17歳のための世界と日本の見方―セイゴオ先生の人間文化講義

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  • 春秋社
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  • Amazon.co.jp ・本 (363ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784393332658

感想・レビュー・書評

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  • 日本文化研究に関する豊富な知識で知られる松岡正剛氏の帝塚山大学での講義をまとめた本。

    著者が唱える“編集工学”の考え方を軸にし、現在の世界宗教の成り立ちと、日本の文化の成り立ち、そして、世界との関わり方を順をおって説明していく講義。

    神話と呼ばれるような「物語」を引き継ぐために「言葉と文字」が生まれ、それがどのように編集されて宗教になり、文化として根付いていったかをわかりやすく説明してくれており、現代がどのような文化基盤から成り立っているかがすんなりと腹に落ちてくる。
    特にキリスト教の「編集」の仕方はこじつけにしか見えず、過去の宗教家たちの苦労、というか苦悩が垣間見え興味深い。

    聖書・コーラン等各宗教の聖典をいずれ一度は読んでみようと思う。

    メモとペンを片手にマッピングしながら読みたい本。

  • 大学時代に読んだ物を再読。
    とても良い本だと思う。こういう本は著者の史観の主張が強すぎて読んでて不快になる物も有るが、本書は程よいバランスを保ちながら、著者の"異"と"同"の考えが述べられている。
    本書は著者の非常に多岐にわたる知識を基に、日本-欧米の関係といった横のつながり、人間観の移り変わりという縦のつながりをうまく表現している。網羅的な内容で有るが一部掘り下げた部分もある。
    17歳のためのとタイトルには銘打っているが、30前になった現在読んでも学ぶところがおおい。
    本書中に表れる引き算の文化という考え方がおもしろい。
    枯山水に代表されるように水がない事で逆に水を表現するといった事を指す。
    他にもたらこスパゲッティー等、分かりやすい例を挙げて日本文化の特質性を記述している。
    数時間で読める割には内容の濃い名著だと思う。読んだ後は少し頭の良くなった気がする。
    若い人に薦めたい。

  • 普段読まないジャンル。なかなか面白かった!

  • 常識を疑っていくことは非常識ではない - 読んだものまとめブログ http://t.co/XZ8e4JZ via @sadadad54

  • 松岡正剛さんを知るきっかけとなった一冊☆


    編集工学というものにもこの本のおかげで興味を持ちました☆


    宗教という観点から日本と世界の成り立ちを同じ時間軸から見てみるというなんだかすごく三次元的な見方で話が進むように感じました♪


    ただ17歳のための~とありますが、途中からかなりの広く基礎知識を要する本に思いもしました☆


    自分もいっぱいいっぱいでなんとか読めたのかなと思いますが、自分が17歳であったなら決して読めないようにも思う本です(笑)


    ただこういった本を読むことはかなり脳を使うと思うのでいいのでイイ刺激になるとも思います(^^)


    またすごく勉強になったのは話の展開のしかたです!
    展開のしかたがとにかくすごい!
    松岡正剛さんの知識量を感じます☆


    これが編集工学というものなのかとも感じました。


    本の中身は一神教と多神教の成り立ちや違い。
    どのような人の心理状況が生み出したのかという考え方もおもしろかったです♪


    何度か読んで理解を深めるような一冊だと思います☆

    まだ自分は理解度としてはかなり低いようにも感じていますが、また知識を深め改めて読むと、この本の好さが改めてわかるようにも思います(^^)

  • ひとつは世界と日本を歴史観を持って見ること、 もうひとつは社会と文化はどのように成立しているのかをよく知ること。
    この両方を学ぶことを「人間文化を学ぶ」と述べています。

    印象に残った言葉
    ・「自分」がわかるようになるためには、「他者」というものの存在を理解しなければならない。自分をとりまいえいるさまざまな「他者」があるということを知ることから、「自分」という意識が生まれてくる。「自分」や「自己」は、「他人」や「他者」を介在されないと成長できない。
    ・「生きている」という実感は苦しみや貧しさや痛みがあることによって初めて実感できる。「苦」があるから「楽」が実感でき、「負」があって、やっと「正」が感じられる。

  • 宗教のしくみについて勉強した。テキストは本書。原始宗教・哲学から、変遷し枝分かれし発展し整備され利用され、姿を変え役割をもち、今の今まで力を保ってきた宗教の、そのたどってきた道筋をわかりやすく書いてあって、ほんとに勉強になりました。宗教という大きな山の全体を見ることは大事だ!と思う。宗教は富士山と同じ。登山口はいくつもあるし、どこから登っても、同じ頂上にたどりつく。キリストは道を作るのが上手。他の道から登っちゃだめだと言うけどね。一神教と多神教の違いっていうのは、どうしようもないけど、これを超えなきゃいかんのだよ。(07/6/24)

