「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ

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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478016879

感想・レビュー・書評

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  • 第二次世界大戦での日本軍の敗北を分析した「失敗の本質」をビジネスの視点から説明した著作。今度は原本を読んでみよう。

    【敗戦7つの理由】
    ①戦略性:日本人は大きく考えることが苦手であり、俯瞰的な視点から最終目標への道筋を作り上げる事に失敗しがちである。
    戦略=目標達成につながる勝利を選ぶこと。
    =追いかける指標のこと。
    戦略のミスは戦術でカバーできない。
    ②思考法:日本人は革新が苦手で練磨が得意。
    プロセス改善だけでは、問題を解決できなくなる。
    ゲームのルールを変えたものだけが勝つ。
    ③イノベーション:自分たちでルールを作り上げることができず、既存のルールに習熟することばかりを目指す日本人気質。
    ④型の伝承:創造ではなく「方法」に依存する日本人。文化と組織意識の中には、イノベーションの芽を潰してしまう要素がある。
    成功の法則を「虎の巻」にしてしまう。→成功の本質ではなく、型と外見だけを継承する日本人。成功体験が勝利を妨げる。
    ⑤組織運営:日本軍の上層部は、現場活用が徹底的に下手だった。
    ⑥リーダーシップ:現実を直視しつつ、優れた判断を下す事が常に求められる。
    ⑦日本的メンタリティ:「空気」の存在や、厳しい現実から目を背ける危険な思考への集団感染、そして日本軍の敗北を象徴する「リスク管理の誤算」

    ◯シングルループ学習
    目標と問題構造を一定とした上で最適解を選び出す学習プロセス。
    ◯ダブルループ学習(ほんまかいな?という疑問を持つ)
    想定した目標と問題自体が間違っているのではないかという、疑問・検討を含めた学習スタイル。

    ◯イノベーションを想像するスリーステップ
    ①戦場を支配している「既存の指標」を発見する。
    ②敵が使いこなしている「指標を無効化」する。
    ③支配的だった指標を凌駕する「新たな指標」で戦う。

    イノベーションの想像を考える場合、ダブルループの学習者は常にシングルループの学習者を一方的に攻撃できる能力を持つ。

  • 太平洋戦争の敗戦を細かに分析した名著「失敗の本質」を分かりやすく解析した本。停滞してしまった現代日本経済の問題点と絡めつつ、日本人特有の性質を解説しています。ものすごく面白くて、一気読みしました。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「日本人特有の性質」
      某元知事が書いた「昭和16年夏の敗戦」を読んで、日本人の何とも言えなさを残念に思いましたが、この本も追い討ちを掛ける...
      「日本人特有の性質」
      某元知事が書いた「昭和16年夏の敗戦」を読んで、日本人の何とも言えなさを残念に思いましたが、この本も追い討ちを掛けるような内容かなぁ、、、
      2014/04/17
  • 本書は名著『失敗の本質』の入門書です。本編の執筆陣の一人である野中郁次郎氏をして「本書は日本の組織的問題を読み解く最適な入門書である」と太鼓判を押す理由が良くわかりました。わかりやすく為になります。

    僕も初めて「失敗の本質」を読んだのは確か大学時代のここと思っているのですが、やっぱり 本質的なことはあまりよくわかっていなかったような気がします。本書は名著「失敗の本質」より23のポイントからダイジェストで読む!というコンセプトで執筆されてもので、「ビジネスで役にたつ」といわれて「戦略の本質」を手にとって読んでは見たものの、これがどこでどうビジネスに役立つのだろうか?と思った方にはぜひ読んでいただきたい「入門書」であると思います。

    なぜ日本は同じ過ちを繰り返すのか?このシンプルにして最も根源的な問いが至るところ、いたる組織において噴出していることは言うまでもないことですが、その問題を「日本で最大の組織」であった「日本軍」がいかに失敗し、いかにアメリカ軍に敗れ去ったかを詳細に検証することによって、現在でもわれわれを悩ませ続けている問題の「答え」とその「処方箋」があぶりだされて来るような気がしてならないのです。

    戦略の「曖昧」さを抱えたまま太平洋戦争(大東亜戦争)に突き進み、型を反復することで洗練を極めた戦術がルールそのものを根本から変えられることによってそれが無効化され、なすすべもなく敗れ去っていく。具体的にはゼロ戦の敗れ去っていく過程や、レーダーが戦局そのものをがらりと変えていったことに今も続く問題、例えば、ガラケーとスマートフォンの問題に見たような気がいたしました。

    なぜ「日本的思考」は変化に対応できないのか?というのは日本軍とアメリカ軍との思考の過程がそのまま戦果の優劣にそもまま繋がっていたり、イノベーションが「組織」によって阻害されていく過程は以前読んだ元ソニー出身でグーグル日本法人の社長を務めた辻野晃一郎氏がそのまま感じたことではあるまいかと、そんなことを考えずにはいられませんでした。

    さらにはなぜ「現場」の意見を上手に活用できないのか?という話についても、そのまま現在に繋がる考察がなされていたり、今も子供の頃から意識をせざるを得ない「空気」にまつわる問題も戦艦大和が沖縄に「特攻作戦」をするということの是非を問う会議において、一度は否決されておきながら、「空気」の力でオセロで白から黒に一気に変わるように覆された話も、大なり小なりを問わず、身につまされる話があるのではないのでしょうか?

