最後はまあ家族と共に幸せそうでよかった。
    結局全然わからんままわかってしまった。
    よい。
    スゴい。
    わかる。

  • 字を読むのに疲れてしまった時、ふと手にとってパラパラめくってみる。
    深い意味があるんだろうけど、そう言う事は考えずにただその世界に浸る。
    癒される。

  • 「The Arrival」https://booklog.jp/item/1/0439895294の日本出版本です。
    移民から見た新天地の光景と恐怖を、サイレント映画のようなタッチで描いた文字無し絵本です。
    不可思議な世界観へ展開していきますが、自分の知らない世界へ順応する移民の心境を感じました。
    原書と一緒にページを進めました。
    内容は同じですが、印刷の色合いに微妙な差があるようです。
    読者によって話の捉え方が変わる素敵な一冊。

  • 『アライバル』    ショーン・タン

    全く文字の無い本。

    ゆっくりと一ページづつ深く味わう様に見ていくと、音が聞こえて来る様な気がする。光と影、人々の表情、不思議な世界。中に一文字も書かれていないのに、物語が伝わって来て、涙が出そうになる。



    あまりにも話題になり過ぎたからか、その時は高価に感じたのか、とても欲しかったのに買わなかった。



    先日、図書館で借りて来てあったのを静かに見ていると、書店でパラパラ見た時には、わからなかったことが、どんどん伝わって来て…。



    美術好きな家人が、珍しく目を留めて「原画で見たい絵だなぁ」と。一つ一つの絵を、原画の紙の質感を味わいながら見たい様な絵。それが意味を持って繋がっている。言葉は一切無い。



    部室に投稿して、こちらに投稿して無かったf^_^;

  • 一切の文字も使わずイラストだけで移民の物語をまるでサイレント映画のように表現している画期的な絵本。新天地は摩訶不思議な世界。とにかく一度見てみて!こんなすごい絵本があったのかと感動すること間違いなし。

  • 不思議な世界でありながら、いつかの過去の世界であり、また未来でもあるような世界。丁寧な絵で、言葉がないことで、私たちの中から言葉があふれてくる、すばらしい絵本。

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著者プロフィール

1974 年オーストラリア生まれ。幼いころから絵を描くことが得意で、学生時代にはSF 雑誌で活躍。西オーストラリア大学では美術と英文学を修める。オーストラリア児童図書賞など数々の賞を受賞。2006 年に刊行した『アライバル』は世界中で翻訳出版されている。イラストレーター、絵本作家として活躍する一方、舞台監督、映画のコンセプトアーティストとしての活躍の場を拡げている。9年の歳月をかけて映画化した『ロスト・シング』で2010 年に第83回アカデミー賞短編アニメ賞を受賞。2011年にはアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞。2019年には日本で初めての展覧会を開催。現在メルボルン在住。

「2020年 『ショーン・タン カレンダー 2021』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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