- Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334740009
感想・レビュー・書評
-
皆さまが感想を書かれているように、文学作品であり、ミステリーである珍しい作品だと思いました。
文学っぽくはあるけどミステリー色が強いものは多いけど、ここまでバランスがとれているのは、この作品ならでは。
全体的に暗い時代背景のため、本や文字自体も寂しい雰囲気が漂っていて、元気がない時に読むのは、やや危険な気もする。
心が、もっていかれそう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
遊興町の裏手で男の死体が見つかった。その手には桔梗の花、何かを知るのは花街には相応しくない大人しい少女…(『桔梗の宿』)、私の記憶の中の、女が男を殺している姿がはっきりと残っている。あれはもしかして、母と父なのだろうか…(『白蓮の寺』)など全五編。
やっと読めた!物悲しくて、美しい短編集。語り口がその当時のものなので慣れが必要だけど、だからこそ昭和の美しい映画のようで雰囲気が素敵。短編なのに一話ずつの世界観の作りが完璧で、謎も作り込まれていて解決も鮮やか。『桐の棺』と『白蓮の寺』が特に好きかな。そして図書館にあった本が単行本第一刷で驚き。 -
藤の香
桔梗の宿
桐の柩
白蓮の寺
戻り川心中
初連城作品。
オールタイム・ベストにランクインしている短編というところに興味を持って手に取った。
一編一編は長さもなく、叙情的で美しい文章なのでスルッと読めるかと思いきや、恋愛小説のような読み心地からの謎解きへというどんでん返しや、その余韻で一編読んだ後次に取り掛かるのに時間がかかり、数日かけての読了となった。
口語体のためか読点が多いのが、私にはちょっとした癖のあるように感じられて、それも読むのに時間がかかった理由かもしれない。
どれも謎解き要素はとても論理的なのに、謎が謎じゃないようなどんでん返しの繰り返し。すごかった。
表題作の戻り川心中は、なるほど評価が高いわけだと納得。
苑田岳葉の歌人としての執念のようなものと、その蜘蛛の糸のような執念に掛かってしまった女性たちの物語に圧倒された。
一番ミステリ的だと思ったのは桐の柩かな。
こういう描かれ方じゃなければ、トリックとしてそう特筆すべきところがある感じではないんだけど、文章の流麗さで結末に驚かされた。
こういう推理小説もアリなんだな…
-
その美しさで名高い本作の文章で綴られる大正~昭和初期の少し暗い時代の空気と人々の情念と悲しさにすっかりはまりこみ、ミステリーであることを忘れて読みました。
-
内容(「BOOK」データベースより)
大正歌壇の寵児・苑田岳葉。二度の心中未遂事件で、二人の女を死に迫いやり、その情死行を歌に遺して自害した天才歌人。岳葉が真に愛したのは?女たちを死なせてまで彼が求めたものとは?歌に秘められた男の野望と道連れにされる女の哀れを描く表題作は、日本推理作家協会賞受賞の不朽の名作。耽美と詩情―ミステリ史上に輝く、花にまつわる傑作五編。 -
耽美的といわれて、なるほど。
5作品通して、しとしとと降り続く雨のような空気感。
人をあやめるほどの欲も情念も、ひそやかに危うく、悲しげ。
花街、組、文壇といったにぎやかで陽気な世間から一歩離れた世界と、今とは違うこれらの時代。そこに溶け込むような情緒ある文体。そしてこのストーリー。
「戻り川心中」の舟の上での会話が胸を打つ。 -
文体のなんと美しいことよ。
-
連城三紀彦さんは文章がすごく綺麗
-
日本推理作家協会賞受賞。色んな所で評判が良いので買ってみた。なるほど。推理小説としては異色というか、詩情があり人の心の描写が細やかで美しい。人が人を殺めねばならぬ理由(動機)がもの悲しくも妖しい。推理小説としてより、文学作品として読みたい一冊。半分は美容院で読んだ(笑)。ちょいねっちり。[private]諫早に持ち帰る2007/1/1[/private]