    「失敗の本質」に抉り出されている「日本人的なもの」に向き合うのはある種の「痛み」を伴うものであると思います。僕もこれを読んで強くそれを感じました。しかし、個人がその「痛み」に向き合うことから「明日」への第一歩が踏み出せるのではないかと、そう感じております。

  • 原書の「失敗の本質」が難解な人はとっかかりとして、こちらを先に読んでみるのがよいかもしれない。
    組織の中でのイノベーションを成功させるためには、同じ指標を追っていたり、単純な高性能・高価格であったりしては敗北の原因となる。
    自分の頭の中の限界を、組織の限界と決めつけたりしてはいけない。
    組織の可能性を無限に見いだせるのがリーダーなのである。
    過去の成功の要因を把握しつつ、常に想定外の変化にも対応できるようにし、生き残りをかけるのだ。

  • ■感想
    大東亜戦争の日本軍、米軍から現在の日本企業の問題点を的確にしている書籍。本書の元になっている「失敗の本質」は正直歴史初心者の私には難しくて理解が浅かったが、それをわかりやすくまとめてあり、2時間程度で読みきることができた。



    ■要点整理

    ▼戦略のミスは戦術でカバーできない
    戦略とは「目標達成につながる勝利」を選ぶかを考えること。
    日本人は戦略と戦術を混同しやすいが、戦術で勝利しても戦略が間違っていては最終勝利はない。

    ▼体験的学習察知
    「体験的学習」で一時的に勝利しても、本質の成功要因を把握しないと成功体験のコピーに陥り勝利を継続できない。


    ▼ゲームのルールを変えたものだけが勝つ
    日本人は「練磨」の文化と精神を持ち、独自の行動様式から特定の分野で素晴らしい強みを発揮できる民族。(製品ライフサイクルの成長後期、自動車や家電、半導体などでの強さはこれに由来する)

    ・日本企業の弱さ
    └前提条件が崩れると新しい戦略を策定できない
    └新しい概念を創造し、それを活用するという学習法のなさ
    └目標達成の為の組織ではなく組織のための目標を立てる
    └異質性や特異性を排除しようとする集団文化


    ▼達人も創造的破壊には敗れる
    「達人の努力を無効にする」各新型の組織は「人」「技術」「技術の運用」の三つの創造的破壊によりゲームのルールを根底から変えてしまう。(これまでの戦い方を無効にする)
    ex.一体一の戦いから一機が囮となり背後を取らせて攻める作戦
    ex.命中技術をあげる戦いからレーダーをつける戦いへ


    ▼日米の強みの違い
    ・日本軍の強み
    └体験的学習によって偶然生まれるイノベーション
    └練磨の極限を目指す文化

    ・米軍の強み
    └戦闘中に発生した「指標(戦略)」を読み取る高い能力
    └相手の指標(戦略)を明確にし、それを差し替えるイノベーション



    ▼自分の目と耳で確認する
    組織の階層を伝わってトップに届く情報はフィルタリングされ、脚色されたり都合のいい部分が強調される場合が多い。トップは自ら激戦地を自らの目と耳で確認すべき。


    ▼方向転換を妨げる4つの要素
    ①すでに多くの犠牲がある 引き返せない
    ②未解決の心理的苦しさ 今更蒸し返すなという雰囲気
    ③誤った人事評価制度 
    ④幻想の共有 状況が実態よりいいとグループシンクしてしまう


    ▼耳に痛い情報を持ってくる人を遠ざけない
    リスクは「目を遠ざけるもの」でもなく「隠す」ものでもなく、周知させることで具体的に管理されるもの。ビジネスではリスクを「かわす」のではなく管理するもの。

  • 読みやすく面白い

    ゲームのなかで技術を極めるということと
    ゲームのルールを変えるということ

  • 名著(らしい)『失敗の本質』の要約本、といった感じの本。
    2012年の初版なので、比較的最近出版された本で、実は自社の役員の方から推薦図書に指定されていた本。
    読み終わってみた感想としては、「満足」。
    「お腹一杯です、ごちそうさま」といった感じ。
    戦時中の軍部が敗戦に向かった時の敗因を、組織論の観点から分析したものだが、これは、現代の、企業に限らず組織全般に当てはまる。
    しかも、日本企業・政府に限らず、外国の組織であれ同様。
    つまり、組織が「失敗」する原因を、23の観点から「えぐり出して」いる。
    読んでいると、失敗の原因として指摘されている要点が、あまりにも生々しいので、多少の眩暈と吐き気すら覚える。
    が、これを真摯に受け止め、自分自身・組織全体の具体的な行動指針に落とし込めれば、かなり役に立つ。
    文章の書き方自体はかなり平易なので、読みやすい名著だと思う。特に伝統的な組織に属する人、その中でも組織に対する権限を持つ人にはオススメ。

  • そのまま組織論に移れる内容。

  • おもしろかった。失敗の本質も、買って読んでみたい

  •  私の場合、同じ本を何度も読み直すことはまずしないのですが、「失敗の本質」はその数少ない例外です。(単行本も文庫本も持っています)本書は、ストレートにその「失敗の本質」の入門版と銘打っているので、どんな内容なのかちょっと気になって読んでみました。
     結論からいうと、原書の要約版ではありません。原書自体「要約」してしまうと、その充実した検証内容の価値は無に帰してしまうでしょう。その点では、要約版でなくてよかったとも思います。
     本書の実態は、「失敗の本質」で指摘されている日本軍の組織・行動面での課題・弱点を、現代ビジネスに敷衍して著者なりの示唆を加えた「入門編レベルのビジネス書」です。

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著者プロフィール

MPS Consulting代表
慶應義塾大学総合政策学部卒業後、商社にて資源輸入業務に従事。その後、コンサルティング会社に勤務し、独立。現在は、コンサルティング業務のほか、戦略論に関する著作も執筆。

「2022年 『戦略は歴史から学べ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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