  • 「あはれ」から「あっぱれ」、貴族から武家の世に

  • 3/13

  • 17歳向けの書籍であるが、自分の価値観を見直すという意味では、今の大人にこそ読んでもらいたい内容だ。
    どういう経緯で今という世界が出来上がっているのかを知ることは本当に重要だと思う。
    世界の分断は宗教の歴史でもある。
    ユダヤ教・キリスト教・イスラム教。
    これらが入り混じって今の世界をを形成しているのは間違いない。
    ヨーロッパの歴史も本当に面白い。
    一方で、アジア世界はどうか。
    仏教はどういう経緯で中国経由で日本に伝えられてきたのか。
    インド仏教と日本の仏教の考え方の違いと、日本独自に発展していく中での宗派ごとの特徴も。
    そもそも「日本を知る」ということは、日本人として本当に重要だと思う。
    日本という国がどういう経緯で形作られて、今に至っているのか。
    というか、我々は自分自身の背景を知らな過ぎる。
    私という存在は、生まれた時から私自身かもしれないが、実はその背後には今の社会を作ってきた歴史があるということなのだ。
    社会の構造に留まらず、文化だったり、価値観だったりも含めてのことだ。
    まず自分の背景にある価値観を知る。
    そして他者の価値観も理解する。
    これは特に自分以外の外国人に対しては、必要なことだと思う。
    だからこそ、若い内にドンドンと旅をしなければいけない。
    広く世界を見なければいけないのだ。
    もちろん大人になっても、世界を学習する必要がある。
    特に国際情勢は益々複雑化している。
    それはなぜ起こっているのか。どういう背景で起きているのか。
    歴史を学び続け、他者を理解しようとする姿勢が、世界を少しづつでも平和にしていくだろう。
    本書冒頭で、著者が価値観の違いを認識するエピソードが出てくる。
    この話は本当に示唆に富む。
    盲目の著者の叔父が、デパートの前まで来た時に「風鈴の音が聞こえる」と言ったのだという。
    当然周囲に風鈴なんてない。しかし、著者と一緒にデパートの5階に上がって、エレベータの扉が開いたら、目の前が風鈴フェアだった。
    それで著者はものすごくビックリしたのだというエピソードだ。
    こんな体験したら「目の見えない人たちには、一体何が見えているのだろうか?」が気になってしょうがないはずだ。
    この叔父は、生まれた時から盲目の方で、人生の途中から目が見えなくなった訳ではないらしい。
    だからこそ、我々が見ている世界とは全く異なる世界線がこの叔父の中には形作られている。
    自分だけが見えている世界が全てではないと知ることはものすごく重要だ。
    人それぞれに見える世界は違う。
    その範囲も解像度も、そして色すらも異なるのだ。
    自分だけの小さな価値観が全てだと留まってはいけない。
    人々は「物事を見る力」を養わなければいけない。
    一つの価値観が全てだと思うことこそ、危険なことはない。
    常に新しい考え方を柔軟に取り入れて、価値観をアップデートしていく。
    特にこれから変化の激しい時代において、この考え方はすごく重要だと思う。
    大人こそ意識する必要があると感じるのだ。
    (2024/1/21日)

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著者プロフィール

一九四四年、京都府生まれ。編集工学研究所所長、イシス編集学校校長。一九七〇年代、工作舎を設立し『遊』を創刊。一九八〇年代、人間の思想や創造性に関わる総合的な方法論として″編集工学〟を提唱し、現在まで、日本・経済・物語文化、自然・生命科学、宇宙物理、デザイン、意匠図像、文字世界等の研究を深め、その成果をプロジェクトの監修や総合演出、企画構成、メディアプロデュース等で展開。二〇〇〇年、ブックアーカイブ「千夜千冊」の執筆をスタート、古今東西の知を紹介する。同時に、編集工学をカリキュラム化した「イシス編集学校」を創設。二〇〇九~一二年、丸善店内にショップ・イン・ショップ「松丸本舗」をプロデュース、読者体験の可能性を広げる″ブックウエア構想〟を実践する。近著に『松丸本舗主義』『連塾方法日本1~3』『意身伝心』。

「2016年 『アートエリアB1 5周年記念記録集 上方遊歩46景』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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